著者
梅本 通孝 熊谷 良雄 小林 健介 石神 努 渡辺 実 室崎 益輝 大西 一嘉
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.7, pp.228-233, 1997-11
被引用文献数
1

The Great Hanshin-Awaji Earthquake Disaster caused an LPG leak incident at a plant in Higashinada ward, Kobe city. Kobe municipal authorities announced evacuation recommendation to 72,000 inhabitants. A questionnaire was conducted to know when, where and how the inhabitants received the information of evacuation recommendation. Results of the questionnaire are as follows : ・In the day the evacuation order was announced, 9.9% of inhabitants in the recommendation area concerned did not receive the information of the recommendation. ・The farther from the plant where the incident happened, the more lately inhabitants received the information of the recommendation. ・Though about 80% of people who received the information of the recommendation become aware of the cause of it, many of them didn't know the further information.
著者
大西 一嘉 原田 哲也
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.4, pp.209-213, 1994-08

本研究は災害弱者施設での防災対応のあり方に関する研究の一環として行ったものである。死者119人を出した1993年鹿児島水害における保育所での対応をアンケート調査によって考察し、被災事例を通じて今後の計画的対応の必要性を指摘している。水害は地震や火災と異なり、人的・物的被害にいたるまでの時間的猶予があるため、比較的事前対応が取りやすいといわれている。注意報や警報などの気象警報、あるいは避難勧告や指示、洪水警報や水防警報などの災害警報が、被害発生前に住民に伝達されることにより適切な災害対応行動を導くことも可能である。しかし現実には、水害時の避難行動は周辺が危険状態に移行したり、被害が顕在化した後や、身近な人の指示などがあってようやく開始されることが多いとの指摘があるように、予防的というより脱出的な行為に近くなる。従って、避難のタイミングを失った逃げ後れによる被害が後を絶たない。また土砂災害は洪水害に比べて突発性が高いため、大きな人的被害を招くことが少なくない。本研究では、1993年7月〜9月にかけての数度にわたる水害で多くの死者を出すなどの大きな被害を受けた鹿児島県を対象に、災害弱者である乳幼児を預る保育所における水害対応に着目して、防災対策における水防体制のあり方を検討した。調査方法としては、被災地区の保育所に対して郵送アンケートにより調査すると共に、退避・避難行動がみられた保育所については、電話によるヒアリング調査を併用して、避難の際の問題点や教訓を把握した。その結果、以下の点が明らかになった。鹿児島県地方では風水害のリスク認識が火災や地震と共に高いにもかかわらず、訓練を含めた予防対応が不十分であり、公立保育所に対して私立での対応がやや遅れている。弱者を抱える施設の場合、水害時には適当な避難場所の有無がスムーズな事前避難を左右し、避難場所が遠いと避難途上での被災を恐れて避難が遅れる傾向にある。避難所の選定方法や施設が備えるべき装備品についても各種の災害態様に応じて対応できるように考慮されなくてはならない。
著者
岡田 尚子 大西 一嘉
出版者
一般社団法人 地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.87-96, 2017-11-10 (Released:2018-05-26)
参考文献数
28

This paper aimed to clarify the check in date and duration of vulnerable population in shelters with additional assistance and consideration after 2016 Kumamoto Earthquake. We found differences in these factors between elderlies and disablities:#1 Elderly people with long time care checked in and left earlier. #2 Elderly people with daily support checked in later and stayed a long term. #3 Physically disabled people could be found earlier and stayed a long term. #4 Mental disorders checked in later and left earlier
著者
岡田 尚子 大西 一嘉
出版者
一般社団法人 地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文集 (ISSN:13452088)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.53-60, 2016-03-25 (Released:2017-08-02)
参考文献数
24

Our objective is to clarify the state of such extra shelters management, that is, how victims were selected from primary shelters and how they were treated after evacuated in 2014 Hiroshima Mudslide Disaster. We contacted interview research against key persons of extra shelters in Asa-Minami ward and surrounding wards of seriously affected areas. This paper clarifies three essential strategy contents for improvement of extra shelters management in flood disaster, based on above case study. #1. To increase capacity of extra shelters and develop new type of elderly apartment with supportive services. #2. To collaborate various keypersons who are worked coordinators. #3. To support logistic work of facilities in use of extra shelters
著者
鏡味 洋史 鈴木 有 宮野 道雄 岡田 成幸 熊谷 良雄 中林 一樹 大西 一嘉 多賀 直恒
出版者
北海道大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1996

本研究では地震災害事象について発災を出発点とし、緊急対応、復旧対応、復興、そして次の災害に対する準備に至る時系列の中で、対象としては個人・世帯を出発点とし、地域社会、地域行政体、国、国際に至る空間軸でできる限り広く問題設定を行った。個別の災害情報管理の問題を情報の受信者である被災者・被災地の側からのアプローチと情報発信側となる行政体など各組織・セクターからのアプローチで展開し、情報管理のあるべき姿、ガイドライン構築を目指した。各分担課題は、全体の枠組みを整理するもの、情報システムの視点を被災者側におく課題、視点を対応組織の側におく課題の3種類に区分してすすめ、最終年度には研究の総括を行った。被災者側の視点からは、被災者の住環境からの情報ニーズの把握、災害弱者を対象とした情報伝達・収集システムの提案、郵便配達システムを活用した情報システムの提案、地域の震災抑制情報の有効性、住民主体の復興まちづくりにおける情報ニーズの把握がなされた。対応組織の側からは、地方行政体による被災情報の収集状況に関する時系列モデル化、地震火災については消防活動訓練システムの構築、災害医療情報については阪神・淡路大震災の事例を分析したシステム化の方向、ライフライン停止に伴う生活支障を計量化の提案、都市復興期における情報の役割、が明らかにされている。各課題では、既往の地震災害に基づく情報ニーズの整理、それに基づく情報管理のあるべき姿の提示、プロトタイプシステムの提案へ統一した形で進めた。課題によっては、問題の大きさ、複雑さなどにより到達度の差は大きいが、大きな方向を示すことができたと考えている。本計画研究は単年度の申請であるが継続して4年間研究を行い、最終年度には報告書の刊行を行った。
著者
大西 一嘉 宮野 道雄
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.6, pp.167-174, 1996-11

1995年兵庫県南部地震では、震災による直接的な死者数だけでも5504人にのぼり、その約9割は建物倒壊によりもたらされたものと考えられている。特に耐震性の低い木造住宅に倒壊が集中し未曾有の人的被害を生んだ。本報告では、まず、神戸市における死者(3410人)について、被災場所となった建物側の要因との関係を整理した結果の概要を示し、地震による人的被害の状況を概観した。その結果、戸建てでの死者が多い東灘区と、木賃、文化、長屋などの共同建てでの死者が多い灘区との違いが明確に示されている。また、中高層共同住宅でも283人の死者が出ている点、無被害建物での死者(95人)の多くが共同住宅で発生している点なども、今後詳細に解明していくべき課題として残されていることを指摘した。ついで、建物全壊率、死者発生率ともに高かった東灘区を対象として、建物被害と人的被害の関連性についての、典型地区アンケートを実施した結果を報告した。東灘区全体の建物被害の特徴は、既存調査(都市計画学会関西支部+建築学会近畿支部都市計画部会の合同建物被災度実態調査にもとづいて、都市住宅学会住宅復興チームが行った戸数単位集計結果)によれば戸建と高層共同住宅の全壊率が高い点にある。また東灘区の南部-帯には木賃、長屋の老朽密集地区が拡がっており、被害の激しかった深江地区ではこれら老朽低層共同住宅の全壊率は85%以上にのぼると言われている。対象とした調査地区では、震災直後に木造住宅に関する詳細な現地調査が実施されており、今後、人的被害研究会(太田裕(山口大学)氏を代表とする、学際的な研究組織)における協力体制のもとで、一連の調査資料の照合を進めることで人的被害に関する予測モデルの構築を目指している。ただ、現段階ではこれらを重ね合わせた詳細な分析にはいたっておらず、本報告ではアンケート調査による集計結果をもとにした人的被害構造の概括的分析にとどまっている。結果を要点は以下のとおりである。死者の出た世帯では、当日の在宅者の3人に1人が亡くなっている反面、同じ家にいた人で、重傷、軽傷者は少なく、負傷者発生率は、死者発生率の半分以下であった。この事は、生き残った人の3分の2は大した怪我もなく救出されている事を示している。地区全域での人的被害でも、近年のわが国における地震被害と比較しても死者発生率の高さが顕著であり、脆弱な家屋構造による人的被害の発生は、発展途上国型災害の様相をみせていると考えられる。地域全体としてみた時、死者から軽傷者にいたる人的被害総数を、地域災害医療ニーズとして考えると、今回の調査によれば住民の2割を占めることとなる。