著者
倉本 賢一 白石 章 中西 有 甲斐 真 上野 儀治 上田 八尋
出版者
Japanese Society of Equine Science
雑誌
日本中央競馬会競走馬総合研究所報告 (ISSN:03864634)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.26, pp.23-30, 1989-12-26 (Released:2010-08-10)
参考文献数
29

競走馬のトレーニング効果あるいは競走能力を評価する一指標として心エコー撮影による左室機能検査をトレーニングセンター在厩のサラブレッド45頭 (2歳-7歳) について試みたところ以下の成績が得られた。1) 心エコー図の撮影は左側第3・4肋間 (心切痕部) に限定されたプローブ位置からのアプローチによって, 左室の最長軸断層像を正確にとらえることでがき, 簡便で汎用性の高い撮影方法と考えられた。2) 心エコー法と色素希釈法による1回拍出量をサラブレッド15頭 (3-5歳) について比較検討したところ, 両者は相関係数, r=+0.956を有する回帰直線y=0.782x-0.147で示され, 心エコー法による1回拍出量の測定の信頼性が高いことが確認された。3) kg当たりの1回拍出量は加齢と調教の進行に伴ない増加するが, 3歳以降ではほぼ安定した数値 (2.42-3.37ml/kg) を示すことが分った。一方, 比較的優れた競走成績をもつ馬群 (4歳馬5頭) と平均的競走成績をもつ馬群 (4-6歳馬10頭) の1回拍出量を比較したところ, 前者は平均3.55ml/kgで後者 (平均2.85ml/kg) に比べ有意な高値を示した。4) 収縮末期径には被検馬群間で差は認められないものの, 拡張末期径では平均的競走成績をもつ馬群と優れた競走成績をもつ馬群間で明瞭な差が認められた。これらのことから, 本法が競走馬の左室機能の評価に有用であることが示唆された。
著者
上田 八尋 吉田 慎三 中野 幸雄 田谷 与一 金井 淳 杉町 剛美 沖坂 重邦 矢島 保道
出版者
Japan Veterinary Medical Association
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.196-200, 1977

Intraepithelial squamous cell carcinoma of the eye was encountered in two horses. It appeared on the conjunctiva of the left eye as a tumor of red-bean size and progressed to cover the lateral half of the cornea in about 3 months in a Thoroughbred stallion 16 years old produced in Ireland. It developed on the nictitating membrane of the right eye as a tumor of red-bean size in a Clydesdale stallion 10 years old produced in New Zealand. It was removed surgically in both horses under general anesthesia. Neither recurrenc e nor dysfunction was observed in these horses more than 6 months after operation.<BR>Biopsy on both cases revealed abnormal cornification of the middle layer of the epithelium, abnormality in cell division, and the appearance of clumping cells.
著者
上田 八尋 仁木 陽子 吉田 光平 益満 宏行
出版者
Japanese Society of Equine Science
雑誌
日本中央競馬会競走馬総合研究所報告 (ISSN:03864634)
巻号頁・発行日
vol.1981, no.18, pp.28-41, 1981-12-01 (Released:2010-08-10)
参考文献数
10

馬の跛行診断を客観的に行うために, あるいは運動器疾患の原因を解明するためにフォースプレートを用い, 常歩あるいは速歩時に着地した肢に働く床反力を測定し検討した.フォースプレートはキスラー社製Z4852/C (60×90cm) を用いた. 測定項目は垂直分力 (Fz), 前後分力 (Fy), 左右分力 (Fx) と, さらに演算によって合力 (F), 力の作用点の軌跡 (ax, ay), 力の作用点における垂直軸周りのトルク (M'z) (ねじりの力), それに力線図 (リサージュ波形) が得られ波形として描かれる.常歩において, 垂直分力は前後肢ともに2峰性のパターンが得られた. そのピーク値は前肢において体重比56.2%と68.0%であり, 後肢においては48.6%と42.9%であった. さらに垂直分力波形には2つの小峰が認められた. 1つは最初のピークの前であり, 他の1つは第2のピークの後であった.前後分力は着地後, 前方分力としてピークを形成したあと0にもどり, 次いで後方分力としてのピークを形成した. そして, 前方分力と後方分力はほぼ等しい値であった. また, 前後分力の波形の中にも垂直分力の小峰に対応した小峰が認められた.左右分力は個体によって異ったパターンが見られ, 着地から離地までにいくつかの内外側へのピークを形成していた.速歩になると, 垂直分力は前後肢とも単峰性のパターンに変化し, そのピーク値は前肢において体重比105%, 後肢において92.8%となった. 前後分力は常歩時とほぼ同様のパターンを示したが, 前肢の前方分力と後肢の後方分力が常歩時より増加した. 左右分力は個体間の変動が大きく, 常歩と速歩による変化は見られなかった.力の作用点の軌跡 (ax, ay) は, 前後肢によってそれぞれほぼ一定したパターンを示し, そのパターンは関節の作用, 体重心の位置と関連があるように見られた. また, ねじりの力は個体差及び各個体の各肢ごとに相違があり, 肢勢, 歩様と関連性が強いと推察された. 力線図については, 着地時の衝撃波の影響が強く現われたが, 個々の馬の歩様を反映しているように思われた.測定結果から前肢は支持的な機能を, 後肢は推進力としての機能を持っていることが表わされている. また, 各波形は馬の歩様を忠実に示しており, 跛行診断などへの有用性が示唆された.