著者
豊下 祥史 佐々木 みづほ 菅 悠希 川西 克弥 原 修一 三浦 宏子 越野 寿
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.95-105, 2020-09-30 (Released:2020-10-25)
参考文献数
30

目的:固定性義歯による欠損補綴治療に比較して,可撤性義歯による治療は咀嚼機能の回復程度に個人差が大きいにもかかわらず,義歯装着者に関する認知機能と咀嚼機能に関する研究は少ない。本研究では,認知機能低下の危険性がある可撤性義歯装着高齢者の口腔機能を明らかにするため,認知機能の低下の有無,義歯装着の有無によってグループ化し口腔機能の比較を行った。 方法:299名の高齢者に対し,認知機能のスクリーニングテストと義歯装着の有無によって,義歯を装着しておらず認知機能の異常を認めない群,義歯を装着しておらず認知機能の低下が疑われる群,義歯を装着しており認知機能の異常を認めない群,義歯を装着しており認知機能の低下が疑われる群を設定し,残存歯数の計測,咀嚼機能検査,最大咬合力測定,25品目の摂取可能食品アンケートおよびオーラルディアドコキネシス計測を実施した。 結果:義歯を装着しており認知機能が低下している群において,残存歯数と咀嚼能力が有意に低下していた。さらに,義歯装着者を欠損の大きさによって群分けし,口腔機能を比較したところ,全部床義歯を装着しており認知機能の低下している群で有意な咀嚼機能の低下を認めた。 結論:認知機能の低下が疑われる全部床義歯装着者は,客観的評価である咀嚼機能検査と主観的評価である摂取可能食品アンケートの両方で有意な低下を認めた。
著者
川西 克弥 佐々木 みづほ 豊下 祥史 會田 英紀 越野 寿
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.358-363, 2016

<p> 咬合・咀嚼機能と高次脳機能との間には密接な関連があり,学習・記憶機能の発達やその維持に咬合・咀嚼が有効であることが多数報告されている.一方,脳血管障害患者では身体的機能や高次脳機能などの障害のみならず,円滑な摂食嚥下運動が妨げられ,咀嚼運動による末梢器官から脳への刺激低下は,後遺障害からの回復過程に何らかの影響を及ぼすと考えられる.臨床現場では,後遺障害からの改善に早期の経口摂食の有効性が報告され,咬合・咀嚼機能の有用性は大いに期待できる.本稿では,脳梗塞モデル動物における咬合・咀嚼機能と脳機能との関係について研究した内容を紹介するとともに,今後の展望について述べる.</p>