著者
岩村 もと子 三宅 紀子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成27年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.170, 2015 (Released:2015-08-24)

【目的】タケノコは和食の特徴である旬を感じさせる食材のひとつである。海外からの安価なタケノコの輸入の増加などにより、水煮タケノコの利用はあるものの、家庭での生鮮タケノコからの調理が少なくなってきている。各地で放置竹林も問題となっている。多くの調理書などではタケノコのあく抜きは米ぬかを用いた方法が示されているが、本研究ではタケノコの簡便なあく抜きの方法について検討した。【方法】日本におけるこれまでのタケノコのあく抜き法について文献調査を行い、アジアの国々についても、在留外国人に聞き取り調査を行った。次にあく抜き方法について検討を行った。タケノコは2015年4月、鎌倉市内の竹林で採取し、収穫3日後のものを用いた。10%米ぬか、0.3%重曹、50%牛乳、アルカリイオン水、1.75%そば粉(そば湯)を用いてゆで、ゆで汁に浸漬して冷却し、水洗い後15時間水に浸漬したものを試料とした。20歳代のパネル(女性31名)により、えぐ味の強さ、硬さ、色・香り・食感の好みなどの評価項目について5段階の評点法を用いて官能評価を実施した。【結果】文献調査の結果、日本でのあく抜き法として、何も添加せずにゆでる「湯煮」が長く行われてきたが、明治末期には婦人総合誌に米ぬかを用いた方法が記載されていた。また、アジアの国々においても「水でゆでる」「塩水でゆでる」が多かった。収穫後時間の経過したものはあく抜きが必要となるが、官能評価の結果、いずれの方法においてもえぐ味の強さに差は認められなかったが、色の好みおよび硬さについて有意差が認められ、重曹を用いた試料での褐色化および組織の軟化によるものと考えられた。米ぬかを含めていずれの方法によってもあく抜きが可能であることが示唆された。
著者
三好 恵子 長田 早苗 竹中 眞紀子 三宅 紀子 小野 裕嗣
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.92, 2017 (Released:2017-08-31)

【目的】アクリルアミド(AA)は、食品を120℃以上で加熱したときにメイラード反応によって非意図的に生成する有害化学物質である。日本人では、高温加熱された野菜調理品(炒め・揚げ)からの摂取量が多いと推定されており、前報で野菜の炒め調理において各調理条件がAA生成に及ぼす影響を明らかにしている。一方、煮る調理ではAAは殆ど生成しないとされているが、120℃以上となる加圧を含め、加圧調理がAA生成に与える影響は明らかではない。そこで本研究では、野菜を加圧調理した時のAA生成についての知見及び低減対策の必要性の判断に資する知見を得ることを目的とした。【方法】前報炒め調理でAA生成量の高かった、ごぼう、れんこん、じゃがいもの水煮又は蒸し調理について検討を行った。また、カレー(ルウを加える前)の煮込みについても検討した。加圧調理に用いた圧力鍋は、A(146、80 kPaG)、B(140 kPaG)、C(95、70、45 kPaG)の3種であり、常圧条件として通常のステンレス鍋を用いた(n=4)。なお、146 kPaGの加圧条件では、5、2、0分間の加圧調理も実施した。調理終了後、調理品全体を混和してAA濃度を測定した(検出限界 2 μg/kg、定量下限 5 μg/kg)。【結果】各品目について、ほとんどの加圧条件でAA濃度は定量下限未満だった。なお、ごぼうとれんこんでは、146 kPaG、5分間以上の調理条件で、カレーでは146 kPaG 、10分間の調理条件で定量下限以上のAAが生成した(ごぼう:5~13 μg/kg、れんこん:7~30 μg/kg、カレー:6~8 μg/kg)。炒め調理時に比べAA濃度が極めて低いこと、野菜の加圧調理で推奨される標準時間は最高圧に達して2分程度であることを考慮すると、野菜の加圧調理について低減対策を検討する優先度は低いと考えられた。※農林水産省の委託研究事業を活用して本研究を実施した。
著者
三宅 紀子 酒井 清子 曽根 保子 伊坂 亜友美 鈴木 恵美子 倉田 忠男
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成25年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.75, 2013 (Released:2013-08-23)

【目的】アスコルビン酸(ASA)は調理過程において容易に酸化、加水分解されてジケトグロン酸(DKG)になる。ASA酸化生成物は反応性が高いジカルボニル構造を有することから、タンパク質とのメイラード反応が懸念される。近年このメイラード反応が生体内においても進行し、様々な疾病に関わることが報告され、飲食物由来のメイラード反応生成物の健康への影響についても関心が向けられるようになった。本研究ではASA酸化生成物と食品タンパク質との反応生成物の生体への影響について検討を行った。【方法】食品の加熱調理のモデル系として、ASA、DKG(50mM)とカゼイン(10mg/ml)との反応をリン酸緩衝液(0.1M、pH6)中、70℃で一定時間行い、ジカルボニル化合物の生成をHPLC法により定量した。また、反応生成物の高分子画分を用いて、ヒト腸管上皮モデル細胞Caco-2について増殖への影響をMTT法により、AGEレセプター(RAGE)のmRNA発現をリアルタイムRT-PCR法により調べた。【結果】DKGとカゼインとの加熱反応の過程において、数種のジカルボニル化合物の生成が確認され、その中でグリオキサール(GO)量は反応初期において高く、反応時間15分以降GO量が著しく減少した。DKGとカゼインとのメイラード反応生成物(DKG-Casein)の培養細胞への影響を調べたところ、GOおよびMGの場合よりも低濃度での細胞増殖抑制が示された。さらにCaco-2のRAGEのmRNA発現は、DKG-Casein処理により、カゼイン処理の約1.4倍に有意に上昇した。よって、食品中のASA由来メイラード反応生成物が生体に影響を与える可能性が示唆された。
著者
三宅 紀子 木下 彩嘉
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 69回大会(2017)
巻号頁・発行日
pp.149, 2017 (Released:2017-07-08)

目的 ビタミン、ミネラル、食物繊維などを豊富に含む野菜や果物は、健康維持や生活習慣病の予防に摂取することが重要であるが、十分に摂取できていないのが現状である。本研究では、野菜や果物を多く摂取するための一つの方法としてスムージーに注目し、野菜や果物に含まれる栄養素の中でも調理等により壊れやすいビタミンCに着目した。方法 スムージーのレシピ調査をもとに、使用頻度の高い食材であるコマツナ、ミカン、バナナを用いて、ミキサーを使用してスムージーモデル系を調製し、HPLC-UV法により還元型ビタミンC(AsA)量および酸化型ビタミンC(DAsA)量の両者を定量した。コマツナのゆで加熱の有無、コマツナおよびミカンの冷凍保存の影響についても検討した。結果 材料のコマツナの加熱の有無は、スムージーのAsA量に影響しなかったが、DAsA量は加熱により減少した。スムージーはあらかじめ冷凍した材料を用いることもあるので、コマツナおよびミカンを用いて冷凍の影響を調べたところ、冷凍していないもの、冷凍3日後、冷凍7日後といずれもAsA量、DAsA量はほとんど変化しなかった。バナナを加えた条件では、コマツナやミカンに含まれるAsAもすべてDAsAに変化した。これは、バナナに含まれるアスコルビン酸酸化酵素によるものと推察された。以上の結果から、スムージーの活用は簡便に野菜や果物を摂取するのに有効な方法のひとつであると考えられた。
著者
竹中 真紀子 三宅 紀子 三好 恵子 長田 早苗 小野 裕嗣
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.14, 2017 (Released:2017-08-31)

【目的】アクリルアミド(AA)は、食品を120℃以上で加熱したときにメイラード反応によって非意図的に生成する有害化学物質である。これまでに、炊飯時のAAの生成については、玄米や発芽玄米は精白米よりもAAを生成しやすいことなどが報告されているが炊飯条件による影響等の詳細は不明であった。そこで本研究では、玄米について加圧調理を含む様々な条件で炊飯し、炊飯後のAA濃度に関係する要因を見出すとともに、AAの低減に資する知見を得ることを目的とした。【方法】各種調理器具(圧力鍋(146、80、0 kPaG(常圧)の異なる加圧条件が可能、内鍋を使用可能)、炊飯器(マイコン式、IH加圧式)、土鍋)を用いて、4℃で16時間以上浸漬した玄米を炊飯した(n=4)。炊飯時に鍋内側底面および米(飯)中央部の温度を測定した。炊飯後、飯全体を攪拌し、一部を採取してAA濃度を測定した(検出限界 0.2 μg/kg、定量下限 0.5 μg/kg)。【結果】炊飯玄米中のAA濃度範囲は2~8 μg/kg、各種炊飯中の中央部の最高温度範囲は100~125℃であったが、AA濃度と最高温度の間に明確な相関は認められなかった。内鍋を使用した圧力鍋での炊飯を比較すると、加圧(146 kPaG)条件では常圧条件よりも炊飯玄米中のAA濃度が有意に高くなり、加圧による高温がAAの生成に与える影響が確認された。また、調理器具の種類や炊飯時の水量など、鍋肌でのおこげの出来やすさとも関連する複数の要因がAAの生成に少なからぬ影響を与えていることも示唆された。炊飯の際の加水量を増やすと、検討した全ての圧力条件においてAAの生成量は有意に減少したことから、玄米の炊飯でAA生成量を低減させるポイントとなりうることが示唆された。※農林水産省の委託研究事業を活用して本研究を実施した。
著者
三宅 紀子 酒井 清子 遠藤 知江美 笠原 範子 中山 麻世 野口 佳奈 倉田 忠男
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 創立40周年日本調理科学会平成19年度大会
巻号頁・発行日
pp.64, 2007 (Released:2007-08-30)

【目的】 生活習慣病の予防にビタミン、食物繊維などを豊富に含む野菜の摂取の重要性は高まっている。浅漬けは日本型食生活によく合う調理・加工法であるが、これまで浅漬けのビタミンC(VC)に関する研究はほとんど行われていない。本研究ではキャベツを用いた浅漬けモデル系における浅漬けのVC含量に対する漬け液中の調味料の影響について調べた。さらに漬物製造過程でVCを添加することにより積極的にVC含量を高め栄養性を向上させた浅漬けの可能性についても検討した。 【方法】 調味料の影響については、市販のキャベツを4種類の調味料(グルタミン酸ナトリウム、食酢、ソルビトール、醤油)をそれぞれ添加した漬け液(食塩濃度;5.5%)に4℃で約18時間漬けて浅漬け試料とした。またVC添加の浅漬けについては、漬け液(食塩濃度;5.5%)に0.1~2%のVCを添加して同様に漬けた。浅漬け中のVC量はHPLC法で測定した。 【結果】 漬け液中の各種調味料の影響についてはグルタミン酸ナトリウム、ソルビトール、醤油は影響を及ぼさなかったが、食酢を添加した場合に対照(食塩のみ)と比較してVC含量が約30%減少し、逆に食塩含量は約1.3倍高くなった。食酢を添加した場合、浅漬け後の漬け液中に、キャベツ中のVC含量の約20%に相当するVCが認められた。酢酸が植物組織の構造変化をもたらし、VCの溶出および食塩の浸透を増加させた可能性が示唆された。また、キャベツ浅漬けモデル系で漬け液にVCを添加したところ、1%および2% VC添加により浅漬け中のVC含量はそれぞれ約200 mg/100g 、400 mg/100gに増加した。1%VC添加試料の嗜好性について官能評価を検討中である。
著者
岩村 もと子 三宅 紀子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】タケノコは和食の特徴である旬を感じさせる食材のひとつである。海外からの安価なタケノコの輸入の増加などにより、水煮タケノコの利用はあるものの、家庭での生鮮タケノコからの調理が少なくなってきている。各地で放置竹林も問題となっている。多くの調理書などではタケノコのあく抜きは米ぬかを用いた方法が示されているが、本研究ではタケノコの簡便なあく抜きの方法について検討した。<br>【方法】日本におけるこれまでのタケノコのあく抜き法について文献調査を行い、アジアの国々についても、在留外国人に聞き取り調査を行った。次にあく抜き方法について検討を行った。タケノコは2015年4月、鎌倉市内の竹林で採取し、収穫3日後のものを用いた。10%米ぬか、0.3%重曹、50%牛乳、アルカリイオン水、1.75%そば粉(そば湯)を用いてゆで、ゆで汁に浸漬して冷却し、水洗い後15時間水に浸漬したものを試料とした。20歳代のパネル(女性31名)により、えぐ味の強さ、硬さ、色・香り・食感の好みなどの評価項目について5段階の評点法を用いて官能評価を実施した。<br>【結果】文献調査の結果、日本でのあく抜き法として、何も添加せずにゆでる「湯煮」が長く行われてきたが、明治末期には婦人総合誌に米ぬかを用いた方法が記載されていた。また、アジアの国々においても「水でゆでる」「塩水でゆでる」が多かった。収穫後時間の経過したものはあく抜きが必要となるが、官能評価の結果、いずれの方法においてもえぐ味の強さに差は認められなかったが、色の好みおよび硬さについて有意差が認められ、重曹を用いた試料での褐色化および組織の軟化によるものと考えられた。米ぬかを含めていずれの方法によってもあく抜きが可能であることが示唆された。
著者
古庄 知己 福嶋 義光 籏持 淳 松本 直通 三宅 紀子 涌井 敬子 森崎 裕子 渡邉 淳
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

エーラスダンロス症候群(Ehlers-Danlos症候群;EDS)は、皮膚・関節の過伸展性、各種組織の脆弱性を特徴とする先天性疾患の総称です。現在、6つの大病型およびその他の病型に分類されていますが、これらの分類には当てはまらない患者さんも少なくありません。本研究では、全国からEDSを含めた遺伝性結合組織疾患疑い患者さんを収集し、詳細な臨床的分析と次世代シーケンスを用いた網羅的遺伝子解析により、新たな病型を探索しました。結果、COL5A2遺伝子変異に基づき、乳児期より顕著な皮膚過伸展性・脆弱性、重篤な後側彎症を発症する重症古典型サブタイプなどを発見することに成功しました。
著者
三宅 紀子 野村 茉由
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 70回大会
巻号頁・発行日
pp.163, 2018 (Released:2018-07-28)

目的 ビタミン、ミネラルなどをはじめとしてフィトケミカルを豊富に含む野菜や果物は、健康維持や生活習慣病の予防に重要であるが、十分に摂取できていないのが現状である。本研究では、作り置きにより野菜を手軽に摂取するための一つの方法としてピクルスに注目し、野菜に含まれる栄養素の中でも調理等により壊れやすいビタミンCに着目した。方法 ピクルスの野菜やピクルス液の配合のレシピ調査をもとに、パプリカ、キャベツのピクルスを調製した。野菜を下漬け後、ピクルス液に浸漬して、冷蔵庫で保存し、経時的に野菜とピクルス液に分けてビタミンCを抽出し、HPLC-UV法により還元型ビタミンC(AsA)量および酸化型ビタミンC(DAsA)量の両者を定量した。結果 パプリカのAsA量は、1日で浸漬前の約2/3に、7日で約1/3に減少したが、その後大きな変化はなかった。一方、ピクルス液のAsA量は経時的に増加したことから、パプリカのビタミンCのピクルス液への溶出が示された。キャベツの総ビタミンCはパプリカと比較して減少速度が大きく、パプリカよりもDAsAの割合が高かった。以上の結果から、ピクルスのビタミンCは浸漬後短時間で溶出しやすいが、1週間あるいは3週間後でもピクルスのビタミンCは残存していた。
著者
三宅 紀子 酒井 清子 五十嵐 歩 鈴木 恵美子 倉田 忠男
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.189-192, 2007-06-20
参考文献数
13
被引用文献数
1

エダマメ中の呈味成分やビタミンCは水溶性や不安定な化合物であるためゆで加熱中に分解したり,溶出したりすると考えられてきた。本研究の目的はエダマメ中の呈味成分およびビタミンC含量に対するゆで時間(3-10分)の影響を調べることである。主要な呈味成分であるスクロース,グルタミン酸,アラニンなどの糖および遊離アミノ酸含量は7分間以内のゆで加熱では著しい減少は認められなかったが,10分間ゆで加熱では総遊離アミノ酸とアラニンが有意に減少した。総ビタミンCは7分間以内のゆで加熱では90%以上が残存していたが,10分間加熱では85%に減少した。従って7分間以内のゆで加熱時間ではエダマメの呈味成分およびビタミンC含量はあまり影響を受けないことが明らかになった。
著者
勝村 龍一 中本 哲 中西 光雄 池田 並子 三宅 紀子 平岡 亮
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.1-10, 1986-02-01 (Released:2010-12-10)
参考文献数
22

In order to find the characteristics of physique and physical fitness of the field hockey players, the data were collected from the Japanese Men's Team members in anthropometric measurements and physical fitness test during the last six years since 1978.From the data collected for this study the following observation were made :1. The Japanese National Men's Field Hockey players had superior measurements in agility, especially, Side-Step-Test and cardiorespiratory function but inferior measurements in muscular strength and flexibility than players in other activities17) ; their physique were smaller than others.2. When compared with Tokyo Olympic Field Hockey players of twenty years ago, some increments in measurements were recognized in weight, circumferences, muscular strength and cardiorespiratory function; but not too much differences were observed in various longitudinal measurements, jumping reaction time, simple reaction time and flexibility.3. When individual measurements of three years span were compared longitudinally, circumferences like chest girth and upper arm girth, Vertical jump and Side-Step-Test were increased but cardiorespiratory function declined with the age. The rest of the items did not change much during the span of three years.
著者
三宅 紀子
出版者
首都大学東京
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

今年度は身体描画法の量的指標以外のその他の指標を深層心理学的に分析する活用法について検討した。個別の事例を取り上げ、身体描画法により得られた描画の質的な分析結果と被検者との面接により聴取された情報との対応・一致の程度を吟味し、身体描画に表出した被検者の身体に対する感情や態度等を検討した。事例を挙げると、不安定な対人関係の経験があり、病的痩せにより無月経となり、婦人科の処方薬を飲んで月経を起こさせている被検者Aさんは、大きな頭、細く長い首、異常に長い脚を描いた。面接では「お腹が空いた感じがわからない。」「私は時間で食事をしている。」と話した。この事例は、自然に感じられる空腹感がわからず、大きな頭で食事をコントロールしているが、頭を支える首が細いために頭がグラグラとして、頭のコントロールも不安定になりがちなAさんの様子が描画に反映されたものと考察された。また、体重増加の懸念や痩身願望が強く、大食や自発嘔吐を繰り返すという非常に不安定な摂食態度を持つBさんは身体の輪郭が曖昧で、足部(正面画、横向き画の両方)と腕および手(横向き画)がない不完全な身体を描いた。面接では、「食べちゃいけない、という反動で食べちゃう。」「夜にたくさん食べてしまい、これではいけない、吐かなきゃ、と毎日のように吐くこともある。」と話した。先行研究より、腕なしは不適応感や無力感を表わし、足なしは自立心の欠如を表わすとされるが、Bさんの描画はBさんの摂食に対する不適応感や食欲に抵抗する無力感、摂食コントロールの自律性の無さを表わすものと推察された。このような事例より、描画には被検者が意識しているか、否かに関わらず、被検者の身体に対する感情や態度などの内面が表出していることが認められた。これにより一般的に身体像を測定するために身体描画法を用いるだけではなく、言語による自己表現能力が低い生徒や学生を理解するための方法、あるいは恣意的な回答を避けるための身体像測定方法として身体描画法が適用可能であることが確認された。