著者
伊藤 直子 山崎 貴子 岩森 大 堀田 康雄 村山 篤子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 創立40周年日本調理科学会平成19年度大会
巻号頁・発行日
pp.106, 2007 (Released:2007-08-30)

【目的】 食肉を軟化させるためには、熱帯植物であるパイナップルやパパイヤ、キウイフルーツなどを利用することが知られている。これらの植物の持つプロテアーゼは比較的熱安定性が高く、調理中に食肉のタンパク質に作用するため、食肉が軟らかくなる。しかし、これらの食材は独特の香りがあり、メニューが限定される。一方、プロテアーゼ活性が高いものの中にはキノコがある。キノコは食肉とも相性の良い食材であり、食物繊維などが豊富で旨味成分も多く含まれ、健康志向の高い食品である。そこで、まず我々は、様々なキノコを用いてプロテアーゼの検索を行い、さらに高いプロテアーゼ活性を有するキノコのプロテアーゼの特徴について基礎的な検討を行った。 【方法】 キノコは市販のエノキタケ、ヒラタケ、エリンギ、シイタケ、ナメコ、ブナシメジ、マイタケを用いた。キノコの重量の2倍量の水を加え、ホモジェネート後、ろ過して得られた抽出液を試料とした。この抽出液のカゼイン分解活性及び牛肉抽出液分解活性を調べた。これらの中より分解活性の高かったものを選び、最適温度、最適pH、熱安定性などを検討した。さらにプロテアーゼの性質を調べるため、部分精製を試みた。 【結果および考察】 35℃でプロテアーゼ活性を測定すると、最も活性が高かったのは、ヒラタケであった。しかしながら、50-60℃ではマイタケのほうが活性が高くなった。さらに、熱安定性をみると、最も安定であったものはマイタケであり、ヒラタケのプロテアーゼ活性が70℃1時間の保温で失活するのに対し、マイタケは70℃8時間でも活性が残存していた。また、最適pHは6-7であった。このことより、マイタケは肉軟化のために有効な食材であると推察された。
著者
山﨑 貴子 岩森 大 伊藤 直子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.348-354, 2016 (Released:2016-12-19)
参考文献数
16

食肉は重要なタンパク質源の1つであるが,加熱により硬くなり,咀嚼嚥下機能が低下した高齢者には食べにくい。我々は牛肉をマイタケ抽出液と一緒に真空パックしスチーミングすると効果的に軟化ができることを報告しているが,表面がべたつき食味が低下することが課題であった。本研究では,食味を改善する方法として,マイタケ抽出液の注入による食肉軟化を試みた。また,マイタケ抽出液が調理中に肉のタンパク質にどのように作用したか調べた。 破断測定および官能評価の結果から,マイタケ抽出液を牛肉に注入する方法は,真空パック法と同程度に牛肉を軟化したが,表面のべたつきは少なかった。SDS-PAGEおよびウエスタンブロッティングの結果,マイタケ抽出液中のプロテアーゼは特にミオシンに強く作用していることが示された。 以上より,マイタケ抽出液を注入する方法では,高齢者にとって食感が良く食べやすい肉を作成できる可能性が示唆された。
著者
佐野 智子 森田 恵子 奥山 陽子 伊藤 直子 長田 久雄
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.288-299, 2018 (Released:2018-06-29)
参考文献数
35
被引用文献数
2

目的 加齢性難聴は大きな健康課題のひとつであり,早期の発見が望まれる。難聴の簡易スクリーニング検査として,指こすり音聴取検査があるが,これまでは加齢性難聴を対象として検討されてこなかった。本研究の目的は,従来の方法を改良した「指こすり・指タップ音聴取検査(Finger Rub/Finger Tap screening test: FRFT検査)」を提唱し,加齢性難聴のスクリーニング検査として,その有効性を検討することである。方法 健康状態を比較的維持し,地域で自立した生活を送っている65歳以上の高齢者を対象とした。介護予防事業(運動教室)の参加者のうち調査協力に同意した73人を対象とし,FRFT検査と純音検査を実施した35人(70耳)を分析対象とした。FRFT検査は,耳からの距離5 cm,30 cm,60 cmの条件で,指こすり音および指タップ音を2回ずつ提示し,その反応を記録するものである。正答を1点,誤答および無答を0点として得点化した。純音検査の結果から4周波数平均聴力を算出し,平均聴力とFRFT合計得点のスピアマンの順位相関係数を算出した。FRFT検査得点を検定変数として,receiver operating characteristics(ROC)解析を行い,感度・特異度からFRFT検査の妥当性を検討した。状態変数は,軽度難聴以上の有無と中等度難聴の有無の2種類で行った。結果 純音聴力とFRFT合計得点に有意な負の相関(r=−0.79, P<0.01)があり,併存的妥当性が確認された。ROC解析により,FRFT合計得点は感度97.6%,特異度71.4%で26 dB以上の難聴を検出可能であった。また,60 cm条件を含めない短縮版(5 cm条件と30 cm条件の合計)でも,感度95.2%,特異度71.4%で26 dB以上の軽度難聴を検出できた。結論 FRFT検査によって,加齢性難聴のスクリーニングが可能であることが明らかになった。非検査耳を遮蔽することなく,軽度難聴以上を検出することができる,非常に簡便で,非侵襲性の高い,優れた検査であることが示された。また,音響分析によって,指こすり音は高音漸傾型の難聴に,指タップ音は低音障害型や全般的に聴力低下がみられる耳垢栓塞にも有効である可能性が示唆された。
著者
北林 紘 伊藤 直子
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.585-591, 2015 (Released:2015-07-28)
参考文献数
41
被引用文献数
1

リン摂取量は、国民健康・栄養調査結果と食品分析による実測値では乖離している可能性がある。この一因として、食品標準成分表では包括化されている食品の存在が考えられる。今回、風味調味料に焦点を当てリン含有量を測定したので報告する。風味調味料9種類、計23製品の可食部100 g当たりのリン含有量をバナドモリブデン酸吸光光度法により測定した。風味別によるリン含有量の差を確認するために、Tukey-Kramer法で、かつお、こんぶ、煮干し、しいたけ、鳥がらの多重比較を行った。また、化学調味料の添加有無によるリン含有量の差を確認するために、Mann-Whitney検定を行った。煮干しはかつお、しいたけ、鳥がらと比較してp<0.05、こんぶと比較してp<0.01で有意にリン含有量が多かった。化学調味料有無では、無は有と比較して有意にリン含有量が多かった(有258±206 mg、無785±566 mg、p<0.05)。風味調味料のリン含有量は、風味の種類また化学調味料の使用有無により異なっていた。
著者
山崎 貴子 伊藤 直子 大島 一郎 岩森 大 堀田 康雄 村山 篤子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.176-183, 2008-06-20

マイタケに含まれるプロテアーゼの作用と低温スチーミング調理の併用による牛肉軟化について検討した。マイタケ抽出液は50-70℃で最もカゼイン分解活性が高く,70℃で8h反応させたあとでも30-40%の活性が残っており,熱安定性が高かった。マイタケ抽出液とともに牛モモ肉を低温スチーミングすると,茹でた場合や,水またはしょうが抽出液を使った場合に比べて,溶出するタンパク量が多かった。しかしうま味に関係するグルタミン酸は特に溶出は増えておらず,むしろマイタケとともにスチーミングした肉で有意に増加していた。組織観察の結果,マイタケ抽出液で処理したものはタンパクが分解されている様子が観察された。破断測定および官能評価では,マイタケ抽出液とともにスチーミングしたものは有意に散らかく,噛み切りやすいという結果となった。マイタケと低温スチーミング調理を併用すると,効果的に食肉を軟化できることが示唆された。
著者
馬場 みちえ 西田 和子 藤丸 知子 兒玉 尚子 伊藤 直子 今村 桃子 津山 佳子
出版者
一般社団法人 日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.63-71, 2008-03-25 (Released:2017-04-20)

看護師の喫煙率は高いといわれ,看護学生時代に喫煙開始する人が多いと報告されており,看護学生時代の禁煙支援は重要なことである.本研究では,女子看護学生の喫煙習慣と性格特性の関連について検討を行った.性格特性の測定にはMPI性格調査票を用い,喫煙者と禁煙者は,非喫煙者と比較すると外向的であった.喫煙者は,神経質傾向がみられ,精神的健康度を測定するGHQ28ではストレスが高くなっていた.しかし禁煙者では神経質傾向がなくストレスは低かった.また禁煙ステージ別にみると,喫煙者の関心期,準備期と禁煙者の性格特性は類似していた.看護学生時代の禁煙支援あるいは喫煙防止教育には,性格特性を踏まえて行う必要があることが示唆された.禁煙教育は喫煙者にはもちろんであるが,禁煙者が再度喫煙者へ移行しないよう,禁煙者も含めて支援することが重要である.
著者
小俣 翔子 川上 陽子 下鳥 春奈 北林 紘 山崎 貴子 岩森 大 伊藤 直子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成27年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.55, 2015 (Released:2015-08-24)

【目的】加工食品には食品添加物として、無機リン化合物が使用されていることが多く、これらは有機リン化合物に比べ、消化吸収率がよいことが知られている。患者にとって、リンの過剰摂取は高リン血症を惹起するため、食品添加物の含有に留意する必要があるが、原材料表示からはリン含有の有無はわかりにくい。我々は、食パンの総リン量、水溶性リン(無機リンの含有が高い)及び不溶性リン(有機リンの含有が高い)量を調べた。【方法】 市販食パン及び透析患者用のタンパク質調整食パンを破砕後、水で懸濁し、遠心分離して水溶性画分と不溶性画分に分離した。これらの画分と無処理の食パンをそれぞれ灰化し、バナドモリブデン酸吸光光度法にてリン量を測定した。その後リンを用いている可能性の高い食品添加物(イーストフード・乳化剤)の有無でリン量を比較した。【結果】タンパク質調整食パンの総リン量と水溶性リン量は、市販食パンの平均に比べるとそれぞれ約54%、31%であった。市販食パンにおいて食品添加物の有無で総リン量を比較すると、有意差はみられなかったが、可溶性リン量は食品添加物含有食パンのほうが有意に多かった。また、可溶性リン、不溶性リンの推定吸収率をそれぞれ90%、50%として試算すると、食品添加物が添加されている食パンのほうが有意に多かった。【考察】市販食パンにおいてリン量には有意差はなかったものの、食品添加物としてイーストフード、乳化剤を含有している食パンでは推定吸収率が高いことが示唆され、腎臓病患者はこれらの含有には注意する必要があると考えられる。しかしパッケージには、いずれもリンの記載はなく、リン含有のわかる記載が望まれる。
著者
星 睦水 井上 かほる 桑山 弓枝 岩森 大 山崎 貴子 伊藤 直子 村山 篤子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成21年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.2052, 2009 (Released:2009-08-28)

【目的】食肉は、たんぱく質の良い供給源である。しかし、加熱した食肉は、咀嚼能力が低下している高齢者にとっては、食しにくい食材の一つである。これまでに、我々は、マイタケのプロテアーゼと低温スチーミング調理と併用することにより効果的に肉を軟化することを報告した。しかし、マイタケ処理した肉は、軟らかいものの食感が悪く、好まれなかった。そこで、本研究では、マイタケ処理液の濃度調節を行い、調味することにより風味の改善を試みた。 【方法】マイタケの重量に対して2倍量の水を加えてホモジナイズ後濾過した液(A)、4倍量の水を加え同様に処理した液(B)、Bに1%食塩を添加した液(C)を作成した。牛もも肉は一定の大きさに切断し、ナイロンポリバッグ中に上記マイタケ抽出液とともに真空包装し、低温スチーミング装置(AIHO ATS-10A)を用いて、70℃2時間加熱した。破断応力、テクスチャーはクリープメーター(山電レオナーRE-3305S)にて測定した。プロテアーゼ活性は、カゼイン消去法を用いた。官能評価は、20歳代の男女18名(若者群)および50-70歳代の男女22名(高齢者群)をパネルとして行った。 【結果】A液と比較して、B液で処理したところ、破断応力には有意差は見られなかった。また、カゼイン分解活性は、B液とC液では変化がなかったことから食塩によるカゼイン分解活性の阻害効果はないと考えられる。官能検査ではB液、C液で処理した肉は、A液で処理した肉と比較して、苦み、口中残留感が有意によかった。特にC液で処理した肉は、軟らかさを保ちつつ、風味を改善することができた。C液で処理した肉を用いた料理を作成し、若者群および高齢者群に対して官能検査を行ったところ、通常の肉を用いた場合と比べ、どちらのパネルでもやわらかく、噛み切りやすく、飲みやすいと評価された。総合評価においては、高齢者群ではC液で処理した肉の評価が高かったが、若者群では差がなかった。
著者
玉木 有子 伊藤 直子 佐藤 恵美子 立山 千草 太田 有子 伊藤 知子 松田 トミ子 山田 チヨ 長谷川 千賀子 山口 智子 小谷 スミ子 渡邊 智子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】平成24~25年度日本調理科学会特別研究『次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理』の一環として新潟県村上市の食と行事の結びつきについて調査を行った。郷土料理や伝統的な食の文化が親から子へ伝承されにくい傾向がある状況の中で、年中行事や慣わしが現代に受け継がれてきた村上市の現状を報告する。<br> 【方法】村上市在住の75~88歳の高齢者(平均80.5歳)から平成25年11月~平成26年3月に聞き書き調査を行い、村上市の史料館や歳時記を参考に現代に伝え継がれている年中行事、慣わしに関する食と行事の結びつきを調査した。<br> 【結果】昭和34年頃までは旧暦が用いられ、現在も名残が残る。季節毎の年中行事や慣わしが多く受け継がれており、主に祭事に関する料理が残っている。神社の信仰により伝承されてきた村上大祭(7月7日)(村上地区) 、瀬波大祭(9月4日)(瀬波地区)、岩船大祭(10月19日)(岩船地区)の3大祭りの他、稲荷神社の初午(2月の第1の午の日)、七夕祭り(8月16日)、地蔵堂の地蔵祭り(11月3日)などは今日まで受け継がれており、市民生活の潤いとなっている。初午では、粳米に小豆を入れて炊いた小豆飯、糠鰯、三角油揚げ、煮しめなどを食べる。古くは米俵のサンバイシにのせて地域のお稲荷様に供えた。節分では、まいた豆を保存し厄除け代わりに一年中食べる慣習がある。この他にも鮭を特別な魚(魚の中の魚)として大切に食しており、村上市の食と行事の結びつきには精神性の高い食の文化が伝え継がれている。
著者
山崎 貴子 伊藤 直子 岩森 大 堀田 康雄 村山 篤子
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.193-201, 2008-12-31 (Released:2009-05-01)
参考文献数
18
被引用文献数
5 1

本研究ではいも類, 根菜類, 果菜類, 葉菜類を低温スチーミング調理し, 糖およびビタミンCの測定, 官能評価, 衛生面から検討した。低温スチーミング調理では茹で加熱に比べて糖やビタミンCの残存率が高かった。また葉菜類では40-50°CのスチーミングによりビタミンCが増加した。さらに調味料の浸透性, 殺菌効果の面でも効果があることが示され, 官能評価でも高い評価が得られた。  以上の結果より, 低温スチーミング調理は食材ごとに適切な温度で加熱することで, より栄養・機能性成分を保持し, 素材本来の風味を生かすことのできる調理法であることが示された。今後はさらに食品の成分変化, 特に酵素との関係の解明とこれらの食材の利用によるメニュー開発を検討していきたい。  最後にオーブンレンジ型低温スチーミング装置をご提供くださいました東芝家電製造株式会社に深く感謝いたします。
著者
佐藤 恵美子 松田 トミ子 山田 チヨ 渡邊 智子 山口 智子 伊藤 知子 伊藤 直子 太田 優子 小谷 スミ子 立山 千草 玉木 有子 長谷川 千賀子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】『次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理』のガイドラインに準じた聴き取り調査結果から、昭和35~45年頃までに定着した新潟県のおやつについて報告する。<br />【方法】村上、新潟、長岡、柏崎、魚沼、上越、佐渡の7地域のおやつについて検討した。<br />【結果】新潟県は米を中心とした主食の豊かな食文化があり、うるち米、もち米、くず米、米粉を使ったものが多く、おやつにも主食と類似した文化がみられた。うるち米を使ったものには、おにぎりに生姜味噌をつけて焼いた「けんさん焼き」(魚沼)、米を二度炊きにしてから搗いた「にたて餅」(村上)があった。もち米を使った「餅」はきな粉や砂糖醤油をつけて頂き、「あんこ雑煮(おしるこ)」や「あられ」・「かたもち」(新潟)にして食された。米麹から作る「甘酒」(新潟)、灰汁に漬けたもち米を笹の葉で巻いた「灰汁笹巻」(村上)も特徴的である。もち米や米粉を使ったものには、新潟県の特産品として親しまれている「笹団子」(新潟・県全域)があり、中に餡を入れたものだけでなく、ひじきやあらめの煮物を入れたものも食された。新潟県のおやつには笹の葉を用いたものが特徴的であり、笹団子の他に「三角粽」(柏崎・県全域)や「笹餅」(魚沼)などがあり、地域により笹の用い方に違いがみられた。くず米の利用として、あんや大根菜を入れた「あんぼ」(魚沼)、「おやき」(柏崎)、「みょうが団子」(上越)などがある。佐渡では米粉を使ったものとして、雛祭りには「おこしがた」、釈迦祭りには「やせうま」、ケの日には「とびつき」が食べられていた。その他のおやつに含まれるものに「バタバタ茶」(上越)があり、糸魚川市で泡立てた番茶をいただく風習があった。
著者
焼山 和憲 伊藤 直子 石井 美紀代 脇崎 裕子 谷川 弘活
出版者
西南女学院大学
雑誌
西南女学院大学紀要 (ISSN:13426354)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.7-18, 2003
被引用文献数
1

本研究の目的は,精神障害者が地域社会で生活していくために必要な地域住民の社会的距離を分析し,地域ケアに必要な支援対策を検討することである。調査対象は,北九州市近郊に居住する生活者211名である。内訳は,男性163名(年齢41歳〜80歳,平均60.7歳)及び女性47名(年齢45歳〜77歳,平均65.2歳)である。調査方法及び内容は,アンケートによる精神障害者の地域ケア,社会的距離及びイメージの意識調査である。精神障害者が地域で生活していくために阻害となる要因は,地域住民の気持ち・考えに「精神障害者が退院後も継続して精神病院でケアをうけることに希望する」が最も多く(77名,36.48%),「地域に居住し訪問看護や地域のサポートを受けながら在宅ケアを受けることに希望する」が少ない(8名,3.78%)ことである。また,社会的距離に影響する要因は,結婚や借家といった個人のプライバシーに関することには影響せず,雇用,奉仕活動,職場の同僚及び近隣関係になるといった近接関係に強く影響している。性差及び年齢格差別では,男性より女性に社会的距離への影響が強く,それも年齢が高くなるほど強い傾向が見られた。今回の調査は,池田小学校殺傷事件があった後の調査であり,回答にバイアスがあることは否定できない。精神障害者の社会復帰は,家族,専門病院,行政,地域ぐるみでのケアが重要である。そのためにも,退院前から間接的に接触体験の機会や教育が必要と思われる。