著者
久保 泰子 津久江 一朗 加藤 重子 佐々木 秀美
出版者
広島文化学園大学看護学部
雑誌
看護学統合研究 (ISSN:13460692)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.1-15, 2011-09

本研究では,A精神科病院一般病棟保護室環境を分析・解釈し,その物理的環境を人権と倫理的医療という側面から,治療と人間の尊厳の問題を検討した。保護室環境の分析・解釈結果では,①患者及び他者の生命を守り安全に医療を提供,②自然の恩恵が受けられず人の精神に不快な感情を刺激し安楽が妨げられる療養環境,③人間の尊厳に関する問題とQOL の低下の3つのカテゴリーが抽出された。これらのカテゴリーを人権と倫理的医療という側面から検討した結果,患者および他者の生命を守るということは,人の生存権の問題である。よって,保護室環境は,安全に医療を提供する場所として構造機能上の質的向上,医療及び保護という観点からは,生命の維持と行動観察がよくできる環境設定と同時に,回復を促進するために,自然の恩恵が受けられ人の精神に不快な感情を刺激しない保護室環境とすること,回復を促進できる保護室環境と行動制限の最小化およびセルフケア能力に応じたケアを提供することによってQOL の低下を引き起こさないことが人間としての尊厳を守ることにつながることが分かった。保護室環境の問題は,治療と人間の尊厳のバランスの重要性を示唆しており,精神看護学領域における最重要課題である。