著者
堀田 浩貴 熊本 悦明 青木 正治 山口 康宏 佐藤 嘉一 鈴木 伸和 和田 英樹 伊藤 直樹 塚本 泰司
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.82, no.12, pp.1939-1946, 1991-12-20
被引用文献数
1

夜間睡眠時勃起現象(NPT)は,ほとんどすべての健康男子に見られる生理現象であるが,小児での検討は少ない。そこで今回我々は,3歳から18歳までの小児30例で,NPT測定を行い,身体的発育と性的成熟度との関連について検討した。1.NPTの回数は各年齢でバラつきが大きいが,10歳過ぎ頃より増加傾向を認め,13,14歳の2例で14回と最高値を示した。2.陰茎周増加値(一晩のNPTのエピソード中,最大の陰茎周変化の値)は10歳まではすべて10mm以下であったが,12歳過ぎ頃に急激な増加が見られた。3.NPT時間(一晩のNPT時間の合計),%NPT時間(睡眠時間に占めるNPT時間の割合)は,ともに12歳頃より急激な増加が認められた。%NPT時間は,血清LH値とほぼ正の相関を示していた。また思春期発来の指標と考えられている夜間睡眠時のLH pulseが認められた例では,認められなかった例に比し,%NPT時間は明らかに高値であった。4.以上から,小児におけるNPTの測定は,他の内分泌的指標とともに思春期発来を知る上での生理学的指標となり得る可能性が示唆された。
著者
堀田 浩貴 熊本 悦明 青木 正治 山口 康宏 佐藤 嘉一 鈴木 伸和 和田 英樹 伊藤 直樹 塚本 泰司
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.82, no.12, pp.1939-1946, 1991-12-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
18
被引用文献数
1

夜間睡眠時勃起現象 (NPT) は, ほとんどすべての健康男子に見られる生理現象であるが, 小児での検討は少ない. そこで今回我々は, 3歳から18歳までの小児30例で, NPT測定を行い, 身体的発育と性的成熟度との関連について検討した.1. NPTの回数は各年齢でバラつきが大きいが, 10歳過ぎ頃より増加傾向を認め, 13, 14歳の2例で14回と最高値を示した.2. 陰茎周増加値 (一晩のNPTのエピソード中, 最大の陰茎周変化の値) は10歳まではすべて10mm以下であったが, 12歳過ぎ頃に急激な増加が見られた.3. NPT時間 (一晩のNPT時間の合計), %NPT時間 (睡眠時間に占めるNPT時間の割合) は, ともに12歳頃より急激な増加が認められた. %NPT時間は, 血清LH値とほぼ正の相関を示していた. また思春期発来の指標と考えられている夜間睡眠時のLH pulseが認められた例では, 認められなかった例に比し, %NPT時間は明らかに高値であった.4. 以上から, 小児におけるNPTの測定は, 他の内分泌学的指標とともに思春期発来を知る上での生理学的指標となり得る可能性が示唆された.
著者
古屋 聖児 横山 英二 熊本 悦明 塚本 泰司
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.15-24, 1983 (Released:2010-07-23)
参考文献数
18

正常対照群7例と神経因性膀胱患者20例を対象として, 球海綿体反射の伝導時間を測定した. この伝導時間は, 陰茎または陰核, および後部尿道を電気刺激した後, 肛門括約筋が収縮する迄の潜時として計算される.1. 正常対照群における伝導時間は, 陰茎または陰核を電気刺激したばあいは32-45msec (平均38.1msec), 後部尿道を刺激したばあいは60-84msec (平均71.1msec) であつた. 従つて, 前者のばあい50msec以上, 後者のばあい90msec以上の伝導時間は異常と考えられる.2. 核上型神経因性膀胱患者12例の伝導時間は, 正常対照群と差を認めなかつた. しかし, 核型神経因性膀胱患者1例および末梢型神経因性膀胱患者6例では, 球海綿体反射の伝導時間に延長が認められた.3. 球海綿体反射の伝導時間の測定は, 客観的, 定量的な臨床検査法として, 神経因性膀胱のタイプや障害部位の診断に有用であると考えられる.
著者
高柳 明夫 小林 皇 橋本 浩平 加藤 隆一 舛森 直哉 伊藤 直樹 塚本 泰司
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.99, no.7, pp.729-732, 2008-11-20 (Released:2011-01-04)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

症例は32歳, 男性. 両側精巣萎縮と性欲減退を主訴に2006年2月9日に当科を初診した. 問診より1999年からのアナボリックステロイド (AAS) の濫用が判明した. 身体所見では両側精巣容積が13mlと萎縮していた. 内分泌的検査では黄体化ホルモン, 卵胞刺激ホルモン, 総テストステロンは低値であり, 遊離型テストステロン (Free T) は高値だった. また, 後日判明した sex hornomne binding globulin (SHBG) も低値であり, 算出された calculated Bioavailable testosterone (cBAT) も低値だった. 以上の所見からからAASの濫用による低ゴナドトロピン性性腺機能低下症と診断した. AASの中止のみで経過観察を行ったが改善を認めなかったため, 5月18日より週1回のヒト絨毛性ゴナドトロピン (hCG) 3,000単位筋肉注射を開始した. その後6月22日に内分泌学的検査を施行したが自覚症状, 内分泌検査所見ともに改善は認めていない. AASの濫用により低ゴナドトロピン性性腺機能低下症となることが知られており, 一部の患者ではAAS中止後も性腺機能低下症が改善しないことが報告されている. 本症例においてはhCG注射を早期に開始したことが早期に精巣機能を改善するかどうかについて今後の注意深い観察が必要である. また, 本症例の病状を把握する上では free T よりもcBATを用いることが有用だったと考えられた. AASには多くの重篤な副作用があり安易な使用は控えるべきである. またAASの副作用に関しての広い啓発により濫用を防ぐことが必要と考えられた.
著者
塚本 泰司
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.47-51, 1998
参考文献数
12

1972年、Jennet & Plumは外的刺激に対する反応の欠如する状態の継続する脳障害の患者について、PVS(persistent vegetative state)と命名した。かれらはこの状態は継続するが、永続性(permanent)か、不可逆性(irreversibk)であるかは断言できないとして遷延性(persistent)という語を用いた。しかし今日、意識障害が12ヶ月続いた場合には不可逆的である(Multi-society task force on PVS, 1994,英国Bland事件判決etc.)とし、PVSに対し、permanentを用いる識者が散見される(Mason, 1996.Truog, 1997)。また「PVSにおいては大脳皮質の機能はpermanentに喪失している(institute of medical ethics 1991)」などの記述が見られ、それが植物状態からの栄養補給の停止の根拠とされることがある。しかし不可逆性はあくまで経験的なものであり、100%担保されたものではない。勿論、不可逆性が担保されないからといって、正確な知識に裏打ちされたliving willや、医療資源の問題からの医療中止の議論が成り立たないことはなかろう。しかしpermanentという語は、living willなどの作成時などに誤解を招き、不適当と考える。
著者
佐藤 俊介 西中 一幸 高橋 聡 廣部 恵美 塚本 泰司
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.104, no.5, pp.674-677, 2013-09-20 (Released:2014-09-22)
参考文献数
11
被引用文献数
1

抗てんかん薬であるゾニサニドによる尿路結石の報告が散見される.今回,脱水を契機に短期間で両側腎尿管結石を生じた1例を経験したので報告する.症例は10歳女児.難治性てんかんにてゾニサミドを内服していた.脳室腹腔シャント感染治療で入院中に,肉眼的血尿と尿砂を主訴に2009年1月8日当科紹介.CTにて両側腎尿管結石による水腎症を認めた.3週間前のCTでは尿路結石は認めなかった.ゾニサミド誘発性の尿路結石と判断し同剤を中止するも腎機能障害と水腎症増悪を認め,右腎瘻造設術,左尿管ステント留置術を施行した.両側とも自然排石され術後1カ月時に右腎瘻抜去,5カ月時に左尿管ステント抜去となった.結石の主成分は燐酸Ca結石であった.その後の再発はない.ゾニサミド投与中には脱水等を契機に短期間でも尿路結石が発生することがあり注意を要する.
著者
安達 秀樹 佐藤 嘉一 堀田 浩貴 熊本 悦明 塚本 泰司
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.88, no.9, pp.788-794, 1997-09-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
18

(目的) Erectometer を用いた陰茎周増加値の測定において, その増加値のみで勃起度の判定ができるかどうかなど, 陰茎周増加値の臨床的意義を陰茎周増加率との比較を含め改めて検討した.(対象と方法) インポテンスを訴えて受診した症例とインポテンスのない症例合計116例を対象として, vasoactive drug 海綿体注入により人工的勃起を起こし, 陰茎の周径変化と陰茎硬度を比較検討した.(結果) 陰茎周最大増加値が21mm以上では十分な硬度の勃起が得られ, 10mm以下では不十分な硬度が多いことが示された. また11mm以上21mm未満では, 弛緩時の陰茎周値が95mm未満の場合勃起は不十分であり, 95mm以上では十分な勃起が多いことが示された. 陰茎周最大増加率26%以上の症例は十分な勃起が多く, 10%以下では不十分な勃起のことが多かった. 11%以上26%未満では, 弛緩時陰茎周が95mm未満の場合勃起が不十分であり, 95mm以上では十分な勃起が多いことが示された. 陰茎周増加値と陰茎周増加率の診断精度はほぼ同等であった.(結論) 陰茎周増加値に弛緩時陰茎周を考慮することで, 陰茎硬度の推定がより正確となった. Erectometer による陰茎周増加値を用いた勃起能評価は性機能障害のスクリーニングとして有用と考えられた.
著者
本間 之夫 塚本 泰司 安田 耕作 大園 誠一郎 吉田 正貴 進士 恵美
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.93, no.6, pp.669-680, 2002-09-20
被引用文献数
10 26

(目的)International Prostate Symptom Score (IPSS) と BPH Impact Index(BII)の日本語訳の言語的妥当性を検討する.(方法)IPSSとBIIの日本語訳の作成を多段階の手法で行った.順翻訳の作成は,5名の泌尿器科医師と2名の翻訳者と1名の看護師が,各自で行った翻訳と日本の排尿障害臨床ガイドラインにある翻訳を討議して行った.これを2名の米語を母国語とする翻訳者によって逆翻訳し,原著者と討議した.あわせて20名の前立腺肥大症患者を対象に詳しい個人面接を行った.(結果)原作者からはおおむね同意が得られたが,大きな問題点が2つよせられた.それは,IPSSの質問文すべてにあるhow oftenが日本語訳にはない点,および,QOL indexの回答肢の日本語訳をより感情的な表現とすべきとする点であった.前者については,質問票の始めに回答は頻度で考える旨の説明文を置くことで合意が得られた.後者については,88名の患者で追加調査を行い,いくつかの選択肢についてはその訳をより感情的なものにして合意に達した.(結論)IPSSとBIIの日本語訳について言語的な妥当性を検討し,妥当と思われる日本語訳を作成した.
著者
塚本 泰司 三熊 直人 舛森 直哉 宮尾 則臣 伊藤 直樹
出版者
札幌医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

‘老化'と前立腺肥大症の発生との関係の一端を解明するために、1)ヒト前立腺の加齢による形態変化、2)前立腺平滑筋の機能、3)前立腺上皮、間質細胞の増殖と抑制、について臨床的、生理学的および分子生物学的検討を行った。その結果以下の知見を得た。1) Community-based studyにおける検討により、加齢にともなう経直腸的超音波断層上の前立腺の形態は、一部の男子では50歳前後にかけて、それまで均一であった前立腺が結節を呈するようになり、これらのうちの一部の男子でさらに肥大結節が増大するという経過を辿ると推測された。したがって、臨床的な前立腺肥大出現のtumingpointは50歳にあると考えられた。2) 前立腺平滑筋細胞の培養細胞株をguinea-pig前立腺より確立した。この細胞は形態学的および機能的所見からも平滑筋細胞であり、今後のin vitroの実験モデルとして有用と考えられた。3) 前立腺平滑筋の加齢による機能的変化の検討から、8週齢の若年guinea-pigと比較すると12か月の高齢guinea-pigでは収縮張力の低下が認められ、加齢が前立腺平滑筋の機能に影響を及ぼす可能性が示唆された。4) 前立腺肥大症の一部には下部尿路閉塞に対する治療のみでは排尿障害を改善できないことがあり、膀胱平滑筋の機能を改善させる治療が必要であることが示された。5) 前立腺の上皮および間質細胞はandrogenおよび各種の成長因子regulationを受けているが、TGF-betaを中心とするこれらの間のネットワークの解明を試みた。今回の結果とこれまでの知見を総合すると、androgen存在下では増殖に作用する成長因子により上皮および間質の恒常性が保たれ、androgen低下時にはTGF-beta発現が亢進し上皮細胞はapoptosisにより減少する。一方、TGF-beta発現増加によりFGF産生が刺激され間質の増殖が起こる。これが加齢にともなう前立腺肥大の発生機序の一つと推測された。
著者
古屋 聖児 小椋 啓 田中 吉則 桝森 直哉 塚本 泰司
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.407-410, 1997-06

北海道都市部及び東京在住の20歳代から50歳代の一般事務系サラリーマン2,839人よりえられた,自己記入方式のアンケート調査より,排尿後尿洩れの発症率,頻度,程度及び発現状況などを検討した.排尿後尿洩れの発症率は,17.1%であった.「殆ど毎日」尿洩れを経験している人は,排尿後尿洩れ経験者の14.0%を占めた.これは,全対象者の2.3%,約50人に1人の割合であった
著者
田中 吉則 舛森 直哉 塚本 泰司 古屋 亮兒 小椋 啓 古屋 聖兒
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.101, no.3, pp.554-557, 2010-03-20

(緒言) 経尿道的前立腺切除術(transurethral resection of the prostate:TURP)後の排尿後尿滴下(post micturition dribble:PMD)の実態を調査した.<br> (対象と方法) TURPを施行した388例に対して術後1年目に尿失禁の有無,頻度,程度,および種類(腹圧性尿失禁,切迫性尿失禁,PMD)を問うアンケート調査を行った.<br> (結果) 有効回答270例中,78例(29%)が尿失禁ありと回答した.60例(77%)は週に1回か2回の尿失禁,72例(92%)はパンツにしみがつく程度の軽度の尿失禁であったが,毎日あるいはズボンを汚すとの重症例も少数に存在した.尿失禁の種類はPMDが48例(62%)と半数以上を占めていた.<br> (結論) TURP後の尿失禁の半数以上にPMDが関与していた.<br>