著者
北島 恭代 齊藤 昌子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.784-793, 2018-10-25 (Released:2018-10-25)
参考文献数
16

染織文化財を修復する際には,劣化,損傷した部分に別の布を当てて行われることが多く,修復される布と修復に用いる布の適合性が修復の出来映えを左右し,更に染織品のその後の寿命を左右する重要な要因となる.現在,補修布の選択は,修復を行う人が触感や経験から判断して行っており,客観的なデータに基づいた選択は行われていない. 本研究は被修復布と補修布の適合性を布の剛軟度の点から明らかにすることを目的とし,その第一段階として,染織文化財に使用されている布の剛軟度測定法(立ち曲げ法)を考案し,江戸時代以降の染織品に使用された絹布と染織文化財の修復に使用された絹布127 種の剛軟性を測定した.得られたデータをJIS L 1096 のハートループ法の結果と比較し,立ち曲げ法から得られたデータの有効性を確認した. 立ち曲げ法で測定した結果から,江戸時代の小袖裂と明治時代以降の着物裂,および修復用絹布の諸特性(厚さ,平面重,織密度,織組織)と剛軟性を定量的に明らかにした.その結果から江戸時代の小袖裂は,明治時代以降の着物裂に比べ薄地で軽く,軟らかい傾向にあることが分かった.