著者
五味 敏昭 寺嶋 美帆 國澤 尚子 西原 賢 坂田 悍教 細川 武
出版者
埼玉県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

最近、注射における医療・医事紛争が多発している。看護学教育における重要な看護技術のひとつである「注射部位」について、その安全性の科学的根拠が問われるようになり、今回は筋注部位として医療現場で日常用いられている三角筋について、MRI(核磁気共鳴画像法)を用いて映像解剖学的に安全領域について検討した。三角筋の刺入部位として、教科書・技術書の殆んどが「肩峰より三横指下」を推奨している。しかし、報告者は長年解剖学の研究・教育に携わり、「肩峰より三横指下(約5cm)」が本当に誰にでも当てはまる安全領域であるのか否か疑問を感じてきた。1.腋窩神経は肩峰の後端から腋窩横線(腋窩の前端(三角筋と大胸筋との交点)と腋窩の後端(三角筋と大円筋との交点)を結ぶ線)に下ろした垂線の下1/4〜前端の下1/3、後端の下1/3〜前端の下1/2の範囲を走行していた。2.肩峰中点から腋窩神経までの距離は平均5.8cm(男性6.4cm、女性5.2cm)、Max. 8.3cm、 Min. 4.3cmであった。3.皮脂(皮膚+脂肪)の厚さは平均7.4mm(男性6.6mm、女性8.1mm)、三角筋の厚さは平均29.2mm(男性30.9mm、女性27、9mm)であった。4.肩峰中央部から腋窩横線に下ろした垂線(腋窩縦線)の1/2からやや上方が三角筋注射部位として適しているが、身長、腋窩縦線の長さを考慮する必要がある。5.神経位置・腋窩縦線・身長の相関関係から、腋窩縦線が10cm以下、身長が155cm以下の場合は注意を要する。6.刺入部位である「肩峰から三横指下」は万人に適用出来るとはいえない。7.刺入部位は「肩峰から二〜三横指下」または「肩峰から3.5c〜5cm下」が適当である。8.看護師は自身の「三横指長」を理解するとともに肩峰を正しく同定(触知)できる事が重要である。
著者
椎野 瑞穂 沢井 勝三 木村 明彦 五味 敏昭 岸 清
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.125-134, 1993-09-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
24

刺鍼の深度とその周囲の臓器および組織の関係を調べるため, 足の太陽膀胱経を基準とした人体横断解剖標本を作成して, 体表から何mmでどの臓器, 組織に鍼先が到達するかを検索した。前回の大椎穴 (督脈) から蕨陰兪穴 (足の太陽膀胱経) までの5横断面にひき続いて, 今回は心兪穴 (足の太陽膀胱経) から胆兪穴 (足の太陽膀胱経) までの5横断面について検索した。心兪穴を基準とした横断面では, 体表より鍼を刺入させると皮膚を5mmで貫き, 皮下組織を2mmで貫き, 僧帽筋を3mmで貫き, 固有背筋群を17mmで貫いて第6肋骨に鍼先が達する。体表より第6肋骨まで27mmを計測した。督兪穴を基準とした横断面では, 皮膚を5mmで貫き, 皮下組織を3mmで貫き, 僧帽筋を3mmで貫き, さらに固有背筋群を17mmで貫いて第7肋骨に鍼先が達する。体表より第7肋骨まで28mmを計測した。隔兪穴を基準とした横断面では, 皮膚を4mmで貫き, 皮下組織を2mmで貫き, 僧帽筋を3mmで貫き, 広背筋を1mmで貫き, さらに固有背筋群を20mmで貫いて第8肋骨に鍼先が達する。体表より第8肋骨まで30mmを計測した。肝兪穴を基準とした横断面では, 皮膚を5mmで貫き, 皮下組織を6mmで貫き, 固有背筋群を32mmで貫いて第10肋骨に鍼先が達する。体表より第10肋骨まで43mmを計測した。胆兪穴を基準とした横断面では, 皮膚を4mmで貫き, 皮下組織を7mmで貫き, 固有背筋群を32mmで貫いて第11肋骨に鍼先が達する。体表より第11肋骨まで43mmを計測した。以上の結果を鍼灸医学臨床における深さの立場から考察した。
著者
沢井 勝三 椎野 瑞穂 木村 明彦 五味 敏昭 橋本 長 岸 清
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.271-280, 1991-09-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

刺鍼の深さとその周囲の臓器の位置関係を調べるために, 足の太陽膀胱経を基準にした人体横断標本を作成して, 体表から何mmでどの組織, 器官に鍼先が達するかを検索した。今回は, 大椎穴 (督脈) から厥陰兪穴 (足の太陽膀胱経) までの5横断面について検索した。大椎穴を基準とした横断面では, 体表より鍼を刺入させると皮膚を7.5mmで貫き, 皮下組織を28.5mmで貫いて第7頸椎棘突起に鍼先が達する。体表より第7頸椎棘突起まで36mmを計測できた。大杼穴では, 皮膚を6mmで貫き, 皮下組織を8mmで貫き, 僧帽筋を5.5mmで貫き, 菱形筋を10mmで貫き, さらに固有背筋群を14mmで貫いて第2肋骨に鍼先が達する。体表より第2肋骨まで43.5mmを計測できた。風門穴では, 皮膚を7mmで貫き, 皮下組織を5mmで貫き, 僧帽筋を3.5mmで貫き, 菱形筋を4mmで貫き, さらに固有背筋群を18.5mmで貫いて第3肋骨に鍼先が達する。体表より第3肋骨まで38mmを計測できた。肺兪穴では, 皮膚を6mmで貫き, 皮下組織を4mmで貫き, 僧帽筋を3mmで貫き, さらに固有背筋群を22mmで貫いて第4肋骨に鍼先が達する。体表より第4肋骨まで35mmを計測できた。厥陰兪穴では, 皮膚を5mmで貫き, 皮下組織を3mmで貫き, 僧帽筋を4mm貫き, さらに固有背筋群を21mmで貫いて第5肋骨に鍼先が達する。体表より第5肋骨まで33mmを計測できた。以上の結果を鍼灸医学臨床における深さの立場から考察した。
著者
土居 通哉 坂田 悍教 細川 武 岡本 順子 五味 敏昭 柳川 洋 北川 定謙
出版者
埼玉県立大学
雑誌
埼玉県立大学紀要 (ISSN:13458582)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.111-116, 2001

2001年8月9日、O町のふれあい作業所にて当日の利用者12名(精神分裂病)について精神衛生相談を行い、保健所における利用者患者票を閲覧した。他方、都内のA精神病院にて患者3名(精神分裂病)の診察を行い、カルテを閲覧した。これらを比較することにより、精神医療場面の相違による患者自身の構え、病理と環境の相互作用、疾病モデルと生活モデル等を検討した。それによって、症例を通じて医療場面の違いが治療構造に及ぼす影響を考察した。その結果、作業所と病院での治療構造の違いは、環境と患者の役割構造によるところが大きいことが分かった。よって、精神障害者に対する地域保健医療福祉活動として理想的な環境は、利用者自身の健康的な側面に焦点を当て、地域住民を交えた家庭的な雰囲気の中で行われることが重要であると考えられる。