著者
堀田 広満 及川 哲郎 伊藤 剛 花輪 壽彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.722-726, 2011 (Released:2012-03-21)
参考文献数
35
被引用文献数
1

掌蹠膿疱症に関節症状を合併する例は少なくないが,標準的治療は確立されていない。今回,柴胡桂枝湯の投与で皮疹および関節症状が改善した掌蹠膿疱症の症例を提示する。症例は44歳,男性。足底の膿疱,胸鎖関節,股関節,腰部の疼痛を認めた。ジクロフェナクナトリウム挿肛後も疼痛は緩和せず当研究所を受診した。掌蹠膿疱症の関節痛合併例と診断し「治小柴胡湯,桂枝湯,二方証相合者」を目標に柴胡桂枝湯を処方したところ,1ヵ月後,関節痛,皮疹が軽快した。以後,上気道症状と共に再び足底に膿疱を認め,桔梗湯の『傷寒論』条文「咽痛者」から桔梗を加味したところ,関節痛,皮疹がほぼ消失した。掌蹠膿疱症の関節痛合併例に柴胡桂枝湯を用いたとする文献はない。関節痛を合併する掌蹠膿疱症は稀ではなく,柴胡桂枝湯は有用な処方のひとつであると考える。