著者
和泉 ちえ 森 一郎 飯田 隆 小手川 正二郎 秋葉 剛史 河野 哲也 笠木 雅史 池田 喬 鈴木 伸国 村上 祐子 大河内 泰樹 佐藤 靜 加藤 泰史 吉原 雅子 小島 優子 菅原 裕輝
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

1.男女共同参画推進および若手研究者支援に関して先駆的取り組みを展開している英国哲学会理事のJoe Morrison博士を日本に招聘し,第76回日本哲学会大会ワークショップ「どう変わる!日本哲学会」(2017年5月21日,於・一橋大学)において啓発的な講演と率直な議論を重ねる機会を企画実践した。またMorrison博士によるレクチャーは,千葉大学,東北大学,京都大学においても開催され,幅広い層の研究者たちと共に議論を深めることができた。特に男女共同参画を確実に実践するために英国哲学会が策定した「Good Practice Scheme」について哲学的視点に基づく論拠をMorrison博士を交えて再検討する機会を得たことは有意義であった。日本の哲学分野における男女共同参画および若手研究者支援に関して,今後も英国哲学会と緊密に連絡を取り合いながら積極的に推進する方針が確認された。2.哲学分野で活動する若手研究者を対象に実施した大規模アンケート結果を分析・公表すると共に,諸方策について提言をとりまとめた。3.日本学術会議総合ジェンダー分科会と協力しながら,日本哲学会大会の時機に合わせた人文・社会科学系学協会男女共同推進連絡会の正式発足会合に向けて実質的な貢献を積み重ねた。また日本学術会議公開シンポジウムにおいても哲学分野における男女共同参画推進・若手研究者支援の取り組みについて報告と提案を行った。4.国際会議「ジェンダー研究と哲学史」(於・一橋大学)を共催開催した。5.若手研究者を対象にした査読論文指導ワークショップを開催した(於・立教大学)。6.日本全国の諸大学における哲学分野の専任教員ポストに関して調査を行った。7.日本哲学会の機関誌『哲学』第69号特別企画「ハラスメントとは何か?ー哲学・倫理学からのアプローチ」を取りまとめ諸論点を提起した。
著者
大河内 泰樹
出版者
一橋大学
雑誌
一橋社会科学 (ISSN:18814956)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.217-241, 2008-06

ハーバーマスは六八年の「認識と関心」と題された論文と単著で、カント及びドイツ観念論から取り入れた「関心」の概念を用いて、イデオロギー批判としての認識論を展開した。そこでは、三〇年代のホルクハイマーの議論に依拠しながら、理論は特殊な関心によって導かれているとし、技術的関心が経験的分析的科学、実践的関心が歴史的解釈的科学を基礎付けていること、そして解放的関心に基づく自己反省によって批判的科学がもたらされることを主張していた。ハーバーマスは後に認識論による批判理論の基礎付けというこの路線を放棄することになるが、彼がまだこの段階で人類の類的な発展としてのヘーゲル/マルクス的発想を保持していることを見ることができる。しかし他方でハーバーマスが「批判理論」の継承者とみなされるきっかけとなったこの著作においてすでに、彼が狭いと考えていたホルクハイマー/アドルノらの理性概念を乗り越えようとしているのも明らかである。本稿では、ハーバーマスがこれらの著作で取り上げる「関心」概念が、カントおよびその後のドイツ観念論においていかに位置づけられ、ドイツ観念論そのものの展開にどのような意義を持っていたのかを再検討する。これを通じて、「関心」の概念がそもそもドイツ観念論では理性に対する懐疑という問題系において導入されているにもかかわらず、ハーバーマスが意図的に理性批判としてのこの概念のポテンシャルを切り詰め、積極的な理性概念を展開する戦略をとっていることを明らかにする。