著者
阪井 俊文 中村 晋介
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.21-31, 2018-09-30

本研究の目的は、青年期女性の恋愛観を測定するための尺度を作成することである。これまでにも、同様の試みは数多く行われているが、先行研究の問題点を指摘した上で、それを改善することで現代の青年期女性に適合する尺度項目を選定し、大学生と専門学校生を対象にして質問紙調査を実施し、1341名の回答を得た。因子分析の結果、「恋愛向上志向」「恋愛苦悩志向」「恋愛没入志向」「恋愛享楽志向」「恋愛実利志向」「友愛志向」の6因子が抽出され、統計的にその妥当性も確認された。また、いくつかの因子は専門学校生と大学生で結果が異なっており、これらの恋愛観の個人差に、階層などの社会的要因も影響していることが示唆された。今後は、この尺度を活用することで、心理的要因と社会的要因の双方について、個人の恋愛観に及ぼしている影響が解明されることが期待される。
著者
中村 晋介
出版者
福岡県立大学
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 = Journal of the Faculty of Integrated Human Studies and Social Sciences, Fukuoka Prefectural University (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.19-31, 2011-01-08

現在の日本では、「スピリチュアルなものへのあこがれ」、いわゆるスピリチュアル・ブームが、若い世代の間にも広がっている。ここ1~2年の間に、社会学や心理学の領域で、この要因を考察した論考が多数出版された。 本稿で、著者はこれらの論考を6つのパターンに分類し、それらを仮説としてその妥当性を検討する量的調査(福岡県内の4大学を対象、有効票509)を実施した。具体的には、①自己責任が強調される風潮のに耐えられない個人化した自己が求める「癒し」への希求、②スピリチュアルな言説と既成宗教の言説との連続性への忘却、③土井隆義が言う「キャラ化」した自己の動機付に関連した議論、④「大きな物語」への依存と忌避を並列させようとの思い、⑤望ましい心理的影響のみを求めるプラグマティックな心理主義、⑥TVメディアの培養効果、の妥当性を計量した。 量的分析の結果、これらの仮説のほぼ全てが棄却された。分析を進めると、スピリチュアルなものへの関心が、女性のジェンダー・トラッキングに関係している可能性がむしろ示唆された。今後、ジェンダーの視点でスピリチュアル・ブームを研究することは、宗教社会学のみならず、ジェンダーに関する社会学的研究をも前進させる可能性がある。
著者
中村 晋介
出版者
福岡県立大学
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.37-50, 2010-07

One of the serious social problems is the increasing of number of public assistance recipients. This article would like to suggest that those recipients capable of gaining "independence by working" should be identified and a system established to assist them in achieving this goal. For the purposes of this study, a database containing 502 public assistance recipients in Tagawa, Fukuoka Prefecture was examined. Through a statistical analysis of this database, the following recommendations towards independence from public assistance may be made:1) In the initial stages of public assistance, administrators and caseworkers should offer incentives to work to recipients.2) For the sake of recipients who are single mothers, the number of day-nursery facilities should be increased in order to assist them in job-hunting and/or the procurement of work-related qualification or skills.3) For recipients suffering from some form of addiction (e.g. drugs, gambling, alcohol), the treatment of their addiction should be prioritized
著者
中村 晋介
出版者
福岡県立大学
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 = Journal of the Faculty of Integrated Human Studies and Social Sciences, Fukuoka Prefectural University (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.37-50, 2010-07-31

One of the serious social problems is the increasing of number of public assistance recipients. This article would like to suggest that those recipients capable of gaining “independence by working” should be identified and a system established to assist them in achieving this goal. For the purposes of this study, a database containing 502 public assistance recipients in Tagawa, Fukuoka Prefecture was examined. Through a statistical analysis of this database, the following recommendations towards independence from public assistance may be made:1) In the initial stages of public assistance, administrators and caseworkers should offer incentives to work to recipients.2) For the sake of recipients who are single mothers, the number of day-nursery facilities should be increased in order to assist them in job-hunting and/or the procurement of work-related qualification or skills.3) For recipients suffering from some form of addiction (e.g. drugs, gambling, alcohol), the treatment of their addiction should be prioritized
著者
中村 晋介
出版者
福岡県立大学
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.19-31, 2011-01

現在の日本では、「スピリチュアルなものへのあこがれ」、いわゆるスピリチュアル・ブームが、若い世代の間にも広がっている。ここ1~2年の間に、社会学や心理学の領域で、この要因を考察した論考が多数出版された。 本稿で、著者はこれらの論考を6つのパターンに分類し、それらを仮説としてその妥当性を検討する量的調査(福岡県内の4大学を対象、有効票509)を実施した。具体的には、①自己責任が強調される風潮のに耐えられない個人化した自己が求める「癒し」への希求、②スピリチュアルな言説と既成宗教の言説との連続性への忘却、③土井隆義が言う「キャラ化」した自己の動機付に関連した議論、④「大きな物語」への依存と忌避を並列させようとの思い、⑤望ましい心理的影響のみを求めるプラグマティックな心理主義、⑥TVメディアの培養効果、の妥当性を計量した。 量的分析の結果、これらの仮説のほぼ全てが棄却された。分析を進めると、スピリチュアルなものへの関心が、女性のジェンダー・トラッキングに関係している可能性がむしろ示唆された。今後、ジェンダーの視点でスピリチュアル・ブームを研究することは、宗教社会学のみならず、ジェンダーに関する社会学的研究をも前進させる可能性がある。
著者
麦島 剛 上野 行良 中村 晋介 本多 潤子
出版者
福岡県立大学
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 = Journal of the Faculty of Integrated Human Studies and Social Sciences, Fukuoka Prefectural University (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.85-91, 2006-11-30

軽微な犯罪の早期解決がそれより重大な犯罪を抑止するという考え方を割れ窓理論 (broken windows theory)という。現在では、環境悪化放置の防止が地域の犯罪の抑止となる、 という観点から議論されることも多い。この理論の実践は1990年代半ばから米国において警察主導の取り組みとして始まった。最近は、日本でも地域住民主体による落書き防止などの取り組みとして盛んになっている。本研究は、地域環境悪化の放置および地域に立地する各種施設と、中学生の非行容認度との間にどのような関係があるのかを検討し、非行防止対策への手がかりとすることを目的とした。 福岡県内の中学2年生と矯正施設入所等中学生に対し、質問紙により以下の点を調査した。1)校区の悪化環境の放置に関する認識について、2)校区に立地する各種施設について、3)非行の容認について。その結果、悪化環境が放置されていると考える中学生は非行の容認度が高いことが示唆された。いっぽう少年院等の中学生は、悪化が放置された環境で暮らしていたと考える率が低かった。自らの住む環境の悪化が放置されていると感じるとき、中学生は非行を絶対悪だと考えなくなるが、放置状態に対して無頓着になると、実際に非行を犯す可能性が高まるとも考えられる。また、校区に、ギャンブル場などがあると答えた中学生において非行を許す程度が高かった。さらに、どんな施設であっても、立地する場合に環境が悪化していると認識する率が高かった。 以上の知見を踏まえると、落書きやゴミ放置などの公衆ルール違反を即急に解決することは、中学生が非行を許さないと考えることにつながる可能性がある。犯罪の低減と同様、割れ窓理論にもとづく具体的な取り組みが非行防止の一助となると考えられる。