著者
榎本 有希 賀来 典之 六車 崇 クナウプ 絵美里 野坂 宜之 塚原 紘平
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.723-728, 2015-12-28 (Released:2015-12-28)
参考文献数
8

目的:わが国の小児病院前救護に関する教育の実態は不明である。小児病院前救護に関する教育の課題を抽出するために本研究を行った。方法:2013年6月にわが国の消防本部を対象に小児病院前救護に関するアンケートを施行し,そのうち教育に関する部分を抽出し解析した。結果:多くの項目で小児病院前救護に関する教育の必要性は認識されていた。一方で,教育が必要量の50%以上行われている(充足している)との回答は半数未満であった。また,救命救急センターの少ない地域では,多い地域に比べて教育の充足度が有意に低い分野が複数みられた。考察:小児病院前救護に関する教育の必要性は認識されているが,十分な教育がなされていない可能性がある。教育内容を再検討のうえで,処置基準や装備デバイスと一貫性をもった,効率的なoff the job trainingを行う必要がある。
著者
問田 千晶 六車 崇 賀来 典之 塚原 紘平 安達 晋吾 光銭 大裕 新田 雅彦 野坂 宜之 林 卓郎 松浦 治人 守谷 俊
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.57-61, 2022-02-28 (Released:2022-02-28)
参考文献数
9

目的:オンライン型PPMECコース用の教材を作成し,オンライン型PPMECコースの理解・満足度と課題について検証した。方法:オンライン型PPMECコース受講前後のアンケート結果を用いて,新規教材およびオンライン型PPMECコースの理解度と満足度を量的に分析した。完全満足評価群と他評価群の2群比較および多重ロジスティック回帰分析を実施し,オンライン型PPMECコースの満足度に影響する因子を抽出した。結果:オンラン型PPMECコースは少数のインストラクターで多数の受講生に対して実施でき,一定の理解度と満足度を得ていた。完全満足群では教育内容を「十分に理解できている」と回答した受講生の割合が高かった。また,コースの満足度には「小児の評価」および「小児basic airway」の理解度がコース評価に有意に影響していた。結論:オンライン型PPMECコースは受講生の満足度と理解度を得ることにつながっていたが,理解しやすい教育教材への改良などによりコースの質を向上させることが課題である。
著者
クナウプ 絵美里 賀来 典之 野坂 宜之 塚原 紘平 榎本 有希 六車 崇
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.35-40, 2016-02-29 (Released:2016-02-29)
参考文献数
10

背景:病院前救護での小児への救命処置は,地域メディカルコントロール協議会(以下,MCと略す)ごとに業務プロトコールが定められている。目的・方法:小児への静脈路確保と薬剤投与の基準の調査のため,全国767消防本部の救急責任者にメールでウェブアンケートを実施した。結果:アンケート回収率は87.5%。適応年齢は,静脈路確保で「規定なし」56%,薬剤投与で「8歳以上」82%が最多であった。小児を処置の対象と回答したものの,1割の消防本部では小児には不適切な太い留置針のみが配備されていた。複数の消防本部が所属するMCのうち,静脈路確保は60%,薬剤投与は24%で年齢基準が統一されていなかった。救命救急センターが少ない地域では,8割以上が小児を薬剤投与の適応としていた。小児CPR教育への充足度は低いが需要は高かった。結論:事後検証を行う体制の整備,地域に合った年齢基準の策定と徹底,基準にあった装備と教育が必要である。
著者
青景 聡之 平山 隆浩 塚原 紘平 高 寛 清水 一好 中川 晃志 岩崎 達雄 笠原 真悟 内藤 宏道 中尾 篤典
雑誌
第46回日本集中治療医学会学術集会
巻号頁・発行日
2019-02-04

【背景・目的】ECMOには抗凝固療法が必須であり、出血や貧血を代償するため輸血が用いられる。輸血需要に関連した患者の臨床的特徴、凝固管理、予後については十分に解明されていない。本研究では輸血需要が増加しやすい患者の特徴を明らかにし、リスクに応じて異なる抗凝固戦略の必要性について考察する。【方法】2013年1月から2018年8月までの成人ECMO症例 67例のうち、96時間以上のECMO使用例、30例を研究対象とした。導入前後に開胸手術、Central ECMOを要した症例は除外した。入院時の臨床的特徴および、導入から7日目まで(離脱・回路交換を行ったものはその時点まで)の輸血量と凝固パラメータを評価した。1日あたりの平均赤血球輸血量の中央値は240 ml/dayであったため、少量輸血群(<240ml/day)13例と多量輸血群(≧240ml/day)17例の2群に分類し、臨床的特徴と凝固パラメータ、予後について解析した。【結果・考察】臨床的特徴・予後を表に示す。多量輸血群ではVA ECMOの頻度が高かった。年齢・性別・APACHE/SOFAスコアは両群間で差はなかった。管理面では、多量輸血群で、血小板値が低く、ヘパリン使用量が少ない反面、APTTは延長していた。ACTとECMO期間に差はなかった。VA ECMOでは、VVよりも出血が生じやすい可能性があり、輸血量に反映された可能性がある。【結語】輸血量が多い群ではVA ECMOの割合が多かった。VAではVVと異なる抗凝固戦略の必要性が示唆された。今後はさらに解析をすすめ、VAとVVの患者背景と管理法の違いを明らかにしていく。