著者
加藤 浩平
出版者
専修大学経済学会
雑誌
専修経済学論集 = Economic bulletin of the Senshu University (ISSN:03864383)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.1-20, 2013-11

統一後の東ドイツ経済は、中核都市での伝統的製造業の復活、新興産業の一気の移植、サービス経済化の進展などにより発展が見られる一方で、これまでの復興政策の見直しが始まっている。依然解消されない西側ドイツとの経済格差は、ドイツ分断に由来する東ドイツに固有の成長障害に根差すというより、西側でも一般的に見られる構造不況地域の問題であるとの認識が広まり、投資を広く誘導する従来の政策からイノベーションを促進する政策へと重点が移行され、教育機関の整備、R&D活動の支援が模索されている。また従来の復興政策では、市町村を始め地方自治体が上位自治体から財政援助を受けて、インフラ整備、都市再開発、住宅建設などを推し進め東部復興の主要な担い手となってきたが、連邦の特別財政援助の打ち切りが決まった現在、財政基盤の脆弱な地方財政の健全化が迫られている。さらに出生率低下による人口動態上の変化は、東ドイツの今後の経済発展にとり大きな制約条件となるだろう。