著者
吉田 聡子 佐伯 由香
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.4_11-4_17, 2000-09-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
22
被引用文献数
1

Lavender,Rosemary,Citronellaの3つの精油を吸入した際の自律神経系に及ぼす作用について調べた。Lavenderの香りは,交感神経系を抑え,精神・心理面だけでなく身体的にもリラックス効果をもたらした。逆にRosemaryのように精神・心理的にリフレッシュ・スッキリとした気分を感じさせるような香りは,その作用によって一過性に交感神経系を刺激する効果を持っていることが考えられた。嗜好において個人差の大きなCitronellaのような香りでは,精神・心理面にも被験者間でかなりばらつきがあり,自律神経系への効果も複雑であった。看護領域で芳香療法を用いる場合,精油自体の持つ生理的作用と個人の嗜好とを考慮し選択する必要性のあることが考えられた。
著者
佐伯 由香 田中 裕二
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.76-83, 2003-09-10 (Released:2016-10-25)
参考文献数
48

本研究は速い痛み (pricking pain) の緩和に音楽や芳香療法が有効であるか否か調べることを目的とした. 健康な女性 (n=25) を対象とした. 痛みの客観的な評価として皮膚コンダクタンスならびに皮膚血流量を測定し, 主観的な痛み感覚はVASを用いて評価した. 人為的な痛み刺激は電気刺激を上腕部あるいは前腕部に与えた. 緩和方法として氷嚢を用いて刺激部位を冷やす冷罨法, 湯たんぽを用いて温める温罨法, 音楽を聞いている状態, 香りを嗅いでいる状態で同様の刺激を行い, 反応の大きさを比較検討した. いずれの刺激部位においても温罨法により主観的な痛み感覚ならびに自律神経反応は増強し, 冷罨法により反応や痛み感覚は減少した. 芳香療法や音楽療法は多少緩和効果が認められたが, 冷罨法と比較するとその効果は小さかった. 以上の結果より, 速い痛みを緩和する方法としては冷罨法が最も効果的で, 芳香療法や音楽療法はある程度の期間持続するような痛みに効果が期待できると考えられた.
著者
永井 伸夫 佐伯 由香
出版者
文化女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は,足浴操作が免疫機能および自律神経機能におよぼす効果を明らかにし,身体への効果を総合的に検討することである。健康な20歳前後の女子学生(21〜24歳)を対象者として,足浴操作は椅座位にて42℃の湯に足を浸けて10分間行うことを基本とし,その他に足を湯に浸けた状態で足底部への刺激として気泡刺激と振動を加える操作を行った。自律神経機能の評価は心拍変動の周波数解析を行い,免疫機能については,白血球分画,リンパ球サブセットをフローサイトメトリーにて解析し,またナチュラルキラー(NK)細胞の細胞障害活性を測定した。さらに足浴によるストレス軽減の有無等を検討するため,血漿中のTh1細胞産生サイトカイン(IL-2,IFN-γ,TNF-α),Th2細胞産生サイトカイン(IL-4,IL-6,IL-10)の測定を行い,Th1/Th2バランスについて検討した。足浴を行うことにより,副交感神経系の機能が亢進する傾向が認められ,これによって免疫機能においてもNK細胞障害活性が有意に増加し,これらの効果は足浴による温熱刺激に足底部への触・圧刺激が加えられることによって増強された。白血球分画においては,足浴後に好中球の増加が認められたが,これも自律神経系の変化によることが推察された。足浴の効果が,足底部への体性感覚刺激によるものなのか,温熱刺激が加わることによってもたらされた効果なのかを明らかにするために足底刺激のみを行った場合と,膝下まで湯につけた場合とを比較検討したところ,足底部への触・圧刺激と温熱刺激の両方が存在することで効果が現れることが確認された。足浴を一定期間(7日間)実施し,その前後における免疫機能,自律神経機能の評価を行ったところ,自律神経機能では副交感神経系の機能が亢進し,このことによりNK細胞障害活性が増加し,免疫機能を高める傾向が得られた。またTh1/Th2バランスを示すサイトカインについては,足浴により大きな変化を示すことはなく,概して低値を示していた。足浴によりリラクゼーション効果がもたらされ,副交感神経系が優位になることで免疫機能を高めることが推察された。これらのことから免疫機能の低下した患者や高齢者などを対象に気泡・振動付きの足浴を行うことによって,身体機能の改善が期待できることを示唆し,足浴を用いた効率的ケアに貢献するものと考えられた。
著者
橋本 みづほ 佐伯 由香
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.61-68, 2003-09-10 (Released:2016-10-25)
参考文献数
33
被引用文献数
2

清拭の皮膚の水分量 ・ 油分量 ・ pHならびに清浄度 (ATP) に及ぼす影響を調べるため, 清拭前から120分後までの経時的な変化を測定し, 一般的な清潔形態である入浴と比較検討した. 対象は20代から40代の健康な女性7名とした. その結果, ①入浴群の水分量は直後に一旦増加した後60分後には有意に減少し, 実験前値より低値を示した, ②入浴群の油分量は120分後まで有意に減少し, 減少程度は清拭群よりも有意に大きかった, ③ pHは両群ともに直後に有意に増加したが清拭群では30分後に戻った, ④ ATPは両群ともに直後に有意に減少したが120分後には戻り, 減少程度は入浴群の方が大きい傾向があった. 以上の結果, 入浴に比較して清拭の方が水分量 ・ 油分量 ・ pH ・ ATPの変化量が少なく, 皮膚が本来持っている機能に与える影響が少ないこと, その一方で清拭の方が除菌効果および皮脂の除去に関する効果が低いことが示唆された.
著者
佐伯 由香 城賀本 晶子 谷川 武
出版者
愛媛大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究の目的は、2交替勤務をしている看護師を対象に、ストレスや睡眠状態に及ぼす経耳道光照射の影響を検討すること、また、エッセンシャルオイルによって注意力が向上するか否か検討することである。20名の看護師を経耳道照射を朝行う群、夜実施する群、そして何もしない群に分け、照射をおおなう場合は4週間行った。注意力は精神動態覚醒水準課題(PVT)を使用し、主観的評価としてアテネ睡眠評価尺度、気分・感情を評価するPOMS2を使用した。その結果、いずれの評価指標においても有意な変化は認められなかった。ペパーミントの香りを吸入するとPVTの反応時間が有意に短縮した。このことは注意力が向上したことを示している。
著者
萩野谷 浩美 佐伯 由香
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.19-28, 2012-01-15 (Released:2016-08-01)
参考文献数
24
被引用文献数
4

本研究は,ストレス評価に唾液 αアミラーゼ活性 (sAA) が有用であるか否かを調べることを目的とした. 健康な成人女性 7名 (27.9 ± 8.7歳,21~47歳 ) を対象として,暗算と足浴を各10分間行った際の sAAの変化を心拍数,スキンコンダクタンス,Visual Analogue Scale の変化と比較検討した.その結果,暗算開始前と比較して開始後でいずれの測定項目も有意に上昇し (p <0.05),sAAと各測定項目との間に有意な相関があることが明らかとなった (rs=0.631~0.798).sAAは,心拍数やスキンコンダクタンスなどの自律神経機能と同様に交感神経活動を反映しており,客観的にストレスを評価するための指標となりうると考えられた. 今回使用した携帯型 sAA測定機器は簡便で侵襲性もなく測定できることから,今後は患者のストレス評価だけでなく,臨床でのアセスメントやケアの客観的評価,看護研究にも応用できると考えられた.
著者
深井 喜代子 前田 ひとみ 佐伯 由香 關戸 啓子 兵藤 好美 樅野 香苗 大倉 美穂
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は,看護ケア技術の科学的根拠を明らかにし,看護界におけるEvidence-Based Nursing(以下,EBN)推進の一役を担うことであった。清潔ケア,感染看護,寝床環境,食のケア,そして痛みのケアのそれぞれの領域において,ケア技術のエビデンスを探究する研究を遂行した結果,以下のことが明らかになった。1)39℃の湯を用いた10分間の片手の手浴は,事後に保温することによって1℃以上の両手の皮膚温上昇と温感が手浴後少なくとも30分間は保たれた。2)手浴終了後の薬用クリームの使用で保湿効果が持続し,皮膚の生理機能が維持された。3)学生の手洗い行動を習慣化させるには,行動化に向けた教育方法の検討が必要なことが分かった。4)シーツ素材の吸湿性が低いと,寝床気候の悪化を招来することが示唆された。5)ヒトの話声は,話の内容に係わらず,70dB以上の大きな声の場合,不快感や交感神経系の緊張を高めることが明らかになった。6)欠食は疲労の原因になるほか,やる気や精神状態の安定にも影響を及ぼすこと分かった。7)一側の手の手浴で反対側の手の実験的疼痛閾値が上昇することが明らかになった。8)看護行為で発生する様々な音のうち,比較的持続時間が長く,大きな音は鎮痛をもたらすが,一時的にストレス性の生体反応を引き起こすので,看護行為中の不用意な音の発生を避けるとともに,事前に音についての説明を行うべきであることが提案された。9)4基本味うち,甘味と酸味にpricking painに対する鎮痛効果があることが分かった。10)温罨法の鎮痛効果は,皮膚温38℃以上の加温で始めて現れることが,実験的に誘発したpricking painで証明された。