著者
浅利 裕伸 池田 敬 岩崎 亘典 岩下 明生 江成 はるか 江成 広斗 奥田 加奈 加藤 卓也 小池 伸介 小寺 祐二 小林 喬子 佐々木 浩 姜 兆文 杉浦 義文 關 義和 竹内 正彦 立木 靖之 田中 浩 辻 大和 中西 希 平田 滋樹 藤井 猛 村上 隆広 山﨑 文晶 山田 雄作 亘 悠哉
出版者
京都大学学術出版会
巻号頁・発行日
2015-03-25

希少種の保護や過増加した在来種・外来種の対策など、野生動物をめぐるさまざまな課題に応えるフィールド調査法。各動物の食性や個体数に関する既存研究をまとめ、地図の読み方やフィールド機材の使い方、糞や足跡をはじめとする動物の痕跡の識別法を具体的に示し、得られた情報から食性や個体数、生息地を評価する方法を体系的に解説する。
著者
岡部 貴美子 牧野 俊一 島田 卓哉 古川 拓哉 飯島 勇人 亘 悠哉
出版者
The Acarological Society of Japan
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.1-11, 2018-05-25 (Released:2018-06-25)
参考文献数
30
被引用文献数
4 4

マダニ類は様々な脊椎動物の寄生者で、重要な害虫でもある吸血生物である.化学防除に対する懸念から,生物防除によるマダニ個体群およびマダニ媒介疾患拡大の制御への期待が高まっている.本研究では,実験室内でオオヤドリカニムシ(Megachernes ryugadensis)によるマダニの捕食を初めて観察した.アカネズミ類に便乗しているカニムシ成虫および第三若虫を採集し,シャーレ内で実験した.これらのカニムシはチマダニ属の幼虫,オオトゲチマダニ若虫および雌雄成虫を捕食した.カニムシは概ね,幼虫を与えられた最初の一日間に,2,3頭を捕食した.カニムシ成虫の雌雄間で,初日の捕食数および与えられた幼虫を食べ尽くすまでの日数には差がなかった.またマダニの若虫,雄成虫の捕食に費やす日数に差はなかったが,カニムシ雄成虫は雌成虫よりも短期間でマダニ雌成虫を捕食した.供試数は少ないが,カニムシ第三若虫もマダニ幼虫および若虫捕食において同様の傾向を示した.オオヤドリカニムシのマダニ天敵としての評価のためには,マダニとカニムシの生活史特性,小型げっ歯類および巣内の生物相への影響に関する更なる研究が必要である.
著者
岡部 貴美子 亘 悠哉 矢野 泰弘 前田 健 五箇 公一
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.109-124, 2019 (Released:2019-07-01)
参考文献数
116
被引用文献数
1

現代の新興感染症の75%は野生動物由来と推測され、西日本で患者数が増加している重症熱性血小板減少症候群(SFTS)への懸念が広がる現状から、マダニ媒介感染症対策を視野に入れた野生動物管理について、国内外の研究および関連制度の動向についてレビューした。マダニの多くは宿主範囲が広く、感染した野生動物宿主から病原体を得て、唾液腺を介して吸血初期からヒトへと病原体を媒介していることが明らかになってきた。また国外の研究では、宿主の種の多様性が高いと、希釈効果によって感染症リスクが低下する可能性が示唆されている。しかし感染症拡大には単一の要因ではなく、気候変動、都市化、ライフスタイルの変化など様々な要因が関与していると考えられる。これらに対応することを目的として国際的にワンヘルスなどの学際的な取り組みが実施されているが、必ずしも有効な野生動物管理手法の開発に至っていない。今後は、異なるセクターの協働により、科学的知見に基づく取り組みを進めることが必要である。
著者
三條場 千寿 亘 悠哉 松本 芳嗣 宮下 直
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.1-8, 2021-03-25 (Released:2021-03-19)
参考文献数
76
被引用文献数
1

Toxoplasmosis is a zoonosis caused by Toxoplasma gondii, which infects almost all mammals and birds. Felids are definitive hosts that shed oocysts of T. gondii with their feces, which is then transmitted by oral ingestion. The study analyzed the prevalence of T. gondii infection in free-ranging cats on Tokunoshima Island, Kagoshima Prefecture from 2017 to 2018, and found a seropositivity rate of 47.2% (59/125). This result indicated the importance of understanding and managing the behavioral patterns of felids, including the free-ranging cats. Toxoplasmosis is also an important food-borne parasitic disease due to its ability to be transmitted by consuming undercooked meat of infected animals. Considering that all developmental stages of T. gondii, including oocyst, tachyzoite, and cysts, are capable of infection, a One Health approach that considers the health maintenance of humans, animals, and the environment is important for the control of toxoplasmosis.
著者
亘 悠哉 永井 弓子 山田 文雄 迫田 拓 倉石 武 阿部 愼太郎 里村 兆美
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.28-35, 2007-05-31 (Released:2018-02-09)
参考文献数
17
被引用文献数
1

2000年5月から2006年11月までの間に、奄美大島の森林で採集した135個のイヌの糞の内容物分析を行った。出現頻度では、アマミノクロウサギが45.2%、アマミトゲネズミが23.7%、ケナガネズミが20.0%と高い値を示し、これらの種がイヌの影響を最も受けやすい種であると考えられた。これらの種は特別天然記念物および天然記念物に指定されており、イヌ対策の重要性はきわめて高いといえる。奄美大島では現在までに森林でのイヌの繁殖は確認されていない。この理由として、奄美大島では、大型の餌動物が少なく、繁殖に十分な餌資源を得られないことが考えられた。一方で毎年多数のイヌが人間の管理下を離れている。このような状況は、ペット管理のモラルが森林のイヌの個体数、ひいては在来種への影響を大きく左右することを示唆している。これを受けて、本論文ではイヌ対策における方策を以下に提言する。1)長期的な方策:森林へのイヌの供給を絶つための方策。ペットや猟犬の管理に関わる現行法や罰則の周知、適切な法の運用、飼い主のモラル向上のための普及啓発の推進などが強く望まれる。これらは森林のイヌを減少させる根本的な解決策であり、最も優先順位の高い方策である。2)短期的な方策:すでに森林に生息するイヌに対する方策。イヌや糞などの目撃情報の提供先の明確化、情報提供後のすみやかな捕獲が可能なシステム作りが重要である。
著者
木元 侑菜 勝原 涼帆 馬場 友希 亘 悠哉
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.23-27, 2021 (Released:2021-03-10)
参考文献数
16

鹿児島県奄美群島の喜界島において,2頭のコウモリ類の死体が発見された.2019年8月31日に初めて発見された死体は雄で,前腕長34.9 mm,陰茎長11.5 mmであった.本死体はオオジョロウグモNephila pilipesの網に捕獲されており,内臓の大部分がクモに摂食されていた.2019年9月15日に発見された死体も雄であり,前腕長32.2 mm,陰茎長11.2 mmであった.この死体はゴルフ場の事務所内で発見された.外部形態や頭骨を用いた種同定の結果,2例ともこれまで喜界島に生息記録のなかったアブラコウモリPipistrellus abramusと判定された.またバットディテクターによる音声調査により,アブラコウモリと思われる音声が島全域から確認された.
著者
安積 紗羅々 岡 奈理子 亘 悠哉
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.85-91, 2019 (Released:2019-08-23)
参考文献数
15

東京都の御蔵島では近年,ノネコFelis silvestris catusがオオミズナギドリCalonectris leucomelasの個体群に大きな捕食圧を与えていることが問題になっている.御蔵島には外来のクマネズミRattus rattusとドブネズミR. norvegicusが侵入・定着している.ノネコの代替餌であり中間捕食者ともなりうるこれらの外来ネズミ類の分布や生態を把握することは,ノネコ問題を考える上で重要であると考えられるが,そうした知見は今までにほとんどなかった.本研究では,オオミズナギドリが繁殖のために滞在している9月と,滞在していない12月の2回にわたって,8ヶ所の調査ライン上でカゴ罠を用いたネズミ類の捕獲調査を行い,その生息状況を調べた.9月には,ドブネズミは主に低標高の地点で出現し,クマネズミは低標高から高標高の地点にかけて広く出現した.一方,12月には,ドブネズミは高標高の地点にも出現したが,クマネズミは全体的に100トラップナイト当たりの捕獲数(CPUE)が減少した.2種のネズミは分布やCPUEが標高や季節によって変化し,その変化のしかたは2種のあいだで異なっていた.この結果は,御蔵島においてドブネズミとクマネズミが異なる生態的特性をもつことを示唆する.
著者
亘 悠哉
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.27-38, 2011 (Released:2011-07-27)
参考文献数
91
被引用文献数
2

外来種の侵入による生物多様性・生態系機能の低下,および経済被害はきわめて甚大で,各地域特有の自然や暮らしを脅かす切実な問題となっている.こうした問題を解決するために,各地で外来種駆除が実施されており,近年では根絶成功例や在来種の回復など,駆除による対策の有効性が成果として現れてきている.一方で,たとえ外来種を減少させることができたとしても,インパクトを受けていた生態系が必ずしも回復するとは限らず,時には状況がさらに悪化してしまう場合もある.このような知見は個々の論文で報告されてきたものの,全体像が整理され示されたことはこれまでになかった.本総説では,このような知見を整理し,外来哺乳類の影響の環境依存性や非線形性,ヒステリシス,外来種間の相互作用などを,意図しない現象の理由として挙げ,そこには,食性のスイッチングやアリー効果,外来種の侵入と生息地改変の複合効果,メソプレデターリリースなどのプロセスが関わりうることを紹介した.また,それぞれのプロセスに応じた対処法として,在来種の回復の評価プロセスの導入や生息地管理,他の生物の管理などをリストアップした.以上のような対処法が取り入れられた総合的な外来種対策の実践例は,近年報告が増えはじめてきた段階である.このような個々の実践例を積み重ね,対処法の有効性を検証していくことは,個々の地域の問題を解決するだけでなく,さらなる実践例を生み出す上でも重要な役割を果たしていくであろう.
著者
玉那覇 彰子 向 真一郎 吉永 大夢 半田 瞳 金城 貴也 中谷 裕美子 仲地 学 金城 道男 長嶺 隆 中田 勝士 山本 以智人 亘 悠哉
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.203-209, 2017 (Released:2018-02-01)
参考文献数
10
被引用文献数
3

沖縄島北部地域(やんばる地域)を東西に横断する県道2号線および県道70号線の一部区間は,希少な動物の生息地を通過する生活道路となっており,ロードキルの発生が問題となっている.この県道を調査ルートとして,2011年5月から2017年4月までの6年間,ほぼ毎日,絶滅危惧種のケナガネズミDiplothrix legataのルートセンサスを行い,生体や死体の発見場所を記録した.6年間の調査において,ケナガネズミの生体75件,ロードキル個体47件の合計122件の目撃位置情報を取得した.その記録に基づき,ヒートマップを利用して調査ルートにおけるケナガネズミのロードキル発生のリスクを表現することで,リスクマップを作製した.また,生体とロードキル個体の発見数からロードキル率を算出し,現在設定されているケナガネズミ交通事故防止重点区間(以下,重点区間とする)におけるロードキルの発生状況を評価した.リスクマップと重点区間を照合すると,交通事故リスクの高いエリアのいくつかが,重点区間の範囲外にあることが明らかになった.また,重点区間のロードキル率は他の区間と同様のレベルであった.本研究で提示したリスクマップやケナガネズミの行動記録を活用することで,より現実の状況に即した取り組みの展開が可能になると期待される.
著者
亘 悠哉
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.263-272, 2019-10-25 (Released:2019-11-13)
参考文献数
40
被引用文献数
2

近年世界各地で外来種の根絶事例が報告され始め,根絶が対策の目標の現実的な選択肢となってきた.このような先行事例で得られた知見を他の事業にフィードバックさせることができれば,外来種対策の全体の水準を上げることができるであろう.本総説では,根絶までの最終フェーズに到達している奄美大島のマングース対策の概要について紹介し,事業の過程で得られた知見について整理した.それらの知見に基づき,まず外来種対策を5つのフェーズに分割して外来種対策のロードマップの一般化を試みた.そして,フェーズごとに刻々と変化する外来種個体群の状況に応じて,対策の考え方や戦術を変化させる必要性を示した.次に,フェーズを突破するブレイクスルーを促進させる対策のガバナンスのあり方として,次々生じる問題の認識とそれに対応した対策が促進されるサイクルの重要性を示した.そして,この実現のためにも,関係者が主体的に参画する連携体制が必要であることを示した.最後に,外来種対策を進める際の実用的なチェックリストをフェーズごとに作成した.本総説で提示したロードマップとチェックリストが,各地で行われている外来種対策の考え方や方向性を検討する際のガイドラインとして活用されることが期待される.
著者
兼子 伸吾 亘 悠哉 高木 俊人 寺田 千里 立澤 史郎 永田 純子
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.2302, (Released:2023-09-08)
参考文献数
58

マゲシカ Cervus nippon mageshimae Kuroda and Okadaは、その形態的特徴によって記載されたニホンジカ C. nipponの亜種である。しかし、2014年の環境省のレッドデータブックの改訂に当たっては、亜種としての分布域が不明瞭であり、分類学的な位置づけが明確でないとされている(環境省 2014)。その一方で、近年実施された遺伝解析の結果からはマゲシカの遺伝的独自性が示されつつある。その遺伝的特徴から、マゲシカの分布域を明らかにし、近隣に生息するヤクシカ C. n. yakushimae(屋久島および口永良部島)やキュウシュウジカC. n. nippon(九州本土)との関係性を議論することが可能となってきた。そこで本研究では、マゲシカの遺伝的な特徴やその分布について、先行研究において報告されているミトコンドリアDNAのコントロール領域のデータを中心に再検討を行った。その結果、マゲシカの分布域とされる馬毛島および種子島の個体は、キュウシュウジカだけでなくヤクシカとも明確に異なる塩基配列を有していた。また核DNAやY染色体DNAに着目した先行研究には、マゲシカの生息地である種子島とヤクシカの生息地である屋久島間で対立遺伝子頻度に明確な違いがあることが示されていた。形態については、馬毛島および種子島のニホンジカと遺伝的にもっとも近いヤクシカとの間に明瞭な違いがあることが先行研究によって示されていた。一連の知見から、少なくとも馬毛島と種子島のニホンジカを九州に生息するニホンジカとは明確に異なる保全単位として認識することが適切であること、さらに2島間にもミトコンドリアハプロタイプの頻度をはじめとする集団遺伝学的な差異が存在する可能性が高いことが示唆された。
著者
亘 悠哉
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.27-38, 2011-06-30

外来種の侵入による生物多様性・生態系機能の低下,および経済被害はきわめて甚大で,各地域特有の自然や暮らしを脅かす切実な問題となっている.こうした問題を解決するために,各地で外来種駆除が実施されており,近年では根絶成功例や在来種の回復など,駆除による対策の有効性が成果として現れてきている.一方で,たとえ外来種を減少させることができたとしても,インパクトを受けていた生態系が必ずしも回復するとは限らず,時には状況がさらに悪化してしまう場合もある.このような知見は個々の論文で報告されてきたものの,全体像が整理され示されたことはこれまでになかった.本総説では,このような知見を整理し,外来哺乳類の影響の環境依存性や非線形性,ヒステリシス,外来種間の相互作用などを,意図しない現象の理由として挙げ,そこには,食性のスイッチングやアリー効果,外来種の侵入と生息地改変の複合効果,メソプレデターリリースなどのプロセスが関わりうることを紹介した.また,それぞれのプロセスに応じた対処法として,在来種の回復の評価プロセスの導入や生息地管理,他の生物の管理などをリストアップした.以上のような対処法が取り入れられた総合的な外来種対策の実践例は,近年報告が増えはじめてきた段階である.このような個々の実践例を積み重ね,対処法の有効性を検証していくことは,個々の地域の問題を解決するだけでなく,さらなる実践例を生み出す上でも重要な役割を果たしていくであろう.<br>
著者
永田 純子 亘 悠哉 高木 俊人 立澤 史郎 兼子 伸吾
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.109-117, 2023 (Released:2023-02-09)
参考文献数
57
被引用文献数
1

鹿児島県奄美群島の喜界島には,2002年ごろに鹿児島県本土の養鹿場から人が持ち込んだ15頭ほどのニホンジカ(Cervus nippon)に由来する個体群が国内外来種として野外に定着している.本研究では,これまで不明であった喜界島に定着するニホンジカの起源を明らかにするため,喜界島の野外で採集した糞と駆除個体の肉片サンプルを利用し,ミトコンドリアDNAのコントロール領域における塩基配列998 bpを決定した.そして,他地域のニホンジカの遺伝情報も整理し,遺伝的データに基づいて起源を推定した.一連のデータセットから19ハプロタイプが判別され,喜界島産のハプロタイプは馬毛島産固有のHap1と同一であった.本研究の結果と先行研究の情報なども考慮すると,喜界島のニホンジカは馬毛島を起源とする可能性が高い.喜界島へのニホンジカの移入の問題は,シカの移入と飼育個体の逸出が近年になっても繰り返されていることを示している.シカの移動および逸出が外来生物問題を引き起こすリスクを有することを踏まえた,飼育シカ類の移動と飼育に関する厳格な管理制度の構築が求められる.また,喜界島では,定着したシカによる自然植生への影響も懸念される.できる限り早い段階で,適切な個体群管理を遂行できる体制の構築が望まれる.
著者
徳吉 美国 岡 奈理子 亘 悠哉
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.237-241, 2020 (Released:2020-08-04)
参考文献数
22

イエネコFelis silvestris catusによる在来種の捕食は生物多様性保全における大きな問題である.特に島嶼における鳥類への影響は大きいとされるが,いまだ日本における報告は限られている.伊豆諸島御蔵島において,絶滅危惧種鳥類であるアカコッコTurdus celaenopsの生体1羽を咥えたイエネコを,森林内に設置した自動撮影カメラで初めて記録したので報告する.撮影日は2018年7月24日であり,アカコッコを咥えたイエネコの静止画と,このアカコッコがイエネコに咥えられながら嘴を開閉させる動画が撮影された.これらの映像から判断し,イエネコが他の要因で死んだアカコッコを咥えていたのではなく,イエネコ自身が捕獲したと考えられた.捕獲されたアカコッコは巣立ち前後の雛の特徴を有するため,撮影直前にイエネコがアカコッコの巣内雛もしくは移動能力の低い巣立ち雛を襲ったものと考えられた.アカコッコ以外にもオオミズナギドリCalonectris leucomelasを咥えて運ぶ映像も撮影され,イエネコによる在来鳥類への捕獲リスクの存在が示唆された.今後は,映像記録の蓄積や糞分析などにより,島の在来鳥類へのイエネコの捕殺や捕食の実態の把握が必要である.御蔵島を含め,アカコッコの分布地域には放し飼いや野生化したイエネコが生息している.これらの地域で捕食リスクを低減するために,イエネコの適正飼養や効果的な捕獲対策が求められる.
著者
岡部 貴美子 亘 悠哉 飯島 勇人 大澤 剛士 坂本 佳子 前田 健 五箇 公一
出版者
国立研究開発法人森林研究・整備機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

見えないウイルスが接近する脅威を、可視化することを目的とする。そのためにマダニが媒介するSFTS等をモデルとし、野生動物の個体群と移動分散、マダニの分散への貢献、マダニの増殖にかかる生物・非生物学的要因、個体群の空間スケールを明らかにし、セル・オートマトンモデルによる予測、フィールド調査による検証、細胞レベルの病理試験等を駆使して精度の高い動物リレーモデルを開発する。これにより、マダニと病原体が野生動物にリレーのバトンのように受け渡され、途上の環境変化によってリレーの方向等に変化が生じ、感染症の溢出・拡大が起こるという仮説を検証し、感染拡大メカニズム解明とそれに基づく対策手法開発に資する。
著者
玉那覇 彰子 中田 勝士 山本 以智人 亘 悠哉 向 真一郎 吉永 大夢 半田 瞳 金城 貴也 中谷 裕美子 仲地 学 金城 道男 長嶺 隆
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.203-209, 2017

<p>沖縄島北部地域(やんばる地域)を東西に横断する県道2号線および県道70号線の一部区間は,希少な動物の生息地を通過する生活道路となっており,ロードキルの発生が問題となっている.この県道を調査ルートとして,2011年5月から2017年4月までの6年間,ほぼ毎日,絶滅危惧種のケナガネズミ<i>Diplothrix legata</i>のルートセンサスを行い,生体や死体の発見場所を記録した.6年間の調査において,ケナガネズミの生体75件,ロードキル個体47件の合計122件の目撃位置情報を取得した.その記録に基づき,ヒートマップを利用して調査ルートにおけるケナガネズミのロードキル発生のリスクを表現することで,リスクマップを作製した.また,生体とロードキル個体の発見数からロードキル率を算出し,現在設定されているケナガネズミ交通事故防止重点区間(以下,重点区間とする)におけるロードキルの発生状況を評価した.リスクマップと重点区間を照合すると,交通事故リスクの高いエリアのいくつかが,重点区間の範囲外にあることが明らかになった.また,重点区間のロードキル率は他の区間と同様のレベルであった.本研究で提示したリスクマップやケナガネズミの行動記録を活用することで,より現実の状況に即した取り組みの展開が可能になると期待される.</p>
著者
亘 悠哉 船越 公威
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.331-334, 2013 (Released:2014-01-31)
参考文献数
10
被引用文献数
1

リュウキュウテングコウモリMurina ryukyuanaによる日中ねぐらとしての枯葉の利用を徳之島において3例記録した.これにより,これまでにほとんど情報のなかった本種の自然条件下でのねぐら利用の一端が明らかになった.利用していた枯葉の樹種は,イイギリIdesia polycarpa,アオバノキSymplocos cochinchinensis,フカノキSchefflera heptaphyllaであり,これらに共通する特徴として,1枚1枚の葉が大きく,枯れると椀状に変形すること,また葉のつき方が放射状で,枝折れにより枝先の葉が枯れると複数の葉が合わさって群葉状になるという点が挙げられた.同属のコテングコウモリで記録されている幅広い日中ねぐら場所の利用形態を考慮すると,本種も枯葉以外の様々なタイプのねぐらを利用している可能性は十分に考えられる.今後,今回のような観察情報を蓄積することともに,行動の追跡調査などを進めることで,本種のねぐら利用の全体像の把握につながるであろう.