著者
平井 佑樹 井上 智雄
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.72-80, 2012-01-15

プログラミング教育では,プログラム言語の文法やプログラム書法を理解する能力とアルゴリズムを組み立てる能力が要求される.プログラム言語の文法や簡単な例題を理解することができても,実際にプログラムを作成するときにはいくつかのつまずきが発生する.プログラミングを行う方法の1つとして,2人1組になって行うペアプログラミングがある.ペアプログラミングによるプログラミングは協調作業であるが,これはプログラミング学習の方法としても用いられている.本研究では,プログラミング学習時のペアプログラミングの成功事例と失敗事例を比較分析した.分析では作業中の会話に着目し,失敗事例の方が発話が長いこと,説明の繰返しが多いこと,一方的な発話が多いことが分かった.この知見は,ペアプログラミングにおいて協調作業がうまく進んでいるかどうかを判断する手がかりを提供し,協調作業の状態推定に有効であると考えられる.In the programming education, the ability to understand grammar of a program language and writing of a program and the ability to assemble the algorithm are required. When a learner actually makes a program, some problems are caused even if a grammar and an easy example of the program can be understood. Pair-programming is one of the programming techniques in which two programmers work together at one work station. Pair-programming is a collaborative work and is used in programming learning. In this research, success cases and failure cases in pair-programming were compared. From the comparison, it was found that the speech length was long, the number of repeating explanation was high and the number of continuous speech was high in failure cases. The insights provide some clues to identify if collaborative work in pair-programming smoothly progresses and to guess the status of collaborative work.
著者
吉村 直子 井上 智雄
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.5, pp.1-8, 2012-03-14
被引用文献数
1

災害等の非常時にも信頼できる情報インフラとしてソーシャルメディアは注目を集めている.非常時の情報発信は公共機関の重要な役割だが,ソーシャルメディアのアカウントをどのように運用すべきかは明らかではない.本研究では,東日本大震災の発生前から発生後の 3 ヶ月間を対象として,Twitter における公共機関アカウントの運用状況を調べた.34 アカウントで,投稿数と内容,他アカウントからのフォロー数を関係を調べたところ,発信者である自治体独自の一次情報や個人ユーザへの返信の割合が大きい場合にフォロワー数の増加が著しいこと等が分かった.この分析の結果を踏まえて,災害時の Twitter における公共機関アカウントの運用ガイドラインをまとめた.Social medium has been known as a reliable information infrastructure in emergency. Providing information in emergency is an important role of the governmental institution, yet how the social medium account should be used is unknown. This research investigated the logs of 34 governmental accounts in Twitter for 3 months including the Great East Japan Earthquake. We found that original information and personal replies by the governmental accounts resulted in the increased number of the followers. The operating guideline for a governmental Twitter account was summarized according to the results.
著者
高津 良介 牧 宥作 井上 智雄 岡田 謙一
雑誌
情報処理学会論文誌デジタルコンテンツ(DCON) (ISSN:21878897)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.19-25, 2016-02-18

オーケストラをはじめとした複数人での演奏を支援する研究が広く行われている.その中で,演奏の中心となる指揮者が不在な環境に焦点を当てて,図形やコンピュータグラフィクスによる人型モデルなどによる仮想指揮者を用いて支援する研究が存在する.しかし,これらの研究では演奏者全体に向けた簡易な指揮しか行えないことから,演奏者に十分な指示ができないという問題があった.我々はこの問題を解決する新たなアプローチとして,演奏者のパートや役割に応じて個別に指揮する仮想指揮者を用いた合奏支援を提案する.これにより,各パートの演奏者に詳細な指示を行うことができるようになり,指揮者不在の環境において演奏者にとって演奏しやすい指揮環境を構築することが期待できる.実験により,本提案を演奏で使用した際の影響を評価した.
著者
関本 寛仙 根本 啓一 井上 智雄 重野 寛 松下 温
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.31, pp.43-48, 2002-03-22
被引用文献数
1

近年、日本は高齢化の一途をたどっており、高齢者のコンピュータ利用の増大が予想される。一方情報技術の発展により、インターネットを用いて地理的な制約から解放されたさまざまな活動を行うことが可能となってきた。高齢者の特徴としては、身体活動は衰えているがその知的、心的活動は衰えておらず、強い知的欲求を持っていることが挙げられる。よって地理的な制約のないインターネット上での活動は、高齢者の知的、心的活動の充足の場となりえる可能性があると考えられる。そこで我々は高齢者も参加して楽しめる知的な活動として連句という文芸に着目した。本稿では松尾芭蕉らが残した俳諧七部集を分析することで連句作成手法を獲得し、それを応用した連句作成支援システムを提案する。In recent years, aging of Japanese society is being enhanced and it is expected that the elderly will use computers frequently. On the other hand, People are released widely from geographical restrictions by using computers and Internet. And they can be active in various Internet communities. Although the elderly have weaker body activity than people generally, their intellectual and mental activity has not declined. Therefore, we thought that the activity on the Internet that releases us from geographical restrictions may serve the elderly as a place of satisfaction of intellectual and mental activity. So we aimed Renku community website that everyone include the elderly can have fun. Renku is old Japanese literature. In this paper, we showed results of analysis of Haikai Shichibusyu (It is old famous Renku samples.) and I proposed the Renku creation support system using knowledge from the results.
著者
野口 康人 叶 璟 成合 智子 井上 智雄
雑誌
情報処理学会論文誌デジタルコンテンツ(DCON) (ISSN:21878897)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.26-36, 2016-02-18

ビデオ会議システム等による遠隔コミュニケーションの普及にもかかわらず,その音声環境は現在でもモノラルまたは2chステレオ程度であることが多い.しかし,多人数が遠隔から参加する場合に,複数の参加者の音声が同一スピーカを用いて再生されると聴き取りにくいと考えられる.本研究では多人数会話における発話音像の定位を数箇所に分散させることの効果について非母語条件も含めて実験的に検討した.同時発話時に認識できる単語数を測定したところ,母語,非母語にかかわらず定位を分散させた方が聴き取りの成績がよく主観的にも効果的であること,少なくとも1名の話は聴き取れると期待できる同時話者人数の限界が2名から3名に向上することが分かった.非母語によるコミュニケーションを含む遠隔会話において,音像定位分散の活用可能性を示すことができた.
著者
于 睿政 檜垣 雄也 唐 夢苑 井上 智雄
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:21888744)
巻号頁・発行日
vol.2016-GN-98, no.3, pp.1-7, 2016-03-07

学習においては学習教材や学習内容だけではなく,学習者の環境も重要と考えられる.大規模オンラインコミュニティにおける学習では学習環境として学習者の社会環境があるが,これが学習とどのような関係にあるかは十分研究されていない.対面状況と比べて学習者相互のインタラクション手法が限定されているオンラインコミュニティにおいて,学習者同士の社会的関係はどの程度学習成果に重要なのかという問題について,イラスト投稿サイトを題材として検討した.イラスト投稿ユーザーはイラストの学習者と見ることができ,その投稿イラストを時系列的に見ることにより上達の程度がわかる.またユーザー同士の相互リンクを友人関係と見ることができる.上達群の学習者はより多数のイラストを投稿していたことのほか,学習者と友人の投稿状況は非上達群でより強い相関があること,上達群の友人と非上達群の友人はやや異なるタイプであるという興味深い結果が得られた.
著者
井上 智雄 岡田 謙一 松下 温
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.37, no.11, pp.2095-2104, 1996-11-15
参考文献数
23
被引用文献数
28

本論文ではTV会議システムの映像を演出することを提案する. TV会議システムの使用で報告されている様々な問題を解決するためには システムの主たる要素である映像情報の用い方が問題であり 特にこれまでにあまり研究されていない 参加者の映像の表示方法が重要であると考えた. 映像の理論によれば 映像の適当な切り替えが必要であるため TV会議システムに適した映像表現方法を得るために テレビ討論番組の映像手法を分析した. そして そこから得た知識を利用した 多人数遠隔TV会議システムを作成した. さらに このシステムと従来の固定カメラの会議システムとの比較実験を行い 良好な結果を得た.Designing the video of a videoconferencing system is presented. The authors put an importance on the utilization of video, which is one of the essentials of a videoconferencing system, and assumed that how to present the pictures of participants was the key to solve the problems which have been reported and improve videoconferencing. The video technique on TV debate programs was studied to obtain an appropriate way of presenting video. Then the videoconferencing system that uses the video technique was developed. The system was evaluated highly in a comparative experiment with a conventional fixed video camera system.
著者
林 勇吾 井上 智雄
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J98-A, no.1, pp.76-84, 2015-01-01

本研究では,学習者ペアが協同で行う説明構築活動においてPedagogical Conversational Agent (PCA)をアドバイザとして用いた際の効果的なインタラクションのデザインについて検討する.過去の研究では,学習者の認知的負荷の増大に伴ってPCAへの注意が低下するという点やPCAの存在感の欠如の問題点が指摘されている.そこで本研究では,PCAに対する社会的存在感を促進させる方法として,複数のPCAの利用が説明活動におけるインタラクションを活性化できるかを実験的に検討した.実験の結果,複数のPCAを用いた学習者は,単独のPCAを用いた学習者よりも概念に対する深い理解を構築することができていた.更に,複数のPCAを用いた場合,(1)ポジティブな励ましを行うエージェントと(2)具体的な説明の仕方を教示するエージェントに役割を分散させた場合において,インタラクションが活性化することが明らかになった.異なる役割を担う複数のPCAを利用した本研究の結果は,協同学習支援システムの設計におけるデザイン手法に重要な示唆を与える.
著者
堀内 陽介 井上 智雄 岡田 謙一
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.567-576, 2011

Theatrical play is the composite art which involves producers in different charge. In planning production phase, sharing the same image of theatrical space among the producers is not easy. To assist the multiple users' work in planning, this paper proposes a system that actually reproduces a theatrical stage through two spaces: one is a physical miniature stage presented on the tabletop interface, and the other is a virtual theatrical stage linked with the miniature stage which reflects actions on the miniature stage in real time. By reproducing the actual stage situation through the two spaces, users become easy to create and share a picture of the whole theatrical stage.
著者
平井 佑樹 櫨山 淳雄 井上 智雄
出版者
教育システム情報学会
雑誌
教育システム情報学会誌 (ISSN:13414135)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.62-73, 2010 (Released:2018-07-28)
参考文献数
15
被引用文献数
1

The authors have developed a learning support system based on question-posing by learners and have applied it to a distributed asynchronous environment since 2006. Based on the results of application, they enhanced the system. In this paper, they analyzed the results of application in terms of effectiveness of the system to a distributed asynchronous environment. As the analytical results, they found the learners who actively posed questions marked higher score of the final examination than the learners who inactively posed, and that the learners who actively posed high quality questions increased the score of the midterm examination to the score of the final examination than the learners who inactively posed. In addition, they found providing the system motivated learners to learn.
著者
堀内 陽介 竹内 達史 西濱 大貴 井上 智雄 岡田 謙一
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN)
巻号頁・発行日
vol.2010-GN-75, no.13, pp.1-8, 2010-03-11

演劇創作は,音響や照明,舞台美術,空間デザインなど様々な芸術表現の組み合わせで協調的に作られる総合芸術であるが,実際の演劇で用いる舞台演出などを考える場合,演出を総合的に頭に思い描きながら作業を行うのは容易ではない.そこで本稿では,演劇創作活動の中でも音響や照明の演出プランニングに着目し,実際の舞台をイメージしやすい環境である,演劇における演出プランニングを支援するマルチユーザテーブルトップインタフェースを提案する.このシステムでは,テーブル型のタッチパネル上に役者を模した人形や舞台装置の模型を配置して小型の舞台を構築し,ユーザに対して舞台のイメージ支援を行う.各ユーザはこの小さな舞台空間上で演出を詳細に再現出来る.また,使用しているテーブルトップインタフェースの特性である操作者識別を活かし各ユーザの役割ごとにシステムからのフィードバックを変えることで,テーブルトップ上での複数人による同時な操作を効率的に支援する.さらに,考案した演出をシステムに保存して CUE シートの自動生成を行うことが出来る.評価実験から,提案システムの演出プランニングにおける有用性を確認した.
著者
佐々木 孝輔 平田 章 井上 智雄
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.260-269, 2016-01-15

イラストは,読者を引きつけると同時に文書などの可読性を高めることができるが,だれでも作成できるものではないため,需要が大きいコンテンツの1つである.従来,高品質かつ高価格で,イラストを必要とするクライアントの要望に応じ最適なイラストがプロのイラストレータによって提供されてきた.これに対して本研究では,クライアントの要望に則したイラストを描画能力を問わない複数人で作成することを目的とし,線画イラスト作成をマイクロタスク化し,それをクラウドソーシングにより実行する線画イラスト生成手法を考案した.本手法では1枚の写真を原図とし,複数の一般ワーカが原図を見ながら少しずつ線を描き加えることで,1枚の線画を生成する.本手法による線画イラスト生成の実験から,実際に線画イラスト生成が可能であることが確認できた.Illustration is a key factor to attract document readers. However not everybody can make it in good quality. Thus illustration has high demand. Although conventionally clients request skilled creators to draw illustrations with good rewards, there exists huge needs for less expensive illustrations. We propose a novel method of generating such illustrations by crowd-sourced microtasks. In this method, a basic drawing is generated by unskilled crowd workers from one photograph. Experimentation to study the feasibility of the proposed method indicated positive result.
著者
平井 佑樹 井上 智雄
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.72-80, 2012-01-15

プログラミング教育では,プログラム言語の文法やプログラム書法を理解する能力とアルゴリズムを組み立てる能力が要求される.プログラム言語の文法や簡単な例題を理解することができても,実際にプログラムを作成するときにはいくつかのつまずきが発生する.プログラミングを行う方法の1つとして,2人1組になって行うペアプログラミングがある.ペアプログラミングによるプログラミングは協調作業であるが,これはプログラミング学習の方法としても用いられている.本研究では,プログラミング学習時のペアプログラミングの成功事例と失敗事例を比較分析した.分析では作業中の会話に着目し,失敗事例の方が発話が長いこと,説明の繰返しが多いこと,一方的な発話が多いことが分かった.この知見は,ペアプログラミングにおいて協調作業がうまく進んでいるかどうかを判断する手がかりを提供し,協調作業の状態推定に有効であると考えられる.
著者
塩原 拓人 井上 智雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌デジタルコンテンツ(DCON) (ISSN:21878897)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.20-28, 2014-08-20

近年1人で食事することを余儀なくされる「孤食」が問題となっている.孤食者支援のための従来研究では,参加者全員が食事をすることが想定されてきた.これに対して本研究では,これまでに考慮されていない,遠隔地間の一方だけが食事をする状況があることに着目した.そして,非食事者の代わりに食事行動をとるインタフェースエージェントによる疑似的な共食を実現した.Surrogate Dinerと呼ぶこのインタフェースエージェントの食事行動は,実際の共食場面の映像分析に基づいている.評価実験では,Surrogate Dinerを用いる共食条件,食事行動のないインタフェースエージェントを用いる会話エージェント条件,相手の実映像を用いる会話映像条件の3条件を比較し,質問紙とインタビューから,孤食者支援についてSurrogate Dinerの有効性が確認された."Eating alone" has been one of the serious problems in our society as more elderly people live alone, more people work and live separately, and people's rhythms of lives become more diverse. Although all the existing research assumed that every participant of social dining had a meal, we found the setting that only a part of the participant has a meal is probable and acceptable for solving the problem. Surrogate Diner, an interface agent that performs eating behavior as a surrogate for a non-eating participant, is introduced in this paper. The eating behavior of Surrogate Diner is based on the actual eating behavior from recorded videos of co-dining. Evaluation study was conducted with the Surrogate Diner condition, the conversational agent condition, and the conversational video condition. Effectiveness of the proposed Surrogate Diner was indicated regarding the alleviation of "eating alone" problem from a questionnaire and interview.
著者
瀬戸 優貴 野口 康人 登坂 繭 井上 智雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MVE, マルチメディア・仮想環境基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.554, pp.55-60, 2008-03-15
被引用文献数
5 2

本研究では,食事時における実物体の履歴情報からユーザに対し適応的に品目の推薦を行うシステムを開発している.本システムでは,ユーザの箸と食卓上の皿との接触情報を食事行動の履歴として取得し,ここからユーザの食事の進行状況と現在食べたいと思っている品目を推定する.そして,その推定情報を基にユーザに対し追加品目の推薦を行う.
著者
高津 良介 牧 宥作 権藤 聡志 井上 智雄 岡田 謙一
雑誌
研究報告デジタルコンテンツクリエーション(DCC)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.42, pp.1-8, 2015-01-19

オーケストラをはじめとした大人数の演奏形態は身近な存在となり,アマチュアを中心としたオーケストラも多数見られるようになった.大人数による音楽演奏の場において,指揮者の存在は演奏をまとめる上で重要である.指揮者に求められる専門知識の敷居は高く,アマチュアオーケストラにおいては指揮者不足が問題として挙げられている.その状況に焦点を当てた,指揮者不在でも演奏を成立させるための仮想指揮者の研究が存在する.しかし,それらの仮想指揮者は人間の指揮ほど多種多様な表現を行えないため,演奏内容を豊かにするだけの指揮能力を持たせることは困難である.そこで我々は,演奏者一人一人に指揮を行う環境を提案する.本システムでは,演奏者全員の面前にタブレット端末を配置し,これに演奏者の役割に応じた個別の仮想指揮者を表示する.それぞれの仮想指揮者のタイミングは同期を取る.このシステムによって,高い指揮能力を持つ仮想指揮者を実現し,指揮者不在でも演奏しやすい環境を提供できることが期待できる.Instrumental performances which consist of a large number of people, such as the orchestra, have been familiar. In addition, orchestras consist of many amateur musicians are often seen. When music is played by a large group, what becomes most essential in order to put together a performance is the existence of the conductor. A conductor is required of a wide range of expertise, and shortage of conductors due to this load, has been a serious problem within amateur orchestras. Focusing on such situations, there are studies using a Virtual Conductor in order to make performances workout in the absence of the conductor. Unfortunately, these Virtual Conductors obviously lack variety of expressions than human conductors, so it is difficult for the conductor to have conducting abilities to enrich the performance. Therefore, we suggest an environment where each performer can have one conductor to conduct them. In this system, tablets are placed in front of each player. Separate Virtual Conductors are in display that could provide personalized directions that suit their role in the orchestra. Timing of each Virtual Conductor is synchronized. This system can realize a Virtual Conductor with high conducting ability, and is expected to make possible to provide supportive playing environments for amateur players without the conductor.
著者
平井 佑樹 井上 智雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.190, pp.61-66, 2011-08-19

プログラミングを行う方法の1つとして,2人1組になって行うペアプログラミングがある.ペアプログラミングによるプログラミングは協調作業であるが,これはプログラミング学習の方法としても用いられている.本研究では,プログラミング学習時のペアプログラミングの成功事例と失敗事例を比較分析した.分析では作業中の会話に着目し,失敗事例の方が発話が長いこと,説明の繰り返しが多いこと,一方的な発話が多いことが分かった.この知見は,ペアプログラミングにおいて協調作業がうまく進んでいるかどうかを判断する手がかりを提供し,協調作業の状態推定に有効であると考えられる.
著者
北原 圭吾 井上 智雄 重野 寛 岡田 謙一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.3054-3062, 2006-11-15
被引用文献数
9

情報通信技術の発達により,初等教育などでは,野外での学習活動にも情報機器が利用されるようになってきているが,学習を深めるためには,野外での活動はもちろん,それと対となる事前事後の学習が重要であると考えられる.本論文では,野外で集めた動植物のデータを使って協調的に復習を行うためのテーブルトップインタフェースについて報告する.写真や草花といった実物体の周りに動植物の成長や周辺の関連データといった電子データを表示させるなどして,現実空間における学習と情報空間における学習を組み合わせることで,両者の利点を活かした学習を行える.協調学習という観点から考えると,効率的なデータの受け渡し手法が必要であると考えられるため,数種類のデータ受け渡し機能を実装した.評価実験の結果,情報空間における学習を取り入れることで,より短時間で必要な情報を把握できること,実装した情報の受け渡し手法が有用であることが分かった.We focused on face-to-face collaborative learning in a classroom using spatio-tempral contents, which is typically conduted after outdoor class in an elementary school. We have developed a tangible collaborative learning support system that uses real objects and associating spatio-temporal contents. Temporal data sequence that shows growth of a plant and geographic data collection are presented by the system. Methods for exchanging contents on the system that are thought to be suitable for face-to-face collaborative learning have been also implemented. Better information accesibility is proved to be provided by the system than conventional pen and paper method.
著者
高津 良介 牧 宥作 権藤 聡志 井上 智雄 岡田 謙一
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN)
巻号頁・発行日
vol.2015-GN-93, no.42, pp.1-8, 2015-01-19

オーケストラをはじめとした大人数の演奏形態は身近な存在となり,アマチュアを中心としたオーケストラも多数見られるようになった.大人数による音楽演奏の場において,指揮者の存在は演奏をまとめる上で重要である.指揮者に求められる専門知識の敷居は高く,アマチュアオーケストラにおいては指揮者不足が問題として挙げられている.その状況に焦点を当てた,指揮者不在でも演奏を成立させるための仮想指揮者の研究が存在する.しかし,それらの仮想指揮者は人間の指揮ほど多種多様な表現を行えないため,演奏内容を豊かにするだけの指揮能力を持たせることは困難である.そこで我々は,演奏者一人一人に指揮を行う環境を提案する.本システムでは,演奏者全員の面前にタブレット端末を配置し,これに演奏者の役割に応じた個別の仮想指揮者を表示する.それぞれの仮想指揮者のタイミングは同期を取る.このシステムによって,高い指揮能力を持つ仮想指揮者を実現し,指揮者不在でも演奏しやすい環境を提供できることが期待できる.