著者
村上 明 中村 宜督 大東 肇 小清水 弘一
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学生物理工学部紀要 = Memoirs of the School of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-23, 1997-02

現在、癌の化学予防は癌撲滅のための一つの有力な手段と考えられている。なかでも、多段階発癌におけるプロモーション過程の抑制は特に有効である。なぜなら、プロモーションは、多段階にわたる発癌過程において、唯一、可逆性を示す過程であり、しかもその成立に長い期間を要することが動物実験の結果から示唆されているからである。このような背景から、タイ国産食用植物112種(122試料)を無作為に選び、発癌プロモーション抑制活性の短期検定法である、Epstein-Barr virus (EBV)活性化抑制活性をスクリーニングした。プロモーターとして12-O-hexadecanoylphorbol-13-acetate (HPA)を用い、細胞はRaji(ヒトBリンパ芽球様細胞)を使用した。試験の結果、全体の60%の試料が200μg/mLの濃度で30%以上の抑制活性を示した。この抑制活性の発現割合は、以前に行った和産食用植物の試験で得られた割合(26%)を有意に上回るものであった。次いで、8種のタイ国産食用植物から10種の活性化合物を見出した。なかでも、コブミカン((Citrus hystrix、ミカン科)から単離した1,2,-O-di-α-linolenoyl-3-O-β-galactopyranosyl-sn-glycerol(DLGG)とナンキョウ(Languas galanga、ショウガ科)から得られた1'-acetoxychavicol acetate (ACA)のEBV活性化抑制活性は特に高いものであった。7,12-dimethylbenz[a] anthracene (DMBA)と12-O-tetradecanoylphorbol-13-acetate (TPA)を用いたマウス皮膚発癌2段階実験では、DLGGはTPAの10倍の塗布量で腫瘍の発生数を50%抑制し、ACAはTPAと同じ塗布量でも有効(抑制率44%)であった。DLGGの重要な作用機構は、プロスタグランジン類生成系の抑制作用であり、ACAのそれは、白血球による過剰な活性酸素の産生の対する抑制作用であると推察された。タイ国産食用植物が示す高い発癌抑制作用、活性物質、その作用機構を中心に述べた。
著者
中村 宜督
出版者
日本環境変異原学会
雑誌
環境変異原研究 (ISSN:09100865)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.253-258, 2004 (Released:2005-12-24)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

An important group of compounds that have a chemopreventive property is organosulfur compounds such as isothiocyanates. In the present study, we clarified the molecular mechanism underlying the relationship between benzyl isothiocyanate (BITC)-induced cell cycle arrest and apoptosis. The exposure of the cultured cells to BITC resulted in the inhibition of the G2/M progression that coincided with apoptosis induction. An experiment using phase-specific synchronized cells demonstrated that the G2/M phase-arrested cells are more sensitive to undergoing apoptotic stimulation by BITC than the cells in other phases. We identified phosphorylated Bcl-2 as a key molecule linking the p38 MAPK-dependent cell cycle arrest with JNK activation by BITC. We also found that BITC induced a cytotoxic effect more preferentially in the proliferating normal human colon epithelial cells than the quiescent cells. Moreover, down-regulation of p53 resulted in the enhancement of susceptibility to undergoing apoptotic stimulation by BITC. These findings suggested that p53 might play a negative regulating role in BITC-induced apoptosis. In conclusion, the results from this study provided biological evidence that BITC has a potential to induce apoptosis selectively in p53-mutated proliferating pre-cancerous cells.
著者
山田 直史 太田 晴子 岡本 紗季 小橋 華子 榊原 紗稀 秋山 史圭 植田 絵莉奈 郷田 真佑 正 千尋 妹尾 莉沙 中村 宜督
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成25年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.147, 2013 (Released:2013-08-23)

【目的】食品に含まれる抗酸化活性が注目される中、食品の相互作用による抗酸化活性の変化について研究を進めてきた。本研究では、キュウリによるトマトの抗酸化活性の低下作用を、抗酸化活性、ビタミンC含有量およびポリフェノール含有量の測定から解明を試みた。また、サラダの盛りつけを意識して接触状態での影響についても検討を行った。【方法】キュウリホモジネート、トマトホモジネートを1:1で懸濁し、抗酸化活性をDPPHラジカル捕捉活性法で、ビタミンC含有量をヒドラジン法で、ポリフェノール含有量をフォーリンチオカルト法で測定した。また、輪切りにしたキュウリをトマトの断面に接触させたのちに、トマトの抗酸化活性を測定した。【結果】キュウリホモジネート、トマトホモジネートを1:1で懸濁させることで、抗酸化活性およびポリフェノール含有量が、総和から期待される値よりも小さくなった。一方で、総ビタミンC含有量はキュウリとトマトの総和から期待される値とほぼ等しくなったが、酸化型ビタミンCの割合が大幅に増加していた。この結果から、キュウリに含まれるアスコルビン酸オキシダーゼがトマトの抗酸化活性の低下に大きく関与すると考えられた。また、トマトとキュウリを5分間の接触によって、トマトの抗酸化活性はわずかながら低下した。これらの結果から、キュウリにってトマトのアスコルビン酸の酸化が敏速に起こることが示唆された。
著者
山田 直史 中桐 実奈美 山脇 香菜 新實 祐理 伊東 秀之 宗歳 日光里 山崎 勤 中西 徹 中村 宜督
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成30年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.11, 2018 (Released:2018-08-30)

【目的】ハーブとして料理やアロマオイルに利用されるローズマリーは,古くから薬草として含有成分の機能が利用されていた。有名な伝承として,手足のしびれを患っているハンガリーの王妃に,修道士らが治療薬としてローズマリーをアルコールに漬け込んだものを勧めたところ、王妃はみるみる回復されたうえ、みるみる若返り、70歳という年齢で20代のポーランド王に求婚されたというものがある。本研究では,ローズマリーの抽出物(溶媒:水またはエタノール)を用いて,抗酸化活性,メラニン生成阻害効果,抗糖化活性およびがん細胞増殖抑制効果について測定した。【方法】ローズマリー葉を水またはエタノールに20分漬け抽出液とした。抗酸化活性はDPPHラジカル捕捉活性法で,メラニン生成阻害効果はドーパとマッシュルーム由来チロシナーゼを用いて,抗糖化活性はグルコースとアルブミンの糖化反応によるAGEs生成量測定で,がん細胞はMCF-7(乳がん細胞株),MDA-231(乳がん細胞株),SW-982(滑膜肉腫株)を用いた。【結果】エタノール抽出物では,すべてで高い機能性が確認された。このような機能性の影響から,伝承のような若返りの言い伝えが残っているのではないかと憶測される。
著者
山田 直史 太田 晴子 岡本 紗季 小橋 華子 榊原 紗稀 秋山 史圭 植田 絵莉奈 郷田 真佑 正 千尋 妹尾 莉沙 中村 宜督
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】食品に含まれる抗酸化活性が注目される中、食品の相互作用による抗酸化活性の変化について研究を進めてきた。本研究では、キュウリによるトマトの抗酸化活性の低下作用を、抗酸化活性、ビタミンC含有量およびポリフェノール含有量の測定から解明を試みた。また、サラダの盛りつけを意識して接触状態での影響についても検討を行った。【方法】キュウリホモジネート、トマトホモジネートを1:1で懸濁し、抗酸化活性をDPPHラジカル捕捉活性法で、ビタミンC含有量をヒドラジン法で、ポリフェノール含有量をフォーリンチオカルト法で測定した。また、輪切りにしたキュウリをトマトの断面に接触させたのちに、トマトの抗酸化活性を測定した。【結果】キュウリホモジネート、トマトホモジネートを1:1で懸濁させることで、抗酸化活性およびポリフェノール含有量が、総和から期待される値よりも小さくなった。一方で、総ビタミンC含有量はキュウリとトマトの総和から期待される値とほぼ等しくなったが、酸化型ビタミンCの割合が大幅に増加していた。この結果から、キュウリに含まれるアスコルビン酸オキシダーゼがトマトの抗酸化活性の低下に大きく関与すると考えられた。また、トマトとキュウリを5分間の接触によって、トマトの抗酸化活性はわずかながら低下した。これらの結果から、キュウリにってトマトのアスコルビン酸の酸化が敏速に起こることが示唆された。