著者
鈴木 信次 乾 和郎 朝内 京華 上田 かおる 加藤 明香 愛知 葉子 大橋 理恵 高島 東伸 福田 吉秀 廣瀬 光彦
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.856-862, 2013 (Released:2013-07-01)
参考文献数
29
被引用文献数
2 1

目的:人間ドックの受診者に対する生活指導のため,人間ドックで発見された胆石保有者の特徴について非保有者と比較検討した.方法:2009年に当施設の人間ドックを受診した23,848名を対象とし,胆石保有者1,062名の年齢,性別,BMI,糖尿病(HbA1c),脂質代謝,他の血液検査所見,生活習慣,生活習慣病,超音波検査所見について,非保有者22,786名と比較検討した.なお,BMI,血液検査所見,生活習慣病に関しては,年齢により40歳以下,41歳~59歳,60歳以上の3群に分けて比較検討した.結果:胆石の頻度は4.5%であった.胆石保有者の平均年齢は非保有者と比べて有意に高かった.BMIは,非保有者よりいずれの年齢群でも有意に高値であった.HbA1c(JDS)は,全体では有意差を認めなかったが,年代別では,中高年2群で有意に高値であった.脂質代謝では,胆石群で中性脂肪が有意に高く,HDLコレステロールが有意に低かった.他の血液検査所見(肝機能,膵機能,貧血)には差を認めなかった.生活習慣の検討では,飲酒しない人の胆石保有率は飲酒家と比べて有意に高かったが,他は認められなかった.生活習慣病について年代別にみると,40歳以下では十二指腸潰瘍の既往歴においてのみ有意差を認め,41歳から59歳の年代では,高血圧,脂質異常症,糖尿病,痛風に,60歳以上の年代では,高血圧,脂質異常症,糖尿病に有意差が認められた.胆石以外の超音波所見は胆嚢腺筋腫症と胆嚢壁肥厚に有意差が認められた.結論:胆石にならないための指導として中性脂肪,肥満の改善,適度な飲酒が有効な可能性であることが示唆された.
著者
山本 智支 乾 和郎 片野 義明 三好 広尚 小林 隆 松浦 弘尚
出版者
一般社団法人 日本胆道学会
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.147-155, 2019-03-25 (Released:2019-04-08)
参考文献数
32

急性胆嚢炎は胆嚢に生じた急性の炎症性疾患と定義され,原因の85~95%は胆嚢結石である.リンパ管のうっ滞・拡張を認める浮腫性胆嚢炎,壊死出血を認める壊疽性胆嚢炎,膿瘍化してきた化膿性胆嚢炎に分けられる.診断は,臨床兆候(Murphy's signと右上腹部の腫瘤触知・自発痛・圧痛),血液検査,画像所見により行う.白血球異常,CRPの上昇などを認め,ビリルビン,肝・胆道系酵素の上昇は軽度見られることが多い.腹部USでは,胆嚢腫大,壁肥厚,結石嵌頓,デブリ,sonographic Murphy's signのほか,胆嚢周囲浸出液貯留,胆嚢壁hypoechoic layer,不整な多層構造を呈する低エコー帯,ドプラシグナルが診断に有効である.急性胆嚢炎の診断が困難な場合や胆嚢穿孔,胆嚢周囲膿瘍などの合併症が疑われた際には,ダイナミックCTが有用である.
著者
三好 広尚 服部 外志之 高 勝義 片山 信 荒川 明 瀧 智行 乾 和郎 芳野 純治 中澤 三郎 内藤 靖夫
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.96, no.6, pp.644-651, 1999-06-05 (Released:2008-02-26)
参考文献数
28
被引用文献数
2

点滴静注胆道造影法を併用したhelical CT(以下,DIC-CT)による総胆管結石診断の有用性を明らかにする目的で,切石により確診を得た総胆管結石25例を含む胆道疾患82例を対象とした.胆道疾患82例において超音波内視鏡検査(以下,EUS)およびDIC-CTによる総胆管結石の診断能の比較検討を行った.総胆管結石25例の描出率はEUS 87.5%,DIC-CT 94.7%であった.総胆管結石のDIC-CT,EUSの診断能はそれぞれsensitivity 94.7%,87.5%,specificity 100%,100%,accuracy 97.8%,96%であった.DIC-CTは総胆管結石の診断においてEUSやERCと同等の診断能を有し,しかも非侵襲的な検査法であり,胆嚢結石の術前診断として有用な検査法である.
著者
友松 雄一郎 芳野 純治 乾 和郎 若林 貴夫 奥嶋 一武 小林 隆 三好 広尚 中村 雄太 神谷 直樹 三浦 正剛
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.178-184, 2007-02-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
39
被引用文献数
4

大腸憩室出血の特徴を,特に抗血栓薬に着目して検討した.2002年7月~2005年11月までに下部消化管出血にて大腸内視鏡検査を実施した332例のうち,大腸憩室出血と診断されたのは32例(9.6%)であった.大腸憩室出血は65歳以上の高齢者が90.6%と大部分を占めた.出血部位は左側結腸78.1%,右側結腸21.9%,出血形態は凝血塊付着81.3%,湧出性出血15.6%,噴出性出血3.1%であった.憩室は多発93.8%,単発6.2%であった.輸血を必要としない軽症は81.3%,内視鏡治療の必要がなかったものが81.3%と大部分を占めた.抗血栓薬の内服率は50%(16/32)と他の下部消化管出血をきたした疾患に比べて高値であった.大腸憩室出血例の半数は抗血栓薬を内服しており,高齢者が大部分を占めることから,大腸憩室を有する高齢者への抗血栓薬投与は出血の主な誘因の一つと考えられた.