著者
常深 祐一郎 五十嵐 敦之 佐伯 秀久 宮地 良樹 川島 眞
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.131, no.6, pp.1511-1524, 2021-05-20 (Released:2021-05-20)
参考文献数
23

皮脂欠乏症に対する認識とその治療実態を把握するために,皮膚科,小児科を始め複数の診療科の医師1,088名にアンケートを実施した.その結果,臨床現場では,皮膚科医に限らず広い領域の診療科の医師は,多くの疾患や状態が皮脂欠乏症をきたしうることを認識しており,その皮脂欠乏症は治療が必要で,医療用保湿剤が重要であると考えている.一方で多くの医師は軽症の場合には医療費も意識してセルフメディケーションを活用することや,美容目的には処方しないようにしているなど,保険診療の枠組みも意識していることが明らかになった.
著者
山本 俊幸 大槻 マミ太郎 佐野 栄紀 森田 明理 奥山 隆平 五十嵐 敦之 川田 暁
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.128, no.13, pp.2835-2841, 2018-12-20 (Released:2018-12-20)
参考文献数
14

日本乾癬学会による,3年間の乾癬性関節炎疫学調査の結果をまとめた.本邦患者の臨床的特徴は,1)男性が女性の2倍弱多い,2)乾癬発症の平均年齢は30歳代後半,関節炎は40歳代後半,3)乾癬のタイプは尋常性(局面型)が9割以上,4)関節炎のタイプは,多関節炎型かDIP型が多い,5)乾癬の家族歴は5~7%程度,6)付着部炎は2割強,7)指趾炎は6割前後に認められる,などであった.生物学的製剤による治療は,約半数に導入されていたが,中止または他剤へのスイッチ例も15~20%強に認められた.爪病変,併存症,職業についても合わせて調査した.
著者
菊地 克子 五十嵐 敦之 加藤 則人 生駒 晃彦 金久保 暁 照井 正
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.129, no.13, pp.2763-2770, 2019-12-20 (Released:2019-12-20)
参考文献数
50

皮脂欠乏症は乾皮症と同義であり,加齢により生じる老人性乾皮症や皮膚機能が未成熟である乳幼児に生じるもののほか,アトピー性皮膚炎や魚鱗癬あるいは糖尿病や慢性腎臓病などの疾患に併発すると共に,一部の抗がん剤や放射線治療などに伴っても生じる.皮膚乾燥はしばしば瘙痒を伴い,搔破によって湿疹などの状態になることから,セルフメディケーション製品を含めた保湿剤による治療を疾患や病態に合わせて行う必要があるものの,明確な治療基準は存在しない.そのため,治療に関する指針が定められることが望まれる.
著者
中川 秀己 五十嵐 敦之 江藤 隆史 小澤 明 根本 治
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.115, no.10, pp.1449-1459, 2005-09-20 (Released:2014-12-10)
被引用文献数
1

乾癬治療の質的向上を図ることを目的として,前回の調査よりも参加施設を拡大し,乾癬患者の症状および改善度,ストレス,満足度など多面的な項目からなるアンケート調査を医師,患者両方に実施し,685例の回答を得た.現在の治療満足度について「とても満足している」と回答した患者は9.8%,治療効果とストレス改善効果を総合的に判断した総合満足度に「とても満足」,「満足」と回答した患者は19.0%と,前回の調査同様,本邦における乾癬患者の満足度は低いことが確認された.また,ストレスを感じている患者の割合は67.4%であり,原因として「患部を見られること」,「外用薬による治療」があることも明らかにされた.総合満足度へ影響を及ぼす因子では「患者による症状の改善評価」(寄与率52%)が最も高く,患者の視点から症状改善を把握することの重要性が明らかにされた.そして,患者と医師の改善度評価にはギャップが存在することが示唆された.これらの知見から,乾癬治療の質を向上させるためには,患者が皮膚症状の改善度をどのように感じているのか,皮膚症状や外用薬治療が日常生活に支障を来していないか,などを患者に尋ねることで患者の治療満足度を把握し,それに対応した治療を行うことで患者満足度の高い,患者の視点に立った治療が実現できると考えられた.
著者
五十嵐 敦之 佐伯 秀久 安部 正敏 椛島 健治
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.133, no.6, pp.1491-1504, 2023-05-22 (Released:2023-05-20)
参考文献数
14

本調査では,アトピー性皮膚炎に対する抗炎症外用薬(ステロイド外用薬,タクロリムス軟膏,デルゴシチニブ軟膏)3剤の使用実態や医師の治療満足度を把握する目的で,皮膚科専門医を対象としたアンケート調査を実施した.ステロイド外用薬は,効果が良好との回答が多く,急性期治療における治療満足度が高かった.デルゴシチニブ軟膏は,副作用等の安全性に対する懸念が少ないとの回答が多かったが,他の薬剤との併用や変更などの使用実態についての情報は十分でなく,リアルワールドでのエビデンスを構築していく必要性が確認された.
著者
大槻 マミ太郎 五十嵐 敦之 勝沼 俊雄 藤澤 隆夫
出版者
一般社団法人 日本皮膚免疫アレルギー学会
雑誌
日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌 (ISSN:24337846)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.163-176, 2018

<p> アトピー性皮膚炎治療薬であるタクロリムス軟膏の添付文書に記載されている警告に関して, 臨床現場への影響について検証する目的で, アトピー性皮膚炎診療に精通している皮膚科および小児科363名の医師を対象に, ステロイド外用薬の現状も含めた使用実態調査を行った。</p><p> 薬剤の使用理由として「効果が良好だから」は, ステロイド外用薬98.1%, タクロリムス軟膏60.1%に対して, 「副作用が少ないから」は, ステロイド外用薬21.2%, タクロリムス軟膏73.2%であった。タクロリムス軟膏の発がんリスクに対しては, 85.4%の医師が否定的な見解であった。一方で, 発がんリスクの説明による患者 (保護者) からの使用拒否を19.6%の医師が経験していた。添付文書の「発がんリスクの警告に関する説明義務」については, 73.5%の医師が処方の妨げになり, 68.0%の医師が患者の不利益になるとの見解であった。本調査からタクロリムス軟膏の「発がんリスクの警告に関する説明義務」が, 患者が有効な治療を受ける機会を妨げている側面が浮き彫りとなった。</p>