著者
飛永 浩一朗 南條 真奈美 野上 英二 小八重 明美 横田 美穂 河野 洋介 村井 史樹 高村 三富美 川村 浩 坪根 愛 押川 達郎 井手 睦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C0945, 2005 (Released:2005-04-27)

【はじめに】体幹筋は脊柱の固定作用や安定化に重要な役割を持ち、特に姿勢保持に脊柱起立筋の筋持久力は大切である。それを評価する背筋の姿勢保持テストとしてKraus-WeberテストとSorensenのTrunk holdingテストが代表されるが、二者を比較した報告はみられない。今回、その姿勢保持時間と筋活動量について比較検討した。【対象】腰痛既往歴のない健常成人男性10名、女性10名を対象とした。平均年齢男性27.5±4.7歳、女性23.8±2.3歳であった。【方法】測定はMMT(腹筋と背筋)、SorensenのTrunk holding test(以下THT)とKraus-Weber test(以下KWT)で背筋群を測定する腹臥位の2方法(以下:体幹挙上テスト・下肢挙上テスト)を実施した。各テストにおける持続時間は各姿勢保持困難となるまでの時間を計測した。次にTHTと体幹挙上テストと下肢挙上テストの3方法において脊柱起立筋の筋活動量を求めた。筋電計にはNicolet社製VikingNT表面筋電計を用い、表面電極は第1・2腰椎棘突起間両外側3cmに貼り付け、各肢位の安定が得られた後の10秒間の積分筋電図から40m秒当たりの平均筋活動量を算出した。各被験者に対し測定を二回行い、再現性を確認した。統計学的処理には各運動の持続時間を比較するためt検定、THTと体幹挙上テストと下肢挙上テストの筋活動量の関係をみるためにPearsonの相関分析を用い、いずれも有意水準は5%とした。【結果】1)THTでは女性が男性より有意に持続時間が長かった(P<0.05)のに対して、体幹挙上・下肢挙上テストでは持続時間に有意な男女差は認められなかった。2)THTと体幹挙上・下肢挙上テストでの持続時間は男女とも有意にTHTの方が長かった(P<0.01)。平均筋活動量はTHT、下肢挙上テスト、体幹挙上テストの順に高い値を示した(P<0.01)。また、THTと体幹挙上テストもしくは下肢挙上テストの筋活動量の間に有意な相関が認められた。【考察】THTは背筋全体、体幹挙上テストは上部背筋、下肢挙上テストは下部背筋の筋持久力のテストである。今回の結果より持続時間が男女ともKWTよりTHTの方が有意に長かったこと、運動開始時の筋活動量はKWTの方がTHTより有意に高かったことの2点より、KWTよりTHTの方が背筋にかかる負荷は小さいことが推察された。さらに、測定肢位がTHTは静的保持姿勢であるのに対しKWTは動的保持姿勢であるため姿勢保持に必要とされる背筋以外の筋群の活動量は異なりそれらが姿勢保持時間に影響したと考えられる。つまり、同じ背筋の筋持久力評価であっても測定開始からの背筋への負荷量は異なり、評価している筋肉の量あるいは走行が違っていることが示唆されたと言えよう。今後は目的に応じて二種の評価法の使い分けを行っていきたい。
著者
喜瀬 真雄 平山 厳悟 井手 睦
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.296, 2010

【目的】<BR>障害者水泳において理学療法士(以下PT)は競技会でクラス分け、合宿でコンディショニング活動を行なっている。これらの活動におけるPTの役割を明確にするには、スポーツ現場の要望を知る必要がある。そこで今回、九州身体障害者水泳連盟登録者(以下選手)及び障害者水泳指導者(以下指導者)を対象に、PTへの要望を調査したので報告する。<BR>【対象・方法】<BR>対象は選手113名(肢体不自由82名、視覚・聴覚障害31名)、指導者22名。調査は自記式郵送法で実施。調査項目は、PTへの要望について代表的な項目を複数設定し要望の有無を質問した。その他の要望は自由記載とした。またPTという職種についての知識の有無、さらに選手には競技レベルも質問した。結果は項目別に集計し、選手・指導者及び上位選手(日本選手権出場)・下位選手(九州選手権出場)の各2群間でχ二乗検定を用い比較した。対象者には文書にて調査の趣旨を説明し同意書に署名を得た。<BR>【結果】<BR>67名より回答があり内、解析に有効であったのは57名であった。PTという職種については52名が知っていると答えた。要望は総数231件、上位要望は「禁止常用薬・サプリメントの教示」32件、「傷害予防方法の教示」26件、「チーム帯同での泳力指導」26件。その他は、選手から競泳特性の理解、指導者から障害特性についての講習会開催などの要望があった。選手・指導者の比較では「自身のクラスの説明」について選手の方が指導者より有意に多かった。上位・下位選手の比較では全項目において有意差は認めなかった。<BR>【考察】<BR>PTに対する要望は「禁止常用薬・サプリメントの教示」が最も多かった。柴崎は「障害者水泳選手は常用する薬剤が多い」と報告している。またアンチドーピングについての啓蒙が進んでいることや練習場面で主に関わっている医療関係者はPTであるため、このような結果になったと考える。PTは薬物問題の窓口となり専門職の介入を促すことができると思われる。次に多いのは「傷害予防方法の教示」であった。三浦らは「スポーツ分野では、医学的リハビリがPTの役割と理解されている」としている。またPTは障害特性を専門としていることからこのような結果となったと考え、コンディショニング活動を強化していく必要があると考えた。「チーム帯同での泳力指導」も多く選択された。自由記載に競泳特性の理解や障害特性の講習会開催とあることから、PTが競技特性も熟知し選手・指導者と競技・障害特性を共有することで各選手の泳力向上が図れるのではないかと考える。選手と指導者の比較では「自身のクラスの説明」に有意差がみられた。クラス分けの結果次第で競技成績が左右されることから、選手に要望が多かったと考える。今回の調査から、薬物問題の窓口やコンディショニング活動の充実、競技指導への働きかけといったPTに対する要望の傾向がわかった。
著者
矢木 健太郎 井手 睦
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.801-806, 2017 (Released:2017-12-28)
参考文献数
12

本研究はホスピスをはじめとする緩和ケア病棟に入院している患者の希望について,希望の種類や希望のうち外出・外泊についてどのくらいの患者が可能であったかを調査すること,患者の離床耐久性(離床可能時間)と予後予測スコア(Palliative Prognostic Index score:PPI値)との関係性を明らかにし,離床可能な時間やその時期についての参考値を検討することを目的とした.対象者は76名であり,半数の患者で外出や外泊希望があり,その7割の患者が外泊もしくは外出できた.また,延べ480週分のPPI値と離床時間を収集し分析した結果,PPI値と離床耐久性には負の相関関係を認め,相関係数は−0.62であった.Receiver Operating Characteristic(ROC)曲線を用いてカットオフ値を推定した結果,PPI値3.5以下で60分以上の離床を目指すことが可能,4.5以下で30分以上の離床を目指すことが可能,5.5以下では少しでも離床練習が可能,6以上となると離床自体が難しくなってくるという結果を得た.
著者
石倉 健二 高島 恭子 高橋 信幸 井手 睦美 Kenji ISHIKURA Kyouko TAKASHIMA Nobuyuki TAKAHASHI Mutsumi IDE
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.159-165, 2008-03

自閉症の大きな特徴の一つである「反復的で常同的な様式」は「同一性保持現象」とも呼ばれ、問題行動とみなされることも多い。本研究はこの「同一性保持現象」について、自閉症児の母親15名に質問紙調査を実施し、以下の結論を得た。一つ目は、「単純反復運動」で特徴づけられる「常同行動」と、「固執」「配列」「質問嗜好」「空想」で特徴づけられる「こだわり行動」はその出現の様相が異なることが示された。このことから、「常同行動」と「こだわり行動」は別々の機能的側面を有することが示唆された。二つ目は、「一週間後の予定の理解」のある者の方がその他の者よりも、「こだわり行動」が多いことが示された。「時間的見通し」が「こだわり行動」に影響を与える独自の要因であるのか、言語能力や「時間的なこだわり」を反映するものなのかは定かではなく、今後の更なる検討が求められる。