著者
坂本 徳仁 後藤 玲子 宮城島 要 中田 里志 吉原 直毅
出版者
東京理科大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
巻号頁・発行日
2020-10-27

本研究課題は、東京理科大学・一橋大学で定期的に開催してきた規範経済学研究会の日本側研究者チームと、英国ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのVoorhoeve教授らとの国際共同研究を推進し、①不確実性の文脈に応じた望ましい政策評価方法の構築、②異なる集団・自治体・国家間の福祉比較の方法の開発、③さまざまな評価の方法の理論整備と応用可能性の拡大、といった問題を分析する。本研究課題では、実務上恣意的に用いられてきた政策評価の方法を理論的に検証し改善を加えることで、「望ましい社会とは何か」という規範分析の最重要課題に科学的な回答を提供する点に特色と意義がある。
著者
吉原 直毅
出版者
岩波書店
雑誌
経済研究 (ISSN:00229733)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.253-268, 2001-07

本論の目的は70年代の数理マルクス経済学の展開によって,マルクス派搾取理論がいかにその含意の転換を迫られてきたかを,現時点の現代社会科学の到達点から鑑みて考察する事にある.その主要な帰結は,労働価値概念に立脚するマルクス主義の古典的な搾取理論解釈は,まさに数理マルクス経済学の反証可能な手続きによる検証によって,否定されたという事である.主な論点は,(1)マルクスの基本定理及び,森嶋―シートン方程式,(2)「マルクスの総計一致2命題」,(3)「価値法則」の検証からなる.これらの分析結果は,労働価値が市場の均衡価格決定の説明要因たり得ない事,及び正の利潤の唯一の源泉としての労働搾取という含意の完全な喪失を意味している.さらに,正の利潤を資本家が取得する事も,私的所有を前提する限り,剰余生産物生産可能性を有している資本財が社会の総労働人口に比して希少性を有する下では何ら不当なものとは言えないことも示され得る.
著者
吉原 直毅
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.1_49-1_61, 2017 (Released:2017-05-17)
参考文献数
21

資本主義経済システムの原理的安定性は,拡大的資本循環の長期的継起性に関わり,「利潤率低下法則」問題として論じられる.本論では,マルクスの利潤率低下法則論への置塩定理(1961)による批判,及び同定理への近年の批判的議論を概観しつつ,今後の資本主義経済システムの継起性は,新たな資本の拡大的循環を確立させる技術革新に依拠すると同時に,それは人類の持続可能な福祉的自由の発展の方向性とは相容れない可能性を指摘する.
著者
宇佐美 誠 嶋津 格 長谷川 晃 後藤 玲子 常木 淳 山田 八千子 吉原 直毅 那須 耕介
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、法と経済学に関して、法哲学を基軸としつつ経済哲学的・実定法学的な視点も導入した学際的視座から、総合的かつ多角的な考察を実施した。(1)学問方法については、効率性・正義等の基本概念の分析、経済学的法観念と法学的法観念の比較検討、経済学的人間モデルの吟味、法解釈学の射程の論定、厚生経済学の批判的精査を、(2)学問対象については、経済学的研究が従来未開拓だった公的扶助、学校教育、民事訴訟での立証責任分配に関する分析を行った。
著者
吉原 直毅
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.373-401, 2003-12-16

経済的資源配分の公正性の問題(分配的正義論)に関する、社会的選択理論と厚生経済学を軸とした理論経済学的なアプローチの近年の展開を概観する。分配的正義に関する従来の支配的見解は、人々の主観的効用の達成度の均等性を要請する「厚生の平等」論であった。対して、人々の主体的責任の問われ得る選択の結果とは見なし得ないような、天賦の才能や資質の格差に起因する、配分上の社会的格差への是正を動機とする「資源の平等」論を提起したのが、ロナルド・ドゥウォーキン(1981b)である。本論は、ドゥウォーキンの「資源の平等」論を、ミクロ経済理論と公理的交渉ゲーム理論の分析装置を用いて公理体系として定式化し、かつ批判したジョン・E・ローマーの研究、ドゥウォーキンの「資源の平等」論以降の政治哲学における分配的正義論の一潮流となった「責任と補償」アプローチを、ミクロ経済理論の分析装置を用いて公理体系として定式化し、その隠れた含意を明示化する事に貢献したマーク・フローベイやウォルター・ボッサール等の研究を概観し、その意義についてコメントする。
著者
吉原 直毅
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.63-98, 2006-11-29

アナリティカル・マルクシズムの,数理的マルクス経済学の分野における労働搾取論に関する主要な貢献について概観する。第一に,1970年代に置塩信雄や森嶋通夫等を中心に展開してきたマルクスの基本定理についての批判的総括の展開である。第二に,ジョン・E・ローマーの貢献による「搾取と階級の一般理論」に関する研究の展開である。本稿はこれら二点のトピックに関して,その主要な諸定理の紹介及び意義付け,並びにそれらを通じて明らかになった,マルクス的労働搾取概念の資本主義社会体制批判としての意義と限界について論じる。
著者
須賀 晃一 吉原 直毅 薮下 史郎 若田部 昌澄 若松 良樹 船木 由喜彦 須賀 晃一 藪下 史郎 飯島 昇藏 船木 由喜彦 若松 良樹 梅森 直之 川岸 令和 清水 和巳 若田部 昌澄 谷澤 正嗣
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

社会的正義の基本概念は、今日の社会的問題、公共的問題に解決策を示唆しうるもの、また社会の歴史的・民主的発展に適合的な内実を備えたものであるべき点が明らかにされた。さらに、社会的正義の諸要素間の論理的整合性を追及する一方で、政策理論の基礎を与える組合せを、対象となる財・サービスごとに検討すべきことで合意が得られ、公共財・準公共財・価値財などに関していくつかの試みがなされた。公開性、公正性、接近可能性が重視される一方で、匿名性の処遇については意見が分かれた。
著者
吉原 直毅
出版者
岩波書店
雑誌
経済研究 (ISSN:00229733)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.205-227, 2009-07

This paper surveys recent arguments in theory of labor exploitation. First, it critically analyzes the recent proposal of a subjectivist formulation for labor exploitation. Second, it introduces an axiomatic approach to theory of exploitation, which characterizes the unique formulation of exploitation by several axioms, each of which seems to represent one essential aspect of the notion of labor exploitation. Moreover, the paper examiness the relationship between the Class-Exploitation Correspondence Principle (CECP) and the Fundamental Marxian Theorem (FMT) under this formulation. Finally, it surveys the recent arguments on the persistency of the class and exploitation in dynamic general equilibrium models of capitalist economies.21世紀に入って以降の近年の労働搾取理論に関する数理経済学的研究の動向についての概括と展望を与える.第一は,労働搾取の定式に関する論争で新たに展開された主観主義的定式について,批判的に検討を行う.第二に,搾取の客観主義的定式に関して,これまで数理的マルクス経済学において為されてきた多様な提案を踏まえ,いずれの提案がもっとも妥当性を有するかに関する公理主義的分析を紹介する.とりわけ,公理的分析を通じてもっとも妥当性を有するものとして提案された搾取の定式が,それ自身,「労働搾取」という社会科学的概念を十分に直観的に表現し得ているか否かという観点及び,それらの定式の下で,いわゆる階級搾取対応原理(CECP)とマルクスの基本定理(FMT)の頑健性が維持されるか否かという観点で議論する.第三に,動学的資源配分問題にモデルを拡張した際に,搾取関係及び階級関係が長期的に継起的であるか否かに関する,最新の研究成果について概観する.
著者
吉原 直毅
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.63-98, 2006-11-29

アナリティカル・マルクシズムの,数理的マルクス経済学の分野における労働搾取論に関する主要な貢献について概観する。第一に,1970年代に置塩信雄や森嶋通夫等を中心に展開してきたマルクスの基本定理についての批判的総括の展開である。第二に,ジョン・E・ローマーの貢献による「搾取と階級の一般理論」に関する研究の展開である。本稿はこれら二点のトピックに関して,その主要な諸定理の紹介及び意義付け,並びにそれらを通じて明らかになった,マルクス的労働搾取概念の資本主義社会体制批判としての意義と限界について論じる。