著者
中俣 尚己
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.31-45, 2009-01-01

本稿は現代日本語の「と」「や」「も」という3つの名詞句並列マーカーを体系的に分析することを目的とする。並列について従来いわれてきた「全部列挙」「一部列挙」という説明は語用論的な推意に関する性質であり,本質的な性質とはいえない。本稿では統語論,意味論,語用論それぞれのレベルにおいて並列表現の記述に必要な枠組みを提供する。統語論レベルでは「と」と「も」は名詞句がすべて他の要素と結びつく「+網羅性」という性質をもつ。一方,「や」は「-網羅性」という性質をもつ。意味論レベルでは各形式は集合を作り上げる動機が異なっている。「と」は共通の属性を必要としないが,「や」は聞き手が要素に共通の属性を発見する必要があり,「も」は文脈から要素の出現が予測できなければならない。語用論レベルでは「と」は「他に何もない」という推意を生み出すが,「や」と「も」はそのような推意を生み出さない。
著者
中俣 尚己
出版者
計量国語学会
雑誌
計量国語学 (ISSN:04534611)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.205-213, 2021-12-20 (Released:2022-12-20)
参考文献数
2

数値データを比率を用いて表すことは広く行われているが,それゆえに不適切な利用も目立つ.本稿では比率をパーセントで表示する意義とその際の注意点についてまとめた. まず,パーセントを内訳として使用する際には,100を超えるデータの情報を圧縮して示しているということに留意が必要である.非常に少ないデータをパーセントで表示したり,小数点以下の値を細かく記述することは不適切な利用である.また,比率を用いて異なる母数のデータを比較するときは何に対する比率であるかを意識することが重要である.パーセント表示された値の差はパーセントポイントという単位を使って示さなければならない.また,パーセント以外の比率の単位も存在する.コーパス言語学で用いられるpmwという単位についても紹介した.
著者
中俣 尚己
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.156, pp.16-30, 2013 (Released:2017-03-21)
参考文献数
11

「も」に関しては従来,意味による分類が行われていたが,この論文では構文のタイプが学習者の母語に存在するかしないかによって習得難易度に差があるのではないかという仮説を立て,JFL環境の中国語話者を対象に,3種の調査によってそれを検証した。理解について調べた文法性判断課題においては構文タイプによる差は見られなかった。しかし,産出について調べた翻訳課題ならびに作文課題においては,通常の「AもP」構文の使用に全く問題ない学習者であっても,「AもBもP」構文や「AもP,BもP」構文の使用は難しいという,母語の干渉の存在を支持する結果が得られた。この結果は,産出のための文法を考える際には,日本語学の視点のみから記述された文法では不十分で,学習者の母語についても考慮する必要があること,またJFL環境における検証調査の重要性を示している。
著者
中俣 尚己
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.1-17, 2017-10-01 (Released:2018-04-01)
参考文献数
16
被引用文献数
1

この論文では、『現代日本語書き言葉均衡コーパス』を用い、接続助詞の前接語品詞の偏りを調査した。結果、B類接続助詞は前接語の動詞の割合が90%前後と高く、C類接続助詞は前接語の動詞の割合が60%前後と低いことがわかった。動詞の中をさらに詳しく調べると、B類の節では「いる」「ある」「見える」「違う」「テイル形」「ナイ形」といった状態を表す表現の割合がC類より少ないこともわかった。このような偏りが起こる原因としては、本研究でB類と分類した節は全て時制の区別を持たず、そのため既定的な命題は出現しえないからだと考えられる。また、「わけ」「はず」などの名詞由来の文末表現の前接語の動詞率はB類と等しく、「かもしれない」「だろう」「よ」などの名詞由来ではない文末表現の前接語の動詞率はC類と等しかった。
著者
中俣 尚己 山内 博之 橋本 直幸 建石 始 小口 悠紀子 小西 円 堀内 仁 森 篤嗣 合田 陽子 加藤 恵梨 澤田 浩子 清水 由貴子 山本 和英
出版者
京都教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

2018年7月7日に京都教育大学で第1回ミーティングを行い、作業方針を固めた。以下、「新規コーパス構築」「既存コーパス分析」のそれぞれの作業について順番に実績を述べる。新規コーパス構築では、120ペア、240名の調査協力者を集めることにした。関西60ペア、関東60ペアで、さらに性別でも「男男」「男女」「女女」でバランスをとる。その上で、話題選定班の協力の元、『実践日本語教育スタンダード』を元に15の話題を選定し、各5分ずつの談話を録音することにした。調査に先立ち、協力者への説明や、同意の取り方、さらには指示の出し方など細かいプロトコルを定め、共有した。2018年度は120ペアのうち55ペアの録音を完了し、ほぼ半分の録音が完了した。2019年10月に全作業を完了する予定である。既存コーパス分析では、名大会話コーパスの全てのファイルを目で読み、『実践日本語教育スタンダード』をベースに話題の分割を行うことにした。プレ調査の結果、各ファイルにつき3名の作業者を当てることが妥当と判断した。分割のための書式を定め、結果を機械分析班が作成したプログラムで加工し、その後対面ですり合わせ作業を行う。全129ファイルを4分割して作業を進めることにした。現在、分割の作業進捗度は75%程度であり、全体の25%については2019年3月にすり合わせの作業を実施した。なお、代表者は全ファイルの作業をすでに終えている。作業の完了は2019年9月の見込みである。
著者
中俣 尚己
出版者
京都教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

中国語話者が日本語を学ぶ際に必要な文法を効率よく記述するために、中国語話者を対象に習得研究を行った。その際に、従来の日本語学での分類を利用するのではなく、あくまでも中国語との対照を意識した上で日本語の分類を行う。その新しい分類で、難易度に差異が存在することを示すことで、従来の日本語学の記述に従っているだけでは、必ずしも中国語話者のために最適な教材は作れないことを実証した。具体的には、累加を表す「も」、数量表現、漢語サ変動詞の自他というテーマを扱った。