著者
鵜飼 熊太郎 鈴木 洋一郎 仁木 和昭 高野 元信
出版者
東京大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1993

素粒子・原子核実験では、大量のデータ(〜1TB)を処理する必要がある。通常汎用大型計算機のテープ装置は、オープン・リール型又はカセット型である。これらのテープ媒体で1TBのデータは、5千本以上のテープとなり、その保管場所及びテープの取り扱いが問題となる。またワークステーションの標準的テープ媒体である、Exabyteテープは1本で2.5〜5GBの容量があるが、データ転送速度は500KB/秒と遅く大量データの扱いには問題が多い。このためExbyteテープと同じヘリカル・スキャン方式の、VHSテープを使用した汎用計算機用のテープシステムを構築した。VHSテープは、1本で14.5GBの容量を持ち、公称データ転送速度は2MB/秒で、外部機器との接続はSCSI(Small Computer System Interface)規格である。東京大学原子核研究所の汎用大型計算機(FACOM M-780/10s)にVHSテープ装置を接続してマス・ストレージ・システムとすることを行った。汎用計算機のBMC(Block Multiplexer Channel)とVHSテープ装置のSCSIを接続するために、汎用計算機用インタフェースをティアック社で制作した。次いで各種のテストを実施した。FORTRANプログラムによる、VHSテープのwrite処理は1.7MB/秒、read処理は1.1MB/秒で、オープン・リール型テープよりも高性能である。VHSテープ用に変更したARCSプログラム(ディスク装置上のデータを退避・復元・複写・移行を高速に行うプログラム)による原子核研究所計算機システムのバックアップ(容量8.3GB)作業は、完全に無人状態で1台のVHS装置で約80分で終了した。通常この作業は4台のカセット型テープ装置と30本のテープを使用して、必要なテープを装着・脱着することにより30分程度の時間がかかる。このようにVHSテープ装置が、汎用機用の大容量テープ、マス・ストレージ・システムとして非常に有効であること実証した。