著者
佐藤 文昭
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.165-174, 1969-07-25 (Released:2009-05-25)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1
著者
佐藤 文昭
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.69, no.586, pp.73-79, 2004

1.はじめに 今日の都市計画において、行政やプランナーなどの専門家だけではなく、市民との協働により計画を推進することが重要である。しかし、市民と専門家の並列的な関係により、計画が人々のニーズを十分に満たすことができない中で、その過程において個人の意見をどのように反映することができるかが、ひとつの大きな課題となる。本論では、都市計画における市民参加の原点となる近代都市計画家パトリック ゲディス(1854-1932)の理論である「生命の表記」に焦点を当て、その中における市民参加の位置づけを明らかにする。また、ゲディスの考え方を継承した都市計画家であるアーサー グリクソンの理論との比較を通して、近代からポスト近代の計画論において、個人と計画者が引き離されてきた過程について検証する。さらに、現代の都市計画が抱える問題を踏まえ、近代のゲディス理論が今日においで期待される役割とその可能性について検証する。なお、個人と計画者との関係を検討するための基盤として「近代化理論」と「従属理論」を用いて分析を行う。2.パトリック ゲディスの「生命の表記」 ゲディスは、1905年に「生命の表記」と呼ばれる思考機械を発表している。それは、生命の発展過程を示す4つの概念:「行為」(科学に基づく人間の活動の把握)、「事実」(日々の生活における「場所」の個人的な認識)、「夢」(個々の認識を超えた、人々が共感できる世界の構築)、「業績」(「夢」に基づく新たな世界の構築)によって構成される。「事実」では、都市の中での人々の活動を捉えるため、彼は「場所」(地理学)、「仕事」(経済学)、「人」(人類学)を社会学の基礎的概念として位置づけている。それ以降の「事実」「夢」「業績」は、これら3つとその組み合わせによるダイアグラムが徐々に発展していく過程を示している。さらに、この4段階の概念を1サイクルとする過程を繰り返すことにより、都市が進化しながらひとつのゴールへと収束していく。「生命の表記」の中でゲディスが思い描いていたものは、個人による場所の認識から政治的な議論までの道筋を構築することであったと言える。彼は、個人が地域に興味を持ち参加する市民となるよう、感情面での動機付けを行うと同時に、市民を新たな都市づくりを実現するための原動力として、重要な役割を担うよう位置づけていることが分かる。それは、市民とプランナーが、人間と自然との調和という社会が目指すべき共通の目標を抱き、言わば同一の社会観を有していることを前提としている。3.アーサー グリクソンのゲディス理論の解釈 ゲディス以後、生命の表記は、都市計画家であるアーサー グリクソンの理論の中に引用されている。1953年に発表した著書である『地域計画と開発』の中で、彼は独自の地域計画プロセスの枠組みを示している。彼の理論は、ゲディスが定義した4段階の概念のうち、一番初めの「行為」、つまり科学による人間活動の把握のみを用いている。それを含む計画過程として4つのステージ:自然科学の視点による「基本的過去」、社会科学の視点による「歴史的過去」と、それらの統合による「現在の文化的景観」、さらにそれが導き出す「計画的行動を設定している。ゲディスの「場所-仕事-人」は、社会科学の視点による「歴史的過去」として位置づけられており、より基礁的な学問としての自然科学による視点とあわせて、地域の現状を把握しようとしている点では、実証主義に基づくゲディスの理論と共通すると考えられる。しかしながら、ゲディスの生命の表記とグリクソンによる新たなアクションとしての都市計画プロセスとの相違点は、前者が、「行為」、「事実」、「夢」、「業績」からまた「行為」へと戻る循環するプロセスとして記述されているのに対して、後者は、「計画的行動」で終わる1サイクルとして表現されていることである。また、ゲディスの「行為」とグリクソンの「歴史的過去」の過程における「場所」、「仕事」、「人」を比較した場合、グリクソンの定義が、より詳細な専門的調査に基づく科学的データを重視しでいる。4.「近代化理論」としての生命の表記 今日の社会において、プランナーと市民の並列的な関係に基づく計画は、必ずしも人々のニーズを満たすことを保証しているとは限らない。ゲディス以後の都市計画のモデルでは、プランナーと市民の並列した位置づけと視点が明確に示されており、今日の計画理論にも共通して見られることが分かる。ゲディス理論の継承者であるグリクソンが描いた人と自然との調和に基づく地域づくりのプロセスでも、積極的に自らの生活の場を改善しようとする市民の力に依存することはなく、住民は、専門家としてのプランナーの意思決定に消極的に従うものとして位置づけられてしまった。ゲディスが「事実」の中で示した「感覚」、「経験」、「感情」といった日常の言認こよる地域の認識は、すべて専門のプランナーによる技術的な言語による地域の把握に吸収されている。このことは、ゼネラリストとしてのゲディスの理論がスペシャリストによる計画に移行する過程を示す一つの根拠として捉えることが出来る。今日、ゲディスの理論が過小評価されている理由として、市民プランナーの並列的な関係から捉えることができる。都市計画家ジョン・アボットは、近代からポスト近代に至る計画論を、「近代化理論」と「従属理論」として整理している。「近代化理論」では、その主たる目的を経済的、社会的発展と位置づけ、市民はその目的達成のために計画に参加するように位置づけられている。この視点に基づいた場合、ゲディスの理論は、人と自然との調和を目指すことをすべての個人にとっての共通の目的であると前提とすることにより、「行為」から「事実」の過程において、調査に基づく客観的な地域の把握と個人の知覚、経験、感情による主観的な地域の理解とが同一であると考えられており、それが「夢」としての新たな計画を導き出している。しかしながら、この問題点は、仮にこれら2つの認識に差異が生じた場合には、専門性とそれに基づく技術的言語が日常言語による主観的な認識を軽視する傾向にあること、またこうした専門性は、必ずしも複数の異なる住民の地域間のずれを調整する機能を持っていないことである。したがって、現代におけるゲディスの理論は、2つの問題を示していると言える。ひとつは、すべての人々が共有できる都市の姿が存在することを前提とすることはもはや出来ないということ、もうひとつは、プランナーが持つ専門的言語の優位性が、市民を都市計画から遠ざけていることである。5.結論:今日におけるゲディス理論の再評価 「近代化理論」としてのゲディスの理論が目指すプランナーと市民との同一の社会観の構築は、もはや今日の都市計画理論として応用できるものではない。しかしながら、彼が唱える「生命の表記」は、プランナーの価値観のみに依存することなく、個人が地域に対する自らの価値観を構築するための、個人の発展プロセスとして捉えることは可能である。このゲディス理論の解釈は、地域の経済的発展を第一の目的として置かず、その代わりに地域住民の異なる価値観や利益追求が共存できるように地域社会のエンパワーメントを推進し、個人のニーズを満たすための理論として定義することができると考える。このことにより、今日の都市計画の枠組みを、専門家による客観的態度と個人の主観的な自己表示的態度から捉え、その中で、ゲディスの「生命の表記」を、個人が自ら快適な生活の場、仕事の場を追求するためのひとつの手法として位置づけることが可能となる。さらに、より包括的な意味における都市計画には、これら2つの態度とそれぞれの価値規範を超えた公共圏の構築が必要であり、その中で両者の具体的な合意形成を行うことが求められる。
著者
樋口 伊佐夫 佐藤 文昭
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.159-167, 1981-03-20 (Released:2009-06-12)
参考文献数
8

放射線の生体に及ぼす危険度の評価に,発がんによる寿命短縮の重要なことが認識されつつあるが,これに関する定量的研究はまだあまり見られない.筆者らは,その一人佐藤らによって得られた,マウスについての一連の系統的な実験結果から,電離放射線の危険度に関する知見を得るため,まず寿命短縮に対する個々の死因の寄与を計測することを考えた.いまあるきまった照射条件の場合について調べるものとする,考察の対象となるマウスの集団は非照射群(対照群)と照射群とから成る,その各々について,平均寿命ならびに各死因ごとの死亡発生率と死亡時の平均年令が実験データから得られるので,問題は二群間における平均寿命の差に対する各死因の寄与を,それらの情報を用いて算出することである.このためには単純に死因別に,平均死亡年令と死亡発生率の積の二群間における差をつくればよさそうに見えるが,実はそのような量を測っても有用な情報とはならないことが多い.筆者らは,寄与を表わす量として,いくつかの式を試行錯誤的に実験データに適用してみた結果,解釈がつきやすく役に立ちそうな量として,本文の式(4),(5),(14)によって定義されるGtを得た.それをこのような場合の寄与として用いることを提案ずる.この量の導出にあたっては,特定のデータへの適用の妥当性を指針としたが,結果の式には一般的な意味づけもできるので,適用し得る場合が少くないと思われる.
著者
佐藤 文昭 見上 彪 林 正信 喜田 宏 桑原 幹典 小沼 操 遠藤 大二 児玉 洋 久保 周一郎
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1987

本研究の主眼は有用な動物用リコンビナント多価ワクチンの作出に必要な基磯実験の実施にある。リコンビナント多価ワクチンはベ-スとなるベクタ-ウイルスとワクチンの決定抗原遺伝子を結合することにより作出される。ベクタ-ウイルスとしてはマレック病ウイルス(MDV)と鶏痘ウイルスに着目し、それらのチミジンキナ-ゼ遺伝子中に挿入部位を設定した。また同時に、MDVの感染から発病の過程に関る種々の抗原遺伝子の解折とクロ-ニングを行った。すなわち、ワクシニアウイルスをベ-スとしてNDVのHN蛋白遺伝子を組み込んだリコンビナントワクシニアウイルスを作出し、NDV感染防御におけるHN蛋白に対する免疫応答が感染防御に重要な役割を果たすことを明かにした。加えて、インフルエンザウイルスおよびニュ-カッスル病ウイルスの感染防御に関る抗原遺伝子の解折により、抗原遺伝子群の変異を検討した。続けて上記のウイルスベクタ-に外来遺伝子を組み込み、リコンビナント多価ワクチン実用化への可能性を検討した。すなわち、ニュ-カッスル病ウイルス(NDV)のヘマグルチニンーノイラミニダ-ゼ蛋白(HN蛋白)とマレック病ウイルスのA抗原の遺伝子をバキュロウイルスベクタ-に組み込み、生物活性と抗原性をほぼ完全に保持した蛋白を得ることができ、ワクチンとしての使用に有望な結果を得た。MDVの単純ヘルペスウイルス(HSV)のB糖蛋白類以蛋白遺伝子をバキュロウイルスベクタ-へ組み込み、高純度の蛋白を得た。さらに、本研究では、将来非常に有用なワクチンを作出するための基磯的な知見とリコンビナント多価ワクチンの実用化を近年中に可能にする実験結果も含むといえる。これらの有用な知見により、本研究は初期の目的を達成したばかりではなく、リコンビナントワクチン実用化への次の目標である野外試験による効用の証明のためにも一助となったといえる。