著者
大北 全俊
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.94-101, 2010-09-23 (Released:2017-04-27)
参考文献数
13

本論考では、感染症対策、なかでも薬剤を使用しない非医療的な対策(nonpharmaceutical interventions:NPI)である隔離や検疫などの感染症対策をめぐる倫理的な問題とそのような対策を実施するにあたって必要と考えられる倫理的な配慮について明らかにすることを目的としている。主な倫理的な問題は、感染拡大の防止という社会的な利益を保全するために、個人の移動の自由やプライバシーの保護などの諸権利を制限せざるを得ないところに生じる。社会的利益と個人の権利・利益、両者をなるべく一致させる考えもあるが、個人の権利・利益の制限という事実は依然として残る以上、両者の均衡を図ることが不可避となる。しかし、両者の均衡を実現するということも根本的な困難をはらんでいる以上、当該施策が適切なものであるか否かということを公的に議論する過程や施策の対象となる個人への意見聴取など、両者の均衡を不断に模索する過程が倫理的な配慮として不可欠である。
著者
大北 全俊
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

HIV感染症を主とするpublic healthに関する事象について、その隠れた政治哲学的枠組みを明確にするとともに、今後の議論のための哲学的・倫理学的枠組みを構築することを目的とする研究である。結論として、public healthに関する哲学的・倫理学的議論の枠組みとは、個人と集団それぞれの位相、および規範的な議論の位相とpublic healthの権力作用を記述する位相、これらを多層的に併せ持つものであることを明確にした。
著者
大北 全俊
出版者
日本医学哲学・倫理学会
雑誌
医学哲学 医学倫理 (ISSN:02896427)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.63-71, 2008-10-22 (Released:2018-02-01)

In this article, I discuss F. Nightingale's thoughts on what to do for the sick by examining her "Notes on Nursing." F. Nightingale begins her thoughts from the definitions of disease, and her consideration of the sick person is based on these definitions. The first definition is "all disease is a reparative process by Nature," the second that "diseases are conditions." The first shows that the relationship between the sick and people in charge of care for them is equal and complementary, since imposed on both of them is the same duty to obey Nature in healing the sick. The second shows that all in a society have an interest in the conditions causing disease. In conclusion, it is clear that that F. Nightingale's consideration of the sick person is "a look not isolating a sick person."
著者
大北 全俊
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.94-101, 2010
参考文献数
13

本論考では、感染症対策、なかでも薬剤を使用しない非医療的な対策(nonpharmaceutical interventions:NPI)である隔離や検疫などの感染症対策をめぐる倫理的な問題とそのような対策を実施するにあたって必要と考えられる倫理的な配慮について明らかにすることを目的としている。主な倫理的な問題は、感染拡大の防止という社会的な利益を保全するために、個人の移動の自由やプライバシーの保護などの諸権利を制限せざるを得ないところに生じる。社会的利益と個人の権利・利益、両者をなるべく一致させる考えもあるが、個人の権利・利益の制限という事実は依然として残る以上、両者の均衡を図ることが不可避となる。しかし、両者の均衡を実現するということも根本的な困難をはらんでいる以上、当該施策が適切なものであるか否かということを公的に議論する過程や施策の対象となる個人への意見聴取など、両者の均衡を不断に模索する過程が倫理的な配慮として不可欠である。
著者
屋良 朝彦 金光 秀和 本田 康二郎 増渕 隆史 松本 大理 大北 全俊 藏田 伸雄 松浦 正浩
出版者
長野県看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は合意形成やコンフリクト・レゾリューションといった意思決定の方法論を応用倫理学の幾つかの領域(医療倫理、看護倫理、科学技術倫理、技術者倫理、ビジネスエシックス、コミュニケーション論)に適用し、その適用可能性を検証することである。具体的には、年に2回、3年間で6回の研究会を開き、上記各領域の専門家である研究分担者に研究成果を発表させ、上記課題の達成状況について討論した。研究成果を本年度中に「研究報告書 合意形成研究会の活動記録」(仮題)として発行する予定である。
著者
紀平 知樹 浜渦 辰二 大北 全俊
出版者
兵庫医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究課題は、環境問題とケアの問題は相互に独立した問題ではなく、むしろ共通の根をもつものであるという観点から、新たな社会のあり方を模索することを目的としていた。そのために生産志向の社会から定常型社会へ、そして生産へと方向付けられたケアから新たなケアのあり方について検討することを課題としていた。本研究では、定常型社会において、生産活動に対して一定の制約を課すために強い予防原則が必要であることを明らかにした。またケアについては、ケアを支える健康に関する政策、特にヘルスプロモーションの意味について問い直す必要があることを明らかにした。