著者
初坂 奈津子 宮下 久範 久保 江理 喜多村 紘子 大久保 利晃 佐々木 洋
出版者
日本白内障学会
雑誌
日本白内障学会誌 (ISSN:09154302)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.49-51, 2020 (Released:2020-07-08)
参考文献数
5

当教室では東京電力福島第一原子力発電所の緊急作業従事者約2万人に対する白内障調査を行っている. 昨年度より開始した全国調査では, まず対象者を被ばく線量20mSv以上となる3,673名とし, 2018年4月~2020年3月までに479名の検診が終了した. 現在までの結果は, 微小混濁であるvacuoles が比較的多くの対象者に認められている. 今後, この微小混濁が放射線白内障の一つである後囊下白内障に進行するかについては, 引き続き長期的な調査の継続が必要である.
著者
高橋 謙 大久保 利晃
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.237-243, 1995

本稿は,特に安全衛生に関連した最近の国際労働条約を取り上げ,その特徴を明らかにした上で,総括を試みた.同分野に関連し, 1960-93年の期間中に採択された条約数は13である.これらの条約は,異なる目的をもって安全衛生分野の各領域を網羅しているため,対比的に記述した.条約は批准される必要があるため,日本の批准状況をILOおよびOECD加盟諸国と統計的に比較した.日本は, 1993年6月現在,このうちの3条約を批准したが,この水準はILO加盟国平均をわずかに上回るが, 24のOECD加盟国中11位の批准割合であった. ILO条約のうち,日本の批准割合の相対的水準は,安全衛生分野の方がそれ以外の分野よりも高かった. ILO条約は,引用や参照によって相互に関連しているため, 155号(労働安全衛生)や148号(作業環境)条約などの基本的条約の批准努力が安全衛生分野における他条約の批准を容易にすることが考えられる.
著者
藤野 昭宏 Tar Ching Aw 大久保利晃 加地 浩
出版者
The University of Occupational and Environmental Health, Japan
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.37-44, 1998-03-01 (Released:2017-04-11)

英国における産業医学教育の現状を日本と比較しながら紹介した後, 英国と日本における卒後産業医学教育システムについて比較検討を行った. 産業医学専門医制度(英国王立内科医協会産業医学部門専門医制度と日本産業衛生学会専門医制度)における, 全研修期間, 臨床研修期間, 産業医学研修期間, 専門医試験方法および合格率に関して比較したところ, 前者の方がより多くの産業医の専門的訓練が要求される研修システムであり, また産業医学的臨床実施能力の訓練を重視していることが示唆された. また, 英国の産業医デイプロマ制度とこれに相当する日本の医師会認定産業医制度との比較では, 前者の資格取得のためには, 講習会の受講・基礎的実習のみならず, 試験に合格することが義務付けられていた. 日本の認定産業医制度においても, 試験制度の導入は今後の検討すべき課題あると考えられる.
著者
高橋 謙 大久保 利晃
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.237-243, 1995 (Released:2009-03-27)
参考文献数
17

本稿は,特に安全衛生に関連した最近の国際労働条約を取り上げ,その特徴を明らかにした上で,総括を試みた.同分野に関連し, 1960-93年の期間中に採択された条約数は13である.これらの条約は,異なる目的をもって安全衛生分野の各領域を網羅しているため,対比的に記述した.条約は批准される必要があるため,日本の批准状況をILOおよびOECD加盟諸国と統計的に比較した.日本は, 1993年6月現在,このうちの3条約を批准したが,この水準はILO加盟国平均をわずかに上回るが, 24のOECD加盟国中11位の批准割合であった. ILO条約のうち,日本の批准割合の相対的水準は,安全衛生分野の方がそれ以外の分野よりも高かった. ILO条約は,引用や参照によって相互に関連しているため, 155号(労働安全衛生)や148号(作業環境)条約などの基本的条約の批准努力が安全衛生分野における他条約の批准を容易にすることが考えられる.
著者
賓珠山 務 佐伯 覚 高橋 謙 大久保 利晃
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.219-225, 1992-09-01
被引用文献数
2

全国の専属産業医に質問票を送付し, 過去5年間の従業員の突然死について調査したところ, 241人(回答率61.5%)より回答を得た. 本調査では, このうち, さらに詳細な調査に同意した53名の産業医から報告された143例(男性141例, 女性2例)の突然死症例について, その特徴を記述疫学的に検討した. 発症場所・発症状況では, 自宅または独身寮, 夜間睡眠中がそれぞれ最多であり, 職場, 通勤行程内などの報告例は少なかったが, それが, 重篤な疾病の発症数そのものの差によるのか, あるいはその発症直後に死亡にいたった数の差によるものなのかは, 不明であった. 発症時刻・発症時期では, 月曜の早朝および木・金・土曜,4・11・12月への集中傾向がみられた. 特に, 発症月が職場の繁忙期にほぼ一致しており, 環境要因が発症に関与している可能性が示唆された. 死因は, 心血管系疾患が多かったが, 剖検診断は少数しか実施されておらず, 診断の信頼性は不十分であった.(1992年2月15日 受付,1992年4月27日 受理)
著者
伊藤 敬 高橋 謙 大久保 利晃
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.7-18, 1996-03-01

クロムメッキ作業従事者の健康影響についての調査はまだ十分になされていない。我々はクロムメッキ作業者の死因パターンの特徴を調べるために,東京都にあるメッキ工場の従業員1,193名を対象に16年間の追跡調査を行った。同集団をクロムメッキ作業者群(623名)と非クロムメッキ作業者群(567名)に分け,1976年10月から1992年12月まで追跡した。標準化死亡比(SMR)およびその95%信頼限界(95%CI)を統計学的評価に用いた。クロムメッキ作業従事者における慢性肝炎および肝硬変の死亡リスクについて統計学的に有意な上昇(SMR 2.34; 95%CI 1.17-4.19)と,肺がんのリスクの上昇傾向(SMR 1.18; 95%CI 0.99-3.04)が示された。非クロムメッキ作業従事者においては,死亡リスクに関する有意なリスクの上昇を認めたものは無かった。我々は,各疾患における死亡数が少ないことから,今後もさらなる追跡調査が必要であると結論した。