52 0 0 0 OA 気象変化と痛み

著者
佐藤 純
出版者
日本脊髄外科学会
雑誌
脊髄外科 (ISSN:09146024)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.153-156, 2015 (Released:2016-01-20)
参考文献数
18
被引用文献数
3 4

慢性痛が天気の崩れで悪化することは以前より知られており, 疼痛治療の臨床において重要な問題である. 筆者は, 気象要素 (気圧, 気温) による慢性痛悪化のメカニズム研究により, 日常体験する程度の軽微な気圧変化あるいは低温への曝露が慢性痛モデル動物の痛み行動を増強し, 慢性痛有訴者の症状を再現することを実証してきた. また, 気圧変化による痛みの増強には内耳の気圧感受メカニズムが関与することを明らかにし, 温度変化による痛みの増強には皮膚の温度受容線維の反応性の変化が原因である可能性を示した. また, 慢性痛有訴者の一部では気圧や気温の変化に対して自律神経系が過剰に反応することがあり, それが症状悪化のもう1つの原因であることを示唆した.
著者
佐藤 純
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.219-224, 2003 (Released:2004-02-16)
参考文献数
30
被引用文献数
1 4

著者らは慢性痛が前線通過や気温低下の際に悪化する現象の科学的実証とそのメカニズムを明らかにする目的で,慢性痛モデルラットを用いた人工環境曝露実験を行ってきた.これまでに,天気変化でみられる程度の気圧低下(大気圧から27hPa減圧)と気温低下(22°Cから7°C冷却)により単関節炎モデルと神経因性疼痛モデルの疼痛行動が増強することを明らかにし,いわゆる「天気痛」を動物モデルで再現することに成功した.そして,気圧低下の疼痛増強作用には交感神経活動が重要であること,また気温低下による疼痛増強のメカニズムにおいては,病態時に出現する皮膚冷感受性線維の感作が重要な役割を担っていることも見出した.さらに,内耳破壊を施した神経因性疼痛モデルを用いた気圧低下実験の結果から,気圧の変化を検出する機構(気圧検出センサー)がラットの内耳前庭部に存在することを示唆する結果を得た.
著者
佐藤 純 稲垣 秀晃 楠井 まゆ 戸田 真弓
出版者
愛知医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

臨床実験:天気の悪化で疼痛の増強を示す天気痛被験者に対して、40hPa分の低気圧暴露を行うと痛みの増強と交感神経興奮,さらに鼓膜温を上昇させた.2015年3月~2018年6月に当科外来を受診した天気痛患者53名について問診調査を行った.受診患者は女性が多く,痛みに加えて,不安・抑うつはそれほど高くないが,破局化思考が高い傾向にあった。動物実験:野性型マウスに-40 hPa分の低気圧暴露を行うと,上前庭神経核におけるc-fos陽性細胞数(すなわち神経細胞の興奮)が有意に増加することが明らかとなり,半規管あるいは球形嚢に気圧を感知する部位が存在することが示唆された.
著者
佐藤 純
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

1.気象病の病態機構を探るため、日常体験する程度の寒冷(22℃から15℃)、低気圧(大気圧から27hPa減圧)がラットの自律神経パラメータに与える影響を調べた。低気圧により心拍数と血圧は一過性に上昇した。心拍間隔変動値(LF/HF値)も速やかに上昇した。曝露後はすみやかに曝露前値に戻った。低温により血圧・心拍数は徐々に上昇した。LF/HF値は曝露直後に速やかに上昇した。曝露後は曝露前値にゆっくりともどった。以上より、両曝露は血圧・心拍数,交感神経活動を異なった時間経過で上昇させることが分かった。2.坐骨神経損傷により,SD, Wistar, Lewisラットの安静時の平均血圧,心拍数は術後4〜11日に上昇した。一方,副交感神経活動の指標である心拍間隔変動値(HF値)は術後15日以降に上昇した。よって,神経損傷により,早期には交感神経優位,その後は副交感神経優位の自律神経バランスになることが分かった。術後4-19日目において低気圧の効果を繰り返し調べたところ,Lewisラットにおいて特に平均血圧と心拍数が増加が著しかった。慢性痛病態は自律神経系の低気圧反応を変化させるが,その効果には系統差がみられることが明らかになった。3.気圧検出器官が内耳に存在する可能性を実験的内耳破壊ラット用いて検証した。SDラット一側の坐骨神経絞扼手術または脊髄神経(L4)結紮術を施し慢性痛ラットを作成した。両側の中耳腔に鼓膜を介して砒素を注入し前庭破壊を施した。後肢足底に圧刺激を与え逃避行動を観察した。低気圧は、神経損傷群でみられた痛覚過敏行動を増強したが、この効果は前庭破壊によって消失した。一方、低温曝露でみられた痛覚過敏行動の増強は、前庭破壊の影響を受けなかった。以上から、気圧センサーが内耳器官に存在する可能性が示唆された。
著者
佐藤 純 溝口 博之 深谷 佳乃子
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.3-7, 2011 (Released:2011-05-07)
参考文献数
12

うつ病性障害に代表される気分障害の出現頻度は増加しており,現代社会での大きな問題となっている.以前より天候変化が気分障害の発症と悪化に影響すると考えられているが,実証研究は行われていない.そこで,筆者らは気分障害が前線通過や悪天候の際に悪化する現象の科学的実証とそのメカニズムを明らかにする目的で,抑うつモデルラットを用いて人工環境暴露実験を行ってきた.これまでに,天気変化で見られる程度の気圧低下(大気圧から 20 hPa 減圧)により,抑うつモデルラットが示すうつ様行動が増強することを明らかにし,気分障害(うつ病)が気圧低下時に悪化する現象を動物モデルで再現することに成功した.
著者
佐藤 純 溝口 博之 深谷 佳乃子
出版者
Japanese Society of Biometeorology
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.3-7, 2011

うつ病性障害に代表される気分障害の出現頻度は増加しており,現代社会での大きな問題となっている.以前より天候変化が気分障害の発症と悪化に影響すると考えられているが,実証研究は行われていない.そこで,筆者らは気分障害が前線通過や悪天候の際に悪化する現象の科学的実証とそのメカニズムを明らかにする目的で,抑うつモデルラットを用いて人工環境暴露実験を行ってきた.これまでに,天気変化で見られる程度の気圧低下(大気圧から 20 hPa 減圧)により,抑うつモデルラットが示すうつ様行動が増強することを明らかにし,気分障害(うつ病)が気圧低下時に悪化する現象を動物モデルで再現することに成功した.<br>
著者
林田 太郎 佐藤 純
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.1-11, 2009-06-01 (Released:2009-07-24)
参考文献数
13
被引用文献数
2 3

本研究の目的は,これまで我が国の心理学において取り上げられることがなかった自己憐憫について,過去の事例研究や自由記述の結果をもとに概念を整理し,その結果に基づいた尺度を作成して実証的に検討することであった。研究1では,大学生に自己憐憫の経験を尋ね,自己憐憫とは日常的な場面でも生じるもので,その内容としては他者を意識した感情や反応があることが明らかにされた。研究2では,その結果をもとに自己憐憫尺度を新たに作成し,322名の学生を対象に質問紙調査を実施した。確認的因子分析の結果から,3因子モデルが妥当であることが確認された。また,α係数や再検査信頼性係数は十分な値を示し,信頼性が確認された。妥当性を検討するために統制感,孤独感,怒りの表出との相関を検討した結果,ある程度予想通りの結果が得られ,妥当性を確認することができた。
著者
佐藤 純一
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.321-337, 2010-12-31 (Released:2012-03-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1

日本の社会学にとって,医学は,「周辺領域」であり続けている.なぜ,医学領域は社会学にとって周辺であり続けてきたのか.どのようにしたら,社会学は医学に関与できるのか.その周辺に社会学(社会学者)が進出できるのか.本稿は,医学部において,社会学教員として社会学を教えてきた経験をもつ筆者が,その経験から,これらの論点を議論することを目的とする.本稿の議論で指摘する第1点は,日本の医学部の医学の生物医学(biomedicine)偏重性である.疾病普遍概念を核にもつ生物医学パラダイムと,病気の社会的構築を論ずる社会学主義の対立は,非和解的なのか,社会学が屈服・妥協するのか,排除されるのか.指摘する第2点は医学教育の「特殊性」である.日本の医学教育は,システムから教育内容(カリキュラムから教授方法まで)も,国家によって制度化されている.生物医学ドミナントで制度化された「医学教育コア・カリキュラム」体制の中で,社会学,また社会学者は,どのように振る舞えるのか.第3点として指摘するのは,医学部に支配的な「医師至上主義(イデオロギー)」である.「医学部では,医師でなければ人でない」と他学部出身者にいわしめるほどの,「すべての行為における医師至上主義」に,社会学者はどのように対峙し,医学帝国に参入し,医学部で社会学(教育)できるのであろうか.
著者
輕部 雄輝 佐藤 純 杉江 征
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.386-400, 2015 (Released:2016-01-28)
参考文献数
27
被引用文献数
8 4

本研究の目的は, 大学生が企業からの不採用経験をいかに乗り越え就職活動を維持していくかという就職活動維持過程に焦点を当て, 当該過程で経験する行動を測定する尺度を作成し, その信頼性と妥当性を検討することである。2013年および2015年新卒採用スケジュールの就職活動を経験した大学生に対して, 2つの質問紙調査を行った。研究1では, 212名を対象に6つの下位尺度から構成される就職活動維持過程尺度を作成し, 一定の内的整合性と妥当性が確認された。研究2では, 72名を対象に作成尺度と就職活動の時期との検討を行い, 時期によって行われやすい行動が明らかとなり, 過程を測定する尺度としての妥当性が確認された。以上から, 就職活動の当初より行われやすいのは, 不採用経験を受けて当面の活動を維持するための現在志向的行動であり, 当該経験の蓄積や一定の就職活動の継続に伴って次第に, より現実的な将来目標を確立していく思考的作業を含む未来(目標)志向的行動が追加的に行われるようになることが示唆され, 作成尺度が就職活動維持過程における一次的過程と二次的過程を捉えうることが示された。
著者
佐藤 純
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.367-376, 1998-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
18
被引用文献数
9 15

本研究は, 学習方略に対する有効性の認知, コストの認知, 好みが, 学習方略の使用に及ぼす影響について調べた。426名の小・中学生が, 学習方略の認知及び使用を評定する質問紙に回答した。その結果, 学習方略の有効性を認知し, 好んでいる学習者ほど使用が多く, コストを高く認知するほど使用が少ないことが明らかとなった。また, メタ認知的方略は, 他の方略よりもコストを高く認知され, 使用が少ないことが示された。さらに, メタ認知的方略を多く使用する学習者は, 学習方略のコストの認知が使用に与える影響が少ないことも明らかとなった。
著者
佐藤 純
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.334-337, 2022 (Released:2023-01-25)
参考文献数
7

複眼の六角形タイル構造は物理的に安定と言われ,細胞形態が物理的制約に従って決められているという考えと合致する.しかし,ある種の変異体においては物理的に不安定な四角形タイルに変化する.ハエの複眼が六角形および四角形タイルを示す機構を解明することにより,細胞形態を幾何学的に制御するメカニズムを明らかにした.
著者
佐藤 純
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

天候変化に影響を受ける疾患(気象病)のメカニズムを,慢性痛モデル動物と気象病患者を被験者とする研究で明らかにしてきた。本研究計画では,メカニズムを明らかにする動物実験と慢性痛患者を対象とした臨床実験をさらに進めた.この連携研究により,気象病のメカニズムにおける内耳の重要性について明らかにし,効果的な予防治療法の糸口を見つけることができた.
著者
小山 純一 仲西 城太郎 佐藤 純子 野村 純子 鈴木 裕美子 増田 嘉子 中山 靖久
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.16-26, 1999-03-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
22
被引用文献数
4 3

健常な人にとっての一般的な皮膚の悩みとして, 皮膚表面に生じる落屑の発生があげられる。冬季の肌荒れによくみられる現象である。形態学的, 生化学的な検討により肌荒れの現象面については解明されてきたが, 落屑の発生メカニズムはまだ明らかでない。本研究では角層の接着, 剥離のメカニズムを明らかにし, どのような因子が影響しているのか, またどのようなスキンケアが有効かを検討した。角層中には2種類のセリン酵素が存在し, それぞれトリプシン様 (30kDa), キモトリプシン様酵素 (25kDa) であることがわかった。遺伝子解析によりキモトリプシン様酵素はすでに報告されている角層中のキモトリプシン様酵素 (SCCE) と一致した。トリプシン様酵素はIV型トリプシノーゲンと新奇なトリプシノーゲンであることがわかった。角層シートは緩衝液中で単一細胞にまで分散するが, 分散した角層からはデスモソームは検出されなかった。逆に熱処理した角層やセリン酵素阻害剤を添加した場合はデスモソームは分解されず, 分散も起こらなかった。ロイペプシンあるいはキモスタチンの単独では抑制効果はアプロチニンの半分でしかなかった。しかし, ロイペプシンとキモスタチンを混合した場合はアプロチニンと同程度の抑制効果がみられた。この結果からデスモソームが角層細胞の接着に大きな役割をはたしており, このデスモソームを2種類のセリン酵素 (トリプシン様, キモトリプシン様) が分解することにより角層細胞が剥離することが明らかになった。加齢によりトリプシン様酵素の活性が低下することが明らかになり, 加齢による角層の肥厚に酵素活性の低下が関与していることが示された。酵素によるデスモソームの分解は角層中の水分に影響されることが明らかになった。冬季の乾燥により角層中の水分が減少しデスモソームの正常な分解が妨げられた結果, 落屑が生じると考えられた。この研究により角層の剥離過程に二つの因子が関係することがわかった。一つは角層中の水分量である。酵素自体は正常であっても角層中の水分量が減少することにより酵素の働きが妨げられる。この場合は保湿剤が有効であった。もう一つは酵素活性そのものの低下であった。この場合にはデスモソームの分解を促進する薬剤が必要であった。ジカルボン酸類がデスモソームの分解を促進しその種の薬剤としての可能性が示唆された。
著者
小林 輝雄 藤橋 芳弘 円谷 哲男 佐藤 純一 大浦 泰 藤井 保和
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.117, no.5, pp.609-615, 1997-04-20 (Released:2008-12-19)
参考文献数
15

In Japan speed tests in 300km/h region have been carried out since Oyama Test Line recorded a 319km/h run in 1979. Meanwhile TGV recorded a 515.3km/h run by an electric locomotive installed with a pantograph in 1990 and ICE did 406.9km/h using similar train in 1988. High speed current collection tests over 400km/h using electric railcars have been desired in Japan. Problems of high speed tests are: train speed approaching wave propagation velocity, multi-pantographs resonance, and too large uplift of contact wires caused by lift. It is necessary to keep wave propagation velocity of contact wire higher than train speed. CS contact wire and TA contact wire were compared in high speed tests because it was impossible to get a good current collecting performance by using hard-drawn copper contact wires. In December, 1993 using these contact wires we carried out high speed running tests of 400km/h region on Jyoetsu Shinkansen with the test train STAR 21 which JR EAST built for high speed tests. This paper gives the current collecting performance of these contact wires predicted by simulation and running tests at 425km/h.
著者
三波 俊郎 宇多 高明 石川 仁憲 大井戸 志朗 遠藤 和正 佐藤 純一郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.I_646-I_650, 2013 (Released:2013-11-12)
参考文献数
3
被引用文献数
1 2

On the Hamamatsu-goto coast located west of the Tenryu River mouth, beach has been eroded severely in recent years, resulting in the exposure of the seawall protecting the sewage facility. Now urgent measures are required to prevent the damage to the seawall. In particular, large-scale offshore troughs have developed in this area, resulting in strong wave action to the seawall. Erosion around the Tenryu River mouth was investigated using aerial photographs, NMB and bottom sounding data along with the grain size analysis of seabed materials.