著者
吉村 小百合 浅野 クリスナ 中根 明夫
出版者
東北女子短期大学 研究活動推進委員会(紀要・年報部会)
雑誌
東北女子短期大学紀要 (ISSN:24351385)
巻号頁・発行日
no.58, pp.70-79, 2020-03-19

青森県においてサケの頭部が大量に廃棄されることから,再利用の目的で鼻軟骨からプロテオグリカンを抽出し,さまざまな機能性の検討が行われてきた。我々は,これまでサケ鼻軟骨プロテオグリカン(PG)の抗炎症作用を見出し報告してきた。細菌が引き起こす炎症を始めとして,自己免疫疾患やアレルギー,肥満誘導性炎症などのモデルマウスを用いて,PG の抗炎症作用を報告した。興味深いことに,1 型ヘルパーT細胞(Th 1)やTh17 細胞からの炎症性サイトカイン産生を抑制することにより炎症反応が過剰にならず,制御性T 細胞の促進により免疫細胞を調節し,炎症を抑制することが考えられた。しかし,摂取されたPG が腸管からどのように病巣まで到達し,免疫を調節しているかという疑問が残る。従って,腸管細菌叢の変化が免疫に影響することが知られているため,PG 経口摂取したマウスの腸内細菌叢を解析した。短鎖脂肪酸産生菌や乳酸菌が増加し,疾患に関係する細菌が減少することから、PG の経口摂取が腸内環境を改善し,免疫調節に寄与したと考えられた。本総説では,これまでの炎症性疾患に対するPG の抗炎症効果の特徴をまとめ概説する。
著者
加藤 博之 松谷 秀哉 大沢 弘 中根 明夫
出版者
弘前大学21世紀教育センター
雑誌
21世紀教育フォーラム
巻号頁・発行日
vol.9, pp.27-33, 2014-03-31

【背景と目的】医学部医学科1 年生に対し、入学後のモチベーションの低下を防ぎ、医師のプロフェッショナリズムを意識させながら、能動的な学習姿勢を涵養する教育方法は、未だ確立されたものがない。本学では1 年次に「臨床医学入門」の授業を行なって、この問題への対応に努めているが、その一環として行われたワークショップ授業と教育効果について報告する。【対象と方法】1 年生を対象とし、平成21年度より開講している科目「臨床医学入門」の一環として6 月にワークショップを実施した。学生を小グループに分け、まず附属病院内の七夕飾りとして、患者・家族が願い事を書いた短冊を見せた。その後「患者さんの願いと医師が果たすべき役割」をテーマとして、KJ 法を用いてプロダクトを作成し、全員の前で発表した。更に自由記載形式のアンケートで、ワークショップの感想を記載してもらった。【結果】プロダクトにまとめられた学生たちの意見は、患者・家族の願いは想像以上に多様であり、また医師や医療に対する期待は大きく、切実な思いを痛感したとするものが多かった。アンケートでは、患者・家族の期待に応えるための努力の必要性、高い目的を持ち真剣に学ぼうとしている仲間への尊敬、グループワーク自体が将来のチーム医療の練習であるなど、医師を目指す上での認識を新たにしているものが多かった。【結論】1 年生に患者・家族の医療に対する思いを情報として伝え、かつ同級生同士討論することは、医師の社会的役割を改めて認識させると同時に、学習に対する有力な動機付けとなりうる
著者
中根 明夫 差波 拓志 池島 進
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.479-484, 2005-08-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

レプチンは, 摂食時に脂肪細胞から産生され, 視床下部を介して摂食抑制, エネルギー消費の亢進など多彩な生理作用を示す。一方, レプチンは炎症など免疫学的刺激でも産生され, サイトカインを介して, T-helper 1型の免疫応答の誘導や炎症反応の惹起に関与するなど, 免疫応答にも深く関与することが明らかとなってきた。レプチン遺伝子あるいはレプチンレセプター遺伝子が変異を起こしているob/obマウスやdb/dbマウスは, レプチンによる摂食抑制が起こらず肥満から2型糖尿病を発病する。これらのマウスは肺炎桿菌やリステリアといった細菌感染に対する抵抗性が減弱しており, その原因としてマクロファージの機能やケモカイン産生性の低下が示唆された。レプチンに着目した研究は, 糖尿病など肥満を基盤とした生活習慣病の易感染性の機序の解明に貢献するものと考えられる。
著者
中根 明夫 浅野 クリスナ
出版者
弘前大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

脂肪組織由来間葉系幹細胞(ASCs: adipose tissue-derived mesenchymal stem cells)を用い致死的細菌感染症の治療法としての有用性を検討したところ、致死的ブドウ球菌エンテロトキシンショックマウスモデルに対し、著明な致死率低下効果を示した。この効果は、ASCs投与による炎症性サイトカインの産生抑制によるものであることが明らかとなった。本研究により、ASCsは致死的細菌感染症の予防・治療に応用できる可能性が示唆された。
著者
胡 東良 銭 愛東 単 暁風 成田 浩司 差波 拓志 長内 理大 阿部 由紀子 平賀 寛人 工藤 幸清 劉 勇 中根 明夫
出版者
弘前大学
雑誌
弘前醫學 (ISSN:04391721)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.1-6, 2007

本研究では,日本と中国の食肉179検体,鶏卵35検体におけるの大腸菌,サルモネラ及び黄色ブドウ球菌の汚染状況を統一検査法により調査した.食肉検査結果により,日本において,大腸菌の検出率は46.4%,サルモネラは4.4%で, 黄色ブドウ球菌は36.2%であった。中国において,大腸菌の検出率は37.9%,サルモネラは5.5%で,黄色ブドウ球菌は 44.1%であった.大腸菌の検出率が日本の方(46.4%)が中国(37.9%)よりやや高く,これに対し,黄色ブドウ球菌は中国の方(44.1%)が日本(36.2%)よりやや高い結果が見られたが,いずれも有意差がなかった.汚染菌数について,10^4 CFU/gを超えるのは.大腸菌では4/69(日本),4/145(中国):黄色ブドウ球菌では2/69(日本)と7/145(中国)であった. これらの結果により,食肉の加工,保管,流通,販売において,徹底的な温度管理と衛生管理が必要であると考えられる.