著者
増田 佐和子 臼井 智子
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.124, no.2, pp.103-108, 2021-02-20 (Released:2021-03-01)
参考文献数
12

わが国では学校で定期的に健康診断が行われており, 耳鼻咽喉科健康診断もこれに含まれて実施されている. 今回, 学校健診から難聴を疑われて耳鼻咽喉科を受診した小中学生の検討を行った. 対象は201例 (男児86例・女児115例) で, 平均年齢は8.6歳であった. 聴力に関する診断結果の内訳は, 両側感音性難聴8%, 両側伝音性難聴3%, 一側感音性難聴21%, 一側伝音性難聴15%, 一側感音性難聴と機能性難聴合併1%, 機能性難聴29%, 正常23%であった. 両側感音性難聴7例, 一側感音性難聴16例は, 新生児聴覚スクリーニングをパスしていたことが確認された. 両側感音性難聴17例のうち12例が補聴器の適応と診断され, 7例が補聴器装用に至った. 両側伝音性難聴7例のうち中耳奇形1例, 一側伝音性難聴30例のうち中耳奇形3例, 中耳真珠腫6例, コレステリン肉芽腫1例の計11例が手術治療に至った. 機能性難聴は7~8歳児に多く, 女児が76%を占めた. 新生児聴覚スクリーニングや乳幼児健診により難聴の早期発見が進んでいるが, 学校健診は小中学生の難聴の発見と治療介入に有用であり, 重要な機会であると考えられた.
著者
鵜飼 幸太郎 坂倉 康夫 竹内 万彦 増田 佐和子 湯田 厚司 大川 親久 緒方 俊行
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.447-458, 1999-08-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
9
被引用文献数
1

スギ花粉症の患者30例を対象に, 甜茶ポリフェノール含量を高めた飲料 (甜茶エキス80mg/日) をスギ花粉飛散前に投与を開始する初期投与群 (15例) と発症後投与群 (15例) に投与し, スギ花粉飛散前期における鼻症状, 眼症状および併用薬剤使用状況を調査し, その有効性, 安全性および有用性について検討を行った。初期投与群と発症後投与群を比較したところ, 花粉症発症1週目, 2週目ともsymptom scoreには差が認められなかったが, medication scoreおよびsymptom-medication scoreには, 統計学的に有意な差が認められた。試験終了時の医師による最終総合評価では, 初期投与群で「中等度改善」以上が53.3%を占め, 発症後投与群の6.7%に比べて有意に高い症状改善率を示した。副作用は全例に認められず, 臨床症状改善率と副作用を考慮した有用度は初期投与群において「やや有用」以上が60%を占め, 発症後投与群の33.3%と比較して有意に高い有用性を示した。以上の結果より, 甜茶飲料をスギ花粉飛散前から飲用することにより, スギ花粉症症状を予防的に抑制し治療薬の低減に有用であることが確かめられた。
著者
増田 佐和子 臼井 智子
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.942-951, 2015 (Released:2015-09-26)
参考文献数
12
被引用文献数
1

【背景・目的】スギ花粉症の患児が自ら感じている症状やQuality of Life(QOL)障害の程度を把握することは必ずしも容易ではない.また子どもの花粉症が保護者のQOLに及ぼす影響についてもわかっていない.花粉症による症状や支障について,患児と保護者それぞれの認識を検討することを目的とした.【方法】小中学生のスギ花粉症患児とその保護者26組52名に対し,独自に作成した自記式のアンケート調査を行って関連を検討した.【結果】症状の程度について,患児と保護者の認識はよく一致していた.花粉症による問題として最も多かったのは,患児も保護者も「鼻や目をこすること」であった.患児では実際的なことを,保護者では患児の情緒や生活面での支障を気にする傾向にあった.半数以上の保護者が子どもの健康状態に不安を感じており,不安がある保護者の子どもは鼻症状が強かった.【結語】小中学生の患児は症状を適切に示すことができ,患児と保護者では支障を感じる点に差がある.それぞれのQOLを考慮した治療管理が必要であり,患児と保護者用の適切な調査票の開発が必要であると考えられた.
著者
鶴岡 弘美 石川 和代 臼井 智子 増田 佐和子
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.757-762, 2013-12-28 (Released:2014-05-09)
参考文献数
10

要旨: 当科で聴覚管理を行っている聴覚障害児のうち, 通常学校から聾学校へ転校した12名 (男児3名, 女児9名) について検討した。難聴の診断年齢は平均5歳4ヵ月と高く, 6名は就学後に発見されていた。何らかの発達障害や知的障害は6名, 境界例まで含めると10名に認められた。経過中9名で難聴の進行を認め, 6名は平均聴力レベルが70dB以上を超えた時期に転校していた。通常学校で何らかの支援を受けていたのは8名であった。転校の理由は10名が不登校, 学業不振, 不適応で, ほとんどが医療機関または県の児童相談センターの助言で転校に至っていた。転校後のアンケート調査からは, 聾学校で良好な学習環境や友人関係が得られていることが示唆された。今後は, 難聴の早期発見, 合併障害や聴力低下への対応とともに, 通常学校が難聴児の抱える問題に早期に気付き対応できるように啓発し, 支援体制を整えることが必要と考える。
著者
臼井 智子 増田 佐和子
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.17-22, 2012 (Released:2012-12-28)
参考文献数
8

RSV 感染症により入院治療を行った24例のうち,急性中耳炎を合併した18児を対象とし,年齢,重症度,臨床症状,鼓膜所見,検出菌や治療,経過を検討した。RSV 感染に合併した急性中耳炎児の初診時月齢は,0 ヵ月から 3 歳 5 ヵ月,平均12.3ヵ月,中央値11.5ヵ月であった。2 歳以上に比べ 2 歳未満で有意に中耳炎の合併率が高く,軽症は 7 例,中等症は 3 例,重症は 8 例であった。抗菌薬投与や鼓膜切開術を行わずに急性中耳炎が治癒したものは 2 例のみであり,軽症,中等症の 4 例で翌日に増悪を認め,そのうち 1 例は治癒後にも再燃を認めた。上咽頭からは12例,中耳貯留液からは 1 例で細菌が検出されており,重症度や経過との関連は認められなかった。細気管支炎により入院での全身管理を要する RSV 感染は低年齢児に多い。中耳炎を認めた場合,翌日に悪化することもあるため,軽症であっても連日の注意深い観察と小児科医との連携が必要であると考えられた。
著者
増田 佐和子 寺田 明彦 藤澤 隆夫 井口 光正
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.49, no.12, pp.1138-1145, 2000-12-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
23
被引用文献数
4

近年小児スギ花粉症の増加が報告されているが, 幼児における実態は未だ明らかではない.そこで, 5歳以下の幼児のスギ花粉の感作状況と発症例の臨床的特徴について検討した.気管支喘息・アトピー性皮膚炎などで国立療養所三重病院小児科アレルギー外来を受診した幼児76名(男児51名, 女児25名, 2カ月〜5歳)のスギCAP-RAST陽性率は27.6%で0歳の陽性例はなく, 最年少陽性例は1歳8カ月男児であった.ヤケヒョウヒダニ陽性率は61.8%で, ダニ陽性児ではスギ陽性率が有意に高値であった.1999年および2000年春に同耳鼻咽喉科でスギ花粉症と診断された幼児は27名(男児20名, 女児7名, 2〜5歳)で, 最年少は2歳5カ月男児であった.症状は鼻汁, 目の症状が多く, 咳, いびき, 鼻出血を訴えるものもあった.重複抗原として約60%がダニ陽性であったが40%はスギのみ, またはスギとヒノキのみ陽性を示した.以上よりスギ花粉による感作は2シーズンの暴露で成立し得ること, 2歳で発症し得ることが明らかとなり, スギ花粉は幼児においても重要な抗原であることが示された.
著者
日本耳鼻咽喉科学会福祉医療・乳幼児委員会 守本 倫子 益田 慎 麻生 伸 樫尾 明憲 神田 幸彦 中澤 操 増田 佐和子 森田 訓子 中川 尚志 西﨑 和則
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.122, no.9, pp.1221-1228, 2019-09-20 (Released:2019-10-02)
参考文献数
11

乳幼児の自覚的聴力検査から得られる情報は重要であり, 可能な限り信頼性の高いデータを短時間に得る必要がある. これらの検査技術の困難度, 信頼度が年齢 (3歳未満, 3~6歳, 6歳以上の3群に分類) や発達レベル (定型発達, 発達障害, 知的発達障害の3群に分類) から受ける影響を, 聴力検査にかかった時間および検者が声かけなどに対する反応などから感じた聴力検査結果との整合性を「検査信頼度」として評価, 検討を行った. 研究参加施設は大学病院, 総合病院, クリニックなど15施設である. 検査の信頼度は, 3歳未満では知的発達障害児で41%, 定型発達児58%, 発達障害児50%と知的発達障害児が有意に低かった. 3~6歳では定型発達児88%, 発達障害児75%, 知的発達障害児73%であり, 6歳以上では発達障害児と定型発達児はどちらも90%以上であったが, 知的発達障害児のみ77%であった. 検査にかかる時間も3歳未満では, 発達による差異は認められなかったが, 3~6歳未満および6歳以上においては, 発達障害児と定型発達児に比べて知的発達障害児の検査時間は有意に長かった. 6歳未満の児への聴力検査には技術と時間がかかること, 発達障害・知的発達障害があるとさらに検者の検査にかける時間や高度な技術が必要となることが明らかになった.
著者
増田 佐和子 鶴岡 弘美 須川 愛弓 臼井 智子
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.54-60, 2021-02-28 (Released:2021-03-20)
参考文献数
15

要旨: 自動 ABR による新生児聴覚スクリーニング (NHS) で一側リファーとなり両側難聴と診断した19例を検討した。5例に難聴の家族歴を認め, 7例は複数回のスクリーニングで両側リファーとなったことがあった。パス側で判明した難聴の程度は軽度7例, 中等度11例, 高度1例, 聴力型は水平型9例, 低音障害型4例, 高音漸傾型3例, 高音急墜型2例, 不明1例であり, リファー側とパス側の難聴の程度は17例で, 聴力型は13例で一致した。パス側の偽陰性の理由は, 11例が境界域の聴力レベル, 6例が高音域の閾値が正常範囲内の聴力型, 1例が進行性難聴によると推定され, 1例は不明であった。18例が補聴器の適応とされたが4例は装用を拒否または受診を中断した。一側リファー例でも慎重に対応し, 難聴の家族歴をもつ場合, 複数回のスクリーニングで両側リファーがあった場合, リファー側が軽・中等度難聴や特殊な聴力型である場合などは特に注意すべきであると考えられた。
著者
臼井 智子 鶴岡 弘美 石川 和代 町野 友美 増田 佐和子
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.324-329, 2010 (Released:2012-12-28)
参考文献数
19

心因性難聴の診断をきっかけとして,思春期になって不注意優勢型の注意欠如・多動性障害(ADHD)が判明した同胞例を経験した。症例 1(16歳女性)は,14歳時に難聴と診断され補聴器を装用したが効果がなく,当科で心因性難聴と診断した。症例 2(14歳女性)は症例 1 の妹で,幼少時からの滲出性中耳炎改善後も変動する難聴があり,姉と同様補聴器装用効果がなく,当科で心因性難聴と診断した。詳細な問診から 2 例とも聴覚的認知の悪さと能力のアンバランスが判明し,小児神経科での精査の結果不注意優勢型 ADHD と診断された。ADHD に対する薬物療法と介入を行って難聴は改善した。本同胞例は内因子として ADHD を有し,様々な環境因子に適応しにくい状態から二次的に心因性難聴が出現したと推察された。 心因性難聴の診断にあたっては,環境などの外因子だけでなく発達障害などの内因子の存在を念頭におき,小児神経科医などの専門家と協力することが必要であると考えられた。
著者
奥田 稔 高坂 知節 三宅 浩郷 原田 康夫 石川 哮 犬山 征夫 間口 四郎 新川 秀一 池野 敬一 松原 篤 稲村 直樹 中林 成一郎 後藤 了 小野寺 亮 遠藤 里見 亀井 民雄 室井 昌彦 馬場 廣太郎 島田 均 舩坂 宗太郎 大橋 伸也 鄭 正舟 小澤 実佳 八木 聰明 大久保 公裕 後藤 穣 服部 康夫 上野 則之 柏戸 泉 大塚 博邦 山口 潤 佃 守 池間 陽子 坂井 真 新川 敦 小林 良弘 佐藤 むつみ 山崎 充代 藤井 一省 福里 博 寺田 多恵 小川 裕 加賀 達美 渡辺 行雄 中川 肇 島 岳彦 齋藤 等 森 繁人 村上 嘉彦 久松 建一 岩田 重信 井畑 克朗 坂倉 康夫 鵜飼 幸太郎 竹内 万彦 増田 佐和子 村上 泰 竹中 洋 松永 喬 上田 隆志 天津 睦郎 石田 春彦 生駒 尚秋 鈴木 健男 涌谷 忠雄 宮國 泰明 夜陣 紘治 森 直樹 田頭 宣治 宮脇 浩紀 青木 正則 小林 優子 高橋 正紘 沖中 芳彦 遠藤 史郎 池田 卓生 関谷 透 奥園 達也 進 武幹 前山 忠嗣 恒冨 今日子 増山 敬祐 浅井 栄敏 土生 健二郎 中崎 孝志 吹上 忠祐 角田 憲昭 渡辺 隆 野口 聡 隈上 秀伯 吉見 龍一郎 茂木 五郎 鈴木 正志 大橋 和史
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.633-658, 1996-09-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
21

通年性アレルギー性鼻炎患者211例を対象に, KW-467910mg/日 (KW群) の有効性, 安全性および有用性をoxatomide 60mg/日 (OX群) を対照薬として多施設二重盲検群間比較試験により検討した.最終全般改善度の「改善」以上は, KW群61-6%, OX群57.6%で, 両群間に有意差は認められなかつたが, 同等性の検証を行った結果, KW群はOX群と比較して同等ないしそれ以上と考えられた. 概括安全度の「安全性に問題なし」と評価された症例は, KW群68.0%, OX群61.4%で, 両群間に有意差は認められなかった. 主な副作用症状は両群とも眠気であった. 有用度の「有用」以上は, KW群54.9%, OX群50.5%であり両群間に有意差はなかったが, KW群の方がやや有用率が高かった.以上の成績より, KW-4679は通年性アレルギー性鼻炎に対して, 臨床的に有用性の高い薬剤であると考えられた.
著者
鵜飼 幸太郎 坂倉 康夫 竹内 万彦 増田 佐和子 湯田 厚司 大川 親久 緒方 俊行
出版者
Society of Oto-rhino-laryngology Tokyo
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.447-458, 1999

スギ花粉症の患者30例を対象に, 甜茶ポリフェノール含量を高めた飲料 (甜茶エキス80mg/日) をスギ花粉飛散前に投与を開始する初期投与群 (15例) と発症後投与群 (15例) に投与し, スギ花粉飛散前期における鼻症状, 眼症状および併用薬剤使用状況を調査し, その有効性, 安全性および有用性について検討を行った。<BR>初期投与群と発症後投与群を比較したところ, 花粉症発症1週目, 2週目ともsymptom scoreには差が認められなかったが, medication scoreおよびsymptom-medication scoreには, 統計学的に有意な差が認められた。<BR>試験終了時の医師による最終総合評価では, 初期投与群で「中等度改善」以上が53.3%を占め, 発症後投与群の6.7%に比べて有意に高い症状改善率を示した。<BR>副作用は全例に認められず, 臨床症状改善率と副作用を考慮した有用度は初期投与群において「やや有用」以上が60%を占め, 発症後投与群の33.3%と比較して有意に高い有用性を示した。<BR>以上の結果より, 甜茶飲料をスギ花粉飛散前から飲用することにより, スギ花粉症症状を予防的に抑制し治療薬の低減に有用であることが確かめられた。
著者
増田 佐和子 藤澤 隆夫 井口 光正 熱田 純 野間 雪子 長尾 みづほ 南部 光彦 末廣 豊 亀崎 佐織 寺田 明彦 水野 美穂子 清水 正己 東田 有智
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.1312-1320, 2006
被引用文献数
8

【背景】近年,小児スギ花粉症の増加が指摘されている.しかし幼小児でのスギへの感作と花粉症発症の状況はよく解っていない.そこで,乳児から思春期までの小児のスギ花粉感作状況の調査を行った.【方法】243名のアレルギー疾患をもつ小児(8カ月〜16歳,中央値5歳)と137名の同疾患をもたない児(1カ月〜15歳,中央値4歳)についてスギ花粉,ヤケヒョウヒダニ,カモガヤ花粉,卵白,牛乳の血清中特異IgE抗体をCAP-RAST法で測定し,保護者記載による問診票とともに検討した.【結果】スギCAP-RAST陽性率はアレルギー疾患群で47.1%,非アレルギー疾患群で19.9%であった.スギ陽性率はアレルギー疾患群では3歳から5歳で急激に高くなっており,非アレルギー疾患群では幼児期から思春期にかけて徐々に増加していた.最年少のスギ陽性者は1歳11カ月のアトピー性皮膚炎男児であった.スギ陽性群では陰性群に比べ1〜3月生まれが占める割合が有意に高く,吸入抗原(ダニ,カモガヤ)の重複感作率が高かった.【結語】小児のスギ感作は就学前に成立するものが多い.今後,感作を回避するために乳幼児期からいかなる対策を立てていけばよいのか検討が必要である.
著者
増田 佐和子 鵜飼 幸太郎 竹内 万彦 大川 親久 坂倉 康夫
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.570-576, 1996
被引用文献数
3

スギ花粉の飛散状況は気候に大きく左右され, 総飛散量, 飛散パターンは年により大きく異なっている. 1993年から1995年までの三重県各地の2月, 3月のスギ花粉飛散数を示し, 全県下の耳鼻咽喉科診療施設の新患総数と, これに占めるアレルギー性鼻炎新患の総数を検討したところ, 飛散数に関わらず三分の一から二をアレルギー患者が占めていた. 1995年の飛散数は津市で17943個/cm^2,全県下で99512個/cm^2に達し, 12年間の観測史上最高であった. また, 症状出現前から酸性抗アレルギー剤を服用し, アレルギー日記による症状記録を行った同一患者の過去3年間における飛散期重症日数は, ばらつきが大きいものの飛散数に応じて変化しており, ある一定以上の飛散で症状が出現するが, その後の重症度は総飛散数にかなり依存することが示唆された. 1995年津市においては2月中はほとんど飛散がみられず, 3月になってから爆発的ともいえるほど大量の飛散があり, 患者30名の症状出現率と累積飛散数の対数はよく相関した. また花粉が累積で100個/cm^2飛散すると約半数の患者に, 1000個/cm^2飛散するとほとんどの患者に症状が出現し, これは1993年の結果と一致するものであった. 花粉飛散数が年により変動するのみならず, 患者の症状発現時期, 重症度は個々において大きく異なるものであり, それぞれの患者の状態を見極めた上でそれに応じた治療法を選択することが大切であると考えられる.