著者
伊藤 静香
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.99-107, 2013-06-30

日本におけるジェンダー平等政策は、新自由主義的改革が展開した時代と同時期に「男女共同参画」という国策で進められた。特に日本の経済活性化のために、女性の労働力活用が求められ、女性の就労を支援するさまざまな法・制度の整備が進められた。しかしながら、経済的・政治的にも女性の参画や男女の格差解消は十分ではない。「日本的経営」でオイルショックによる経済危機を乗り切った日本では、ジェンダー分業を内包したまま女性の労働力活用が促進され、新自由主義的改革のもとで女性の自立と社会参画をめざす「男女共同参画」政策が進められた。その結果、女性たちは男性社会のルールの中で、「競争」と「選別」を余儀なくされ、その選択は「自己責任」に帰されている。筆者が研究テーマとする女性/男女共同参画センターにおける労働現場では、低賃金・非正規雇用の問題などが指摘され、女性の就労における課題の典型であると言われている。本研究ノートは、筆者の研究テーマである女性/男女共同参画センターのあり方に対する視角を固めることを目的として、日本における新自由主義的改革と男女共同参画政策の関係性に焦点をあてた研究成果をアメリカのフェミニスト理論家であるナンシー・フレーザーの論考からヒントを得て、整理・検討を試みた。