著者
奥 正廣
出版者
日本創造学会
雑誌
日本創造学会論文誌 (ISSN:13492454)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.1-35, 2020 (Released:2020-04-17)

本研究の目的は、明治以来の日本における高等教育および教養教育政策の変遷を、信頼できる諸研究に基づき明らかにし、その知見や間題意識を創造性教育や教育改革に関心ある諸氏に提供し、そのうえで、諸氏が、自ら今後の創造性教育や教育改革の考察を深めるためのたたき台となるように、関連する個人的研究テーマ例を素描することである。具体的には、次のような内容になる。 (1)まず筆者の間題意識の原点を簡単に紹介する。 (2)次に、信頼できるエビデンスベーストの教育政策史関連の諸研究に基づき、明治期以来のキャッチアップ型近代化の特性を、高等教育における教養教育の変遷を中心に検討し、基本的間題点を明らかにする。結局、明治以降の国家教育政策の破綻していることが示される。 (3)その知見に基づき、今後の新たな教育政策の方向性を探索・構築するために、創造性教育や教育改革に関心のある諸氏が探究のたたき台にできるように、筆者自身の個人的間題意識(1)に従い、(2)の知見を踏まえ、今後の個人的研究テーマの素描を行う。そこでは、幅島原発事故の徹底解明、真実を直視する市民の科学的恩考スキルの醸成、江戸時代後半の多様な恩想状況の再検討、「道(生き方)」的な教育要素の重要性、SDGs(持続可能な発展目標)時代の教養教育や創造性教育の条件解明などが提案される。