著者
上山 千恵子 田場 真理 守本 とも子
出版者
奈良学園大学
雑誌
奈良学園大学紀要 = Bulletin of Nara Gakuen University (ISSN:2188918X)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.67-79, 2016-09

本研究の目的は、認知症高齢者の娘介護者が体験する困難と、娘介護者にとって介護生活の支えとなっているものについて明らかにすることである。認知症高齢者である親の介護経験を有する娘介護者15名を対象に半構成的面接調査を行った。得られたデータは逐語録に起こした後、その中にあるテーマを記述し、共通するテーマを持つ者同士をグループ化した。その結果、娘介護者が体験する困難として≪親の現状を受け止める難しさ≫≪役割の両立から生じる困難≫≪自分がやらなければ≫≪介護協力者との間に生じるずれ≫≪認知症の症状そのものへの対応の大変さ≫≪将来への不安≫≪娘であるがゆえに生じる理不尽さ≫の7カテゴリーが、介護生活を続ける中で支えになるものとして≪変わってゆく親を共有できる存在≫≪介護を分担してくれる家族≫≪距離をおく時間≫≪介護効果の実感≫の4つのカテゴリーが見いだされた。娘介護者は、以前に介護の経験があったり認知症の知識を十分持っていたとしても、変わりゆく≪親の現状を受け止める難しさ≫を経験し苦しんでいた。そのような中で、親の現状を受け入れていくプロセスに、元気なころの親も、今現在の親の姿も共有できるきょうだいや、以前から知ってくれている医療機関が≪変わってゆく親を共有できる存在≫として大きな支えとなることが分かった。また、本研究結果からは、多くの役割を担い、その両立を迫られる立場にあって困難を感じている娘介護者の状況が明らかになった。このような娘の立場を理解した上での支援が重要であると考えた。