著者
渡辺 浩 江頭 憲治郎 碓井 光明 塩川 伸明 西川 洋一 城山 英明 大村 敦志 中谷 和弘 長谷部 恭男
出版者
東京大学
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2001

今年度は、国家と社会、国際化と法、科学技術の発展と法の観点から第2期のまとめを行った。国家と社会に関しては、1.規範定立・執行における社会集団の役割(経済団体による法形成と執行、ドイツ医療保険法におけるFestbetragsfestsetzung制度、トランスナショナル社会運動)、2.市場と国家(政府業務の民間開放と法制度、株式会社・証券市場・市民社会、会社支配市場規制、ボーダレス化時代における租税制度)、3.ボーダレス時代における社会保障・安全確保・司法制度(社会保障法と憲法、警察行政における計画、関係性における暴力とその対応、司法の独立性)、4.国家財産法における公法と私法(政府業務の民間開放、韓国の国家財産法と法政策的課題)をまとめた。国際化と法に関しては、1.境界とは何か(生権力と国家、国境はなぜそしていかに引かれるべきか)、2.境界の変動および意味変容(国際法における境界の位相、国家の統合分裂とシティズンシップ)、3.変容する国際社会と法・政治の対応(パレスチナ問題と国際法、開発・エイズ・人権、経済連携協定、法整備支援)、4.人の国際移動と法・政治の対応(国際移住の法と法政策、民法における外国人問題、国際化と地方自治)をまとめた。科学技術の発展と法に関しては、1.科学技術と生命観(歴史的視座、動物観と法制度設計)、2.科学技術と制度(学問と法システム、リスク評価と法システム、予防原則)、3.科学技術と刑事法(現代型刑罰法規と罪刑法定主義、科学技術の進歩と刑法-過失責任)、4.科学技術と民事法(証券取引の電子化、無体化・電子化と占有概念、5.科学技術と国際法(非国家主体に対する軍備管理、国際環境法における科学技術と対話プロセス)を取りまとめた。なお、とりまとめの過程で2006年1月に国際シンポジウムを開催した。また、第1期の成果5巻も無事出版した。
著者
城山 英明 村山 明生 梶村 功
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.149-158, 2003 (Released:2009-08-19)
参考文献数
2
被引用文献数
1 1

米国の航空事故調査は, NTSBが主導し事故原因の究明と再発防止を図っている.NTSBは,関係当事者から専門的知見を集めるパーティー・システムに基づく調査,実効性の高い勧告システムを特徴とするほか,事故犠牲者や遺族に対する一元的支援も実施する.米国では,航空事故への責任追及の手段としては,個人への刑事訴追は極めてまれであるが,懲罰的損害賠償(民事責任)や高額の民事罰(行政処分)が,本来刑事の有する処罰機能を代替し,航空会社やメーカーなど組織への制裁手段として機能している.日本においても,米国の実態の全体像を踏まえた,航空事故調査体制の充実や法的責任追及のあり方に関する議論が行われることが期待される.
著者
菅原 慎悦 城山 英明
出版者
Atomic Energy Society of Japan
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 = Transactions of the Atomic Energy Society of Japan (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.368-383, 2010-12-01
被引用文献数
1 2

In France, there exist organizations called "Commission Locale d'Information" (CLI) in all the siting areas where nuclear facilities located. Previously, the CLI organizations were established voluntarily by some local governments or nuclear utilities. Since 2006, however, the Nuclear Transparency and Safety Act has obliged the establishment of CLI in all the siting areas in conjunction with reforming the nuclear regulatory agencies. This means that the concerned local governments are officially part of nuclear safety regulation. In this study, we investigated present conditions of the CLI organizations through some interviews in France and consider their roles from the standpoint of nuclear regulatory governance. As a result, we found that the CLI plays the following roles: (1) medium of communication among concerned parties (not only between nuclear utilities and local habitants but also between the national nuclear regulatory agency and various local governments) and (2) implementing various activities in accordance with each local condition through the participation of local assembly members. In addition, we clarified that CLI's activities are supported by related institutional infrastructures, such as cost burden between central and local governments, and some other systems of citizen participation in building or expanding nuclear facilities.<br>
著者
佐藤 隼 佐藤 俊秀 仲川 祐司 林 志洋 松本 頌 城山 英明 松尾 真紀子 鎗目 雅
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.108-118, 2014 (Released:2014-10-17)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

リンの下水からのリサイクルは一部自治体で進められているが,まだ全国的に進んでいるとはいえない.本研究ではステークホルダーに聞き取り調査を行い,各ステークホルダー間の問題認識を分析し,普及を進めるための施策を検討した.下水からのリン回収が進まない理由として,大きく次の3つの問題が考えられる.現状ではリサイクルすれば赤字になるというコストの問題,生産量が十分に確保できないという問題,安定的な取引先が必要という販売のノウハウの問題である.他方,閉鎖海の環境保全や循環型社会の構築といった他の政策目的も重要である.今後の施策としては,コスト削減のための技術開発,環境政策目的との同床異夢や一定の量の確保を可能にするための自治体との連携の強化が重要である.
著者
藤原 帰一 久保 文明 加藤 淳子 苅部 直 飯田 敬輔 平野 聡 川人 貞史 川出 良枝 田邊 國昭 金井 利之 城山 英明 谷口 将紀 塩川 伸明 高原 明生 大串 和雄 中山 洋平
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-10-31

危機管理の政策決定と、それが政治社会にもたらす効果について、多角的な実地調査とデータ収集を行うとともに、三つの理論的視点、すなわちセキュリタイゼーション研究、危機管理研究、そして平和構築から分析を進めた。本作業の国際的パートナーがオレ・ウィーバー、イークワン・ヘン、そして、ジョンアイケンベリーであり、この三名を含む内外の研究者と共に2015年1月30日に大規模な国際研究集会を東京にて開催し研究成果の報告を行った。本会議においては理論研究とより具体的国際動向の分析を行う研究者との間の連絡に注意し、実務家との意見交換にも留意した。
著者
藤原 帰一 城山 英明 ヘン イークァン ORSI ROBERTO 和田 毅 錦田 愛子 華井 和代 HUSSAIN NAZIA 中溝 和弥 竹中 千春 清水 展 杉山 昌広
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、水資源を焦点に、グローバル・サウスの地域・国々の事例を取り上げ、気候変動による自然の衝撃が社会と政治にどのようなストレスをもたらすか、また、いかなる過程を経て社会の不安定化、資源獲得競争、国家の動揺、武力紛争、難民・移民などの現象を引き起こす原因となるのかを問い、気候変動政治のメカニズムを解明する。同時に、自然の脅威を前に国際社会、国家、草の根社会がいかなる緩和と適応を行うかを考察し、気候変動レジリアンスの仮説を提示する。さらに、気候変動安全保障を中核とする新しい安全保障論と、国連持続可能な開発目標(SDGs)とを連携させたグローバル・ガバナンス論を論じ、政策的検討を試みる。
著者
鈴木 達治郎 武井 摂夫 城山 英明
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.275-284, 2004-10-29 (Released:2007-12-21)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

昨今の原子力に係る不適切な取扱い等に鑑み、国内の原子力安全規制においては電気事業法の改正、国の業務の一部を担う機関である「独立行政法人原子力安全基盤機構」の発足など、新しい規制制度が運用され始め、施設の検査等において民間の第三者機関による規格設定制度や認証・認定制度が着目されている。米国、仏国等においては既に原子炉の供用期間中検査や溶接検査等において当該制度の導入が異なった方式で図られており、一定の実績を上げている。本研究においては、原子力関連施設の安全規制における第三者機関の役割に関して日仏米の比較分析を行い、日本における今後の制度設計に関する示唆を得る。
著者
陳 奕均 城山 英明 杉山 昌広 青木 一益 木村 宰 森 晶寿 太田 響子 松浦 正浩 松尾 真紀子
出版者
環境経済・政策学会
雑誌
環境経済・政策研究 (ISSN:18823742)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.1-11, 2022-09-30 (Released:2022-11-04)
参考文献数
49

本稿では,近年,海外で急速に発展してきた持続可能性移行(サステナビリティ・トランジション)という研究分野に着眼し,当該分野における主な理論的枠組みである戦略的ニッチ・マネジメント論(SNM),重層的視座(MLP),トランジション・マネジメント論(TM)とその研究動向をまとめた.関連した概念を明確にしたうえ,日本の研究機関による事例研究への応用例を紹介し,日本の文脈を踏まえた今後の研究課題を提示する.
著者
城山 英明
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.65-80, 2018-12-10 (Released:2020-02-10)
参考文献数
37

テクノロジーアセスメントとは,科学技術の発展が社会に与える影響を広く洗い出して分析し,それを関係者に伝え,相互の議論や意思決定・政策決定を支援する活動である.本稿では,人工知能(AI)に関して想定されるテクノロジーアセスメント上の論点を整理した上で,テクノロジーアセスメントのあり方,すなわち,枠組み・体制の選択肢について,検討する.国際的なテクノロジーアセスメントの取組み,各研究機関によるテクノロジーアセスメントの取組み,国によるテクノロジーアセスメントのための資金枠の設定,各国政府(議会,行政府)によるテクノロジーアセスメント取組みについて,テクノロジーアセスメント一般に関する経験やAIに関する試みを概観した後,このようなAIに関する実験的なテクノロジーアセスメント的活動の1つとして,日本の総務省情報通信政策研究所が行っている活動を検討する.そして,実利用や研究開発の現場から若干の距離のある観点から評価が行われている点,対象が包括的である点に特徴があるとする.また,開発者と利用者(学習データ提供者)の関係課題,利用者と非利用者が混在する移行期の課題等について指摘する.最後に,AIの政治的決定への影響やその可能性についても,社会的影響の1つとして若干考察する.
著者
大上 泰弘 神里 彩子 城山 英明
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.84-92, 2008-06-30 (Released:2021-08-01)

The U. K. has a centralized regulatory system for animal experiment. This system is well accepted because it is regarded as good to keep the consistency of practice. This regulation is supported by three basic values; science-centrism, utilitarianism and anthropo-centrism. Science-centrism can be seen in the realization process of animal welfare. Animal welfare is effectively and objectively realized through the incorporation of the concept of animal welfare into the methods of science. Utilitarianism is evident in the decision-making process. The decision whether to permit a particular experiment is based on an analysis of the costs (in terms of animal suffering) against the likely benefit to be derived from the data sought. Anthropo-centrism seems to be an antithesis for science-centrism and utilitarianism. The anti-animal experiment movement is mostly driven by the emotional factors. An important means of breaking the deadlock between the movement and science is by protest in the society. The protest is regarded as the balancer of the U. K. society, and has certainly aided the realization of humane regulation.
著者
深山 剛 加藤 浩徳 城山 英明
出版者
一般財団法人 運輸総合研究所
雑誌
運輸政策研究 (ISSN:13443348)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.022-037, 2007-04-26 (Released:2019-05-31)
参考文献数
21

本研究は,富山市における LRT 導入と,関連するまちづくり施策の実現に関して,政策プロセスの観点から分析するものである.まず,政策プロセスを4つのフェーズにわけ,それぞれのフェーズにおける関係主体や検討の場,課題のフレーミングや主な論点などをまとめた.続いて,富山市を取り巻くさまざまな関係主体の立場を整理し,富山市によるフレーミングや利害調整を通じた対応のポイントを示した.その結果,政策プロセスにおける合意形成のためには,課題のフレーミング,議論の場のマネジメント,制約条件の活用,個別的な利害調整による対応等が重要であることが明らかになった.
著者
鈴木 達治郎 城山 英明 武井 摂夫
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
no.4, pp.161-168, 2006
被引用文献数
2 2

安全規制に対する社会的信頼の確保を目的として,安全規制体制に一定の「独立性」を付与する試みが行われる.独立性は,様々な文脈における政治的独立性と技術的独立性に分けて理解することができる.本研究では,米国における原子力規制委員会における独立性の制度設計とその運用を分析し,我が国における原子力安全規制体制と比較することを通して,社会的信頼を確保するためには政治的独立性だけではなく技術的独立性が重要であるという示唆を得た.
著者
鈴木 達治郎 武井 摂夫 城山 英明
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
no.2, pp.275-284, 2004
被引用文献数
1 1

昨今の原子力に係る不適切な取扱い等に鑑み、国内の原子力安全規制においては電気事業法の改正、国の業務の一部を担う機関である「独立行政法人原子力安全基盤機構」の発足など、新しい規制制度が運用され始め、施設の検査等において民間の第三者機関による規格設定制度や認証・認定制度が着目されている。米国、仏国等においては既に原子炉の供用期間中検査や溶接検査等において当該制度の導入が異なった方式で図られており、一定の実績を上げている。本研究においては、原子力関連施設の安全規制における第三者機関の役割に関して日仏米の比較分析を行い、日本における今後の制度設計に関する示唆を得る。
著者
白井 清兼 西村 崇 山本 淳子 伊藤 興一 加藤 浩徳 城山 英明
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.93-106, 2009 (Released:2010-05-14)
参考文献数
30
被引用文献数
3

本論文は,地域のアイデンティティ確立を目指すまちづくりに成功した事例として,千葉県香取市(旧佐原市) の先進的な取組を取り上げ,過去の取組経緯をインタビューによって丹念に調査するとともに,関係主体の問題構造認識を分析することによって,成功の要因を抽出することを目的とする.情報収集のため,佐原の観光政策に関係する主要主体に対するインタビュー調査を実施し,また,分析に当たっては,問題構造化手法を適用した.分析の結果,「町並み保存関係者」と「佐原の大祭関係者」による独自活動がもたらした意図せざる相乗効果,市民団体による巧みな行政の活用および行政の巧妙な戦略的なプロセスマネジメントが,佐原の持続的な観光政策ならびにまちづくり型観光地形成を成立させるための成功要因であったことを明らかにした.
著者
大野 晋 城山 英明
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.317-326, 2003
被引用文献数
1

日本の化学プロセス安全規制には3つの問題がある。第1は、主務官庁の縦割り構造である。化学プロセスは技術的には1つのシステムで管理されるが、適用される法規制は、複数の省庁の法令で規制されている。第2は、技術基準の品質管理である。法令が詳細を規定しているため、改定は遅れぎみであり、技術の進歩の妨げなっている。第3は、民間第三者機関の役割が不十分である一方国家の役割も制限的であることによる不十分な規制実施体制である。以上の分析を基礎に、技術的知見を速やかに基準に反映し、また、基準の妥当性を評価する第三者民間監査機関の役割の拡充強化を提案する。
著者
太田 響子 林 裕子 松浦 正浩 城山 英明
出版者
Sociotechnology Research Network
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.24-39, 2008
被引用文献数
1 1

本稿は,新奇性の高い環境技術を社会に導入する政策プロセスにおいて,分野横断的ネットワークと民間主体の公共的企業家機能の果たす役割とその特性を検証する.具体事例として,温暖化対策が比較的遅れている住宅部門における面的なCO?排出削減の取り組みである,太陽熱セントラルヒーティングシステムを採用した集合住宅建設のプロセスを扱う.分析からは,新技術を社会に導入するプロセスにおいて,多様なステークホルダーが,(1)分野横断的(マルチセクター)なネットワークを構築することが必要であり,その際,(2)特に民間主体が公共的企業家精神(アントレプレナーシップ)を備えている場合があること,これらの要因の戦略的なマネジメントが社会導入の鍵であることが明らかになった.
著者
村山 明生 古場 裕司 舟木 貴久 城山 英明 畑中 綾子 阿部 雅人 堀井 秀之
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.338-351, 2003
被引用文献数
5 4

耐震性に関する既存不適格住宅について,その耐震診断,耐震補強の実施を促進させるための新たな制度的対策の研究を行った.新たな制度的対策として,中古住宅売買/賃貸時説明責任制度,沿道既存不適格建築物耐震改修補助制度,生命/損害保険耐震性割引制度,中古住宅耐震性価格査定制度,減災耐震改修促進制度,地震倒壊危険建築物利用制限制度の6つを抽出した.研究方法として,原因仮説体系の設定,ユーザー意識インターネットアンケート調査による原因考察,対策現状を踏まえた新たな制度的対策の考案,ユーザー意識インターネットアンケート調査による効果考察,法的観点からの妥当性評価を行った.