著者
小原 仁 冨手 保果 中村 茂祐 矢田 充男 長谷川 祐子 大志田 和子 網谷 美千枝 遠藤 孝 菊池 洋子 中村 幸夫 土肥 守
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.342-346, 2007-05-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
25

日本におけるNutrition Support Team (NST)活動は主に急性期病院で行われている. NSTの効果に対する報告は, 急性期病院における報告が多く, 療養型病院における報告は少ない. 本研究は, 療養型病院におけるNSTが臨床面および経営面に及ぼす効果を明らかにするめに, 独立行政法人国立病院機構釜石病院リハビリテーション科に入院中の慢性期リハビリテーション患者を対象として, NST設立前後における栄養状態, 誤嚥性肺炎の発生, 褥瘡の発生および治癒, 医薬品消費額および特別食加算による診療報酬額を評価した.NST稼働1年後の血清アルブミンは, 開始時に比べて有意に高値を示した. 低アルブミン血症および低体重の患者の割合はNST活動によって減少した. 同様に, 誤嚥性肺炎の発生日数も減少した. NST活動によって褥瘡の発生率は減少し, さらには, 褥瘡の治癒は促進された. 医薬品消費額については, NST開始1年後は開始時に比べて, 年間1人あたり1万円の減少となった. 特別食加算による診療報酬額は, NST開始1年後は開始時に比べて, 年間200万円の増加となった.以上の結果より, NST活動は臨床成績を向上させ, 病院経営における収支を改善させたことから, 療養型病院においてもNSTが有効であることが示唆された.