著者
角甲 純 中村 陽一 西 智弘 高木 雄亮 松田 能宣 渡邊 紘章 笠原 庸子 合屋 将 小原 弘之 森 雅紀 山口 崇
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.33-42, 2022 (Released:2022-03-31)
参考文献数
44

【目的】慢性進行性疾患患者の呼吸困難に対する送風療法の有効性について検討する.【方法】医中誌,Cochrane Library, EMBASE, MEDLINEを用いて,2019年10月23日までの期間に報告されたすべての文献について検索を行った.また,2020年6月30日と2021年12月7日に,PubMedを用いてハンドサーチを行った.適格基準は,1)送風療法を扱う無作為化比較試験,2)対象者の年齢が18歳以上,とした.除外基準は,1)重複文献,2)学会発表,とした.【結果】110件中10件が採用され,そのうち5件についてメタ解析を行った.送風療法は標準化平均値差−1.43(95%信頼区間−2.70~−0.17; I2=94%;異質性のp値<0.0001)であり,呼吸困難を有意に改善した.【結論】慢性進行性疾患患者の呼吸困難に対して送風療法は有効であることが示された.
著者
鈴木 慎太郎 中村 陽一 西岡 清 足立 満
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.593-597, 2007-06-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
12

症例は30歳の男性.アワビの貝殻に盛られた魚の刺身を食べた直後にアナフィラキシーショックを認めた.以前にもアナフィラキシーショックの既往があり,いずれも海産物を摂取した後に発症していた. CAP-FEIAでホタテと牡蟻で陽性を示し,貝類をアレルゲンとして疑った.そこで市販のアレルゲンエキスによる皮膚試験に加え,種々の貝類を用いたprick by prick testを施行した.その結果アワビのみで陽性を示し,貝殻に残っていたアワビの成分が付着した刺身の摂取が今回のアナフィラキシーショックの原因であると考えた.臨床検査に項目がない,あるいは皮膚試験用エキスが国内で販売されていない食材がアレルゲンとして疑わしい場合や,事情により負荷試験ができない場合にprick by prick testは外来診療で実施可能かつ有用な検査方法と考える.
著者
正田 哲雄 畠山 淳司 磯崎 淳 小川 倫史 野間 剛 中村 陽一 川野 豊
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.357-362, 2008-08-01 (Released:2008-11-05)
参考文献数
30

症例は7歳,男児.平成19年6月,マムシに右第3指を咬まれ受傷した.腫脹・疼痛があり近医にて外科処置を受け,受傷約10時間後に当院を紹介受診した.マムシ咬傷の重症度分類はGrade III であった.まむしウマ抗毒素に対する皮内試験は陰性であり,メチルプレドニゾロンを予防投与した後に静脈内投与した.投与直後から,全身に蕁麻疹が出現し,同時に喘鳴・呼吸困難のアナフィラキシー反応を生じた.0.1%アドレナリンを筋肉内投与,ヒドロコルチゾンを静脈内投与し症状は改善した.まむしウマ抗毒素はウマ血清であり,アナフィラキシーを高率に合併するが,小児の使用に関して検討されていない.本邦における小児マムシ咬傷報告例のうち抗毒素血清投与を行った12症例を検討したところ,アナフィラキシーを呈したのは本症例のみであった.海外ではアドレナリン予防投与も行われており,その適用基準の検討を含め,小児例の蓄積が必要である.
著者
鈴木 慎太郎 中村 陽一
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.87-91, 2007-02-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
10

症例は31歳の女性.夕食に寿司を食べていた最中, 顔面の痒み, 口唇の腫脹や喉頭の掻痒感, 閉塞感を自覚したため精査目的で当科を受診した.花粉症の既往がある.当初, 寿司の魚肉アレルギーもしくは醤油の原材料である小麦や大豆に対するアレルギーによる口腔アレルギー症候群を疑った.しかし抗原特異的IgE検査で調べた食餌抗原は全て陰性であり, 大豆, 小麦粉など醤油の主要成分は皮膚試験でも陰性だった.そこで実際に摂取した醤油の材料を取り寄せ, 各成分そのもので皮膚試験を行い, カツオ抽出物で強陽性を認め, カツオなど魚肉由来の醤油添加物が口腔アレルギー症候群の原因ではないかと強く疑った.市販の醤油の中には風味付けのため「だし入り」と称し, 魚肉抽出物が添加されている場合がある.小型の個別包装にはアレルギー成分表示義務がないため, こうした添加物の記載がないことも多く, 食物アレルギーの既往がある患者では指導上注意が必要である.
著者
小松﨑 恵子 中村 陽一
出版者
COSMIC
雑誌
呼吸臨床 (ISSN:24333778)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.e00015, 2017 (Released:2019-06-27)
参考文献数
34

食物依存性運動誘発アナフィラキシーは即時型食物アレルギーの特殊型で,特定の食物摂取と運動等の二次的要因の組み合わせにより蕁麻疹・アナフィラキシー等のアレルギー症状を来すものをいう。本邦の成人発症例で最も多い原因は小麦であり,特に小麦依存性運動誘発アナフィラキシーといわれている。粗抗原である小麦特異的IgEは陽性率が低く,負荷試験にても症状が誘発されなかった場合には診断に難渋するケースもあった。近年,成人小麦依存性運動誘発アナフィラキシーのアレルゲンコンポーネントがω5グリアジンであることが本邦より報告され,特異IgE抗体測定が2010年10月から保険収載されたことで,一般臨床での診断を多いに助けることになった。
著者
鈴木 慎太郎 中村 陽一 川野 豊 西岡 清
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.832-836, 2006-07-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
5
被引用文献数
1

症例は22歳の男性.アナフィラキシーショックで当院に搬送され,直前の食事内容と既往歴より青魚による食物アレルギーが当初最も疑われた.以後,抗原除去を指示して外来経過観察していたが,翌月,翌々月にもアナフィラキシーで来院したため,より詳細な問診を実施したところ被疑抗原として納豆が考えられた.精査入院し,抗原負荷テストを施行し,納豆50gを摂取後9時間後に膨疹など皮膚症状や胸痛を主としたアナフィラキシーが再現され,納豆による食物アレルギーと診断した.ここ数年,納豆によるアナフィラキシーの報告が散見され,摂取後半日経過してから症状を呈する「遅発性」アレルギーと称される特徴的なパターンを示すことが多いとされる.日本の伝統食品でもある納豆は近年海外でも健康食品として注目されており,納豆アレルギーの存在が周知されることが望ましい.
著者
中村 陽一
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.395-400, 2014-10-01

本稿では,社会デザインからみた図書館を考察するため,まず,社会デザインのなかでのコミュニティデザインの可能性を探り,そこで行われている「つながりを編み直すワーク,活かすワーク」について,事例とともに考えた。続いて,社会デザインとしての事業取り組みモデルを紹介した後,コミュニティデザインの変容から「サードプレイス」としての場の可能性に言及し,公共ホール・劇場を例にとった。そのうえで,最後にソーシャル・インクルージョン,サスティナビリティ,ソーシャル・キャピタルという3つのキーワードと「野生の社会デザイン」の必要について述べた。
著者
山崎 真弓 磯崎 淳 田中 晶 安藤 枝里子 中村 陽一 栗原 和幸
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.1181-1184, 2017 (Released:2017-11-11)
参考文献数
17

症例は26歳,女性.幼少期より,鶏卵の誤食による誘発症状を認めていた.治療の希望があり,急速経口免疫療法の目的で当院に入院した.二重盲検負荷試験で陽性を確認し,オープン法による閾値決めを行った.生卵白乾燥粉末を症状誘発閾値の1/10量(3.0mg)より1.2倍ずつ増量し,5回/日で摂取した.1gに達したところでスクランブルエッグ8gに変更し,その後は1.5倍ずつ増量した.治療18日目に目標の鶏卵1個分(60g)に達した.治療中に蕁麻疹や軽い呼吸困難などの誘発症状を2回認めたが,抗ヒスタミン薬を内服して症状は消失した.鶏卵摂取後の運動誘発試験は陰性,鶏卵入りの加工品を摂取しても誘発症状は認めなかった.現在,1日に鶏卵1個を摂取する維持療法を継続中であり,2年の経過で誘発症状を認めていない.小児期に耐性獲得できない成人に対しての急速経口免疫療法は,選択肢として考慮される治療法である.
著者
小川 博久 中村 陽一 時永 賢治 阪倉 直樹 山下 元幸
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.641-645, 2005-07-30 (Released:2017-02-10)

症例は62歳の女性.頻尿および膀胱緊満時の疼痛で近医を受診した.膀胱炎の診断で抗生剤を投与するも改善しなかったが, 塩酸セチリジンで症状が一部改善し, 特定の食物摂取などで再び症状が増悪するようになることから当院紹介となった.当院ではトシル酸スプラタストを併用し, 特異IgE抗体や皮膚反応が陽性の食物を制限し症状の改善傾向がみられた.膀胱鏡検査で, 膀胱容積の低下, 粘膜の発赤, 小血管増生等を認め, 膀胱水圧拡張により点状出血班や亀裂像の出現が認められた.以上の膀胱鏡所見, また組織所見をあわせて本症例を間質性膀胱炎と診断した.水圧拡張術後症状は改善し, Th2阻害剤であるトシル酸スプラタストと前述の薬剤の併用により症状は安定している.間質性膀胱炎は, 尿所見が正常の膀胱炎様症状を呈し, また抗生剤に反応しない非常にまれな疾患である.病因は現在不明であるが, アレルギー性炎症が病態形成に関与していると考えられる.今回食物アレルギーを合併した間質性膀胱炎の症例を報告する.
著者
石川 利寿 河﨑 勉 島矢 和浩 安部 由希子 片 佑樹 岡安 香 鵜浦 康司 中村 陽一
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.66, no.10, pp.1236-1239, 2017 (Released:2017-12-15)
参考文献数
7

症例は同居中の64歳女性(症例1)および37歳の長男(症例2).症例1は,6月より咳嗽,微熱を認め,症状増悪をきたし,9月に臨床症状,画像所見,気管支肺胞洗浄液と経気管支肺生検の所見,血清抗トリコスポロン抗体陽性,環境誘発試験陽性から夏型過敏性肺炎と診断した.その後12月に同一理髪店に勤務する症例2も咳嗽の増悪をきたし,血清抗トリコスポロン抗体陽性を含む診断基準を満たし,夏型過敏性肺炎と診断した.症例1は,帰宅誘発試験が陰性で,職場環境誘発試験が陽性であった.本症例は夏型過敏性肺炎の家族内発症例であるが,原因環境要因は,住居ではなく同一の職場にあると考えられた.また症例2は冬季診断例であった.夏型過敏性肺炎は,大半が夏季に発症し診断され,家族内発症のほとんどが住居環境に起因すると考えられてきた.特に専業主婦に多くみられ,本症例のように女性での職場環境による発症や冬季診断例は,夏型過敏性肺炎の臨床像が,社会環境の変化に伴い従来とは異なってきている可能性を示唆し,貴重な症例と考えられる.
著者
川地 康司 中村 陽一 尾崎 敏夫 亀井 俊彦 伴野 佳世 三木 聡 藤沢 謙次 安岡 劭 小倉 剛
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.41, no.12, pp.1664-1671, 1992-12-30 (Released:2017-02-10)

近年, 気管支喘息の病態における好酸球の役割が明らかになりつつある. 好酸球の増殖, 寿命延長に関与するGM-CSFに注目し, 気管支喘息患者の末梢血単核球のGM-CSF産生能を検討した. 末梢血単核球培養上清中のGM-CSFは, 健常人 (n=6), 他疾患患者 (n=13) では, 測定限界以下であったが, 気管支喘息患者 (n=12) では, 無刺激で12人中3人, IL-2刺激で12人中5人で検出された. また, ステロイド使用の喘息患者 (n=6) では, IL-2刺激で, 6人中1人に低濃度のGM-CSFが検出されたのみであったが, 非使用中の喘息患者 (n=6) では6人中4人で比較的高濃度のGM-CSFが検出された. IL-2刺激下での単核球培養の際に, in vitroでプレドニゾロンを添加しても同様の結果が得られた. さらに, 気管支喘息患者の単核球培養上清中にみられた好酸球寿命延長活性は抗GM-CSF抗体処理により抑制された. 以上の成績より, 気管支喘息患者では, 単核球のGM-CSF産生能が増強しており, これは気管支喘息の病態に何らかの関与をするものと考えられた.
著者
小張 真吾 磯崎 淳 山崎 真弓 田中 晶 安藤 枝里子 中村 陽一
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.155-163, 2016
被引用文献数
2

【背景】近年, 食物アレルギー児の数は増加し, 乳幼児を預かる施設での対応が求められている. 【目的】横浜市内の幼稚園・保育所での食物アレルギー児への対応の実態を明らかにする. 【方法】横浜市内の全幼稚園・保育所を対象に, 食物アレルギー児の把握法, 食事状況, アドレナリン自己注射薬 (エピペン<sup>®</sup>) の使用などについて無記名アンケート調査を行った. 【結果】過去の同種の調査と比べ食物アレルギー児の割合は幼稚園・保育所ともに増加していた. 保育所に比べ幼稚園では除去食や代替食対応が可能な施設は少なく, 食物アレルギー児の把握も医師の診断以外で行っている施設が多かった. 保育所の中でも, 認可外保育所には同様の傾向がみられた. エピペン<sup>®</sup>処方児は幼稚園で多かったにもかかわらず, 投与可能な施設は幼稚園のほうが保育所と比較し少なかった. 食物アレルギーに関する知識は, 保育所に比べ幼稚園職員で乏しい傾向があった. 【結語】幼稚園や認可外保育所を中心に, 乳幼児保育施設において, 食物アレルギーに関する知識の啓発と食物アレルギー対応の拡充をより進める必要がある.
著者
中村 陽一 斉藤裕樹 戸辺 義人
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.117, pp.1-6, 2008-11-20
参考文献数
8

近年,センサネットワーク技術の発展,GNSS (Global Navigation Satellite System: 全世界的航法衛星システム) 機能を持つ小型デバイスの普及により位置情報サービス(LBS: Location-based Service) の利用分野が急速に拡大し,注目が集まっている.LBS で用いる情報は実世界の様々な情報であり,常に増加していくものである.そのため分散環境にて情報を管理する必要がある.また実世界の情報は位置依存情報であるため,位置情報を加味した管理方法が問われる.そこで本研究では,地理位置情報を扱うスキップ構造を用いた P2P ネットワーク GeoSkip を提案する. GeoSkip は,各ノード毎にそのノードを中心に一定の角度で空間を分割し,その分割エリアごとにリンクを構築することで,1 次元の情報のみ扱う従来の SkipGraph の概念を 2 次元に拡張する.これにより位置依存データの効率的な分散配置,検索を行う.GNSS (Global Navigation Satellite System) equipped mobile devices and the improvement of the technology for sensor networks have enabled Location-based Services. The location-based services deal with real world information which is collected from mobile devices and sensors. Due to large amount of collected data, we should manage such data in distributed fashion. This paper proposes a scalable peer to peer network architecture, called GeoSkip. Geoskip extends 1-dimensional SkipGraphs to 2-dimensional content space in order to achieve efficient data processing for location-based contents.
著者
浦松 雅史 斉田 芳久 長尾 二郎 渡邉 学 岡本 康 中村 陽一 榎本 俊行 浅井 浩司 桐林 孝治 草地 信也
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.29-33, 2012 (Released:2013-02-25)
参考文献数
2

【緒言】同意書は私文書であるので,署名があれば押印がなくても文書の真正を推認する点で差はない.押印欄廃止に向けて,押印の必要性についての意識を調査した.【方法】医師,看護師,患者に,同意書に関する意識等を尋ね,押印の法的意義を説明した後,意識の変化を調査した.【結果】外科医24名,看護師35名,患者20名から回答を得た.同意書押印欄の不備を経験した外科医は8名33%,看護師は18名51%であった.対処方法は,両群とも患者拇印が最多で,患者押印,家族押印が続いた.法的説明後は,同意書には署名のみ必要と考える者が増加した.医療従事者では,押印を廃止すべきとの意見が増加したが,患者では病院次第であるとの考えが多かった.【結語】同意書での押印要求は,法的に不要なだけでなく,拇印の半強制などの不適切な事項の原因になる.廃止について患者の不安の増強もなく,同意書の押印欄廃止を早急に図るべきである.
著者
斉田 芳久 榎本 俊行 長尾 二郎 高林 一浩 長尾 さやか 大辻 絢子 渡邊 良平 中村 陽一 高橋 亜紗子 草地 信也
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.317-323, 2014 (Released:2014-04-30)
参考文献数
10

前向きにリン酸ナトリウム錠(新NaP錠)の受容性と洗浄効果の検証を行った.対象と方法:2011年1月から2012年12月の期間で心腎機能異常がない外来大腸内視鏡を施行患者418名を対象とし,患者受容性はアンケートで洗浄効果は内視鏡術者の観察スコアで調査した.結果:新NaP錠の前処置は,添加物変更前のNaP錠(旧NaP錠)と同様に,嘔気・腹痛も少なく,高い受容性が認められた.ポリエチレングリコール含有電解質溶液(PEG)を前処置剤として服用した経験のある患者での次回の服薬希望において,新NaP錠の希望者は63.9%と,PEGの13.4%を大きく上回った.製剤残渣は旧NaP錠と比較して残存率には減少傾向が認められた.結論:新NaP錠の受容性と洗浄効果の高さが確認され,新たな大腸内視鏡前処置剤として有用である.