著者
八木 聰明 加我 君孝
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.139-144, 1980 (Released:2011-11-04)
参考文献数
20
被引用文献数
3 3

神経耳科学的諸検査などから, 脳幹に広範囲な, かなり強い障害の存在が推測された, 変性疾患6症例のABRについて, 腫瘍例と対比し, 報告した.各症例のABR所見は, 各波潜時とI波, V波間潜明は正常範囲であり, 振幅にも大きな変化は認められなかった. このことから, 脊髄小脳変性症などの変性疾患では, 脳幹障害が神経耳科学的諸検査から十分に推測されても, その割に聴覚路は障害されにくく, ABRの異常は, あまり高率におこらないことが推測された.
著者
山川 恵子 伊藤 憲治 湯本 真人 宇野 彰 狩野 章太郎 加我 君孝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.658, pp.19-24, 2004-02-12
参考文献数
9

縦書き・横書きの表記形式の単語、シンボル、ラインを中心視野に提示し、視覚誘発脳磁場の比較を行った。全頭および左右側頭部の被験者全員分のRMS (Root Mean Square) を算出し、およそ5ms毎に縦・横×刺激の種類(2×3)の分散分析を行い、条件ごとの反応に有意差がみられるかを検討した。単語の処理においてのみ出現する反応として、(1)180-200ms、(2)250msあたり、(3)370msあたりをピークとする三つの成分(N180、RP、P300)が共通して確認された。どの成分においても単語刺激では縦書きの反応が横書きよりも一貫して強く、縦書き文字の処理は横書きに比べ何かしらの高度あるいは困難な過程が含まれることが示唆された。縦書き・横書き文字の脳内の認知処理における本質的な違いが示唆され、これまでの研究で議論されてきたような読みにおける縦書きの効率の悪さは、サッケードや眼球運動によってのみ起因するものではない可能性が示された。
著者
高井 禎成 加我 君孝 菅澤 正 篠上 雅信
出版者
日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.83-86, 1998-05-25 (Released:2011-06-17)
参考文献数
14

To determine the indication of cochlear implant, an electrical auditory test on the promontry isperformed to investigate sense of sound at the auditory nerve or the nerve terminal. However, theroutinely used promontry stimulation test requires penetration of the tympanic membrane. Becauseof this harmful procedure, the promontry stimulation test is not easy to apply to normal subjects.Recently, one electroaudiometer has developed by MED-EL which has adopted a non-invasivemethod. A silver ball electrode is placed near the tympanic membrane to give electrical stimulationto the cochlea.Using this procedure, we investigated how people with normal hearing can feel electrical stimulation.Our results showed that no one could feel the stimulation as sound at low frequency of electricpulse, but considerable number of people could feel the stimulation as real sound at high frequencyof electric pulse. This auditory sensation could possibly be caused by electrophonic effect.This electroaudiometer with a silver ball electrode is less harmful and easily used for varioussubjects.

4 0 0 0 OA 聴覚と音痴

著者
加我 君孝
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.266-271, 2000-07-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
7
著者
南 修司郎 山本 修子 加藤 秀敏 榎本 千江子 加我 君孝
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.232-236, 2018-06-30 (Released:2018-08-11)
参考文献数
12

要旨: LENA (Language ENvironment Analysis) システムとは, 主に乳幼児を対象とした周囲の音声言語環境を録音及び解析する統合情報処理ソフトウェアである。今回, 聴力正常児5例, 先天性難聴児2例, 難聴高齢者7例を対象に LENA システムの日本語環境での解析可能性を検証し, LENA システムを用いた聴覚言語リハビリテーションの応用を探った。いずれのグループでも, LENA システムを用いて音声言語環境を調査することは可能であった。聴力正常児と難聴児の聞こえの環境は, ほぼ同等であったが, 高齢難聴者では, 乳幼児に比べてテレビなど電子音の割合が増えていた。大人の発話数, 子供の発声数, 会話のやり取り数という言葉の量についても, 日本語環境で LENA システムを用いて測定可能であった。しかしながら英語環境におけるパーセントタイル値と直接比較することは出来ないため, 日本語環境でのコントロールデータの構築が待たれる。
著者
加我 君孝 朝戸 裕貴
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.262-266, 2017 (Released:2018-03-31)
参考文献数
7

両側小耳症外耳道閉鎖症の術前の両耳骨導補聴器装用下および両耳外耳道形成術後の両耳気導補聴下の方向感がどの程度成立するかこれまで明らかではない。われわれは両側小耳症外耳道閉鎖症例に対して,10歳前後に耳介形成術と外耳道形成術の合同手術を過去20年にわたって実施している。方向感検査を術前に両耳骨導補聴下と術後の両耳カナル型気導補聴器の装用下に実施した。その結果両耳時間差も両耳音圧差も両耳骨導補聴下でもカナル型補聴下でも閾値の上昇を認めはするが成立することがわかった。
著者
大金 さや香 城間 将江 小渕 千絵 榎本 千江子 加藤 秀敏 加我 君孝 原島 恒夫
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.574-583, 2022-12-28 (Released:2023-01-18)
参考文献数
21

要旨: 人工内耳装用の後天性聴覚障害成人 (以下成人) 28名と先天性聴覚障害小児 (以下小児) 34名に対し, 旋律に関連する知覚能力と旋律の識別方略の特徴を検討する目的で, ピッチ識別, 3音のピッチパターン識別, 旋律識別の課題を実施した。その結果, 小児ではピッチ識別, ピッチパターン識別は有意に良好で, 旋律識別は両群共に困難であった。旋律の誤答分析から, 成人では同リズム内での誤答が多くリズムによる識別方略を有効に使用していたと推察されたが, 小児では一定の誤りの傾向は見られず, 課題の旋律がピッチやリズムを主体とした旋律としては学習されていないことが推測された。ピッチ識別は, 重回帰分析により先天性小児期 CI か後天性成人期 CI かの違い, 及び語音弁別能が関与している可能性が示唆された。今後, 旋律知覚のメカニズムの特徴を明らかにし, それぞれの特徴に配慮した音楽の聴取方法や楽しみ方など検証する必要があると考えられた。
著者
山本 修子 南 修司郎 榎本 千江子 加藤 秀敏 松永 達雄 伊藤 文展 遠藤 理奈子 橋本 陽介 石川 直明 加我 君孝
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.122, no.8, pp.1118-1126, 2019-08-20 (Released:2019-09-05)
参考文献数
12
被引用文献数
1

2017年に成人人工内耳適応基準が改定され, 高度難聴例が追加となった. そこでわれわれは当院成人人工内耳例から, 新基準で新たに人工内耳の対象となる症例の臨床像の解明とその装用効果の検討, 特例として適応を検討すべき症例の解明を目的に研究を行った. 当院で人工内耳埋込術を行った18歳以上の症例を対象に, 術前聴力データが従来の基準に該当する「旧基準群」, 新たに追加された基準に該当する「新基準群」, どちらにも該当しない「特例群」に分類した. 各群について, 手術時年齢, 発症時期, 難聴の原因・病態, 術後語音聴取能を調べた. 新基準群は全例が言語獲得後発症で, 原因不明の進行性難聴が大多数を占めた. 術後語音聴取能は新基準群と旧基準群は同等の結果であった. 特例群のうち非術耳の術前語音明瞭度が良好であった2例は常用に至らなかった. 視覚障害合併者は非合併者と比較して語音聴取能が良い傾向にあった. 新基準群の術後聴取能は旧基準群と同等で, 新適応基準により, 言語獲得後発症の進行性難聴患者の病悩期間を短縮できる可能性が示唆された. 特例群の中で Auditory Neuropathy および言語獲得後発症の視覚障害合併例に人工内耳が有用であった. 良聴耳に新基準も満たさない程度の残存聴力がある症例の非良聴耳に人工内耳を行った場合, 従来のリハビリテーションでは限界があると考えられた.
著者
増田 毅 加我 君孝
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.270-275, 2012 (Released:2012-10-01)
参考文献数
4
被引用文献数
2

Children with inner ear anomalies resulting in severe hearing impairment may show deficits in head control and independent walking. In the present study we examined the vestibular function in children with bilateral inner ear anomalies using a rotation test, and investigated the impact of the anomalies on motor development. Children with the Michel anomaly, which is characterized by a lack of inner ear differentiation bilaterally, are markedly slow in developing head control and independent walking. As muscle tonus is increased with the myelinization of motor neurons, independent walking becomes possible. On the other hand, children with severe inner ear anomalies, such as bilateral common cavity deformity and incomplete partition type I (Mondini deformity), show vestibular ocular reflex by the rotation test as they age, and normal independent walking and running become possible. These results demonstrate that, although children with inner ear anomalies may be slow in motor development in their infancy, their motor function increases to a normal level as they grow.
著者
城間 将江 菊地 義信 河野 淳 鈴木 衞 加我 君孝
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.755-764, 1998
被引用文献数
2

人工内耳装用者における音楽的要素の知覚度を調べる目的で, (1) リズム弁別, (2) 音程の弁別, (3) 楽器音の音色識別, (4) 旋律の知覚, (5) アカペラ歌唱の知覚テストを作成し施行した。 対象は成人中途失聴者16名で, 14名がNucleus 22, 2名がClarion人工内耳システムの使用者であった。 各テストの平均正答率は, リズムが90%, 音程は51.8%, 音色は25.8%であった。 旋律は11.8%と低い正答率であったが, 同旋律のアカペラ歌唱では71.4%に改善した。 なお, 語音聴取率と旋律の知覚率との相関は低く, 人工内耳機器間による差も無かった。 本研究から, 現在の人工内耳システムは強度の時間情報伝達は良好でリズムや語音の知覚には適しているが, 微細なスペクトルエンベロープの弁別が必要な楽音の知覚には不十分であることが示唆された。
著者
富澤 晃文 力武 正浩 伏木 宏彰 坂田 英明 加我 君孝
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.43-52, 2017-02-28 (Released:2017-06-29)
参考文献数
15
被引用文献数
1

要旨: 聴覚障害乳児における VRA の条件付け形成月齢を明らかにすることを目的とした検討を行った。中等度~重度難聴の20名を対象に, インサートイヤホン装着下の気導 VRA (および骨導 VRA) による純音聴力測定を実施した結果, 月齢 6 ~ 11ヵ月の期間に19名 (95%) の条件付けが形成された。VRA の測定可能率は, 0 歳 6 ヵ月時点で 1名 (5%), 7 ヵ月で 5名 (25%), 8 ヵ月で 11名 (55%), 9 ヵ月で14名 (70%), 10 ヵ月で 18名 (90%) であった。気導 VRA の反応閾値 (2000Hz) と ABR の V 波閾値の間には強い正の相関 (r = 0.87) がみられ, 両者は近似した。VRA の平均反応閾値と条件付け形成月齢の間にはやや強い正の相関 (r = 0.58) がみられ, 聴力の程度が増すほど条件付け形成月齢が遅れる傾向が示された。一方, 運動発達 (定頸, 座位, 独歩) の遅れは条件付け形成月齢に有意な遅れをもたらさなかった。早期の聴覚補償とハビリテーションの上では, 0歳後半の月齢期に気導/骨導 VRA を重点的に実施した上で他覚的検査とのクロスチェックを行うことが重要と考えられる。
著者
城間 将江 菊地 義信 河野 淳 鈴木 衞 加我 君孝
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.755-764, 1998-12-31 (Released:2010-04-30)
参考文献数
16
被引用文献数
2 2

人工内耳装用者における音楽的要素の知覚度を調べる目的で, (1) リズム弁別, (2) 音程の弁別, (3) 楽器音の音色識別, (4) 旋律の知覚, (5) アカペラ歌唱の知覚テストを作成し施行した。 対象は成人中途失聴者16名で, 14名がNucleus 22, 2名がClarion人工内耳システムの使用者であった。 各テストの平均正答率は, リズムが90%, 音程は51.8%, 音色は25.8%であった。 旋律は11.8%と低い正答率であったが, 同旋律のアカペラ歌唱では71.4%に改善した。 なお, 語音聴取率と旋律の知覚率との相関は低く, 人工内耳機器間による差も無かった。 本研究から, 現在の人工内耳システムは強度の時間情報伝達は良好でリズムや語音の知覚には適しているが, 微細なスペクトルエンベロープの弁別が必要な楽音の知覚には不十分であることが示唆された。
著者
林 裕史 新正 由紀子 朝戸 裕貴 加我 君孝
出版者
The Society of Practical Otolaryngology
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.103, no.10, pp.903-907, 2010 (Released:2010-10-01)
参考文献数
4

In treating congenital microtia and atresia, we conduct simultaneous external canal plasty, tympanoplasty, and auricle elevation with plastic surgeons about 6 months after auricleplasty by only plastic surgeons. The results are good both cosmetically and functionally. We report 13 cases in which hearing did not improve satisfactorily after surgery using postoperative high-resolution computed tomography (HRCT) of the temporal bone. Lateral healing was seen in 9 (69%), new bone proliferation in 3 (23%), malpositioning of a cartilage block in 2 (15%), and both lateral healing and malpositioning of a cartilage block in 1 (7.6%).
著者
加我 君孝
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.312-319, 2013 (Released:2014-03-20)
参考文献数
8

新生児聴覚スクリーニングは,欧米だけでなく世界各国で実施されるようになり,わが国では約10年が過ぎた。各国の現在の状況はそれぞれ異なる。しかし共通した問題は,先進国においても聴覚口話法の教育施設が不足していることにある。この点はわが国も同様で,早期発見されても療育の体制が不十分であること,さらに新生児聴覚スクリーニングの実施率が約60%に過ぎないことが大きな問題である。この問題の解決のためには公費で全出生児の新生児聴覚スクリーニングを実施する他選択肢はない。