著者
伊藤 研一 清水 一雄 吉田 明 鈴木 眞一 今井 常夫 岡本 高宏 原 尚人 筒井 英光 杉谷 巌 杉野 公則 絹谷 清剛 中駄 邦博 東 達也 野口 靖志 阿部 光一郎 内山 眞幸 志賀 哲
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.310-313, 2014 (Released:2015-02-17)
参考文献数
4

本邦においても進行甲状腺癌に対する分子標的薬が承認され,放射性ヨウ素治療(RAI)抵抗性進行性分化型甲状腺癌に対する治療が新しい時代に入った。しかし,適応患者の選択に際しては,病理組織型,進行再発後の放射性ヨウ素(RAI)治療に対する反応などを適切に評価した上で判断することが重要であり,分子標的薬特有の有害事象に対する注意も必要である。分子標的薬の適正使用に際しては治療による恩恵と有害事象を十分に考慮した適応患者の選択が肝要である。また,未解決の問題に関しては,本邦での臨床試験による検討が必要と考えられる。
著者
吉田 信裕 舟橋 啓臣 今井 常夫 田中 勇治 飛永 純一 山田 二三夫 和田 応樹 束村 恭輔 森田 孝子 高木 弘
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.1296-1300, 1995-07-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
21

1979年から1992年までに,当教室では甲状腺分化癌手術を392例経験したが,このうち20歳未満の若年者は18例であった.若年者症例にも成人と同様,「(1)甲状腺全摘,(2)両側頸部郭清,(3)上皮小体自家移植」の基本術式を原則として施行してきた.腫瘍径やリンパ節転移などを成人と比較,また術後経過についてQuality of lifeを含め追跡し,当教室の術式の是非を検討した.腫瘍径はt2以上が全体の約80%を占めたが,成人は60%に留まった.またリンパ節転移は約90%の症例に認めたが,成人例は76%であった.若年者は手術時に成人より進行していたが,18例のうち1例も再発を認めていない.また術後の合併症は,軽度の上皮小体機能低下症1例と術創ケロイド3例のみであった. 10歳以下の症例の成長・発育にも何ら問題はなく,適齢期に達した女性5症例のうち3例は児を設けている.充分な根治性と良好な術後経過を期待できる,妥当な術式と考えられた.
著者
紫芝 良昌 今井 常夫 神森 眞 栗原 英夫 鳥 正幸 野口 仁志 宮内 昭 吉田 明 吉村 弘
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.51-56, 2017 (Released:2017-04-28)
参考文献数
16

甲状腺の手術の際,発生する合併症の一つである永続性副甲状腺機能低下症の日本全国の症例数を検討した成績はこれまでにない。甲状腺手術を専門とする15病院に対してアンケートを行い2012年~2013年の甲状腺手術について回答の得られた5,445例について術式別に永続性副甲状腺機能低下症の発生率を求めた。その結果,甲状腺片葉切除で0.08%,全摘・亜全摘4.17%,甲状腺全摘と頸部中央および(または)外側区域郭清で5.75%であり甲状腺切除術全体を通じて2.79%に永続性副甲状腺機能低下症がみられた。また,副甲状腺腫瘍手術344例について14例(4.07%)の永続性副甲状腺機能低下症例を得た。この数字を厚労省がん統計資料に当てはめて日本全国での甲状腺・副甲状腺手術による永続性副甲状腺機能低下症の頻度を求めると,年間705人となる。手術のピーク年齢を68歳,手術後の平均存命期間を9年として,すべての甲状腺・副甲状腺手術患者が上記の条件を満たす単純モデルで計算すると,永続性副甲状腺機能低下症の本邦総数は31,725人になる。特発性副甲状腺機能低下症患者数は本邦で900人と推定され全体では32,625人となり人口10万人あたり26人。米国18.3人,デンマーク24人と報告されている。
著者
今井 常夫
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.19-23, 2019 (Released:2019-04-24)
参考文献数
34

甲状腺腫瘍診療ガイドライン2018年版が発行された。初版から8年ぶりの改訂で,作成委員長はじめ委員の考えがよく反映された内容と考えられた。乳頭癌では,リスク分類で1cm以下の腫瘍が超低リスクとして加えられ,非手術経過観察が推奨された。本邦のみのエビデンスを根拠に世界に先駆けてガイドラインに明記されたことは大変意義深い。未分化癌では,初版後に集積された知見からフローチャート・内容が大幅に改訂された。採用されたエビデンスの多くが本邦から発信されたもので,稀少で難治である未分化癌に対するAll Japanの成果をあらわしており,今後もさらに進化する分野であると思う。濾胞癌において微少浸潤型で危険因子がある場合に補完全摘も考慮してよいと改訂されたのは本邦からのエビデンスが根拠になった。髄様癌,放射線治療においても新たなCQや概念が解説され,分子標的薬治療は2018年版から追加された。初版同様,世界から注目される内容のガイドラインになったと思う。
著者
藤本 悦子 安藤 詳子 寳珠山 稔 菊森 豊根 福山 篤司 有田 広美 大島 千佳 永谷 幸子 竹野 ゆかり 間脇 彩奈 佐伯 街子 今井 常夫 阿部 まゆみ
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

リンパ浮腫を来した患肢のリンパ動態とCDTの効果を明らかにし、その成果に基づいて効果的なケアプログラムを開発する。動物とリンパ浮腫患者を対象とした2つのアプローチで行った。前者ではICG-PDEシステムを用い、in vivoでリンパを追跡した。後者ではMR画像から水分の貯留部位を同定した。両者共にCDTを施行し、CDTの効果を明らかにした。両アプローチから、リンパは特異的な分布を示すこと、CDTには浮腫を軽減する効果があることが明らかになった。さらにラットでは、正常時にはないリンパの排出ルートが出現し、これが浮腫の軽減に寄与していることが示唆された。これまでとは違ったケアが考えられた。
著者
舟橋 啓臣 今井 常夫 神部 福司 妹尾 久雄
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

クッシング症候群は、コルチゾルの過剰産生を認める症候群であり、高血圧、耐糖能異常、中心性肥満、満月様顔貌、免疫不全などの重篤な臨床症状を呈する。本邦におけるクッシング症候群の原因の多くは、コルチゾル産生副腎皮質腺腫(CPA=cortisol producing adenoma)であるがその発症機序は明らかにされていない。本研究では、CPA組織において特異的に発現増強あるいは減弱している遺伝子群をRDA(Representational Difference Analysis)を用いて同定し、その機能を明らかにすることによりCPAの発症機序を解明することを目的とした。CPAとそれに隣接する正常副腎から抽出したRNAを用いRDAを行い、CPAに特異的に発現しているcDNA群をクローニングした。その結果、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST-A1)及びDiminuto遺伝子が同定された。これらのmRNAの発現は、CPAに強く認められ、隣接正常副腎では殆ど発現が認めらなかった。副腎由来の細胞株H295Rを用い、GST-A1が副腎細胞の増殖に重要であることをこの酵素の特異的な阻害剤であるエタクリン酸を用いて明らかにした。一方、Diminuto遺伝子は、コレステロール産生に関わる酵素をコードすることが報告され、我々は、この発現が副腎皮質刺激ホルモンにより増加することをラットを用いた研究より初めて明らかにした。この結果は、Diminuto遺伝子産物による副腎におけるコレステロール産生がコルチゾル産生に重要であること示唆した。