著者
杉本 孝一 塩之入 洋 井上 幸愛 金子 好宏
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.66-70, 1984-01-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
17
被引用文献数
4 5

少量の甘草摂取により,低カリウム血性筋症をきたした偽アルドステロン症と思われる1例を経験した.本症例は,著明な筋力低下と知覚障害を呈し,血清カリウム低値および筋逸脱酵素活性の著しい上昇から,低カリウム血性筋症が疑われ,カリウム補充療法を受けた後,入院した.低カリウム血症の原因として,既往歴から,消化管からのカリウム喪失は否定的であつた.内分泌学的検査では,甲状腺機能正常,尿中17-KS, 17-OHCS値正常であつた.一方,血奨レニン活性は低下していたが,血中アルドステロン値は比較的低値ながら正常範囲であり,原発性アルドステロン症も否定された.薬剤服用歴において,甘草製剤の服用は否定されたが,「仁丹」の長期摂取歴があり,以上の検査所見,および「仁丹」摂取の既往から,本剤に少量ながら含まれる甘草による偽アルドステロン症が,本症例の低カリウム血症の原因であると考えられる,本症例の「仁丹」摂取量から換算すると1日あたりのグリチルリチン摂取量は20mg程度であると思われる.かかる少量の甘草摂取により偽アルドステロン症を生じ,これにより,低カリウム血性筋症をきたした症例はまれと考えられ,また,同時にグリチルリチン負荷試験を行ない得たので,この結果をあわせて報告する.
著者
守 一雄 鈴木 糺 井上 幸愛 箙 光 玉田 得三郎 築山 久一郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.1504-1510, 1967-12-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
9

脳卒中をはじめとして,中枢神経系障害の際消化管出血のみられることはしばしばあり,すでに19世紀前半、Rokitanskyらによりこのことはみとめられ,その後臨床的に,実験的に多くの報告があり,その原因についても諸説がある.一つには間脳・下垂体系を中心とする中枢神経刺激による消化管(とくに上部消化管)の潰瘍発生が出血の原因であり,また最近では卒中発作後の線溶系の変動,血中のplasmin活性の上昇に原因をもとめ,他方では卒中発作後一時的ではあるが,血液凝固能の亢進により消化管壁血管の血栓形成などの乏血による潰瘍発生が,その原因に考えられている.われわれは最近,当内科に入院加療した消化管出血を伴なつた脳出血5例(うちクモ膜下出血合併2例)を経験したので,文献考察をあわせここに報告する.