著者
齋藤 雅史 伊藤 毅志
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2022論文集
巻号頁・発行日
vol.2022, pp.159-166, 2022-11-04

現在,将棋AI はプロ棋士をはるかに凌駕するレベルにある.それに伴って,近年ではプロ棋士が将棋AI を用いた将棋研究を行うことが普通になってきた.こうした背景から,将棋AI が近年のプロ棋士の棋譜に大きな影響を与えていると言われているが,実際にどのような影響が生じているのかについて,定量的分析を行った研究はまだ少ない.そこで,本研究では将棋AI を用いて近年のプロ棋士の棋譜に現れる変化を定量的に分析した.その結果,強い将棋AI が普及し始めた2017 年前後において,プロ棋士の棋譜は将棋AI との一致率が有意に高くなることが示された.また,平均損失を調べたところ,序盤(40 手目まで)では平均損失の上昇が見られたが,中盤以降(41 手目以降)ではA 級棋士以外上昇が認められなかった。
著者
佐藤 裕紀 伊藤 毅志
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. GI, [ゲーム情報学] (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.37-43, 2008-06-27
参考文献数
6
被引用文献数
3

カードゲーム「大貧民」では、ローカルルールに応じて、プレースタイルのバリエーションが増える。本研究では、電気通信大学で開催されているUECda2007の基本的なローカルルールをもとに、考えうるプレースタイルを想定したプログラムを作成し、それぞれのプレースタイル間の相性を詳細に調べた。その結果、階段処理を行い、単体とペアを最弱縛りで縛るのが最も強いアルゴリズムであることが明らかになった。
著者
伊藤 毅志 松原 仁 ライエルグリンベルゲン
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.2998-3011, 2002-10-15

人間の問題解決の認知過程については数多くの研究が行われてきた.ゲームおよびゲーム理論は昔から人間の問題解決行動の研究において重要な役割を演じてきた.認知研究の題材にゲームを用いることの利点は,ゲームが良定義問題で対戦による評価が容易なことである.チェスで最もよく知られた認知実験は局面の記憶に関するものでDe Grootによって行われた.この研究を継いだSimonとChaseはチャンクという概念を用いてエキスパートの認知能力を説明した.チャンクは一種の情報のかたまりで,チェスでいうとチェス盤上の典型的な駒の配置パターンのかたまりをチャンクと呼んでいる.彼らは強いプレイヤは弱いプレイヤよりも広い配置パターンをチャンクとして記憶していることを示した.将棋の認知研究の第1歩として,我々はまずチェスで行われた認知実験を追試してみることにした.チェスと将棋には認識の点からいくつかの違いがあるので,この追試実験を一度は実施することが必要だと考えた.本論文では将棋を対象とした時間無制限と時間制限の記憶実験を行った.強いプレイヤが弱いプレイヤより成績が良いこと,すなわち広い配置パターンをチャンクとして記憶しているというチェスとほぼ同様の結果が得られた.
著者
伊藤 毅志 松原 仁 ライエル グリンベルゲン
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.1481-1492, 2004-05-15

人間の問題解決の認知過程については数多くの研究が行われてきた.ゲームやゲーム理論は昔から人間の問題解決行動の研究において重要な役割を果たしてきた.なかでもチェスを題材にした認知科学的研究では,エキスパートのプレーヤは,記憶課題において非常に卓越した認識能力を示した.Simon とChase は,このエキスパートの優れた記憶能力をチャンクという概念を用いて説明した.本論文では,将棋を題材に次の一手問題を様々な棋力の被験者に提示して,指し手を決定するまでの思考過程を発話プロトコルとアイカメラデータとして記録する実験を行った.その結果,将棋の上級者以上のプレーヤでは,単に局面に対する駒の配置に関する知識が形成されるだけでなく,局面をその前後関係からとらえられる知識が獲得されることが分かってきた.また,従来の研究から,チェスの上級者では,必ずしも強くなるにつれて量において多く先読みをしないことが知られていたが,将棋では上級者になるにつれ,深く大量に先読みすることが分かった.これらの結果は,従来のチェスの研究で見られたような「空間的チャンク」だけでなく,時間的な前後関係を含んだ「時間的チャンク」の存在の可能性を示唆している.
著者
伊藤 毅志 村松 正和
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.335-337, 2016-03-15

This article reports the deep learning based technology of computer Go recently developed by Google. Alpha Go, the computer Go program based on this technology, is the first one that beat a human professional Go player with no handicap, and is going to play matches against one of the top professional players on March. We survey the technology, and give some comments on the matches.
著者
塩田 雅弘 伊藤 毅志
雑誌
研究報告ゲーム情報学(GI) (ISSN:21888736)
巻号頁・発行日
vol.2020-GI-44, no.3, pp.1-6, 2020-06-20

本研究では,近年将棋で用いられている評価関数の機械学習の手法を 5 五将棋に適用することで,5 五将棋でもその手法が有効であるかを検証した.具体的には,オープンソースで公開されている「やねうら王」をベースに,この手法を 5 五将棋に応用したプログラムを開発した.その結果,本プログラムは,2020 年 3 月に開催された UEC 杯 5 五将棋大会において,全勝優勝した.また,有力プログラムとの対戦結果をもとにその強さを比較した.
著者
馬場 匠 伊藤 毅志
雑誌
研究報告ゲーム情報学(GI) (ISSN:21888736)
巻号頁・発行日
vol.2019-GI-41, no.13, pp.1-8, 2019-03-01

本研究では,なるべく少ない棋譜から将棋プレイヤの棋力を推定する手法を提案する.先行研究の将棋AIを用いた棋力推定の手法では20局程度の対戦を必要としていた.これは,分析対象とする局面の条件に「序盤や終盤の除外」などの制約があるため,1局あたりの分析局面数が少なることが原因である.本研究では,どのような局面が棋力推定に有効に働くのかを詳細に調べた.その結果,接戦の局面ほど棋力推定に適していることが判明した.そこで,接待将棋AIを用いて接戦の局面を多く作ることにより,少ない対局数から棋力推定をする手法を提案した.この手法により,3~4局程度の対戦でかなり正確に棋力推定ができることを確認した.
著者
伊藤 毅志
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2013論文集
巻号頁・発行日
pp.94-97, 2013-11-01

本研究では、コンピュータ囲碁を用いて9 路盤囲碁を研究するプロ棋士の思考過程を発話プロトコルやインタビューを中心に調べた。プロ棋士がコンピュータ囲碁に対して抱く印象が変化していく過程を観察した。利用初期は、コンピュータ囲碁との対戦を通して、コンピュータ囲碁の特性を掴む行動が観察された。その後、コンピュータ囲碁が意外に終盤に弱点があることがわかり、逆に序中盤で人間の盲点になる意外な好手を発見することに気づくと、その意外な好手をもとに研究を進めるという利用法に変化していった。
著者
伊藤 毅志 松原 仁
雑誌
情報処理学会研究報告ゲーム情報学(GI)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.64(2004-GI-012), pp.9-15, 2004-06-18

将棋の熟達者は、どのように将棋を捉えているのだろうか?我々は、これまで、将棋を題材にして、伝統的な認知科学的手法で研究を行ってきた。その結果、棋力の違う被験者間で、認知的な違いが明らかになってきた。しかし、熟達者が具体的にどのようにその卓越したパフォーマンスを示すことができるのかは不明な点が多い。本研究では、将棋トッププロ棋士である羽生善治氏に対して行ったインタビューの発話データから、将棋の熟達者の思考過程、認知過程、学習過程について新しい知見を得ることができた。本稿では、その詳細について述べる。
著者
桝井 文人 柳 等 伊藤 毅志 山本 雅人 松原 仁 竹川 佳成 河村 隆 宮越 勝美
出版者
北見工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

今年度は,戦術要素の収集・解析と戦術推論手法開発の継続,ストーントラッキング手法の実証実験,人工知能アルゴリズムの応用,スウィーピング計測システムのモデル化と実験に取り組んだ.以下,各項目別に報告する.(1)戦術要素の収集と解析については,新たに日本代表決定戦,平昌オリンピックの試合情報を追加して分析し,チームショット率と得点の関係,ポジション別ショット率と得点の関係,さらに,先攻後攻におけるショット率と得点の関係についての知見を得た.さらに,得点機会と失点機会に注目した分析を行い,チーム固有の発生確率パターンが存在することを発見した.(2)人間判断要素の収集と解析については,昨年度に実施した認知心理学実験結果を分析し,戦術の思考過程の考察を行なった.戦略書に基づいたデジタルカーリングAIにおける序盤定石の構築も引き続き行なった.(3)ストーン挙動要素の収集については,実際のカーリングホールにて氷上での動作検証実験を行なった.シートの氷の下にキャリブレーション用モジュールを埋め込むことで,昨年度の課題を解消した.シーズンを通しての耐久性と,キャリブレーション時の誤差について検証を行い,概ね陸上と同じ結果が得られることが確認できた.(4)戦術推論手法の開発では,昨年度実装した離散化座標と評価値の期待値に基づいてショット選択を行う人工知能アルゴリズムを用いて平昌オリンピックの試合を人工知能アルゴリズムで再現した.また,デジタルカーリング環境における戦術学習支援システムを構築した.(5)スウィーピング計測については,計測システムに加わる力のモデル化と,スウィープ時の力とモーメントの計測結果の検討を行なった.
著者
伊藤 毅志 松原 仁 ライエル・グリンベルゲン
雑誌
情報処理学会研究報告ゲーム情報学(GI)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.27(2001-GI-007), pp.41-47, 2002-03-15

将棋の次の一手を決めるとき、人間はどのように読みを進め、指し手を決定していくのだろうか?本研究では、アマチュア初級者からプロ棋士までの棋力の違う被験者に対して同じ問題を与え、特にその読みの広さと深さを発話データから調べ、比較した。その結果、上級者ほど深く読むことがわかった。また、中級者(アマチュア初段前後)が一番広く読むことが示され、上級者になるほど、狭く深く読むことが可能になることが示唆された。
著者
榎園 裕崇 伊藤 毅志 古郡 廷治
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.53, pp.85-86, 1996-09-04
被引用文献数
1

我々は日常生活において、複数の人間で話し合いの場を持つことがしばしばある (例:「冠婚葬祭の準備」「忘年会の計画」「大掃除の打ち合わせ」など)。これは、一種の意志決定型の会議と見ることができるが、このような会議で扱う議題には、議題がさらにいくつかの副議題に分割される複雑な問題構造を持つものがある(図1:以下、多層構造議題と呼ぶ)。このような多層構造議題を議論する場では、現在話し合っている問題の構造を正確に把握した上で、さらにその議題に固有の世界知識も有している人間が司会進行を行うことにより、より円滑で有意義な会議が期待できるだろう。本研究では、多層構造議題の会議を円滑に進行するために、人間同士の議論に加わり、司会進行を行うシステムの開発を目標にしている。実現するシステムは、地理的に分散した環境下でリアルタイムの会話や議論を行うためのツール上に組み込むことを考えている。実際、phoneやchatといった、複数の人間で文字ベースの会話を行うためのツールなどは、日常のちょっとした話し合いにも一般的に利用されているので、本システムの実現の意義は大きいと考える。本報告では、実際の会議実験で得られたデータから、まず会議空間を3領域に分類し、その中の議論空間を記述するためのモデルについて詳述する。
著者
仲道 隆史 伊藤 毅志
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.167-170, 2014-10-31

将棋AIの実力はプロ棋士に肉薄しておりアマチュアプレイヤにとって十分強くなっている一方で,近年ではゲーム熟達の支援やより楽しませるAIなど,強さ以上に楽しさが求められている.対局の楽しさを損なう要素としてAIの不自然さが注目されているが,自分より棋力の低いプレイヤの指し手に不自然さを感じやすい可能性が指摘されている.本研究ではAIの強さの主観評価と知覚する不自然さの関係を対局実験から分析したのち,棋力を調整した上で課題となる不自然さについて議論を行う.
著者
仲道 隆史 伊藤 毅志
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第28回 (2014)
巻号頁・発行日
pp.1E5OS23b5i, 2014 (Released:2018-07-30)

現状の将棋AIの実力はプロ棋士に肉薄しているが,実力差の大きいエージェントの指し手は理解が困難でエージェンシーの認知を妨げることや対戦相手の実力が対等な時に楽しいと感じやすいことが指摘されている.本研究では局面の評価値を0に近づける着手を選ぶことでユーザの棋力に合わせる接待将棋AIを作成し,エージェンシーと対局の満足感に対する主観評価によって,インタラクティブエージェントとしての妥当性を検討した.
著者
神田 直樹 伊藤 毅志
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2015論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.20-24, 2015-10-30

人間同士で行う人狼ゲームでは、一種の“通説”と呼ばれるプレイ戦略の指針のようなものによってプレイが行われることがある。しかし、人狼というゲーム自体歴史が浅く、これらの通説には疑わしいものも含まれている。本研究では、人狼知能プロジェクトが提唱する「標準ルール」において、基本的な役職行動と投票行動を行う“基準プレイ”を提案した。そして、人狼知能プロジェクトが提供している人狼サーバの自動対戦機能を用いて、基準プレイにおける勝率と通説を用いた場合の勝率を比較することで、通説の妥当性の検証を試みた。
著者
澤 宣成 伊藤 毅志
雑誌
研究報告ゲーム情報学(GI)
巻号頁・発行日
vol.2011-GI-26, no.3, pp.1-8, 2011-06-24

将棋における棋風を形成する要素に関する統計的分析
著者
若林 広志 伊藤 毅志
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2019論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.60-65, 2019-11-01

本研究では,人間よりも十分に強い囲碁 AI を学習に役立てる方法として,囲碁初心者の着手を褒めることに着目する.囲碁指導者の資格を持つ指導者の協力のもとに行った調査により,どのような点に着目し,どのような褒め方をどの程度の頻度で行っているのかを調べ,それを反映したプロトタイプシステムを提案した.それを用いた評価実験では,このシステムによる明確な動機づけの向上が確認されなかった.その理由として,褒め方が単調であった点や初心者のプレイヤーは着手や盤面の良し悪しを理解することが難しいため,達成したことがうまく伝わらなか った可能性が示唆された.そのため,改良する提案システムでは,改良されたことを具体的な数値や図示しながら褒めることでプレイヤーが達成したことをわかりやすく伝え,自己効力感を向上させることにした.今後は,提案システムを用いた評価実験を行い,その有効性を示していく.
著者
塩田 雅弘 伊藤 毅志
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2021論文集
巻号頁・発行日
vol.2021, pp.42-45, 2021-11-06

京都将棋は 1976 年に田宮克哉によって考案された二人零和有限確定完全情報ゲームである.5×5マスの盤を使用し,駒を一手ごとに裏返すというルールが特徴である.本論文では京都将棋エンジンを開発し,本将棋で広く使われている強化学習アルゴリズムを京都将棋に適用することで十分に強いプレイヤを作成した.そしてこのプレイヤを用いて証明木を効率良く発見した.この結果,京都将棋を弱解決し,本ゲームの初期局面が先手必勝であることを示した.
著者
佐賀 朝 塚田 孝 吉田 伸之 人見 佐知子 神田 由築 小野沢 あかね 松井 洋子 吉田 ゆり子 金 富子 浅野 秀剛 伊藤 毅 米谷 博 杉森 哲也 初田 香成 松田 法子 松本 良太 本康 宏史 横山 百合子
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本課題では、日本近世~近代における「遊廓社会」の形成・普及の歴史について、三都と中核とする列島各地や植民地の事例も視野に入れて、比較類型史論・都市社会=空間構造論の方法を用いて共同研究を実施した。その最大の成果は、『シリーズ遊廓社会』全2巻(吉川弘文館)であり、本課題の代表者・分担者・連携者・協力者21名による論稿を掲載することができた。列島各地で個別の現地調査や、調査と一体の研究会を開催し、遊廓研究のネットワーク化を図るとともに、府県別の遊廓・遊所の沿革と史料情報を内容とするデータベースWEBサイトを構築し、今後の遊廓・遊所研究の発展につながる基盤を構築した点も特筆すべき成果である。
著者
伊藤 毅志 杵渕 哲彦 藤井 叙人
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.196-201, 2014-10-31

人間はゲームをプレイするときにミスを犯す.人間がプレイするゲームでは,ミスを犯すことが織り込み済みであると言える.本報告では,ゲームにおけるヒューマンエラー(ミス)を分類し,その認知的なメカニズムのモデルを提案し,将棋を題材に検証を試みる.