著者
藤井 吉隆 南石 晃明 小林 一 小嶋 俊彦
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.142-158, 2013 (Released:2013-10-01)
参考文献数
28
被引用文献数
1 5

本研究は,大規模水田作経営の作業計画に関わる熟練ノウハウの内容と特徴を解明するとともに,雇用型法人経営における従業員の能力養成方策確立の指針を提示することを目的とする.調査は滋賀県の雇用型法人経営を対象に実施した.その結果,作業計画に関わる知識・技能数はかなり多く,知識では,(1)農作業と同様に経営固有知識の占める割合が高く,多様な状況に応じて使い分ける内容が多いこと,(2)経営固有知識は知識の固有性の程度に応じて応用型,固有型に大別できることなどを明らかにした.また,技能では知的管理系技能が中心的であり,(1)判断の性質に応じて確定判断型,予測判断型に大別できること,(2)関連する知識・技能や情報を考慮して総合的に判断する技能であることを明らかにした.そして,非熟練者は経営固有知識や知的管理系技能の習得状況が低く,雇用型法人経営における従業員の能力養成に際しては,(1)経営固有知識などの准暗黙知を形式知化して体系的に整理する取り組み,(2)知的管理系技能の判断に必要な要因の全体像の把握を支援する取り組み,(3)予測判断型の知的管理系技能の判断に必要な状況変化の予測を支援する取り組み,(4)実践的なOJT(On the Job Training:職場内教育訓練)や計画的な労務管理の実施が重要になることを明らかにし,これらの具体的な取り組み方策を提案した.
著者
佐藤 正衛 南石 晃明
出版者
Japanese Society of Agricultural Informatics
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.53-65, 2011
被引用文献数
1

本研究の目的は,農薬使用の環境影響に配慮しうる営農計画支援システムを開発し,本システムを経営意思決定に活用する方法を提示することである.こうしたシステムの機能では,経済性,環境管理指標の営農指標群を同時算出する経営シミュレーションが実施できること,経営シミュレーションに利用する環境情報と財務情報等を整理・蓄積し,利用者独自のデータを組織内で共有利用する仕組みの実現が課題であった.そこで,以下のシステム機能を開発し,FAPS-DBとの統合化を行った.主な開発機能は,(1)農薬環境リスク指標算出,(2)温室効果ガス排出量推計,(3)独自データベースの管理とそのデータを利用した経営シミュレーションサービスの提供,(4)農業技術体系Excelデータブックの拡張である.開発システムとFAPS-DBとを統合化して経営シミュレーションを実施することにより,作付体系変更や価格変動等の経営内部・外部環境の変化による環境管理指標,経済性指標等の経営指標への影響を数量的,グラフィカルに把握可能であることを確認した.さらに,当システムによる営農シミュレーション分析を営農計画の意思決定場面でどのように活用するかを,組織内の各主体の役割との関係において考察し,環境配慮を支援する営農計画システムとしての利用可能性を明らかにした.<br>
著者
緒方 裕大 南石 晃明 長命 洋佑
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1-12, 2019 (Released:2019-04-01)
参考文献数
34
被引用文献数
1 2

農業経営における情報通信技術ICTの活用が進んでおり,今後もその重要性は増していくと考えられる.ICT機器の開発や試用は行われているが,ICTを活用している経営による費用対効果の評価を分析した研究は少ない.本稿では全国の農業法人経営を対象にしたアンケート調査をもとに,農業法人経営のICT費用対効果に対する評価の「背後に潜む構造」を明らかにした.まずICT費用対効果の潜在因子を抽出するために因子分析を行った結果,「生産の見える化」,「経営の見える化」,「利益確保」の3因子が抽出された.人材育成に対するICT活用の評価は「生産の見える化」,「経営の見える化」という2つの因子に高い因子負荷量を示しており,求める人材によって異なる因子の影響を受けることが示唆された.次いで,経営属性と因子との関係を分析した結果,ICT活用の評価が高いのは,経営類型別では「利益確保」における畜産経営であった.売上高別では「生産の見える化」と「経営の見える化」において売上高が高いほどICT活用の評価が高くなる傾向があり,「利益確保」においては「1–3億円」の経営が費用対効果が最も高かった.従事者数別では「生産の見える化」において従事者数が多いほどICT活用の費用対効果が高くなる傾向があった.
著者
南石 晃明 土田 志郎 飯国 芳明 二宮 正士 山田 優 金岡 正樹 淡路 和則 内山 智裕 八木 洋憲 西 和盛 澤田 守 竹内 重吉 藤井 吉隆 木下 幸雄 松下 秀介 佐藤 正衛 星 岳彦 吉田 智一
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-11-18

本研究の目的は、次世代農業経営革新の基礎となる人材育成システム構築に有益な知見を、学際的かつ国際的な視点から体系化することである。主な研究成果は以下の4つに区分できる。第1にスイス、フランス、ドイツ、デンマーク、イギリス、オランダ、スペイン等の欧州主要国の職業教育訓練の現状と課題について明らかにした。第2に、わが国の先進農業経営に人材育成の実態と課題を統計分析と事例分析を組合わせて明らかにした。第3に知識・情報マネジメントの視点から、情報通信技術ICT活用および農作業熟練ノウハウ継承について明らかにした。第4にこれらの知見の基礎的考察と含意を考察し、次世代農業人材育成の展望を行った。
著者
南石 晃明
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.141-159, 2002 (Released:2013-03-31)
参考文献数
13
被引用文献数
15 9

多様な営農リスクや経営目標を明示的に考慮できる営農計画手法を簡易に利用できるように,目標分析やリスク分析が行えるシステムを開発した.このシステムでは,試算分析と数理計画法の統合的利用が可能である.システムは,表計算ソフトをベースにVBAを用いて開発されており,手法面では多様な経営目標,収益リスクおよび作業リスク,労働や土地の制約に加えて機械作業時間や施設処理能力の制約が考慮できる点が特徴である.また,システム面では,機械作業可能時間等の算出機能,演算に用いるモデル構造の選択機能が特徴である.1996年7月の試作システムの配布開始から2001年12月末までの累積利用申込者数は575件であり,このうち66%を都道府県の農業改良普及センターや試験研究機関が占めている.システムの適用事例は少なくとも80以上があり,技術評価と営農計画に大別できる.本研究により,システムが持つべき機能および基本構造は明らかになった。今後の課題としては,システムが取り扱うデータを3種類に区分し,農業技術体系データベースを構築することが求められている。
著者
南石 晃明
出版者
農業情報利用研究会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.141-159, 2002
被引用文献数
1 9

多様な営農リスクや経営目標を明示的に考慮できる営農計画手法を簡易に利用できるように,目標分析やリスク分析が行えるシステムを開発した.このシステムでは,試算分析と数理計画法の統合的利用が可能である.システムは,表計算ソフトをベースにVBAを用いて開発されており,手法面では多様な経営目標,収益リスクおよび作業リスク,労働や土地の制約に加えて機械作業時間や施設処理能力の制約が考慮できる点が特徴である.また,システム面では,機械作業可能時間等の算出機能,演算に用いるモデル構造の選択機能が特徴である.1996年7月の試作システムの配布開始から2001年12月末までの累積利用申込者数は575件であり,このうち66%を都道府県の農業改良普及センターや試験研究機関が占めている.システムの適用事例は少なくとも80以上があり,技術評価と営農計画に大別できる.本研究により,システムが持つべき機能および基本構造は明らかになった。今後の課題としては,システムが取り扱うデータを3種類に区分し,農業技術体系データベースを構築することが求められている。
著者
菅原 幸治 南石 晃明 阿部 浩 井手 洋一
出版者
Japanese Society of Agricultural Informatics
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.123-137, 2006
被引用文献数
2

都道府県による病害虫雑草防除基準の作成を支援するため, クライアント・サーバ型の農薬登録情報取得・編集システムを提案し, 開発を行った. 6県の病害虫雑草防除基準の内容を調査したところ, 県ごとに書式は異なるが作物ごとの農薬使用基準表などのデータ項目は共通部分が多いことがわかった. このため, 更新頻度の高い農薬登録情報のデータベースをサーバ側で一括管理し, Webを通して農薬使用基準データの提供を行うとともに, 各クライアント側でサーバから任意にデータを取得して編集を行うシステムが妥当であると考えた. 開発したシステムの構成は, 農薬登録情報のデータベース (農薬ナビDB) から農薬使用基準データを抽出して配信するサーバ側アプリケーション「農薬ナビDBサーバ」, ならびに, 対象とする農薬, 作物, 病害虫雑草に応じて農薬使用基準データを取得し並べ替え・集計等の編集を行うクライアント側アプリケーション (以下, クライアントアプリ) からなる. クライアントアプリは利用目的に応じて多数の種類があってよいが, 汎用性の高いクライアントアプリとして, データ検索・取得の操作性を追求した「ACFinder for 農薬ナビ」, ならびにデータの取得後に任意に編集可能な「ACLoader」を開発した. クライアントアプリ上でデータの並べ替え, 集計, 二次検索, 追記などの操作を直接行うことで, データの検索・編集に要する労力を軽減可能となる.
著者
南石 晃明 竹内 重吉 篠崎 悠里
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.159-173, 2013 (Released:2013-10-01)
参考文献数
9
被引用文献数
11

本稿では,全国アンケート調査に基づいて,農業法人経営における事業展開,人材育成およびICT活用の最新動向とその関連を明らかにした.まず第1に,経営規模拡大(売上高や従事者数の増加)の実態を明らかにした.第2に,売上高が増加すると経常利益が黒字の経営が増加することを明らかにした.第3に,経営規模拡大の重要戦略である事業多角化の主要共通課題が,「人員・人材確保」,「技術・ノウハウ」,「従業員育成」などの人材確保・育成と,「販路の開拓」や「情報の発信方法」などのマーケティングであることを明らかにした.第4に,経営規模拡大(従事者数)により,「作業マニュアルの作成」などの人材育成項目に取組む経営が増加することを明らかにした.第5に,ICTの活用動向および人材育成との関連について明らかにした.具体的には農業法人経営のほとんどはパソコンや携帯電話などを業務で利用しており,1~2割は各種センサー類を利用している.経営規模の大小を問わず経営のほとんどは,「財務管理」にICTを活用しているが,経営規模によってセンサー類による「情報の計測」や「自動制御」の活用割合は異なる.経営規模(従事者数)が増加するとほとんどの項目で活用割合が増加する.さらに,ICTを活用した人材育成・能力向上の取組では,「情報の整理・共有化」の取組割合は,経営規模(従業員数)に比例的に増加するが,「作業支援・判断支援」は,経営規模(従業員数)が一定の規模を超えると急増する.
著者
南石 晃明 木南 章 伊東 正一 吉田 泰治 福田 晋 矢部 光保 堀田 和彦 前田 幸嗣 豊 智行 新開 章司 甲斐 諭 樋口 昭則 石井 博昭 松下 秀介 伊藤 健 亀屋 隆志 八木 洋憲 森高 正博 多田 稔 土田 志郎 後藤 一寿 佐藤 正衛
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

食料・農業・環境に関わる諸問題は,相互に密接に関連しており,その根底には「リスク」が深く関与している.このため,食料・農業・環境に関わる諸問題の解決には,「リスク」に対する理解が不可欠である.食料・農業・環境に潜むリスクには,どのようなものがあり,それらはどのように関連しており,さらにどのような対応が可能なのか?本研究では,学際的かつ国際的な視点からこれらの点について明らかにした.
著者
菅原 幸治 田中 慶 大塚 彰 南石 晃明
出版者
Japanese Society of Agricultural Informatics
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.381-393, 2006
被引用文献数
1 1

農薬適正使用ナビゲーションシステム (農薬ナビ) の研究開発にもとづき, 農薬使用の事前判定・履歴記帳を携帯電話単独でインターネット接続せずに可能にするべく, NTTドコモの携帯電話FOMA端末上で作動するアプリケーション (iアプリ) として「農薬ナビ誤用防止君」 (以下, 誤用防止アプリ) を開発した. 全体的なアプリケーション構成はクライアント・サーバ型システムであり, クライアント側アプリケーションである誤用防止アプリと, 作物・品種, 農薬使用基準等のマスタデータと農薬使用履歴データを管理するサーバ側アプリケーション (以下, サーバアプリ) からなる. これにより, 個々の生産者が携帯電話上で使用する誤用防止アプリでは農薬使用の適正判定・履歴入力を行い, サーバアプリではマスタデータの送信および農薬使用履歴データの受信・表示を一括して行うことができる. 生産者が誤用防止アプリを利用するには, その栽培作物や使用農薬にあわせて, サーバアプリのデータベースにおけるマスタデータ, 特に農薬使用基準を事前に登録する必要がある.<br>長野県JA長野八ヶ岳野辺山営農センターとその管内の野菜生産者5名の協力により, 本アプリケーションによる農薬使用の適正判定・履歴入力および履歴データ収集の評価試験を2005年6~10月に実施した. 営農センター職員からは, サーバアプリの農薬使用履歴表示機能について, 生産者および圃場作付け区画ごとの収穫可能日が事前に確認できる点でプラスの評価が得られた. 一方, 誤用防止アプリを使用した生産者からは, 利点を感じない旨の意見もあったが, 農薬使用に慣れていない者には有用かもしれないとの評価が得られた. 誤用防止アプリについては, 操作がやや面倒であることのほか, 収穫予定日が変更になる際に随時その修正を行う必要がある点が指摘された. また, 改良要望として, 区画や農薬の選択入力の際にそれぞれの収穫予定日や収穫前日数を表示すること, 農薬使用履歴の表示をより見やすくすること, 生産者ごとに使用農薬をマスタデータに登録することなどが挙げられた.
著者
澁澤 栄 荻原 勲 千葉 一裕 南石 晃明 小島 寛明
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

土壌情報及び農作業の記録データに基づき,農家の判断プロセスを模倣した農業AIシステムと知農ロボットスキームを提案した。農産物流通プロセスの記録技術を基礎にして,情報付き農産物の新流通スキームとアグロメディカルフーズの生産構想を提案した。本庄PF研究会が生産出荷する「本庄のトキメキ野菜」のブランド化に成功した。生産者と仲買・卸および小売の役割や利害関係の裏付けを入手するのが困難であった。