著者
小塩真司 茂垣まどか 岡田涼 並川努 脇田貴文
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第60回総会
巻号頁・発行日
2018-08-31

問 題 小塩他(教心研, 2014)はRosenbergの自尊感情平均値に対して時間横断的メタ分析を行い,調査年が近年になるほど自尊感情が低下傾向にあることを示した。本研究はその後数年間に発表された文献も加え,同様の傾向がその後も継続しているのかどうかを検討する。方 法 文献の選定とデータの抽出 小塩他(2014)で分析された,1980年から2013年3月までに発行された和雑誌に加え,CiNiiおよびJ-STAGEで2017年までに発行された論文を対象にRosenbergの自尊感情を用いた論文の検索を行った。収集された論文について,次に該当する論文を除外した:平均値やサンプルサイズの報告がない研究,使用項目が極端に少ない研究,尺度の件法を報告していない研究,日本人以外をサンプルとした研究,事例研究,小学生以下を対象とした研究,複数の年齢段階を分割していない研究。最終的に選定された論文数は169,研究数(平均値の数)は342,合計サンプルサイズは66,408名であった。 コーディング 調査年の報告がある場合にはその年を調査年とした。報告された調査年の平均値が3.15年であったため,報告がない場合には報告年から3年を引いた値を調査年とした。調査年による曲線関係も検討するため,調査年を中心化し,2乗項を作成した。年齢段階は中高生,大学生,成人,高齢期とし,中高生を基準としてダミー変数とした。翻訳の種類は,山本他(214研究),星野(40研究),桜井(23研究),その他(65研究)であった。その他を基準としダミー変数とした。自尊感情尺度は5件法に合わせる形で変換した。研究数は4件法が77研究,5件法が234研究,6件法が5研究,7件法が26研究であった。5件法を基準とし,4件法と6件法以上をダミー変数とした。また各年齢段階と調査年の交互作用項を設定した。結果と考察 自尊感情平均値を従属変数とした重回帰分析を行ったところ次の結果が得られた(Table 1)。(1)中高生や大学生よりも成人,高齢期の平均値が高い,(2)山本他・櫻井の翻訳の平均値が高い,(3)5件法に対し4件法と6件法以上の平均値は高い,(4)調査年に従って平均値は低下傾向にある,(5)高齢期のみ傾向が異なる可能性がある。なお年齢別に分析を行ったところ,高齢期の調査年の影響は認められなかった。調査年・年齢段階と自尊感情平均値との関係をFigure 1に示す。