著者
小松 知未 小山 良太 小池(相原) 晴伴 伊藤 亮司
出版者
東北農業経済学会
雑誌
農村経済研究 (ISSN:2187297X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.116-124, 2015-11-01 (Released:2019-09-01)
参考文献数
9

本稿では,福島県における米全量全袋検査の運用実態と検査結果を詳細に整理した上で,制度上の位置づけとその問題点を明らかにした.第一に,福島県が米全量全袋検査を実施していることが,放射性物質検査に関する制度の枠組みの中でどのように位置づけられているかを整理した.第二に,福島県における検査の実施体制と検査結果を詳細にまとめた.第三に,検査結果の活用実態を確認した.これらを総合的に考察した結果,制度上の問題点と見直しの方向性は下記のようであるといえる.問題点は,原子力災害対策本部のモニタリング検査の指針において米全量全袋検査の位置づけが定められておらず,福島県のみが自らの判断で検査を計画に組み込んでいることである. 2012年度に福島県が実施した米全量全袋検査の結果から,原子力災害対策本部の指針レベルの体制では,基準値超の発見と迅速な対応が困難であったことが明らかになった.このことから,現行制度を見直し,原子力災害対策本部が総合的に判断して,検査エリアを指示する枠組みを構築するべきであるといえる.また,現状の制度では位置づけられていない飯米・縁故米の検査体制のあり方を検討すべきであるといえる.
著者
堀部 篤 伊藤 亮司
出版者
東京農業大学農業経済学会
巻号頁・発行日
no.124, pp.23-35, 2017 (Released:2017-08-03)

2009年の標準小作料制度廃止後,円滑な地代交渉を行うために,公的機関(農業委員会や市町村など)が先導して,従来の標準小作料に変わる参考賃借料を算定・公表している地域がある。本稿では,その中でも2014年産米価格の下落を受けて参考賃借料制度を導入した新潟県村上市を対象に,当制度の導入に至る過程および公的機関の果たした役割について考察した。村上市において当制度が導入された要因としては,(1)地代負担が過重だったこと,(2)特に深刻な地域で制度導入の実績をつくり,それを他地域に波及したこと,(3)行政による支援があったことが明らかとなった。また,当参考賃借料制度の導入の効果については,地代の低下と,地代の統一による担い手間の借地交換や畦畔除去による圃場大区画化が確認された。
著者
張 鎮奎 伊藤 亮司 青柳 斉
出版者
富民協会
雑誌
農林業問題研究 (ISSN:03888525)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.386-397, 2012-12-25

牛乳消費の減少傾向に加えて,生乳価格の低迷と飼料価格の上昇によって,近年,酪農経営は厳しい経済環境に直面している。乳牛飼養農家戸数は,90年の6万3,300戸から2000年に3万3,600戸,2010年には2万1,900戸までに激減した。乳牛飼養頭数では,92年の2,082千頭を最大として以後減少に転じ,2000年に1,765千頭,10年には1,484千頭へと減少している。さらに牛乳生産量では,96年の8,659千トンが最大で,2000年8,415千トン,09年7,881千トンといように,生産性(1頭当たり生乳生産量)の上昇によって飼養頭数ほどではないものの生産量も徐々に減少してきている。このような酪農家,飼養頭数の減少は,酪農協の解散や組織の再編を促してきた。農水省「農協数現在統計」によれば,酪農協数は70年の650組合から80年574組合,90年520組合,94年には454組合へと減少した。95年度末に農水省の定義変更により,信用事業を兼営する酪農協は総合農協にカウントされた。そこで,95年の酪農協数は383組合になったが,05年258組合,09年198組合へとその後も減少が続く。特に,70~90年の20年間で130組合の減少に対して,95~09年の14年間で185組合も減少しており,近年の減少度合いが特に大きい。
著者
朴 紅 青柳 斉 伊藤 亮司 張 錦女 坂下 明彦
出版者
北海道大学大学院農学研究院
雑誌
北海道大学農経論叢 (ISSN:03855961)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.61-69, 2011-03-03

This is the second of the essays that study the development of organic rice production areas based on the case of Heilongjiang Wuchang City, which is famous for being the breadbasket of quality rice. In this study, Minle Township, which is the core area of organic rice production in Wuchang City, is chosen for the research. This essay also summarizes the process Minle County underwent to become an organic rice growing area. Furthermore, three production and sales organizations are given as examples, and their organic rice management characteristics are analyzed. The first case is the Fengsu Cooperative, which is an extensive and specialized farmersユ cooperative established in 2006 with 450 household members and a 2,000-hectare production base. The next case is the Farming Science and Technology Association, which is an organization centered on skilled peasant households, established in 2002. This association is transregional and has 100 household members and a 300-hectare production base. The third case is the Meiyu Cooperative, established by villager groups in 2008. With 100 household members and a 200-hectare production base, the Meiyu Cooperative is an organization based on and controlled by an enterprise providing a residence community for their members. In addition, although several peasant households receive orders directly from the enterprise,spontaneously-organized peasant cooperatives are more common, against the backdrop that organic longgrain rice now sells at high prices. All these factors demonstrate the characteristics of Minle County as a production area of premium rice.
著者
澤村 明 渡辺 登 松井 克浩 杉原 名穂子 北村 順生 加井 雪子 鷲見 英司 中東 雅樹 寺尾 仁 岩佐 明彦 伊藤 亮司 西出 優子
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、新潟県の中山間地域を中心に、条件不利地域での居住の継続に必要な要素のうちソーシャル・キャピタルに焦点を当ててフィールドワークを行なった。対象は十日町地域、村上市三面地域であり、他に前回の基盤研究費Cから継続して観察を続けている村上市高根地区、上越市桑取地区についても蓄積を行なった。十日町地域では2000年来3年ごとに開催されいている「越後妻有大地の芸術祭」のソーシャル・キャピタルへの影響を質問紙調査によって捉えた。その結果は2014年6月に刊行予定の『アートは地域を変えたか』で公表する(慶應義塾大学出版会)。
著者
青柳 斉 伊藤 亮司
出版者
地域農林経済学会
雑誌
農林業問題研究 (ISSN:03888525)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.289-294, 2010-09-25

The consumer questionnaires done in the cities southward from Chang Jiang revealed that per capita rice consumption had been decreasing due to consumption of non-staple food and wheat products. In addition, about half of the answerers to the questionnaire had increased their japonica rice consumption. Consumers with a taste for sticky rice account for about 60% of the answerers. These indicate that southward from Chang Jiang, where the majority of rice produced is indica rice, there is a large market for Northeast rice, i.e., sticky japonica rice. On the other hand, most answerers indicated a taste for aromatic rice, which is related to rating Thai rice highly. Therefore, it is assumed that enlargement of the market for Northeast rice is conditioned by the relative price to indica rice and the possibility of breeding japonica rice as an aromatic rice.
著者
澤村 明 寺尾 仁 寺尾 仁 杉原 名穂子 鷲見 英司 松井 克浩 渡邉 登 伊藤 亮司 岩佐 明彦 福留 邦洋 中東 雅樹 西出 優子 北村 順生 澤村 明
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

新潟県の北部に位置する高根集落(村上市、2008年の合併までは朝日村)と、逆に西部に位置する桑取川流域(上越市)である。具体的な集落の分析を通じて、結束型、橋渡し型、連結型というソーシャル・キャピタルの基本概念や、コミュニティとアソシエーションという組織のありかたの基本概念を深化させる手がかりを提供した。