著者
原田 恭行 大泉 徹
出版者
日本食品科学工学会
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.117-126, 2016 (Released:2016-09-14)

冷風乾燥した塩干品の呈味成分の変化を明らかにするため,マアジを約20℃(冷風乾燥区)または約50℃(熱風乾燥区)で20時間乾燥させ,FAAと核酸関連物質の経時変化を比較した。その結果,熱風乾燥区ではIMPの急激な減少に伴いHxが増加するとともに,苦味を呈するFAAの増加が著しかった。一方,冷風乾燥区ではIMPの減少が小さく,苦味を呈するHxとFAAはあまり増加しなかった。このような呈味成分の差異は乾燥時間の経過とともに顕著となった。一方,両乾燥区における乾燥2時間(水分約68%)の半乾品を焙焼すると,冷風乾燥区では,甘味を呈するアミノ酸が増加する傾向にあったが,熱風乾燥区では,Hx含量が増加し,リジンとヒスチジンが顕著に減少した。さらに,両区を官能評価すると,冷風乾燥区は,甘味が有意に強く,苦味が弱い傾向にあり,総合評価で有意に好ましい結果となった。これらの結果は,塩干品の冷風乾燥の優位性を呈味の面から示唆するものである。