著者
福丸 拳梧 大澤 啓志
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.137-140, 2022-08-31 (Released:2022-11-22)
参考文献数
9

水辺ビオトープの普及に向け,物理的な環境操作を行うことにより,薬剤や外来捕食生物に頼らない水辺ビオトープでの蚊の発生を抑制する方法を検討した。光及び流水環境,水替え頻度を組み合わせた実験区を設け,2021年5~9月にかけて2週間毎にボウフラの発生数を計数した。止水条件下での日陰の有無で比較すると,日陰で発生数が多くなる傾向が認められた。日陰条件で止水域~流水域で比較すると,流速が弱い程,発生数が多くなる傾向が認められた。日陰の止水域条件で水替え頻度別で比較すると,頻度が低くなる程,発生数が多くなる傾向が認められた。
著者
大澤 啓志 新井 恵璃子
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.337-343, 2016 (Released:2017-03-16)
参考文献数
60
被引用文献数
1

花木であるアジサイの植栽利用に関わる文献類の渉猟を行い,その植栽に対する嗜好の時代変遷を考察した。また,観光対象としてのアジサイ寺の成立時期について,文献・ヒアリング調査を行った。嗜好の時代変遷では,鎌倉時代頃から庭への植栽が普通となり,江戸時代にはアジサイの栽培・増殖法も記された出版物が発刊されるとともに,「花が多数群れ咲く」ことへの嗜好の萌芽が認められた。明治以降も庭への植栽は普通に行われており,またセイヨウアジサイの輸入が始まり,公園等に群植がなされていた可能性もあるものの,直ぐには今日のようなブームにはならなかった。この間,「アジサイと社寺」の関わりを示す資料が認められた。そして 1960年代以降になって明月院 (神奈川県鎌倉市) に群生するアジサイが多くの人の目に止まり,これまでには無かった新たな観賞価値がアジサイに付与され,今日的な嗜好が確立されたと考えられた。各地で植栽される観賞用の緑化植物の一つであるアジサイについて,「庭の花木」を経て「社寺の花」という文化を底辺に持ちつつ,今日の「群生する花の美」の価値が生じた過程を明らかにした。
著者
大澤 啓志 勝野 武彦
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.329-333, 2000-03-29
参考文献数
6
被引用文献数
4 4

横浜市の代表的な谷戸を活かした農的空間(寺家ふるさと村・舞岡公園)において、春季における利用実態および利用者意識の調査を行った。利用者数は,連休期間の最終日が最も多く,3,000人以上/日であった。アンケート結果によると利用圏は概ね10km圏域であり,特に隣接2区からの利用者割合(約60〜65%)が多くなっていた。利用者の多くは、谷戸地形独特のランドスケープに即した農的景観・自然を楽しむレクリエーション形態であった。谷戸を活かした農的空間は,幅広い層の都市住民に多目的に活用される都市緑地として意義深く,地形的にまとまった形で谷戸を保全することが望まれる。
著者
大澤 啓志 横堀 耕季 島村 雅英
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.453-456, 2020-05-31 (Released:2020-07-28)
参考文献数
14

トンボ池創出後の園芸スイレンの繁茂に対し,除去効果を検討した。スイレンに覆われた水域に15m2のスイレンを除去した開放水面区画を設け,トンボ類の飛来回数を非除去区画と比較した。初夏から秋季にかけての計10回の調査により,3科9種の計127回の飛来を確認した。それぞれ飛来数の多くなる繁殖期間で比較すると,シオカラトンボ(開放水面区:平均1.5~4回,繁茂水面区:平均0.3~0.7回)とギンヤンマ(同:平均2~3.3回,同:平均0.7~1回)が開放水面区に有意に多く飛来していた。確認数は多くはなかったが,クロスジギンヤンマは非確認であった繁茂水面区に対し,開放水面区に飛来する傾向が認められた。一方,必ずしも繁殖に広い開放水面を必要としないアオモンイトトンボでは,条件間で飛来回数に有意差は認められなかった。繁茂スイレンの除去はトンボ相修復に対して一定の効果が期待されるものの,飛来が期待されたかつての生息記録種の飛来は多くはなく,対象水域周辺地域のトンボ類の生息状況も影響していると考えられた。
著者
大澤 啓志 島田 正文 勝野 武彦
出版者
農村計画学会
雑誌
農村計画学会誌 (ISSN:09129731)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.91-102, 2005 (Released:2007-03-01)
参考文献数
23
被引用文献数
12 15

In this research, in order to clarify ecological significance of the levees in flatland paddy fields, the habitat density of the frog, Rana porosa porosa on each levee type was investigated. The investigation was conducted in the Isawa area in the southern part of the Iwate pref. in the early summer in 2002. The number of Rana porosa porosa in the paddy fields that were rearranged to large units in the recent years, has decreased. It has been suggested that the disappearance of traditional earth waterways and the reduction of levees might have caused the decrease of the frog species in the paddy fields. Our research shows that on the levees attached to waterways the number of the frog species significantly varies according to the material that is used for the waterway. That is, the number becomes smaller when it was altered to concrete from the naked soil. At the same time, we did not find any significant difference in the amount of food for this frog species between in the concrete waterways and in the earth waterways. This suggests that the amount of food does not cause the discrepancy between the number of the frog species in the concrete waterways and the number of one in the earth waterways. On the levees between the paddy fields in the area that was consolidated before the recent consolidation, the number of the frog species considerably varies according the moisture condition of the area. This indicates the importance of levees as pieces of land in water, narrow walkways between paddy fields that are filled with water. As opposed to the levees between paddy fields, the levees attached to earth waterways hold high density of the frog species. This verifies that Rana porosa porosa have an affinity to the levees attached to the earth waterways. The significant factors of how this frog species choose what kind of levees to frequent, are more structural, i.e., the structural changes of the paddy fields that are caused by the modern farmland consolidation, the existence of attaching waterways and the material of the waterways, than administrative, i.e., water management and weeding. Also, we verified that the amount of food is not especially a regulative factor in terms of the density of the frog species on the levees.
著者
村上 裕 大澤 啓志
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.187-198, 2008-11-30
被引用文献数
2

愛媛県中予地域において、水稲栽培型とトノサマガエル・ヌマガエルとの関係を調査した。現地調査は、2005年に130地点のカエル類分布調査を、2000〜2005年に水稲栽培型調査を実施した。過去の栽培型(1958年)については資料調査とし、地域別の栽培型ごとの面積と品種数を明らかにし、2000〜2005年は水稲栽培型で区分した地図を作成した。1958年と比較して2000〜2005年の平野部における水稲栽培型の多くが短期栽培に変化し、普通期栽培品種においても栽培期間の短期化が進行していた。これに対して山間部の水稲栽培型は品種の変遷はあるものの、栽培型や栽培期間に大きな変化は認められなかった。標高と栽培型との関係では、早期栽培は標高50m以上にほぼ均一に分布していたが、短期栽培は標高20m以下に集中傾向がみられた。トノサマガエルは22地点(生息確認率16.9%)、ヌマガエルは40地点(同30.8%)で生息確認が得られた。標高と両種の関係は、トノサマガエルが標高による明瞭な傾向を示さないのに対して、ヌマガエルは低地依存性があることが明らかになった。栽培型と両種の関係では、トノサマガエルは水稲栽培期間の短期化によって生息地域が減少することが明らかになった。一方、ヌマガエルの生息確率は水稲栽培期間の短期化には影響を受けていなかった。以上のことから、トノサマガエルは標高よりも栽培型に影響を受けるが、ヌマガエルは栽培型よりも標高に影響を受けることが明らかになった。短期栽培は、栽培期間が短いため、兼業農家においても取り組みやすい栽培型である一方、水田を二次的自然環境として利用しているカエル類、特にトノサマガエルの生息に負の影響を及ぼしていると考えられた。
著者
七海 絵里香 大澤 啓志 勝野 武彦
出版者
JAPANESE SOCIETY OF REVEGETATION TECHNOLOGY
雑誌
日本緑化工学会誌 = Journal of the Japanese Society of Revegetation Technology (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.123-126, 2011-08-31

山上憶良が詠んだことにはじまる秋を代表する野草である秋の七草は,その姿の美しさや風情を楽しむことで,古くから様々な人々に親しまれてきた。今回,日本最古の歌集である万葉集の中で秋の七草が詠み込まれた歌から,万葉集が編纂された時代の秋の七草の主な生育立地を把握し,「野」「山・岡」「庭」「街・里」に分類した。その結果,七草全体では「野」が最も多く,植物種によって差があるものの,身近に野草を置こうとする歌人の意向から庭に植えたと考えられる植物種も多数見られた。特にナデシコは栽培されたものを詠んだ歌が多く,ハギは様々な立地に幅広く生育するものが詠まれていた。
著者
飯田 晶子 大澤 啓志 石川 幹子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.319-324, 2011-10-25 (Released:2011-11-01)
参考文献数
21

本研究では、南洋群島の旧日本委任統治領、パラオ共和国バベルダオブ島の3つの流域で行われた農地開拓とボーキサイト採掘を事例に、開拓の実態と現代への影響を分析した。農地開拓では、島内に4つの指定開拓村が設置され、1940年には合計1671人が2255町歩の土地に暮らし、主にパイナップルやキャッサバが栽培された。一方で、日本人が撤退した後65年を経た現代においても、当時の森林伐採と土地収奪的な営農による植生への影響、および、移入種Falcataria moluccanaによる固有種への影響が見られる。ボーキサイト採掘地は、島内2カ所に合計106ha設置され、島の一大産業であった。開拓面積は小さいものの、表土を剥がしとったために、採掘当時は多量の土砂が流出し、湿地と沿岸域に堆積した。また、パラオ人集落でも、土砂の埋立てと集落移転、インフラ設備の再利用、産業遺産の観光化など、少なからず日本の影響が見られる。開拓はいずれも水系を軸として流域を単位に進められており、開拓の影響は沿岸の生態系やパラオ人集落など、流域内の自然や社会に対して広域、かつ長期にわたる影響を与えている。
著者
七海 絵里香 大澤 啓志 勝野 武彦
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.443-446, 2013 (Released:2014-05-08)
参考文献数
15
被引用文献数
7 7

The leaves of Oshima cherry (Prunus Wilson var. speciosa Makino) are edible and used to wrap sakuramochi. Seventy percent of leaves of the Oshima cherry are produced in Matsuzaki town, Izu Peninsula. In this town, cherry trees are cultivated for harvesting their leaves. These trees are closely planted and pruned, enabling them to grow many tillers, which spread out and form the distinctive landscape in this area. In this study, we investigated the actual distribution, forming process of leaves in cherry tree fields, and change in the production process in Matsuzaki town. From the results, we assumed that the number of cherry trees planted corresponded to the amount of charcoal produced. However, the field cultivation method of cherry trees was devised only by the end of the 1960s, after the production of charcoal decreased due to an energy revolution, which resulted in a crisis in the cherry tree leaf production. It was considered that cherry tree fields were distributed throughout Matsuzaki town. However, our results show that these fields are unevenly distributed.
著者
天白 牧夫 大澤 啓志 勝野 武彦
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.415-418, 2012 (Released:2013-08-09)
参考文献数
25
被引用文献数
1 4

We elected an area where uniform paddy cultivation is done by the overall community, and divided roughly into five rice field types; I (Rice field and lotus field mixture area), II (Pond adjoining area), III (Rotation of crops area of rice, wheat and soybean), IV (Fabricated field / Mixture of the waterway of the ground and concrete) and V(Not-fabricated field / Mixture of the waterway of the ground and concrete) in Noubi plains. We conducted a line census investigation on a ridge in order to investigate the species composition of frogs according to the rice field type. The results of our survey, there were large numbers of frogs in the areas which have a moist cultivating environment (Type I , V). In contrast, in the well-drained rice fields (Type II , III and IV) where rice seedlings were transplanted in June, there were small numbers of frogs irrespective of the environmental structure. The number of frogs in Type I where different crops (rice and lotus) were cultivated in parallel was larger than that in Type V because the waterside has always existed there.
著者
七海 絵里香 松井 春佳 大澤 啓志
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.273-276, 2014 (Released:2015-09-18)
参考文献数
16
被引用文献数
1 2

近年,農村ではコンクリート製品の影響に加え,圃場整備等の土地造成により土壌 pH がアルカリ性に傾き,在来植物が発芽不良や生育不良を起こしている可能性がある。本研究では,pH が在来植物,特に草原性の野草類の発芽に及ぼす影響を明らかにした。結果,対象 16種のうち,7種は有意差が認められ,草原性野草類の中には,pH が発芽に影響を及ぼし,アルカリ性が強いと発芽を抑制・もしくは遅らせる種があることがわかった。特に,オトコエシ・オミナエシ・ワレモコウ・カワラナデシコの 4種は,強アルカリ性の条件下での発芽率が低く,在来野草類からなる良質な半自然草地の保全・復元には,土壌 pH が重要な要素であると考えられた。
著者
徳江 義宏 今村 史子 大澤 啓志
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.465-468, 2013 (Released:2014-05-08)
参考文献数
17
被引用文献数
8 5

In urban areas, it is important to conserve biodiversity because biodiversity is the basis of the ecosystem services. This study focused on cicadas because they serve as an indicator of the environmental conditions. We aim to clarify cicada distribution in urban areas and the environmental factors that affect its population and distribution. By using a method for counting the cast-off skins of the cicadas, we recorded cicada population three times during the summer of 2011 at 49 forest sites in Tokyo metropolis. In addition, we recorded environmental factors through field surveys and satellite imagery analysis. The species composition of cicada was analyzed using the Nestedness Temperature Calculator program, and the relationship between the cicada population and environmental factors was analyzed using a generalized linear mixed model (GLMM). As a result, six cicada species and the cast-off skins of five species were found in the studied sites. The species composition of cicada has a nested structure, with one species dominating many sites. The common factors having a statistically significant influence on the cicada population were soil moisture, soil hardness, leaf coverage in the middle layer, height of shrub layer, and average breast height diameter of trees, which were obtained using a GLMM. Among these factors, we also obtained the characteristic factor affecting each cicada species.
著者
島田 正文 葉山 嘉一 大澤 啓志 間野 伸宏 岩野 秀俊
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.29(第29回環境情報科学学術研究論文発表会)
巻号頁・発行日
pp.13-16, 2015-11-25 (Released:2015-11-25)
参考文献数
7

本研究は,藤沢市で行われた「藤沢市自然環境実態調査」を事例に,地域の生物に関する専門知識を有する市民と研究機関,行政の協働による調査の有効性について実証的に追求したものである。その結果は以下のようにまとめられる。協働の各主体は,調査方法や調査結果の解析・評価に至る全般に渡って関わった。特に,日本大学などの研究機関は,生物の分類群ごとの意見調整から調査全体のとりまとめに至るまで,各主体間の合意形成への中心的役割を果たした。本研究では,組織された3 種類の会議体を通じて,調査方法や結果の活用方法等が主体間で共有化されるなど本調査方法の有効性,調査の持続性等に関わる今後の課題が把握された。
著者
一ノ瀬 友博 高橋 俊守 加藤 和弘 大澤 啓志 杉村 尚
出版者
農村計画学会
雑誌
農村計画学会誌 (ISSN:09129731)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.7-13, 2008-06-30 (Released:2009-06-30)
参考文献数
30
被引用文献数
5 2 1

Biotope (habitat) type maps are essential as base maps for land use planning and biodiversity conservation. Actual vegetation maps are often used as the base maps, though important information for biotope evaluation such as vegetation structure and anthropogenic land modification is not shown enough. We proposed a procedure of biotope type mapping for rural areas and drew a prototype map. We classified biotope types following German system of biotope classification in some part and also considering soil moisture of rice paddies in winter, bank modification of irrigation canals, vegetation management frequency in grasslands and density of woodland understory.
著者
徳江 義宏 大澤 啓志 今村 史子
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.203-206, 2011 (Released:2012-03-14)
参考文献数
44
被引用文献数
5 2

都市域におけるエコロジカルネットワーク計画の生息地の連結性を検討する上では,動物が再移入可能な生息地間の距離に関する知見は重要である。本研究は,計画論的視点から生態特性が類似したグループ毎に移動分散の距離を検討した。体サイズ,移動手段に着目して,哺乳類,鳥類,爬虫類,両生類,昆虫類,クモ類,陸生貝類の各分類群について,生態特性が類似したグループを把握することができた。このグループは,広域,都市域,地区の異なる空間スケールに応じたエコロジカルネットワーク計画の目標種の設定において,有効と考えられる。
著者
七海 絵里香 大澤 啓志
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.97-102, 2017 (Released:2018-03-15)
参考文献数
21
被引用文献数
1

万葉集及び勅撰和歌集において松が詠まれた歌からその生育立地の推定を行い,年代毎の変遷を明らかにした。計 22集の和歌集には 1,493歌で松が詠まれており,内 1,147歌(77 %) で生育立地の特定が可能であった。生育立地は臨海部が 22~35 %と変動しつつも概ね一定の割合を占めており,中でも海浜のクロマツ林を詠んだものが多かった。本格的な海浜域での造林が始まる以前より,クロマツ林が広く存在し,その植生景観に価値が置かれてきたことが示された。内陸部は年代が下るにつれて割合が増加し,1200年代以降は浜以上の割合で山の松が詠まれるようになった。これは山に関連する用語の種類の多様化,「名もなき山」や「聴覚としての山の松」の嗜好の広がりによるものと考えられた。
著者
七海 絵里香 大澤 啓志 勝野 武彦
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.405-408, 2011 (Released:2012-09-05)
参考文献数
42
被引用文献数
1

It can be said graft is important technique from a viewpoint of landscape from some their feature. However, their techniques have developed in pomological field. In this study, we examined about the historical transition of graft use through literature. In addition, we considered about position of graft at the industry of tree production in recent years and transmitting of graft techniques through a listening to people who have graft techniques and nursery stock producers. As a result, graft has already been done for ornamental trees at Heian era. It was thought that graft techniques were actively used in the background of the gardening cultural prosperity at Azuchi-Momoyama and Edo era. Afterwards, object of graft shifted to the fruit tree since Meiji era. About the transmitting of graft techniques, there were a lot of cases with transmission to the relative. There is a tendency to transmit movements of graft only when it is not relative. Intention of graft is the overall techniques include that caring and environmental making at the before and after graft. Depression of plant industry, difficulty that compete in plant industry and weakening of the consciousness that taking over the family business caused a decreases in the number of workman of the next generation.
著者
大澤 啓志 横堀 耕季 島村 雅英
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.453-456, 2020

<p>トンボ池創出後の園芸スイレンの繁茂に対し,除去効果を検討した。スイレンに覆われた水域に15m<sup>2</sup>のスイレンを除去した開放水面区画を設け,トンボ類の飛来回数を非除去区画と比較した。初夏から秋季にかけての計10回の調査により,3科9種の計127回の飛来を確認した。それぞれ飛来数の多くなる繁殖期間で比較すると,シオカラトンボ(開放水面区:平均1.5~4回,繁茂水面区:平均0.3~0.7回)とギンヤンマ(同:平均2~3.3回,同:平均0.7~1回)が開放水面区に有意に多く飛来していた。確認数は多くはなかったが,クロスジギンヤンマは非確認であった繁茂水面区に対し,開放水面区に飛来する傾向が認められた。一方,必ずしも繁殖に広い開放水面を必要としないアオモンイトトンボでは,条件間で飛来回数に有意差は認められなかった。繁茂スイレンの除去はトンボ相修復に対して一定の効果が期待されるものの,飛来が期待されたかつての生息記録種の飛来は多くはなく,対象水域周辺地域のトンボ類の生息状況も影響していると考えられた。</p>
著者
大澤 啓志
出版者
農村計画学会
雑誌
農村計画学会誌 (ISSN:09129731)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.291-296, 2015
被引用文献数
2

It was investigated about the domestication proses of <i>Acorus calamus</i>, the cultivation method, the characteristics of distribution and landscape of <i>A. calamus</i> field in Kitaura district, Namekata city. The cultivation involves clone propagation by a subterranean stem, and the domestication of <i>A. calamus</i> has been tried from 1983 in this district. Total of 43 sites and 7.5 ha of <i>A. calamus</i> fields were observed in 2014 at low land in Kitaura lakefront area mainly. It was the feature of <i>A. calamus</i> field that collective common farming is seen at the harvest season before a Boys' Festival.
著者
大澤 啓志 清水 由紀奈
出版者
農村計画学会
雑誌
農村計画学会誌 (ISSN:09129731)
巻号頁・発行日
vol.32, no.Special_Issue, pp.263-268, 2013-11-20 (Released:2014-11-20)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

The project which uses the wild boar meat by the measure against wildlife damage of Nakagawa town as a local specialty was investigated. The opportunity of the project originated in the dense relation between the local administration and a hunting group. In order to solve the subject of the area, administration was promoting the project by the implementation structure which connected each sector. The increase in a hunter's hunting volition and strengthening of a sense of solidarity with a local activity, and promotion of the eagerness to sell of the specialty by the wild boar meat of a retail store were accepted as a result of this project.