著者
吉野 航一
出版者
北海道社会学会
雑誌
現代社会学研究 (ISSN:09151214)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.39-57, 2008 (Released:2012-01-31)
参考文献数
26

本稿の目的は,沖縄の都市部を事例に,近現代における外来宗教の土着化を明らかにすることである。宗教は近代化によって「私的」な事柄とされた。しかし,現在でも,宗教(が持つ儀礼/慣習)は,社会的/文化的な規範の1つとして認識されることもある。そのような中,外来宗教はどのように受容され,定着したのかを,信者の宗教実践から明らかにする。   沖縄では,戦後の都市化によって,民俗宗教はその救済能力を十分に発揮できなくなってしまった。そのような中,外来宗教は,(1)「普遍的な神仏と明文化された教義教学」,(2)「信者同士の.がりと活動の場」などの,宗教的資源を提供することによって,民俗宗教では救済されなかった信者たちに受容されてきた。その際,信者たちは,再解釈によって,その地での信仰に適する神仏と教義教学を想定していった。さらに,信者たちは,(1)「宗教的慣習の転用/再利用」,(2)「民俗宗教が持つ宗教性の回避」,(3)「宗教的連続性/接続」といった方策を用いて,自らの信仰と地域社会/文化との関係を再構築することで,家族からの非難を回避し,異なる宗教文化を共存させることを可能にしていった。   このような信者たちの信仰は,教義への黙従や地域文化への妥協ではない,土着化における創造的な宗教実践と言えるのではないだろうか。