著者
内田 立身 西村 拓史 瀧本 宏美 佐藤 美津子 西尾 由美子 福家 洋子 野崎 正範
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血学会雑誌 (ISSN:05461448)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.33-34, 1998-02-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
6

We evaluated the effect of repeated apheresis on storage iron status in 82 males and 138 females. Storage iron was calculated according to the formula proposed by the National Health and Nutrition Examination Survey (NHANES) as previously described. Calculated storage iron after repeated apheresis was 362±282mg in male donors and 128±176mg in females. These values were significantly lower than those in normal subjects and 400-ml repeated whole blood donors. A total of 12.2% of males and 45.7% of females were in negative iron balance before donation. The high prevalence of storage iron deficiencfy may be due to residual blood in the circuit or other factors.
著者
内田 立身 国分 啓二 酒井 一吉 五十嵐 忠行 鈴木 照夫 樋口 利行 木村 秀夫 松田 信 刈米 重夫
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.146-153, 1984-06-30 (Released:2009-01-22)
参考文献数
24

慢性関節リウマチの鉄代謝異常を,血清鉄,総鉄結合能,血清フェリチン,フェロキネティクス,網内系細胞内鉄代謝の面から検討した.対象42例中57.1%に貧血があり,そのうち63%が正色性, 24%が低色性, 13%が高色性であった.血清鉄は66%が低値をとり総鉄結合能は82%が正常または低値,血清フェリチン値は83%が正常または高値を示し,鉄欠乏性貧血のそれと異なっていた. 15例のフェロキネティクスでは, PID T〓の短縮, PIT, RITの低値があり,これらは血清鉄低値,骨髄赤芽球系細胞の低形成の所見に見合うものであつた.59Fe標識コンドロイチン硫酸鉄を用いた網内系細胞の鉄動態の検索では,投与4, 6時間目に網内系細胞より動員される鉄量が正常に比し少なく,網内系細胞よりの鉄の動員の障害,いわゆるRE iron blockがあることが示唆された.この動員の障害により,血清鉄低値をきたし,骨髄への鉄供給不足,これに伴う無効造血の存在が病態として観察された.他方,骨髄では,造血幹細胞レベル,赤芽球細胞レベルでの低形成があり,これがPIT, RITの低値と関係していると思われ,貧血の主たる成因であることが類推された.
著者
内田 立身 河内 康憲
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.436-439, 2014 (Released:2014-05-20)
参考文献数
13

鉄欠乏性貧血の症状としての異食症のうち氷食症について検討した。日本鉄バイオサイエンス学会の診断基準で診断した鉄欠乏性貧血81例を対象とした。鉄欠乏性貧血全例に氷食行為の有無を問診した。同時に他の異食症,組織鉄欠乏の所見,血液学的データを検索し,鉄治療後のこれらの経過を観察した。氷食症は,氷食行為が強迫的異常行為として見られるもの,鉄剤の投与で氷食行為が消失するものと定義した。その結果,81例中13例(16.0%)に氷食症が見られた。氷食症はヘモグロビン値,血清フェリチン値とは関係がなく,鉄剤の投与により比較的早期に改善した。氷食症は他の異食症が極めて稀なのに比して,日本人の鉄欠乏性貧血の症状としてよく見られることが判明した。氷食症の本態は不明であるが,中枢神経系の生化学的研究の必要性が示唆された。
著者
内田 立身 西村 拓史 瀧本 宏美 佐藤 美津子 西尾 由美子 福家 洋子 野崎 正範
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血学会雑誌 (ISSN:05461448)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.215-217, 1996-10-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
8
被引用文献数
1

We evaluated the effect of repeated 400ml whole blood donation on storage iron status in 26 males and 196 females. Iron status was estimated from hemoglobin concentration, transferrin saturation and serum ferritin. Storage iron was calculated according to the formula proposed by the National Health and Nutrition Examination Survey (NHANES). Calculated storage iron after repeated donation of 400ml was 806±174mg in male donors and 292±248mg in females. Levels after 400ml donation decreased to 606mg in males and to 92mg in females. Among females, 20.5% were in negative iron balance before donation, increasing to 37.7% after donation. However, no significant decrease in storage iron by repeated blood donation was recognized, when standards for blood collection were strictly complied with.
著者
内田 立身 河内 康憲 渡辺 礼香 西原 利男 三宅 隆明
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.123-128, 1996 (Released:2009-04-28)
参考文献数
11
被引用文献数
1

鉄欠乏性貧血に対する静注療法については,投与鉄量の計算式として,わが国では古くから中尾の式が用いられてきた。中尾の式は,日本人の循環血液量を80 ml/kg, 貯蔵鉄量を17 mg/kgとして計算するが,今回,51Cr法および血清フェリチン値からの検討で,循環血液量65 ml/kg, 貯蔵鉄量500 mgが妥当であると考えられ,これらに基づき鉄投与量を3.4×(16-X)/100×65×体重+500 mg(X: 治療前のヘモグロビン値)あるいは[2.2 (16-X)+10]×体重mgと設定した。現実にこれに基づいて治療を行ったところ,ヘモグロビンの回復も順調で,その後の減少も持続出血のない例では認められないことから,鉄剤の静脈内投与量は,少なめに見積もった上式が適当であると結論した。
著者
内田 立身 田中 鉄五郎 海野 政治 七島 勉 国分 令子 油井 徳雄 木村 秀夫 室井 秀一 松田 信 刈米 重夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10, pp.1401-1407, 1981-10-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

日本人女性の鉄欠乏の頻度と成因を明らかにするため,次のごとき調査を行なつた.福島市およびその近郊,避地農村,化学工場,女子高校生999名を対象に,ヘモグロビン値,トランスフェリン飽和率,血清フェリチン値を測定した.その結果,鉄欠乏の頻度は,鉄欠乏性貧血8.4%,潜在性鉄欠乏4.2%,前潜在性鉄欠乏37.4%,正常38.0%,その他12.0%となり,日本人女性の50.0%に何らかの鉄欠乏があることが判明した.この鉄欠乏の成因として,人口構成年令が進むにつれて,血清フェリチン値が上昇することから,月経,分娩などによる鉄の喪失によることが考えられた.また女子高校生の食事鉄量の調査から,摂取鉄量1日あたり10.8~13.4mg,吸収鉄量1.5~1.6mgとなり, iron balanceは負に陥る傾向のあることも明らかとなつた.このように,広範にみられる鉄欠乏の対策として,欧米で実施されている鉄添加食品(iron fortification)の利用が考慮されるべき時期にあることを指摘した.
著者
内田 立身
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.6, pp.1194-1200, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
11

鉄の需要が供給を上回る状態が続くと,貧血のない鉄欠乏に陥り,さらに進行すると,鉄欠乏性貧血となる.鉄欠乏の進行により組織鉄欠乏を来し,舌乳頭萎縮や食道の襞形成,匙状爪などを呈するに至る.また異食症など特異な症状も見られる.鉄欠乏や鉄過剰にいたる経過をもっとも鋭敏にとらえる指標は,血清フェリチンである.日本人女性では約半数が何らかの鉄欠乏状態にあり,鉄欠乏性貧血は女性の10%程度の頻度でみられる.鉄欠乏克服の戦略として,鉄摂取への食事指導,鉄補助食品の使用,鉄添加食品の導入があげられる.