著者
マイ・ティ・カイン・フエン
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 社会学篇 (ISSN:21863156)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.73-88, 2017-03-15

日本の農村地域は国全体の高齢化を20年ほど先取りして既に超高齢社会になっている。したがって、21世紀の日本の高齢化社会のなかで、農村地域における高齢者の生活が維持できるかどうかは、深刻な問題となっている。こうした状況のなかで、2000年4月に介護保険制度が施行された。社会保険公式の導入、「措置」から「契約」の移行、民間事業者の参入などにより日本の高齢者福祉システムは大きく変化してきた。それは、介護サービス利用者が多様なサービスを選択し、利用できるようになったことである。このような制度のもと、山形県最上郡戸沢村と長野県小県郡旧真田町(現在の上田市真田町)での事例を通して、本稿の目的は、(1)農村・農家での要介護高齢者への家族介護について、(2)高齢者介護と農業生産との相互の関係性、(3)介護サービス利用後の高齢者生活の変化等、三つの点を明らかにすることである。さらに、その分析を踏まえたうえで、介護保険制度の導入によって発生する問題を検討するとともに、農村地域における要介護高齢者と主介護者の生活の質を高めるための課題を探ることである。