著者
菅 豊 北條 勝貴 宮内 泰介 川田 牧人 加藤 幸治 西村 明 中澤 克昭 市川 秀之 俵木 悟
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本年度、研究メンバーは、まず個々のフィールドで生起しているパブリック・ヒストリーをめぐる歴史実践の展開と深化に不可欠な重要課題を、フィールドワーク・文献調査等により精査するとともに、理論研究を行った。加えて、各メンバーの個別研究を統合し、成果を発表するために研究会を3回開催した。その研究会はパブリック・ヒストリー研究会というかたちで基本的に公開とし、現代民俗学会等の学術団体と共催することにより社会への研究成果の還元に努めた。また、本研究を世界的な研究水準とすり合わせるために、国内学会のみならず海外学術集会等で発表、意見交換を行った。主たる研究実績は下記の通り。○2017.4.6:北京聯合大学北京学研究基地・One Asia Foundation主催『北京学講堂:亜州文化共同体與首都比較』において「東亜文化共同体中的非物質文化遺産相関問題」と題して講演、○5.11~13:台湾文化部文化資産局主催国際シンポジウム『2017 亜太無形文化資産論壇-前瞻教育與当代実践』において「無形文化資産保存維護與公共民俗学:「共学」立場與方法之必要性」と題して講演、○5.20:現代民俗学会2017年度年次大会でシンポジウム「「民俗学」×「はたらく」-職業生活と〈民俗学〉的知」を共催、○7.7~10:第4回研究会「神代在住Oターン郷土誌家をめざして」、○10.15:第69回日本民俗学会年会で第5回研究会「パブリック・ヒストリー―歴史実践の民俗学―」パネル発表、○12.16~17:第6回研究会「『十三浜小指 八重子の日記』について語りあう」※研究会回数は前年度からの通算
著者
加藤 幸治
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.102-125, 1996-02-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
48
被引用文献数
2 1

本稿では情報サービスをめぐる地域的循環に焦点をあて,その実態分析を行なった.地域産業連関表の分析を通じて,情報サービス需要の地域的流動,その東京一極集中の特徴が,統計的にも明瞭となった.関東とりわけ東京都のみが全国規模の供給地として求心性をもち,地域的循環の軸心となっている.東北地域における情報サービスの循環をみても,それは需給いずれの面でも,全国レベルの経済循環との関連性が強く,地域経済との連関は薄いものであり,東北地域の経済循環に「内実化」されているとはいいがたい.情報サービス需要は企業間あるいは企業内事業所間の関係を通じて東京へと集中する.需要の地域的集中の要因は多様であり,それらは相互に関連し複合的に作用するとともに,累積的・循環的に東京への集中を促進する方向に作用している。このように現在の東京一極集中は,それを拡大,再生産する内的システムをもったものとして捉えることができる.
著者
加藤 幸治
出版者
神奈川大学 国際常民文化研究機構
雑誌
国際常民文化研究叢書13 -戦前の渋沢水産史研究室の活動に関する調査研究- =International Center for Folk Culture Studies Monographs 13 -Research on the Activities of Shibusawa Fisheries History Laboratory in the Prewar Period- = International Center for Folk Culture Studies Monographs 13 -Research on the Activities of Shibusawa Fisheries History Laboratory in the Prewar Period-
巻号頁・発行日
vol.13, pp.57-193, 2019-02-25

アチック・ミューゼアムには、「未完の筌研究」として語られる研究がある。残存する筌研究にかんする基礎データの調査は、戦後の日本常民文化研究所に引き継がれ、筌研究会の枠組みで河岡武春らを中心とした追跡調査が行われた。今回の共同研究においては基礎データ類の翻刻作業や整理作業、標本資料の熟覧調査を行った。「未完の筌研究」関連資料には、戦前の調査の資料として、①通信調査による「筌調査資料」、②筌に関する通信調査の発受信簿、③筌の実物の標本資料、③地図化や分類を試みた下図や手紙、調査メモ等がある。今回の調査では、①の通信調査と、③の民具との関係を調査したが、そのふたつには結びつく要素が乏しいことがわかった。渋沢水産史研究室は、海を舞台とした漁撈にのみ焦点をあてていたのではなく、農山村における河川や湖沼での内水面漁撈や氷上漁撈なども対象に含んでいた。筌研究は、民具研究としての内容以上に、田や水路、池などで行われてきた内水面漁撈の調査の一環とも位置付けられる。 筌研究は、郵便を活用した通信調査(アンケート調査)による方言調査とその分析を中心としながら、構造や部位の数の違いによる形態分類と分布の調査、漁撈の対象や場所のバリエーションの把握を中心とした内容であった。通信調査は、アチック・ミューゼアムの特徴ある調査法のひとつであり、水産史研究の「鯨肉食通信調査」「鵜飼調査」にも適用された。筌の通信調査は、これに「民具蒐集調査要目」や「喜界島生活誌調査要目」のような項目立てによる比較研究のための「筌調査要目」を立てたうえで行われた。 本稿では、「未完の筌研究」で残された資料の整理作業から見えてきた、アチック・ミューゼアムの方法論的実験について紹介したい。
著者
加藤 幸治
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.318-339, 1993
被引用文献数
3

本稿の目的は, 仙台市を事例として, 地方中枢都市におけるソフトウェア産業について, とくに事業所の性格・取引構造に注目し, 当該地域における展開と機能的特徴を, 実態に即して明らかにすることである. ソフトウェア産業の地方展開, なかでも地方中枢都市でのそれは, 域内の産業の「高度化」につながるとともに, 経済的中枢管理機能の分散の前提とみられている高次サービス機能の集積を促進するものであるとして, 政策立案者などの視点からは積極的な評価をあたえられていた. しかし, 今回対象とした仙台におけるソフトウェア産業の実態は, そうした「期待」を裏付けるものとはいいがたい. その取引構造の特質をみる限り, 仙台のソフトウェア産業はもともと受託計算の割合が高く, 後進的で, 技術的には低位にあり, 周辺的性格が強かった. 加えて, 80年代のソフトウェア産業におけるソフトウェア開発中心へという構造変化によって事業所の地方展開が促進されたことで, 周辺性は再編・強化された. 仙台のソフトウェア産業は,依然として, 技術的に低位にあって, 低次部門を担っているだけではなく, 東京資本の進出にともない「域外支配」が強化され, また東京からのコストダウン, リスク分散を目的とした外注利用の増加により, 下請として従属的性格を強めている. 東京一極集中構造の是正, 多極分散型国土の形成・促進の役割を果たすと期待されているソフトウェア産業の地域的展開ではあるが, 仙台市におけるその「成長」をみる限り, そうした「成長」も, 実際には, 企業内地域間分業の下に枠づけられたもので, 既存の地域構造, 地域間関係の下に組み込まれ, その再生産・強化に寄与している側面が強い.
著者
政岡 伸洋 岡田 浩樹 小谷 竜介 加藤 幸治 蘇理 剛志 沼田 愛 遠藤 健悟 大沼 知
出版者
東北学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、民俗学の立場から、以前の暮らしや他地域の事例も視野に入れつつ、東日本大震災の被災地で起こるさまざまな現象を調査検討し、新たな理解と課題を提示するものである。今回得られた知見として、①震災後の早い段階から民俗行事が行われ注目されたが、これは混乱の中での必要性から、震災前の民俗を活用し、新たに創出されたものであったこと。②暮らしの再建という点からみれば、4年経った被災地の現状は、やっと出発点に立った段階であり、今後もその動きを注視していく必要があること。③被災体験の継承については、災害のみならず地域の歴史や暮らし全体に関心を持つ地元研究者の育成が必要である点などが明らかとなった。
著者
加藤 幸治
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.225-241, 2005-09-30

本稿では,企業グループの企業戦略や組織再編の中で,子会社とりわけ情報サービス子会社を中心とするサービス関連子会社がどのように配置・展開され,どのように再編されているのか,IT企業グループであるA社グループの展開とその日本法人・日本A社における子会社・関連会社の展開を跡付けることを通して検討していく.日本の情報サービス産業においては,大企業の影響力がもともと強く,近年におけるグローバル競争の本格化,金融グローバル化(なかでも日本における国際会計基準の導入)によって,大企業グループの動向が情報サービス産業に与える影響がより一層強まっている.グループ全体の利益が優先される中,子会社の生産性や市場での優劣に関係なく,全社的視点から位置付けや方針が決定されているからである.その中で情報サービス産業の子会社・関連会社の立地・配置やその展開は,情報サービス企業の論理によって決まるというよりも,むしろそれを一部として内包する企業グループを取り巻く競争環境・競争条件,それに対応するグループの戦略・行動に大きく左右されている.地域的視点からみれば,企業(子会社)とその立地地域との関係はこれまで以上に希薄なものとなり,「企業の論理」が貫徹される傾向が近年ますます強まっている.こうした「グローバル化」を共通の起動因とした企業グループの行動は日本企業に広くみられており,企業論的視点が産業・企業と地域との関係を捉える上で,より重要性を増している.
著者
友澤 和夫 岡橋 秀典 石丸 哲史 加茂 浩靖 鍬塚 賢太郎 加藤 幸治
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、知識経済化の下で成長しているビジネスを取り上げて、それらの成長ダイナミズムを明らかにするとともに、立地や人的側面の把握を試みた。その結果、「ものづくり」の伝統がある地域では、知識の創造や導入により第2・第3の創業がみられ、それらが成長ビジネスとなっていること、およびそれを支える地域的ネットワークの存在が確認された。一方、地方圏ではこうした地域は少なく、知識経済化のもう1つの特徴であるアウトソーシングを支える企業・業者の成長に負っていることが示された。