著者
ダニエラチェ セバスティアン 吉川 知里 梶野 瑞王 伊藤 聡士 掛谷 航 吉田 尚弘 五十嵐 康人
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2017年度日本地球化学会第64回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.62, 2017 (Released:2017-11-09)
被引用文献数
1

We present a numerical study carried out with a regional Eulerian-Lagrangian hybrid model to account for the transport, deposition and radioactive decay of 35S in Sulphur Dioxide and sulfate aerosols emitted into the atmosphere at the Fukushima Dai-ichi nuclear power plant incident.
著者
西岡 拓哉 北 和之 林 奈穂 佐藤 武尊 五十嵐 康人 足立 光司 財前 祐二 豊田 栄 山田 桂太 吉田 尚弘 牧 輝弥 石塚 正秀 二宮 和彦 篠原 厚 大河内 博 阿部 善也 中井 泉 川島 洋人 古川 純 羽田野 祐子 恩田 裕一
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

背景・目的東京電力福島第一原子力発電所の事故によって、原子炉施設から多量の放射性物質が周辺地域に飛散・拡散し土壌や植生に沈着した。地表に沈着した放射性核種が今後どのように移行するか定量的に理解していくことが、モデル等により今後の推移を理解する上で重要である。重要な移行経路の一つとして地表から大気への再飛散がある。我々のグループのこれまでの観測で、山間部にある高線量地域では、夏季に大気中の放射性セシウムが増加していることが明らかになっている。夏季の森林生態系からの放射性セシウム再飛散過程を明らかにすることが本研究の目的である。観測2012年12月より浪江町下津島地区グラウンドにおいて約10台のハイボリュームエアサンプラーによって大気エアロゾルを高時間分解能でサンプリングし、Ge検出器で放射能濃度を測定している。この大気エアロゾルサンプルの一部を取り出し化学分析及び顕微鏡観察を行っている。2015年よりグラウンドおよび林内で、バイオエアロゾルサンプリングを月に1-2回程度実施している。また、感雨センサーを用い、降水時・非降水時に分けたサンプリングも行っている。200mくらい離れた林内でも同様の観測を行っている。さらに、パッシブサンプラーによる放射性核種の沈着フラックスを測定するとともに、土壌水分と風速など気象要素を自動気象ステーション(AWS)にて、エアロゾル粒子の粒径別濃度を電子式陰圧インパクタ(Electric Low-Pressure Impactor, ELPI)、黒色炭素エアロゾル濃度および硫酸エアロゾル濃度をそれぞれブラックカーボンモニタおよびサルフェートモニタにて連続的に測定している。結果と考察2015年夏季に行った観測と、そのサンプルのSEM-EDS分析により、夏季の大気セシウム放射能濃度は炭素質粒子濃度と正相関していることが分かった。夏季には粒径5μm程度の炭素質粒子が多く、バイオエアゾルサンプリングとその分析の結果、真菌類の胞子、特にキノコが主な担子菌類胞子が多数を占めていることが分かった。但し、降水中には、カビが多い子嚢菌類胞子がむしろ多い。大気粒子サンプルの抽出実験を行った結果、夏季には放射性セシウムの半分以上が純水で抽出される形態(水溶性あるいは水溶性物質で付着した微小粒子)であることもわかった。そこで、2016年夏季には、大気粒子サンプル中の真菌類胞子の数密度と大気放射能濃度の関係を調べるとともに、キノコを採取してその胞子の放射能濃度を測定して、大気放射能濃度が説明できるか、また大気粒子サンプルと同様に、半分程度の純水抽出性を持つか調べた。その結果、大気放射能濃度と胞子と思われる粒子の個数とは明瞭な正相関を示し、降水時には子嚢菌類が増加することが示された。また、採取したキノコ胞子の放射性セシウムは、半分以上純水で抽出され、大気粒子サンプルと同様に性質を示すこともわかった。但し、採取した胞子は放射能は高いものの、それだけで大気放射能を説明できない可能性がある。
著者
伊藤 錬磨 金子 佳史 中西 宏佳 辻 国広 吉田 尚弘 冨永 桂 辻 重継 竹村 健一 山田 真也 土山 寿志
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.1457-1463, 2012 (Released:2012-05-28)
参考文献数
14

症例は60歳男性.ニガクリタケを摂取した30分後に嘔吐,腹痛が出現し来院.第2病日に症状は一旦軽快したが,第3病日に嘔吐,腹痛,黒色便を認めた.第4病日の上部消化管内視鏡検査にて上十二指腸角から十二指腸下行部にかけ連続性,全周性に発赤,浮腫,びらん,出血を認めた.保存的加療にて症状は経時的に軽快した.第9病日の内視鏡検査では十二指腸下行部に出血はみられず,顆粒状粘膜や線状潰瘍を認めた.第18病日に症状軽快し退院.退院後の内視鏡検査では線状潰瘍瘢痕を残すのみであった.キノコ中毒における消化管病変の報告は少なく,またその経時的変化を内視鏡的に追えた自験例は貴重であると考えられた.
著者
藤枝 重治 坂下 雅文 徳永 貴広 岡野 光博 春名 威範 吉川 衛 鴻 信義 浅香 大也 春名 眞一 中山 次久 石戸谷 淳一 佐久間 康徳 平川 勝洋 竹野 幸夫 氷見 徹夫 関 伸彦 飯野 ゆき子 吉田 尚弘 小林 正佳 坂井田 寛 近藤 健二 山岨 達也 三輪 高喜 山田 奏子 河田 了 寺田 哲也 川内 秀之 森倉 一朗 池田 勝久 村田 潤子 池田 浩己 野口 恵美子 玉利 真由美 広田 朝光 意元 義政 高林 哲司 富田 かおり 二之宮 貴裕 森川 太洋 浦島 充佳
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.118, no.6, pp.728-735, 2015-06-20 (Released:2015-07-18)
参考文献数
21
被引用文献数
2 7

これまで本邦における慢性副鼻腔炎は好中球浸潤が主体で, 内視鏡鼻副鼻腔手術とマクロライド少量長期投与にてかなり治療成績が向上してきた. しかし2000年頃からそれらの治療に抵抗性を示し, 易再発性の難治性副鼻腔炎が増加してきた. この副鼻腔炎は, 成人発症で, 嗅覚障害を伴い, 両側に鼻茸があり, 篩骨洞優位の陰影があった. 末梢好酸球も多く, 気管支喘息やアスピリン不耐症の合併もあった. このような副鼻腔炎の粘膜には多数の好酸球浸潤が認められていたため, 好酸球性副鼻腔炎と命名された. 好酸球性副鼻腔炎は, 徐々に増加傾向を示してきたが, 好酸球性副鼻腔炎の概念, 診断基準はあまり明確に普及していかなかった. そこで全国規模の疫学調査と診断ガイドライン作成を目的に多施設共同大規模疫学研究 (Japanese Epidemiological Survey of Refractory Eosinophilic Chronic Rhinosinusitis Study: JESREC Study) を行った. その結果, 両側病変, 鼻茸あり, CT 所見, 血中好酸球比率からなる臨床スコアによる簡便な診断基準を作成した. さらに臨床スコア, アスピリン不耐症, NSAIDs アレルギー, 気管支喘息の合併症, CT 所見, 血中好酸球比率による重症度分類も決定した. 4つに分類した重症度分類は, 術後の鼻茸再発と有意に相関し, 最も易再発性かつ難治性の重症好酸球性副鼻腔炎はおよそ全国に2万人いることが判明した. 治療法については経口コルチコステロイド以外まだ確立されておらず, 早急なる対応が急務と考えている.
著者
吉田 尚弘 土山 寿志 中西 宏佳 辻 国広 冨永 桂 松永 和大 辻 重継 竹村 健一 山田 真也 津山 翔 片柳 和義 車谷 宏
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.2449-2457, 2016 (Released:2016-12-20)
参考文献数
20

背景:白色球状外観(white globe appearance;WGA)は,狭帯域光観察併用拡大内視鏡検査(magnifying endoscopy with narrow-band imaging;M-NBI)で認識されることのある小さな白色球状物のことである.WGAは胃癌と低異型度腺腫を鑑別することのできる新しい内視鏡的マーカーであることが報告されている.しかし,胃癌と胃炎を含む非癌病変との鑑別にWGAが有用であるかどうかは不明である.方法:胃癌と非癌病変におけるWGAの頻度を比較するために,内視鏡検査を受ける予定の患者994人を対象とした前向き研究を計画した.すべての患者に対して白色光観察で胃癌が疑われる標的病変の有無を評価し,標的病変を認めた場合にはさらにWGAの有無をM-NBIで評価した.すべての標的病変に対して生検または切除を行い,病理学的に評価した.主要評価項目は胃癌と非癌病変におけるWGAの頻度,副次評価項目はWGAの胃癌診断における診断能とした.結果:標的病変として188病変(156人)が最終的に解析され,70病変が胃癌で118病変が非癌病変であった.WGAの頻度は,胃癌で21.4%(15/70),非癌病変で2.5%(3/118)であり,有意に胃癌で高かった(P<0.001).WGAの胃癌診断における正診割合は69.1%,感度は21.4%,特異度は97.5%であった.結論:胃癌におけるWGAの頻度は非癌病変のものに比べて有意に高かった.胃癌診断におけるWGAの特異度は高く,WGAの存在は胃癌診断に有用である.
著者
五十嵐 康人 大河内 博 北 和之 石塚 正秀 吉田 尚弘 三上 正男 里村 雄彦 川島 洋人 田中 泰宙 関山 剛 眞木 貴史 山田 桂太 財前 祐二 足立 光司 中井 泉 山田 豊 宇谷 啓介 西口 講平 阿部 善也 三上 正男 羽田野 祐子 緒方 裕子 吉川 知里 青山 智夫 豊田 栄 服部 祥平 村上 茂樹 梶野 瑞王 新村 信雄 渡邊 明 長田 直之 谷田貝 亜紀代 牧 輝弥 佐藤 志彦
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-06-28

初期の放射性Cs放出には従来想定されていた水溶性サブミクロン粒子に加え,直径数μmの不溶性粗大球状粒子が存在することを初めて明らかにした。典型的な里山では再飛散由来のCs濃度は,都市部での結果と異なり,夏季に上昇し,冬季には低かった。夏季のCs担体は大部分が生物由来であることを初めて見出した。放射性Csの再飛散簡略スキームを開発し,領域エアロゾル輸送モデルを用いて森林生態系からの生物学的粒子による再飛散,ならびに事故サイトから継続する一次漏えいも含め,フラックス定量化-収支解析を行った。その結果、他のプロセス同様、再飛散は、地表に沈着したCsの減少や移動にほとんど寄与しないことがわかった。
著者
金沢 弘美 窪田 和 谷口 貴哉 澤 允洋 髙橋 英里 民井 智 江洲 欣彦 吉田 尚弘
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 (ISSN:24365793)
巻号頁・発行日
vol.126, no.10, pp.1134-1141, 2023-10-20 (Released:2023-11-01)
参考文献数
21

一側性難聴は, 難聴側からの聴取困難だけでなく, 雑音下での聴取困難, 音源定位の困難がある. 両側性難聴者だけでなく, 一側性難聴者もマスク装用下での聞き取り困難を感じている. この困難感は, 雑音の多い学校生活で1日を過ごすことが多い学童児が特に感じていることが危惧された. 今回は, 一側性難聴児の学校生活の中での聞き取り困難感を, マスク装用生活前後で比較した調査を行った. また希望者に対しては補聴器試聴を行った. 対象は, COVID-19 流行時に当院に外来通院していた一側性難聴児31人である. コントロール群として健聴児15人をおいた. 方法はアンケート形式で, 雑音下聴取・音源定位・学業理解に関して4つの問いを設定し, VAS スケールで困難感として当てはまる程度を患児本人が記入した. 補聴器を希望した一側性難聴児は, 装用1~3カ月後に雑音下語音検査を行った. この結果, 難聴のレベルにかかわらず, 多くの一側性難聴児が, マスク装用生活後に聞き取り困難を感じていた. 11人が補聴器試聴を希望し, 9人が雑音下語音検査でその効果を認め購入に至った. 一側性難聴児は, 両側性難聴児と同様に, 学力の低下, 社会性の問題など, 年齢が上がるに連れて顕著になるケースがある. マスク装用生活が続いたことにより, 一側性難聴児が困難感を自覚するようになっている. 補聴器装用のほか, 聴取の環境調整, 心理・社会面など個別にサポートする必要がある.
著者
石川 智子 上野 雄一郎 小宮 剛 吉田 尚弘 丸山 茂徳
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2009年度日本地球化学会第56回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.41, 2009 (Released:2009-09-01)

後期原生代エディアカラ紀から顕生代初期カンブリア紀にかけて、生物進化と地球化学の両面で大規模な変動が起きたと考えられいる。特に先カンブリア紀/カンブリア紀境界(Pc/C境界)前後において海洋の無機炭素同位体比は大きく変動しており、当時の海洋の炭素循環の著しい変化が予想される。一般に、海洋の炭素循環の定量化には当時の海洋の有機炭素同対比の情報も必要不可欠であるが、Pc/C境界前後の有機炭素同対比が無機炭素同位体比と共に一地域で報告された例はほとんどない。そこで我々は、南中国・三峡地域において掘削により採取された連続試料を用いてPc/C境界前後の高時間分解能の有機炭素同位体比化学層序を求めた。得られた無機・有機炭素同位体比の関係性を基に、数値計算を行い当時の海洋の炭素循環について定量的に議論する。
著者
渋谷 岳造 上野 雄一郎 小宮 剛 西澤 学 北島 宏輝 山本 伸次 齋藤 拓也 松井 洋平 川口 慎介 高井 研 吉田 尚弘 丸山 茂徳 ラッセル マイケル
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2015年度日本地球化学会第62回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.49, 2015 (Released:2015-09-03)

原生代前期には赤道域まで海洋が凍結したという全球凍結イベントがあったとされている。全球凍結の原因については、様々な仮説が提唱されているが、地質記録に基づく大気CO2分圧の推定からはCO2がそれ自体で地球を温暖に保つために不十分だったのかどうかが明らかになっていない。そこで、本研究では南アフリカ、トランスバール超層群のオンゲレック累層 (全球凍結時に海水中に噴出した玄武岩質安山岩) の地質調査・試料採取を行い、海洋底玄武岩の空隙を埋める熱水性石英に含まれている流体包有物の分析を行った。その結果、初生的流体包有物のCO2濃度は5.5 mmol/kg以下であることが明らかになった。また、計算の結果、大気CO2分圧は現在の約21倍以下であり、海水温を氷点温度以上に維持するのに必要なCO2分圧よりも低いと推定された。したがって、原生代前期全球凍結時の大気CO2分圧はCO2の温室効果だけで地球を温暖に保つには不十分であったことが地質記録から初めて明らかになった。
著者
今井 翔 吉田 磨 河野 恒平 豊田 栄 藤井 彩子 山田 桂大 渡邉 修一 吉田 尚弘
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.267, 2008

WOCEの2ラインにおけるメタンの空間的特徴や起源、大気海洋フラックスについて明らかにすることを目的とし、北太平洋において溶存メタン濃度と炭素安定同位体比を測定した。 海水試料は海洋地球研究船みらいによる2005年10月~2006年2月のMR05-05航海(WHP-P03)と、2007年7月~9月のMR07-04航海(WHP-P01)で得た。研究室に持ち帰り海水試料を脱気・精製し、FID-GCを用いてメタン濃度、GC/C/IRMSを用いて炭素安定同位体比(δ13C-CH4)を測定した。通常濃度の試料から得られた測定精度はそれぞれ~5%と~1‰となった。P01観測ではメタンの極大及び20-50%の過飽和が、表層300 m以浅において観測された。炭素安定同位体比から水柱での生成が示唆され、東部では生成経路が異なることを示唆している。P03観測東部沿岸域では沿岸湧昇にともなって現場でのメタン生成が表層に限定されることがわかった。密度躍層を境界に表層では生成、深層では酸化され、表面水のメタン過飽和により大気へ逃散していることがわかった。
著者
服部 祥平 飯塚 芳徳 植村 立 鈴木 希実 鶴田 明日香 石野 咲子 藤田 耕史 的場 澄人 吉田 尚弘
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.65, 2018

<p>グリーンランドの氷床コアは北アメリカやヨーロッパ由来の大気が由来し、過去のエアロゾル動態を復元する貴重な環境媒体である。産業革命以降の人間活動の増大に伴い、大気中に放出される硫黄及び窒素酸化物の濃度が上昇し、1970年以降に北アメリカ、ヨーロッパで排出が抑制された。事実、氷床コア中の硫酸濃度の減少がSO2排出量の減少と対応していることが知られている。本研究では、グリーンランド南東ドーム(SE-Dome)で採取された約90 m、60年分のアイスコアを用い、時間解像度3~6年で硫酸の三酸素同位体組成を分析した。</p>
著者
和田 亮一 坂井 三郎 二階堂 雅人 相原 光人 大河内 直彦 岡田 典弘 山田 桂太 吉田 尚弘
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2010年度日本地球化学会第57回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.118, 2010 (Released:2010-08-30)

シーラカンスは四億年もの昔から地球上に存在する「生きた化石」である。魚類から陸上四肢動物への進化の鍵を握る重要種であり、また絶滅の可能性がある希少種である。そしてシーラカンスの生態については未だわかっていないことが多い。近年、従来の知見とは異なる海域で大量に捕獲されるようになり問題となっている。彼らの保護のためにはまず生息地の情報を得ることが必要である。そこで本研究ではシーラカンスの生息水深を明らかにするため耳石の安定同位体分析による生息水温の復元を行った。これまで温度計として広く用いられてきた酸素同位体に加え、より厳密な温度指標として期待される二重置換同位体分子種の測定を試みる。これらの手法を用いた高解像度の同位体測定により幼魚から成魚までの水温変化を明らかにし、それを捕獲地域の水深-水温データと比較することによって生息水深を推定する。
著者
野呂 和嗣 服部 祥平 植村 立 福井 幸太郎 平林 幹啓 川村 賢二 本山 秀明 吉田 尚弘 竹中 規訓
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2017

<p>アイスコアに保存された硝酸の濃度及び安定同位体組成(d<sub>15</sub>N)は、古気候解析において有力な情報であると考えられる。しかし、硝酸は積雪として沈着した後、揮散もしくは紫外線による光分解反応によって消失することが知られており、このときに同位体分別を伴うことから、残留した硝酸には<sub>15</sub>Nが濃縮し大気中硝酸のd<sub>15</sub>N値比べて極めて高いd<sub>15</sub>N値が観測される。この沈着後の硝酸分解過程は清浄な南極大気において貴重な窒素酸化物生成源であり、南極における大気化学反応場(= 大気酸化剤の相対寄与)を変化させる重要な要因でもある。このように、南極における硝酸の積雪後の変化を解明するため、本研究では東南極ドローニングモードランドの沿岸部から内陸部にかけて採取された雪中の硝酸のd<sub>15</sub>N値を分析し、積雪中の硝酸光分解反応の地域間差異を推定した。</p>
著者
鶴田 明日香 服部 祥平 飯塚 芳徳 藤田 耕史 植村 立 的場 澄人 吉田 尚弘
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2017

<p> 大気中に放出された窒素酸化物(NOx = NO、NO2)は大気酸化剤との反応によって硝酸(NO3-)に変換される。産業革命以降の人間活動の増大に伴い大気中に放出されるNOx濃度は上昇したが、1970年以降に北米やヨーロッパでNOxの排出は抑制され、大気NOxの濃度は減少した。しかし、アイスコア中のNO3-濃度の変動とNOx放出量の増減は必ずしも一致していない。 NO3-の安定同位体組成はNOxの窒素起源情報を保存しているため、過去のNOx動態の復元に有効であると期待されてきた。しかし、NO3-は紫外線による光分解の影響を受けやすいため、涵養量の低い地点では沈着後に光分解に伴う同位体分別によってその同位体組成が変化してしまうことが指摘されている。そこで本研究では、涵養量の高いグリーンランド南東ドームにおいて掘削されたアイスコア試料を用い、沈着後の光分解の影響を受けていないNO3-の窒素同位体組成を分析し、過去60年間のNOx動態の復元を試みた。</p>